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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 117 |
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管理番号 | 1025240 |
審判番号 | 審判1998-35176 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-03-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-04-27 |
確定日 | 2000-08-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2723925号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2723925号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2723925号商標(以下、「本件商標」という。)は、「LUPINIII」の文字と「ルパン三世」の文字を上下二段に書してなり、昭和59年5月25日に登録出願、第17類「被服、布製身回品」を指定商品として、平成10年1月23日に設定登録がなされたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第54号証を提出している。 本件商標は、モンキー・パンチ(加藤一彦氏)作の漫画及びその映画著作権者である請求人が制作したアニメーションのタイトル・キャラクター名「ルパン三世」と実質的に同一である。 前記漫画及びアニメーション「ルパン三世」は、本件商標出願時には、既に広く知られ親しまれていることのみならず、請求人等によって多岐にわたる商品について商品化されている。 したがって、本件商標をその指定商品について被請求人が使用するときには、恰も請求人もしくは請求人と何らかの関係を有する者の製造販売に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 さらに前記商品化の対象となっている本件商標を、何らの権原を有さない被請求人が登録し使用することは、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。 以下、詳述する。 (1)「ルパン三世」について 「ルパン三世」は、モンキー・パンチ(加藤一彦氏)作の漫画及びその映画著作権者である請求人が制作したアニメーションのタイトル・キャラクター名として広く知られ、親しまれている。 モンキー・パンチ作の漫画「ルパン三世」は、株式会社双葉社発行の「週刊漫画アクション」(昭和42年8月10日号、同年7月27日発売)に連載が開始されて以来、今日に至るまで高い人気を得ている。 同社発行の「漫画アクション・コミックス」の一つとして昭和44年1月1日に発行された「ルパン三世」の抜粋写を甲第1号証として提出する。 同社発行の「ルパン三世」シリーズ単行本の発行部数は、優に1,000万部を越えている。 請求人は、前記ルパン三世の著作権者と昭和43年に契約を締結して以来、数次にわたり契約を締結し、テレビ用アニメーション映画、劇場用映画、ビデオグラムを独占的に制作する権利を有している(甲第2号証乃至甲第12号証)。 上記映画等が、放映・上映・販売された年表を甲第13号証として示す。 また、個々の映画等の概略を紹介した刊行物を甲第14号証乃至甲第16号証として提出する。 前記テレビ用アニメーションは、「ルパン三世」が昭和46年から昭和47年にかけて23回にわたり読売テレビ系(日本テレビ系)で放映され、また「新・ルパン三世」が昭和52年から昭和55年にかけて155回にわたり同テレビ系で放映された。 そして、その視聴率は、昭和54年には30%を突破している。 さらに、本件商標の出願日(昭和59年5月25日)以前の昭和59年3月3日には、「ルパン三世 PART3」が上記テレビ系でスタートし昭和60年12月にかけて50回にわたり放映されている。 劇場用アニメーションについては、制作費5億円を投じた「ルパン三世」が昭和53年12月に正月用映画として封切りされ、続いて昭和54年12月に正月映画「ルパン三世・カリオストロの城」が封切りされ、その後「ルパン三世・バビロンの黄金伝説」が昭和60年に、「ルパン三世・風魔一族の陰謀」が昭和62年に、それぞれ東宝系で上映されている。 上記「ルパン三世・カリオストロの城」は、毎日映画コンクール・アニメ部門最優秀作品賞を受賞している。 また、前記テレビ用アニメーションや劇場用アニメーションは、ビデオ化されて昭和58年以降販売されており、前記「ルパン三世・カリオストロの城」だけに限っても、約93,500本が販売され、また中央公論社から「アニメ版 ルパン三世」がシリーズとして発行されている。 前述したところから明らかなように、本件商標の出願時たる昭和59年には、「ルパン三世」と題し昭和42年に連載が開始されたモンキー・パンチ(加藤一彦氏)作の漫画及び昭和46年から数次にわたり放映され且つ昭和54年には正月映画として上映される等した請求人のアニメーションは、既に広く知られ人気が定着していた事実がある。 その後も現在に至るまで、「ルパン三世」は、同氏の漫画及び請求人が制作したアニメーションのタイトル・キャラクター名として広く知られ、親しまれている。 (2)「ルパン三世」の商品化事業について 請求人は、昭和44年以降、「ルパン三世」の名称とキャラクターを含む著作権・工業所有権を各種商品に使用させる権利を代行している(甲第21号証乃至甲第23号証)。 また、昭和52年以降は、原作者モンキーパンチ(加藤一彦氏)あるいは同氏を代表者とするプロダクション及び請求人を含む複数当事者間の契約によって、これら商品化権者グループにより、「ルパン三世」に関する商品化事業が行われている(甲第24号証乃至甲第26号証)。 そして、甲第43号証乃至甲第45号証に示すように、本件商標が出願された昭和59年以前から「ルパン三世」が商品化された商品は、被服(手袋・シャツ・下着・帽子等)、タオル・ハンカチ、枕、バッグ類、ベルト、バッジ、サンダル・スリッパ、傘、おもちゃ・人形、文房具類、カレンダー、キーホルダー、寒暖計、皿・コップ・水筒・弁当箱等、ごみ箱、鏡、時計、菓子、ふりかけ等の多岐にわたっている。 これら商品に「ルパン三世」の名称とキャラクターが使用されている態様を甲第46号証乃至甲第52号証に示す。 これら事実によって、前記漫画・アニメーションのタイトル及びキャラクター名である「ルパン三世」は、本件商標が出願された昭和59年当時には、既に請求人等によって商品化の対象となっており、その後も多岐にわたる商品について商品化されているものであることが明らかである。 (3)本件商標と漫画・アニメーションのタイトル及びキャラクター名「ルパン三世」について 本件商標は、前記のとおり「LUPINIII」と「ルパン三世」を上下二段に併記してなる商標であって、これは前記漫画・アニメーションのタイトル及びキャラクター名「ルパン三世」と実質的に同一である。 (4)商標法第4条第1項第15号について 上述したところから明らかなように、本件商標は、その出願前からモンキー・パンチ(加藤一彦氏)作の漫画として、またその映画著作権者である請求人が制作したアニメーションとして、広く知られ親しまれているタイトル及びキャラクター名「ルパン三世」を表したものであって、これは請求人等によって多岐にわたる商品について商品化されているものに他ならない。 したがって、前記著作権者・商品化権者等と何等関係を有しない被請求人が、本件商標をその指定商品について使用するときには、恰も前記権利者たる請求人から商品化のライセンスを受けた商品であるかの如く誤認され、正当なライセンシーの商品との間に混同を生ずることが必至である。 よって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第7号について 商標法第4条第1項第7号は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができない」旨を規定している。 その趣旨は、商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく、ある出願人が特定の商標を登録し使用することが商業倫理に反する場合も含まれると解される。 一般に著作物、特に漫画・映画・アニメーション等に登場するキャラクターが広く親しまれるようになると、これを商品に表示することによって消費者の購買意欲を強く喚起し販売実績が飛躍的に向上する場合が多いことから、商品化権者に相当額の使用料を支払って使用許諾を受け、その対象となるキャラクターを商品の販売促進のため利用することが頻繁に行われている。なお映画やアニメーションの制作には膨大な費用がかかり、その収支は前記商品化による使用料収入が見込まれることが決して少なくないのが実状である。 したがって広く親しまれたアニメのキャラクター名等を、何らの権原を有しないものが、商標として登録し使用することは、正当権利者の商品化事業を阻害し、商道徳に反する行為である。 第3 被請求人の答弁 被請求人はなんら答弁していない。 第4 当審の判断 請求人の提出した甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)モンキーパンチ(加藤一彦氏)作の漫画「ルパン三世」は、株式会社双葉社発行の「週刊漫画アクション」に連載(昭和42年8月10日号、同7月27日発売から)され、同社による同漫画の単行本「漫画アクションコミックス」(昭和44年1月1日初版発行)も発行された(甲第1号証)。 (2)テレビ用アニメーション「ルパン三世」は、昭和46年10月から同47年3月にかけて23回にわたり読売テレビ系(日本テレビ系)で放送された。 また、「新・ルパン三世」が、昭和52年10月から同55年10月にかけて155回にわたり上記テレビ系で放送された。 さらに、昭和59年3月(本件商標の出願日である昭和59年5月25日以前)から同60年12月にかけて「ルパン三世PART3」が上記テレビ系で50回にわたり放送された(甲第13号証乃至甲第15号証)。 (3)劇場用アニメーションについては、「ルパン三世」が昭和53年12月に正月用映画として上映され、続いて昭和54年12月に正月映画「ルパン三世・カリオストロの城」が上映された。さらにその後、「ルパン三世・バビロンの黄金伝説」が昭和60年7月に、「ルパン三世・風魔一族の陰謀」が昭和62年12月に、それぞれ東宝系で上映された(甲第14号証及び甲第16号証)。 (4)さらに、前記テレビ用アニメーションや劇場用アニメーションは、ビデオ化されてビデオカセットとして昭和58年以降に販売された(甲第19号証)。 以上の事実を総合すると、「ルパン三世」の語は、モンキーパンチ(加藤一彦氏)の作による漫画のタイトル名・キャラクター名であり、上記「週刊漫画アクション」における同漫画の連載及び単行本の発行、同漫画の上記日本テレビ系での放映、同漫画の劇場アニメーションとしての映画の上映等により、漫画のタイトル名あるいは同漫画に登場するキャラクター名として、本件商標出願前には既に需要者、取引者の間に広く認識されていたものと認められる。 また、漫画に登場するキャラクターの名称が本件商標の指定商品をはじめ種々の商品に使用されることは一般的に行われているものであるところ、提出された甲第43号証乃至甲第52号証によれば、上記漫画のタイトル名・キャラクター名が現に各種商品に使用されていることが認められる。 そして、本件商標は、上記漫画のタイトル名・キャラクター名として広く認識されている「ルパン三世」と同一若しくは類似のものである。 また、請求人は、前記原作者と昭和43年以降数次に亘り契約を締結し、テレビ用アニメーション映画、劇場用映画、ビデオグラムを独占的に制作する権利を有しているものである(甲第2号証乃至甲第12号証)。 そうとすると、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は広く認識されている上記「ルパン三世」を連想、想起し、請求人又は請求人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
本件商標 |
審理終結日 | 2000-06-08 |
結審通知日 | 2000-06-20 |
審決日 | 2000-07-04 |
出願番号 | 商願昭59-53756 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(117)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 原 隆、板垣 健輔 |
特許庁審判長 |
為谷 博 |
特許庁審判官 |
滝沢 智夫 箕輪 秀人 |
登録日 | 1998-01-23 |
登録番号 | 商標登録第2723925号(T2723925) |
商標の称呼 | ルパンサンセイ、ルパンスリー、ルパン |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 稲葉 良幸 |