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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 040
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 040
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 040
管理番号 1025184 
審判番号 審判1997-16492 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-09-25 
確定日 2000-08-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第3270923号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3270923号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成4年9月25日に登録出願され、第40類「プラスチックの加工、金属の加工」を指定役務として、同9年3月12日に登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第35号証を提出した。
(1)請求人会社は、我が国有数の製薬を主業務とする一流大企業であることは、顕著なる事実である。
そして、請求人は、別掲(2)、(3)、(4)に表示した商標(以下「引用各商標」という。)の商標権者であるところ、これらの引用各商標は、すべての商品の区分において、防護標章の登録及びその存続期間の更新登録もなされていること明らかである。尚、請求人の提出に係る甲第12号証乃至甲第15号証の各記載に徴するも、請求人の所有に係る引用各商標が、請求人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するものとして、取引者及び需要者の間において、古くより広く認識されているものであること明らかである。
(2)本件商標は、「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」の文字よりなるところ、その構成中の「ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」の文字は、業種、業態及び法人格を表示する部分であって、本件商標の自他役務を識別するための最も重要な部分は、商標構成中の、やや特殊な態様をもって顕著に存する「SANKYO」の文字部分にあるといわざるを得ず、本件商標は、簡易、迅速を旨とする取引の実際にあっては、「SANKYO」の文字部分のみを捉えて、単に「サンキョウ」とのみ称呼される場合の決して少なくないことは、取引の経験則に照らして、否定し得ない。
一方、請求人の所有に係る引用各商標は、いずれも「サンキョウ」(三共)の称呼及び観念を生ずるものであること明らかであるばかりでなく、請求人の業務に係る商品を表示するためのものとして、極めて周知、著名なものであるから、本件商標をその指定役務について使用をするときは、その役務が、請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、誤認、混同を生じさせるおそれの充分にある商標である。
(3)更に、請求人の名称は、「三共株式会社」であるところ、「株式会社」は法人の種類を表示する部分であって、自他名称を識別するための主たる重要な部分は、「三共」の文字部分にあり、これが、請求人の名称を表示するための実質的な部分であって、請求人は、「三共」(サンキョウ)とのみ略称されて、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識され、著名なものであることは、顕著なる事実である。
一方、本件商標は、請求人の名称の略称として著名な「サンキョウ」と同一称呼を生ずる文字を含んでいるにも拘わらず、本件商標は、その登録について、請求人の承諾を得ている事実はない。
(4)更にまた、請求人は、食品や医薬品産業に関する工場、事業所等の異物混入対策や微生物汚染等のメンテナンスに関する役務、家庭の生活害虫の防除、植木、植裁の害虫対策、カビの防除等のケア・サービスに関する役務及び畜鶏舎や豚舎等の畜産業における害虫等の防除サービスに関する役務の各種役務を業として行っていることが明らかなところであって、請求人は、多角経営の法人会社である。
(5)してみれば、本件商標は、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されている、引用各商標と称呼において、彼此相紛らわしい類似の商標であるといわなければならないので、これをその指定役務について使用をするときには、その役務と請求人の業務に係る役務との間において、役務の誤認、混同を生ずるおそれのある商標であり、かつ、請求人の名称の著名な略称と同一称呼を生ずる文字を含んでいる商標であるにも拘わらず、その登録について請求人の承諾を得ていないものであるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものである。
(6)請求人の弁駁
イ)請求人は、創業明治32年で、今年100周年を迎えるという歴史を誇っているばかりでなく、「三共」の名称を我が国において、最先に使用したものと自負しており、たとえ、「サンキョウ」の称呼を有する企業が存在しているとしても、「サンキョウ」といえば、先ず請求人を想起するといっても過言ではない。
そして、被請求人の提出に係る上記乙各号証についてみるに、我が国においては、圧倒的に中小企業の数が多いところから、これらに掲載された企業の多くは、ごく狭い特定の一地域において、こぢんまりと営業しているものや、家族だけで切盛りしている実質的な家内工業である可能性も決して否定し得ず、これをもって、出所混同について論議する証左とは、なし得ない。
ロ)請求人の製薬部門が著名であるということは、被請求人も認めているところであるが、請求人は、現代企業の多角経営化の例に漏れず、製薬のみではなく、化学品、化成品、農薬、動物薬、医療補助品を初めとして、化粧品、食品等、多種多様な製品の製造・販売、役務の提供を行っており、単に製薬のみならず、総合的分野における著名性が認められるに至っているものであり、加えて、請求人は、先に提出している会社案内(甲第4号証及び甲第5号証)にも掲載されている通り、請求人の業務に係る商品、化学品の看板商品として、高分子用安定剤「サノール」を製造・販売しており、この商品の用途は、プラスチック製品の劣化防止であるから、本件商標の指定役務「プラスチックの加工」との関連性は極めて大きく、両者の間における混同を生ずるおそれは、決して否定し得ない。
ハ)更に、本件商標の構成は、「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」の文字を横書きしてなるものであり、これを殊更に、「SANKYO」と「ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」とに分離すべき理由も存在せず、また「SANKYO」と略称すべき理由もないと主張しているが、本件商標の構成中「SANKYO」の文字部分は、その他の文字部分より大きく表されているばかりでなく、極めて特殊な態様の書体より成っており、これは、本件商標の構成が余りにも冗長であるため、これを「SANKYO」と略して、取引に資されることを、被請求人が意図しているか、又は、自ら認めている証左に他ならず、したがって、被請求人の上記主張理由は、容認することができない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第30号証を提出した。
(1)被請求人は、請求人が製薬を主業務とする一流大企業であり、引用各商標が請求人の製造・販売する「薬剤」を表示するためのものとして著名であることについて何ら否定するものではない。
しかしながら、引用各商標が商品「薬剤」を表示する商標として著名であるとしても、本件商標の指定役務は「プラスチックの加工、金属の加工」であって、引用各商標の指定商品「薬剤」等とは、全く異なる産業分野及び技術分野に属するものであり、本件商標の指定役務と引用各商標の指定商品との間には、全く関連性が認められないものであるから、本件商標をその指定役務に使用したとしても引用各商標との関係で誤認・混同を生ずるおそれがあるとは到底考えられない。
さらに、引用各商標の防護標章として、多数の防護標章登録が存在することは認められるが、このような防護標章登録はあくまでも引用各商標の構成・態様自体に基づくものにすぎず、これをもって本件商標「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」との関係で誤認・混同を生ずるおそれがあるものとする理由とはならない。
(2)本件商標の構成は、「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」の文字を横書きしてなるものであり、これを殊更に、「SANKYO」と「ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」とに分離すべき理由も存在せず、また「SANKYO」と略称すべき理由もない。即ち、日本会社録「第19版」(乙第6号証)及び日経会社情報「1996秋号」(乙第7号証)並びに会社企業名鑑「昭和63年版」(乙第8号証)に記載の通り、「サンキョウ」の称呼を冠する企業が多数存在する状況下にあって、商品及び役務の出所を表示する取引の実際においては、「三協」、「三共」、「三京」のみを表示することなく、むしろ「三共○○」、「三協○○」、「三京○○」、「サンキョウ○○」の如く、称呼し認識するのが一般的である。
被請求人においても本件商標を「SANKYO」(サンキョウ)と略称することなく、「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」と表示して英文商号(乙第11号証)として使用しているのが実状である。
また、被請求人は、その略称として「三協アルミ」及び「三協アルミニウム工業」が一般に認識されているところであり、本件商標はその構成上一体不可分の被請求人の英文商号を表したものと認識されると判断するのが妥当であって、取引の場においても決して「SANKYO」と略称されることはあり得ないものであるから、引用各商標とは称呼、外観及び観念のいずれの点においても類似するものではない。
(3)商標法第4条第1項第8号の規定は「人格権保護の規定」と解されるのが一般的であり、特定人との同一性が必要要件となる。
しかしながら、本件商標は「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」の英文字からなるのに対して、引用各商標は「三共」と「SANKYO」の文字を主要部とするものであるから、同一性があるものとはいえない。
したがって、被請求人は本件商標「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」に対して、請求人の承諾を得る必要はない。
(4)以上、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号の各規定に該当しないこと明らかである。

4 当審の判断
請求人は、我が国において製薬会社として著名であること、また、引用各商標は、請求人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するものとして、取引者・需要者の間において広く認識されていることは認め得るものである。
他方、本件商標は、「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」の欧文字を横書きしてなり、一部の文字をレタリング化してなるものであるとしても、全体として、まとまりよく一体的に書してなるものであり、これよりは、被請求人の商号「三協アルミニウム工業株式会社」を英文で表示したものと容易に看取させるものである。
また、被請求人の提出した乙第6号証乃至第8号証によれば、「サンキョウ」の称呼を生ずる「三協」「三共」「三京」等の漢字を商号の一部に採択使用している会社が多数存在することが認められ、商品及び役務の出所を表示する取引の実際においては「三協」「三共」「三京」のみを表示することなく、むしろ「三協(サンキョウ)○○」「三共(サンキョウ)○○」「三京(サンキョウ)○○」の如く表示し、一連に称呼し、識別すべく使用するのが一般的であり、かつ、それらを英文で表示する場合においても、前述のとおり、「SANKYO」の文字だけではいずれの会社を示すのか判然と区別し得ない状況にあることから、「SANKYO」の文字に続く他の構成文字を含め「SANKYO○○○」の如く表示・略称され、取引に資されているのが実情である。
してみれば、本件商標が「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY」又は「SANKYO ALUMINIUM」とは略称されても「SANKYO」とのみ略称されるとはいい難く、他に構成中の「SANKYO」の文字部分が独立して認識されるとみるべき特段の事情も見出し得ないところである。
そうとすれば、請求人の名称「三共株式会社」が製薬業界において「三共」と略称され、著名であったとしても、前記構成よりなる本件商標は、請求人の著名な略称を含む商標と認識されることはなく、また、これをその指定役務について使用しても、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)


(2)


(3)


(4)

審理終結日 2000-05-18 
結審通知日 2000-05-30 
審決日 2000-06-21 
出願番号 商願平4-222857 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (040)
T 1 11・ 25- Y (040)
T 1 11・ 23- Y (040)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 薫原 隆 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 高野 義三
小川 敏
登録日 1997-03-12 
登録番号 商標登録第3270923号(T3270923) 
商標の称呼 サンキョーアルミニウムインダストリーカンパニーリミテッド、サンキョーアルミニウムインダストリー、サンキョーアルミニウム、サンキョー 
代理人 浅村 肇 
代理人 高梨 範夫 
代理人 早川 政名 
代理人 浅村 皓 
代理人 長南 満輝男 
代理人 宇佐美 利二 
代理人 細井 貞行 

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