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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z19
管理番号 1021430 
審判番号 審判1999-1937 
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-08 
確定日 2000-08-09 
事件の表示 平成 9年商標登録願第102017号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、その構成を別掲に示すものとし、第19類「シール材」(平成10年7月28日付の「物件提出書」によれば「コンクリート製品の接合部に使用するシール材」と認められる。)を指定商品として、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、指定商品自体の形状と認識されるものであるから、これをその指定商品に使用したときは、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有しているときには、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ「普通に用いられる方法で表示する」ものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
さらに、意匠法等により保護されている形状について、その理由をもって、当該形状が自他商品識別標識としての機能を果たしているということはできないばかりか、意匠権等に重ねて又は、その権利の消滅後に商標登録することにより保護することは知的財産権制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることになるものである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」30頁においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、指定商品との関係において、「コンクリート製品の受口に使用するシール材」の形状の一形態を表したものとみられるものであって、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
(3)請求人は、本願商標の「所定長さを有する断面等脚台形状の本体部」は、ありふれた立体的形状であるとしても、粘着に全く寄与しない「ネット状部材」が断面等脚台形状の本体部の表面に貼り付けられている立体形状に標章構成上の特徴を有するので、本願商標の要部は、この「ネット状部材」の部分に存する旨主張して、意匠公報、公開特許公報、特許証(第1号証ないし第7号証)を提出している。
しかしながら、意匠法は、「物品の形状………であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」を保護し、また、特許法は、「技術的思想の創作………」を保護する法律であるから、自他商品の識別標識としての商標を保護する商標法との関係においては、保護対象・要件等を異にするものであって、「美感」あるいは「技術的思想の創作」等として保護されていることをもって、本願商標が自他商品識別標識としての機能を具備しているとの証左とすることはできないものである。
ちなみに、本願商標と同一形状のシール材を実施例に含むとする、第4号証の特許公報には「発明の効果」として「以上述べたように、この発明によれば、ジョイントシール材の粘着層の網は、網がもつ可撓性によって前記ジョイントシール材の屈曲を妨げることなく屈曲変形されるため、………隣接するコンクリート製品を容易に離反して位置合わせ調整することができ、その作業性の向上を図ることができる。」(第4号証5頁左列)との記載があることからも、本願商標構成中の「ネット状部材」の部分は、本願指定商品の機能を果たすために採択された形状というべきであって、自他商品識別標識としての機能を果たすために採択されたものとはいい得ず、前記の請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、第8号証ないし第14号証をもって、本願商標構成中の「本体部の一面にネット状部材が貼り付けられている形状」は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とは到底認め難い旨主張している。
しかしながら、これら各号証におけるシール材の形状と本願商標の形状とが異なり、また、本願商標の形状に特徴が認められるとしても、それは、上記したように、専ら商品の美感や機能を発揮させるために採択された形状というべきであって、その機能上、同種の形状が採択されている他のシール材と同様に、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきである。
さらに、請求人は、商標法29条を挙げて種々述べているが、同条は商標権と他人の特許権等との調整規定であって、この条文の制定主旨により、本願商標の自他商品識別標識としての機能の有無の判断が左右されるものではない。
なお、商品又は商品の包装の形状については、本来的又は直接的には他の知的財産権制度で保護されるものであることなど、平面商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度の導入に当たっては、商標法第4条第1項第18号(商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状)等が設けられ、前掲工業所有権審議会答申でも、「…、指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること」としている(前掲答申P31参照)。
そして、商品等の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときに、識別力を認めて登録することは前記(1)で述べたとおりであるが、請求人はその証左を示してはいない。

4 結論
以上のとおり、本願商標は指定商品の形状を普通に用いられる方法で表したものであるとし、商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定の認定・判断は妥当なものであって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
本願商標

審理終結日 2000-05-30 
結審通知日 2000-06-09 
審決日 2000-06-20 
出願番号 商願平9-102017 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z19)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 栄二 
特許庁審判長 工藤 莞司
特許庁審判官 宮川 久成
久保田 正文
代理人 内藤 哲寛 

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