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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 120
管理番号 1021068 
審判番号 審判1998-30954 
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1998-09-18 
確定日 2000-06-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第2416224号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成11年 5月 7日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11(行ケ)年第198号平成11 年12月21日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2416224号商標(以下「本件商標」という。)は、「バークレイ」の片仮名文字を横書きしてなり、第20類「家具、畳類、建具、屋内装置品(書画および彫刻を除く)屋外装置品(他の類に属するものを除く)記念カップ類、葬祭用具」を指定商品として、平成1年7月25日登録出願、同4年5月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、その指定商品中『家具,建具,つい立て,びょうぶ,ベンチ』について、その登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1.本件商標は、継続して3年以上日本国において商標権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品中「家具,建具,つい立て,びょうぶ,ベンチ」に登録商標を使用していない。
2.答弁に対する弁駁
(1)甲第1号証(エクステリア総合カタログ’98)について
被請求人は、「Barkley」(甲第1号証)が、本件商標「バークレイ」の使用に該当するものである旨主張する。
しかしながら、特許庁編「平成8年改正商標法律の概要」(乙第1号証、42頁)によれば、「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標」は、例えば、「ライオン」の同一称呼と「ライオン、獅子」の同一観念である「らいおん」と「lion」のように、両者が同一の称呼と同一観念とを生じるものであることが、一般需要者において知られている場合に該当するものである。
そして、本件商標にあっては、「バークレイ」の称呼が生じるのに対し、甲第2号証(甲第1号証の誤記と思われる。)で使用している「Barkley」にあっては、乙第2号証からも明白なように、通常「バークリー」と称呼されるものであり、両者は、称呼上において同一ではない。
また、百歩譲って、使用に係る「Barkley」から「バークレイ」の称呼が生じるとするならば、「Berkeley」や「Berkley」にあっても「バークレイ」の称呼が生じるはずである。
そうであるならば、「バークレイ」には、乙第2号証に示すように、「バークレイ」と言う男子の名前「Barkley」の他に、米国のカリフォルニア州の都市名「Berkeley」、若しくは米国のミズーリー州の都市名「Berkeley」、更には米国のミシガン州の都市名「Berkley」の別意の観念が含まれていること明白であり、この場合、「Barkley」の使用が本件商標の使用に当たらないといわざるを得ない。(乙第1号証、44頁参照)
以上のことから、甲第1号証における「Barkley」の使用は、本件商標の使用に該当するものではない。
(2)甲第2号証(日本語の正しい表記と用語の辞典)について
ア.被請求人は、甲第2号証により、外来語の片仮名表記において長音を「イ」をもって表示することが一般的に行われるから、甲第1号証で使用している「バークレー」が、本件商標の使用に該当するものである旨主張している。
しかしながら、甲第2号証においては、「外来語の片仮名表記において長音が『イ』をもって表示されることが一般的である」旨の説明は全くされていない。
即ち、甲第2号証の344頁第5行目において、「長音符号の代わりに母音字を添えて書く慣用もある。」と断っていることからも明らかなように、「長音が『イ』をもって表示される場合もある」と述べているだけであり、被請求人の上記主張は、甲第2号証を自己の都合のよいように勝手に解釈したものであるといわざるを得ないし、ましてや「レー」と「レイ」とは、内閣告示によって認められた同一の表記であるとの主張は、言語道断である。
イ.被請求人は、甲第2号証の語例集に「レー」が「レイ」によっても表示されるものとして、「グレー/グレイ」「スプレー/スプレイ」「ディスプレー/ディスプレイ」「トレイ/トレー」「フェアプレー/フェアプレイ」「プレイ/プレー」が示されていることを理由として、「レー」が「レイ」をもって表示されることが社会的に広く一般に行われていると主張しているが、上記語例集は、「日常よく用いられる外来語のうち、書き方に迷うような語の書き方を掲げた」(352頁1行目、2行目)ものにすぎず、これをもって「レー」が「レイ」によっても表示されることが一般的であることが証明されるはずがないし、さらに、上記「グレー/グレイ」「スプレー/スプレイ」などは、書き方に迷うような特殊な態様であるにほかならない。
また、「レー」が「レイ」と表示することが必ずしも一般的でないことは、例えば、自動車の「カーレース」が「カーレイス」と、「ベレー帽」が「ベレイ帽」と、音楽の「メドレー」が「メドレイ」と、画家の「ミレー」が「ミレイ」と、インド料理の「カレー」が「カレイ」と、国名の「マレーシア」が「マレイシア」と、スポーツの「バレー」が「バレイ」と表示されることはないことからも明らかである。
(3)しかれば、甲第1号証に示す「バークレー」と、本件商標とは、社会通念上の同一性の範囲外のものであるといわざるを得ず、甲第1号証において「バークレー」が使用されているとしても、これが本件商標の使用に該当するものではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1.請求の利益の不存在
本件審判請求には、請求人が本件審判請求を行なう利益の記載がないから、請求人には審判請求の利益がない。
2.本件商標の使用事実
(1)平成10年3月1日、被請求人発行に係る「エクステリア総合カタログ’98」(甲第1号証)は、被請求人製品の総合カタログであるところ、「ガーデンファニチャー」(1122頁)のうち、第20類の商品である「角テーブル、ベンチ、デッキベンチ、デッキプランタ」に「Barkley」、「バークレー」を使用している(1124頁)。
甲第1号証の発行日は、本件審判請求の6ヶ月以上前である平成10年3月1日(表紙及び奥付参照)であるから、被請求人が、本件審判請求の登録前3年以内にこれら商標の使用をしていたことは明らかである。
(2)登録商標との同一性
甲第1号証の商標は「Barkley」、「バークレー」であるところ、これらは本件商標の使用に該当するものである。
ア.商標法第50条第1項は、登録商標の使用について、当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含むものとする。
その例として、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標を示すが、本件は先ずこれに該当する。
即ち、「バークレイ」のローマ字表示が「Barkley」であるからである。
イ.甲第1号証の商標「バークレー」と本件商標とは、外来語の片仮名表記において長音を「イ」をもって表示することが一般的に行なわれるから、社会通念上これらは同一である。
講談社校閲局編集「日本語の正しい表記と用語の辞典」(甲第2号証)は、「外来語の書き表し方」(325頁以下)として、国語審議会答申に基づく平成3年2月の内閣告示を掲載している。
(a) 「撥音、促音、長音その他に関するもの」の3において、「長音は、原則として長音符合『一』を用いて書く」とするが、「注2」において「『エー』・・と書かず、『エイ』・・と書くような慣用のある場合は、それによる」として、「エイト」、「レイアウト」等の例をあげる。
(b) 【補注】において「原音における『エイ』・・は、それを含む語が外来語として取り入れられるとき長音のように発音されやすく、表記も『エー』・・と書く例が数多くみられます。そのため、昭和29年の国語審議会の報告には、『原音における「エイ」・・は長音とみなす』という記述があったほどです」としている。
この場合、「エー」と「エイ」とを同一の表記であるとするが、その「例」の欄に、これと母音を共通にする各用語を例示することからみれば、「レー」と「レイ」とは、内閣告示によって認められた同一の表記である。
(c) さらに、甲第2号証は、「外来語 語例集」(351頁以下)として、【凡例】の1(352頁)に「語形や表記にゆれのある語については、まず雑誌の一般記事などでの普通の書き方を揚げ、そのあとに/で区切って、その他の書き方の例を掲げてあります。」として、並記された双方の表記が、社会的に行なわれている事実を示している。
この語例集において、特に末尾を「レー」と「レイ」として並記するものとして、例えば「グレー/グレイ」(364頁)、「スプレー/スプレイ」(367頁)、「ディスプレー/ディスレイ」(369頁)、「トレイ/トレー」(370頁)、「フェアプレー/フェアプレイ」(375頁)、「プレイ/プレー」(376頁)等の各例が示されており、してみれば末尾における「レー」と「レイ」とは、同一の外来語の表記として社会的に広く一般に行なわれている普通の表記形態である。
以上のとおり、使用に係る「バークレー」は、本件商標と社会通念上同一性を有する商標である。
(3)したがって、甲第1号証の「Barkley」、「バークレー」は、本件商標の使用であり、その使用は本件審判請求の登録前3年以内のものであるから、本件商標は商標法第50条第1項に該当しない。

第4 当審の判断
1.利害関係について
平成8年6月12日法律第68号をもって改正された商標法第50第1項は、その施行日を平成9年4月1日とするものである。したがって、平成9年4月1日以前に請求された同条の審判の請求人適格については、「利害関係人」に限られるとされていたが、上記改正により「何人」にも認めることとなった。
してみると、本件審判を請求するにつき、請求人は利害関係を明らかにしなくても、これをなすことができるものであるから、本件審判を請求するにつき、請求人は利害関係を有しないとする被請求人の主張は失当といわざるを得ない。
2.本案に入って審理する。
(1)甲第1号証(平成10年3月1日、被請求人発行「エクステリア総合カタログ’98」)1124頁によれば、被請求人は、本件審判の取消請求に係る指定商品に含まれる「テーブル、ベンチ」について、「Barkley」及び「バークレー」の商標を本件審判請求の登録前3年以内に使用していたことが認められる。
(2)甲第1号証に表示された使用に係る商標「Barkley」及び「バークレー」が本件商標の使用に当たるか否かについて
ア.甲第1号証(1124頁)には、「Barkley」の文字が、中央左側に比較的大きく目立つ態様で表され、その右側に小さく「バークレー・シリーズ」の文字が書されている。また、セット価格表及び商品写真の説明には「バークレー角テーブル」、「バークレーベンチ」、「バークレー3点セット」などの表示が記載されているものであるから、「Barkley」及び「バークレー・シリーズ」の表記は、その大きさの違い等を考慮すると、別々の商標として使用されていると認めるのが相当である。
したがって、被請求人は、本件審判請求の予告登録の日の前3年以内である平成10年3月1日ころ、日本国内において、「テーブル、ベンチ及びデッキプランタ」について、「Barkley」及び「バークレー」をそれぞれ商標として使用していたことが認められる。
イ.被請求人の使用商標「バークレー」と本件商標「バークレイ」との間には、称呼上、「バークレー」が3音であるのに対し、「バークレイ」が4音であり、末尾を「レー」と長音とするか、「レイ」と発音するかの相違があり、外観上も、末尾を「レー」と表記するか、「レイ」と表記するかの相違があることが認められるが、特に外来語については、原音が「エイ」と発音すべきものは「エー」と長音に発音されやすく、表記上も「エー」と表記される例が数多くあることが認められる。
観念については、「Barkley」を日本語表記上「バークレー」と表記することも多く行われていることが認められる。
そうすると、「バークレイ」と表記するか、「バークレー」と表記するかによって、一方が地名であり、他方が単なる造語であり何らの観念も生じないものとなり、両者の間に観念の相違が生じるものとなる、とすべきではない。
ウ.以上によれば、被請求人の使用商標「バークレー」は、本件商標「バークレイ」と社会通念上同一の商標であると認められる。
(3)以上のとおり、被請求人は、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国において、本件商標を請求に係る商品について使用していたものといわざるを得ない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-04-13 
結審通知日 1999-04-27 
審決日 1999-05-07 
出願番号 商願平1-85151 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (120)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 慶子 
特許庁審判長 大橋 良三
特許庁審判官 茂木 静代
大渕 敏雄
平松 和雄
小林 薫
登録日 1992-05-29 
登録番号 商標登録第2416224号(T2416224) 
商標の称呼 バークレイ 
代理人 杉本 勝徳 
代理人 田村 公総 

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