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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025 |
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管理番号 | 1015283 |
審判番号 | 審判1998-35005 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2000-11-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1997-12-25 |
確定日 | 1999-11-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3308619号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第3308619号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第3308619号商標(以下「本件商標」という。)は、「CATHERINE MALANTRINO」の欧文字を横書きしてなり、平成6年10月6日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同9年5月23日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第33号証(枝番を含む。)を提出している。 (1) 請求人は、商品の区分第25類で「CATHERINE MALANDRINO」なる商標(以下「出願商標」という。)の登録出願(商願平7-46549号)をしたところ、本件商標を引用して拒絶理由通知が発せられた。 したがって、本件審判請求に対し、請求人は利害関係をを有する。 (2) 本件商標と出願商標とは、共に構成文字が19文字であって、各文字の配列も末尾より5番目の文字1文字を除けば、他は全て同一文字である。しかも相違する1文字は、出願商標が「D」本件商標は「T」であり、両文字の形状は著しく異なる態様の文字ではなく、離隔観察された場合は、誰しも両商標は同一商標として認識されるものである。更に、出願商標、本件商標共に「CATHERINE」とその後の文字が共に間隙をもって表示されている。 したがって、両商標は発音上も殆ど同一に近いもので、両商標が指定商品の取引者・需要者に混同されることは必至である。 (3) 出願商標は、出願人(請求人)がフランスのデザイナーであり、自己の氏名「CATHERINE MALANDRINO」を商標として採択したものであるところ、本件商標は、請求人の氏名と酷似した商標であり、本件商標から請求人の氏名として認識されることは当然でありながら、請求人の承諾を得ず登録に至っているものである。 (4) 請求人のデザイナーとしての経歴及び世界的に活動している著名なデザイナーである現状を以下に述べる。 ▲1▼ 20歳でパリのESMODスクールファッションデザイン科を首席で卒業。 ▲2▼ 卒業後、日本でも著名なブランドDOROTHEEBISにてJACQUELINE JACOBSONのアシスタントデザイナーとして4年間勤務。 ▲3▼ パリのLOUIS FERAUDのオートクチュールデザイナーとして2年間勤務。 ▲4▼ 以後、フリーランサーとして、日本人にも多く知られている、REMISCENCEの宝石、STEPHANE KELIAN並びにMICHEL PERRYの靴、及びGATTINONIの衣服のデザイナーとして活躍。 ▲5▼ 1992年には、ET VOUSのファッションディレクターに指名され、以後日本とアメリカの市場の責任者となり、全てのコレクション、ライセンスのためにデザインをし、自己の個性を生かした製品の新しいイメージは、商業的に成功し、この頃よりマスコミに脚光を浴びるようになった。 ▲6▼ 1995年に、アメリカのTHE LIMITED GROUP社と該社のコレクションのデザインについて契約。2年後には、該社の全ての部署のデザイン統括者になる。 ▲7▼ 同時期、1995年に、出願人の氏名「CATHERINE MALANDRINO」がレーベルとして誕生、その製品は、パリの一流店舗並びに日本の各種店舗で販売されている。 (5) 上記のように、請求人がフランスの著名なデザイナーであることを証する資料として、日本の女性月刊誌「ELLE/エル・ジャポン8.5」(株式会社アシェットジャパン1994年8月5日発行)の記事の中で、著名な内外国のデザイナーが、パリで行きつけの店として利用している店舗が紹介されており、その中で、請求人も、自身の写真と共に紹介されている(甲第1号証)。 更に、請求人がデザイナーとして、また自ら制作した婦人服等の商品が種々の雑誌に紹介された記事を、1冊のスクラップブックに纏めており、そのスクラップブックの抜粋頁の写を、甲第2号証として提出する。 (6) 商標法第4条第1項第8号の規定が、人格権の保護を目的としたものであり、他人の氏名若しくは名称に限らず、著名な雅号、芸名、筆名若しくはこれらの著名な略称を含むものとされており、これらの名称が本号に含まれていることは、これらのものも、氏名と同様に特定人の同一性を認識させる機能を有するからであり、本件のように、共に普通の活字体19文字で構成された両商標の、末尾から5文字目の文字が「D」と「T」に異なるのみで、しかも請求人が現在フランスの著名なデザイナーであることから、このような徴差では、誰しも本件商標から請求人の氏名を感じることは必至である。また、請求人は、本件商標の出願日より前の、1992年には、「ET VOUS」のファッションディレクターに指名されており、更に「ET VOUS」の日本とアメリカの市場の責任者となっていた。したがって、自国以外でも広く活躍し、マスコミにも再三登場していたから、本件商標の出願時には、出願商標がフランスの著名な女性デザイナーの氏名として、少なくとも服飾界並びに本件商標の指定商品に係る一般取引者及び需要者には、充分に認識されていたことは容易に推測されるものである。 (7) 商標法第4条第1項第8号の規定には、他人の氏名、略称等に類似する商標は含まれていないが、当該条項の趣旨が人格権の保護にあり、他人の著名な雅号、芸名若しくはこれらの著名な略称を含む商標、更にはこれらの略称を一部に含んだ商標までが当人の同一性を認識させるものとして保護の対象とされている。 したがって、本件のように、本件商標が自国フランスは勿論、日本を含む外国においても本件商標の出願前より著名なデザイナーである請求人の氏名と酷似している以上、当然本件商標をして請求人を認識させるものであり、上記著名な他人の略称等と同様、当然請求人の人格権の保護がなされるべきである。 以上の理由によって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、元来登録許可されない商標である。 (8) 更に、出願商標は、自国フランスで洋服、コート、セーター等被服類について使用されており、当該出願商標を付したこれらの商品が、請求人の販売に係る商品として商品の取引者・需要者間に既に周知・著名な商標である。 また、日本でもこの出願商標を付した上記被服類が既に販売されており、販売実績を上げている状況にある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号にも該当するものである。 3 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁していない。 4 当審の判断 請求人の提出に係る甲第1号証及び甲第2号証によれば、フランス、パリ在の女性デザイナーである「CATHERINE MARANDRINO」(カトリーヌ・マランドリノ)が、本件商標の登録出願前より、外国雑誌等において紹介され、我が国においても紹介されていることが認められる。また、甲第6号証の1及び2によれば、「CATHERINE MARANDRINO」ブランドの衣服が1994年及び1995年に我が国に輸入・販売されていることが認められる。 してみると、「CATHERINE MARANDRINO」の文字は、本件商標の出願時には既に、上記デザイナーの氏名を表すものとして本件商標の指定商品を取り扱う業界において知られていたものといわなければならない。 しかして、本件商標は、「CATHERINE MARANTRINO」の文字からなるものであり、上記デザイナーの氏名である「CATHERINE MARANDRINO」とは、決して短い構成とはいえない19文字中の1字が「T」と「D」において異なるのみで、しかも、相違する両文字は共に後半部の綴り中の中央に位置するものであるため、本件商標と上記デザイナーの氏名の全体の綴りは、一見して直ちに区別が付け難い程に酷似したものである。両者から生ずると認められる「カトリーヌマラントリノ」と「カトリーヌマランドリノ」の称呼にしても、比較的長い構成中の中間において清音「ト」と濁音「ド」の差異にすぎない酷似したものである。 かかる事情の下において、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は上記デザイナーの氏名を表したものとしか認識し得ないというのが相当である。そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第8号にいう他人の氏名を含む商標といわなければならず、かつ、上記デザイナーの承諾を得ているものとは認められない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-04-26 |
結審通知日 | 1999-09-07 |
審決日 | 1999-09-21 |
出願番号 | 商願平6-100674 |
審決分類 |
T
1
11・
23-
Z
(025 )
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大川 志道、箕輪 秀人 |
特許庁審判長 |
金子 茂 |
特許庁審判官 |
石田 清 大橋 良三 |
登録日 | 1997-05-23 |
登録番号 | 商標登録第3308619号(T3308619) |
商標の称呼 | 1=カトリ-ヌマラントリ-ノ |
代理人 | 水谷 安男 |
代理人 | 島田 義勝 |
代理人 | 和田 昭 |