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審決分類 審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 025
管理番号 1013236 
審判番号 審判1999-35144 
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-04-08 
確定日 2000-02-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第3239306号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3239306号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおり、やや図案化された「BIRKIN」の欧文字を横書きしてなり、平成6年6月13日に登録出願、第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同8年12月25日に設定登録されたものである。
2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第3127737号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙(2)に表示したとおり、やや図案化された「Birki’s」の欧文字を横書きしてなり、平成4年10月28日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として同8年3月29日に設定登録されたものである。
3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、その指定商品中『履物』についてはこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第12号証を提出している。
(1) まず、請求人「ビルキー シュー ゲーエムベーハー」(Birki Schuh GmbH)から一言するに、請求人は1774年に創設された、ドイツ製健康靴メーカーとして世界的に著名なビルケン シュトツク・オルトペデイー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシユレンクテル・ハフツング(Birkenstock Orthopadie GmbH)において製造する各種「健康靴」部門中、「ビルキー(Birki)」ブランドの製品部門のために、新たに1990年代に設立されたグループ会社である。
引用商標は、1990年頃から健康靴の商品名として使用されているものであり、かつ、その品質の優秀さと相俟って、国際的に当該取引者・需要者間に広く知られているものである。
因みに、引用商標は、健康靴の個別ブランド「Birki」の総称(:複数形)として採択したものである。
日本との該「健康靴」製品の取引は、件外「Birkenstock(ビルケンシュトツク)」製品については1979(昭和54)年頃から、また、引用商標に係る「Birki’s(ビルキス)」製品については1990年頃から、各々現在迄、総代理店「(株)三栄コーポレーション(旧商号「(株)サムコサンエイ」)」(東京都台東区所在)を通じて輸入販売され、今日に至っているものである(甲第5ないし第8号証)。
(2) 本件商標の構成
本件商標は、欧文字を左横書きしてなるものである。その態様は、多少図案化されているが、容易に文字列「BIRKIN」を認識できる。今日の外来語の普及度を考慮するなら、その文字列からは、英語風或いはローマ字風の読みいづれからも「ビルキン」の称呼が取引上自然に生じ得ること明らかである。
なお、本件商標における僅かに図案化された態様は、その程度において特に目新しいものでなく格別特異な外観的特徴を有するものでもない。さらに、その文字構成は特定の語義をもって一般に親しまれている成語でもなく、特別な観念も認められないから造語商標であると考えられる。
したがって、本件商標の特徴、すなわち需要者に最も強く印象を与える構成要素はその称呼「ビルキン」にあること明白である。
(3) 引用商標の構成
引用商標は、欧文字を左横書きしてなるものである。その態様は、多少筆記体化されているが、容易に文字列「Birki’s」を認識できる。今日の外来語の普及程度を考慮するなら、その文字列からは、英語風或いはローマ字風の読みいづれからも「ビルキス」の自然称呼が取引上生じ得ること明らかである。
なお、引用商標における僅かに筆記体化された態様は、その程度において特に目新しいものでなく格別特異な外観的特徴を有するものでもない。さらに、その文字構成には特定の語義をもって一般に親しまれている成語でもなく、特別な観念も認められないので造語商標であると考えられる。
したがって、引用商標の特徴、すなわち需要者に最も強く印象を与える構成要素はその称呼「ビルキス」にあること明白である。
(4) 本件商標と引用商標の類否
上記のとおり、本件商標からは「ビルキン」、引用商標からは「ビルキス」の称呼が取引上生じ得ること明らかである。
そこで、本件商標から生ずる称呼「ビルキン」と引用商標から生ずる称呼「ビルキス」とを対比するに、両称呼は共に4音から成り、語頭音から第3音まで「ビ」「ル」「キ」を共通にし、僅かに両者の比較的聞き取り難い語尾の部分において「ン」「ス」の音に差異を有するにすぎない。
しかも、一般に語尾音は吸収されやすく称呼における識別上重要でないものとされている上、さらに差異音「ン」「ス」は、前者「ン」が前舌面を軟口蓋前部に押しあて又は後舌面を軟口蓋後部に押しあてて、有声の気息を鼻からもらして発する鼻音(歯茎音)であり、また、後者「ス」が呼気が著しくせばめられた調音器官を通るとき摩擦によって生じる無声摩擦音(歯茎音)であり、両音共、他の音にくらべ弱い印象の音を有して成るものである。
それ故、両者はその一連の称呼において聴感著しく近似し、実際の取引が迅速を旨とし、かつ、時と処を異にしてなされることも勘案すれば、卒爾の間彼此を聞き誤り、その出所を混同されるおそれは必至である。
因みに、上記請求人の主張するところを立証する事実としては、本件と同様4音程度の音数から成る商標同志を対比した事案であって、これ等1音の相違であっても商標全体として相互に類似と判断された審決例(甲第9ないし第12号証)を参酌すれば容易に明らかなものと思料する。
(5) 以上の理由により、本件商標はその出願当時既に「健康靴」として使用されている引用商標と称呼上類似し、また、両者の指定商品も一部「履物」において抵触すること明白であり、かつ本件商標が登録されそれを付した前記商品が市場に現出する場合を想定するときは、取引者ないし需要者にその商品が恰も請求人の業務に係る商品であるかのような混同を生じさせるおそれが多分に存するといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、本件商標の登録中「履物」はこれを無効にすべきものである。
3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。
(1) 商標(標章)の類否について
▲1▼ 外観類似の点
本件商標は、「BIRKIN」の文字を太く横書すると共に、文字を全体にわたり上下の中央で分割するように横方向に延びる所謂白抜きのラインを設け、更に、末尾のNに前記横方向のラインから分岐して尻上がりに傾斜する2本のラインを表したものであり、顕著に図案化されている。
これに対して、引用商標は、「Birki’s」の文字を細く筆記体で横書して成るものである。
そこで、両者の外観を対比すると、文字の形態において一目瞭然に彼此区別可能であるばかりか、僅か6〜7文字から成る短い標章のうち、末尾の文字を、本件商標が「N」とするのに対して、引用商標は「’s」とする相違があり、明らかに非類似である。
▲2▼ 観念類似の点
本件商標「BIRKIN」と、引用商標「Birk’s」は、何れも造語商標であるところ、この点は、請求人において認めるとおりである。
そうすると、両者は、何れも特定の観念を有せず、それぞれが独自のセカンダリーミーニングを化体するものであるから、相互に観念類似はあり得ない。
▲3▼ 称呼類似の点
引用商標は、「ビルキス」の称呼のみを生じ、この点は、請求人において認めるとおりである。
即ち、請求人会社は「Birki Schuh GmbH」(ビルキー シュー ゲーエムベーハー)であり、引用商標は、同社の商品であることを表示するために、「Birki’s(ビルキス)」と表したものである。因みに、甲第6号証にも片仮名で「ビルキ」と記載されている。
これに対して、本件商標は、「バーキン」の称呼のみを生じる。被請求人は、本件商標を主として自動車の商品に使用し、その関連グッズとして被服や靴の商品にも使用している。
この自動車「BIRKN」は、フォーミュラーカーに類似した形態のスポーツカーとして好評を博しており、それは「バーキン」の称呼で広く知られている。
そうすると、本件商標の称呼「バーキン」が引用商標の称呼「ビルキス」と非類似であることは、いうまでもない。
請求人は、本件商標が「ビルキン」の称呼を生じると主張するが、前述のとおり、取引の実際においては、「バーキン」の称呼のみを生じている。
しかしながら、商標類否の判断に際し、実務上は、「BIRKIN」が「ビルキン」の称呼を同時に生じ得ると解することが許されているので、それを前提として被請求人の主張を述べる。
この点に関し、請求人は、審決例を引用しつつ、末尾の「ン」と「ス」の相違は、商標を称呼上非類似とするに足りないと主張するが、何れの審決例も本件には妥当しない。
即ち、これらの審決例は、何れも、二つの商標の末尾に「ス」若しくは「ズ」の有無又は「ン」の有無に相違がある事案であり、本件のように、対比されるべき末尾の音が「ン」か「ス」かの相違を有するような事案ではない。
ところで、本件商標から生じる称呼「ビルキン」と引用商標の称呼「ビルキス」が類似するかどうかを考察するに際しては、請求人が主張するように単純に「ン」と「ス」の音を抽出して相互に比較するのではなく、商標を全体として呼称するときの音節(シラブル)が「ビル/キン(BIR/KIN)」、「ビル/キス(Bir/ki’s)」のように発音され、聴取されることに注意しなければならない。けだし、「ン」又は「ス」の音は、それが1音だけ独立して発音される場合と、その直前の音から一連に発音される場合とでは、発音に相当の相違があるからである。
そこで、考察すると、本件商標から生じるビルキンの称呼における後半部の「キン」は、口腔を開いて発音する「キ」の有声の気息を直ちに瞬時のうちに口腔を閉じ、鼻から漏らす「ン」へと移行せしめる発声方法であるため、「キン」が短い一つの音節を構成し、それ自体がまとまった一つの一体の音節として聴取される。
これに対して、引用商標の「ビルキス」の称呼における後半部の「キス」は、口腔を開いて発声する「キ」の有声の気息を口腔をそのまま開いた状態で、そこから唇を狭めて尖らせることにより摩擦音とする発声方法であるため、「キ」と「ス」の二つの音節を構成し、発声終了後も口腔が開かれたまま比較的冗長な二音として聴取される。
果たしてそうすると、本件商標の「ビルキン」と、引用商標の「ビルキス」は、語気が著しく相違する結果、聴感が明瞭に異なり、聴者が彼此容易に識別できるものであり、明らかに非類似である。
(2) 結語
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは明らかに非類似であり、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
4 当審の判断
本件商標と引用商標との類否について検討するに、両者は別紙(1)及び(2)に表示したとおりの構成からなるものであるから、外観においては判然と区別し得る差異を有するものといえる。
次に、称呼及び観念の観点から両者をみるに、本願商標は、やや図案化されているとしても、「BIRKIN」の文字を表したものと容易に理解し認識し得るものである。そして、該「BIRKIN」の文字は、既成の観念を有する語を表したものともいえないことからすれば、我が国において最も普及している外国語である英語の発音に倣って、例えば、「bird」が「バード」と発音され、「napkin」が「ナプキン」と発音されるように、「バーキン」の称呼を生ずるとみるのが自然である。他方、引用商標も同様に、やや図案化されているとしても、「Birki’s」の文字を表したものと容易に理解し認識し得るものであり、既成の観念を有する語を表したものとは認められないところ、英語読みに「バーキス」の称呼を生ずることを強ち否定し得ないが(この点については当事者が何ら言及していないので、さておく)、請求人は「靴」について使用する商標として「ビルキス」の称呼をもって取引に資されている旨主張し、証拠を提出しているので、取引上「ビルキス」の称呼を生ずるものといえる。
しかして、本件商標から生ずる「バーキン」の称呼と引用商標から生ずる「ビルキス」の称呼とは、それぞれの構成音の相違により明瞭に区別し得るものであって、彼此相紛れるおそれはない。
上記のとおり、本件商標からは「バーキン」の称呼が生ずるとみるのが自然であるが、請求人は本件商標から「ビルキン」の称呼が生ずるとし、被請求人もこれを強く否定していないので、念のために「ビルキン」の称呼と「ビルキス」の称呼とを比較するに、両者は末尾における「ン」と「ス」の音の差異のみではあるが、前者の「ン」は末尾にあって消えゆく弱音であって「ビルキ」の3音が強く印象に残り恰も3音であるかの如く聴取されるのに対し、後者は「ス」の音が明瞭に響き前半と後半に分断され「ビル/キス」の如く発音され聴取されることから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは全体の音感、音調が相違し、容易に聴別することができるものであって、彼此相紛れるおそれはない。
また、本件商標及び引用商標は、上記のとおり、いずれも特定の既成観念を有する語を表したものとは認められないから、観念上両者を比較すべくもない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものということはできないから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきではない。
なお、請求人は当庁における審決例を挙げているが、該審決例は本件とは事案を異にするものであり、上記認定判断に影響を及ぼすものではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記


審理終結日 1999-08-23 
結審通知日 1999-09-07 
審決日 1999-09-21 
出願番号 商願平6-58534 
審決分類 T 1 12・ 26- Y (025 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板垣 健輔岩浅 三彦 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 大橋 良三
石田 清
登録日 1996-12-25 
登録番号 商標登録第3239306号(T3239306) 
商標の称呼 1=バ-キン 2=ビルキン 
代理人 中野 収二 
代理人 加藤 義明 
代理人 清水 三郎 

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