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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 022
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 022
管理番号 1004514 
異議申立番号 異議1998-90306 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-03 
確定日 1999-09-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第4068772号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4068772号商標の登録を取消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4068772号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、平成5年4月21日に登録出願、第22類「綿繊維,麻繊維,絹繊維,毛繊維,織物用化学繊維,編みひも,織物用無機繊維(石綿を除く。),真田ひも,よりひも,のり付けひも,網類(金属製又は石綿製のものを除く。),綱類,衣服綿,布団袋,布製包装用容器」を指定商品として、平成9年10月17日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の概要
本件商標は、これを構成する「感性繊維」の語が、「風合いのよい繊維」「審美性のある繊維」「よい香りのする繊維」等の意味合いを物質の側面からみた用語、すなわち、その指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、商標としての機能を有しないものであり、かつ、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第第16号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由の要旨は、つぎのとおりである。
〈取消理由〉
繊維及び繊維製品を取り扱うこの種業界において、人間の持つ感覚(視覚、触覚、聴覚、嗅覚等)に訴える機能・性能を有する繊維の開発がなされていることはよく知られていることであり、これらの繊維を「感性繊維」、「高感性繊維」、「感性商品」などといわれているのが実情である。
してみれば、本件商標をその指定商品中、人間の持つ感覚に訴える機能・性能を有する繊維、いわゆる感性繊維といわれる繊維、又は、それを用いた製品に使用しても、商品の品質を表示するにとどまるものであって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、また、上記以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第第16号に違反して登録されたものといわなければならない。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由通知に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べた。
(1)取消理由通知書によれば、本件商標「感性繊維」は、商品の品質を表示するにすぎないと判断されているが、本件商標の構成中「感性」の文字は物品の品質、効能を表す語ではなく、需要者・取引者をもってして、本件商標から「感性を有する繊維製品」といった意味合いを認識することはない。「感性」の語義の中に物品の性状、効能を表すような意味はなく、また、「感性」の語は人や動物に対して使用される語であり、物品に対して使用されるものではないから、本件商標「感性繊維」から物品の品質、効能が認識されるはずがない。
(2)一方、「感覚」の語義は、知覚の中で、記憶や推理などの要素を除き感覚器官に直接関係のあるものを言う。
しかるに、取消理由通知によれば、本件商標から「感性を有する繊維製品」の意味合いを容易に認識されるとのことであるが、例えば、「弾性繊維」から「弾性を有する繊維製品」の意味合いを認識するというのであれば容易に理解できるが、前述した「感性」の語義に鑑みても「色彩、肌触り等において感性を有する繊維製品」とはいかなる品質、効能を言うのか理解し難い。「人間の感覚・五感に訴えることのできる繊維」という解釈が、精一杯の解釈ではないか。
(3)異議申立人らは、数多くの繊維関係書物から「感性繊維」なる語を探したのであろうが、これらの資料は逆に、「人間の『感覚』・『五感』に訴える繊維」という意味を強調しているに過ぎない。これは「感覚繊維」であろう。唯一、「感性繊維」なる語を定義付けている「新繊維科学」の中でも、「『感性繊維』という概念は漠然としている。『感性繊維』とは全く新しい概念である。」と述べている。
この記述からも明らかなとおり、「感性繊維」なる語は、全く新しい概念つまり新規な語であるがゆえに、当然、自他商品識別力をもつことは明らかである。
(4)さらに、申立人らの資料・証拠を詳細に見ていくと、「感性繊維」なる語を使用しているのは、上述した定義も含め「宮本武明」の記述・編集書だけであることもわかる。
これらから判断するに、一般需要者はもとより取引者間でも「感性繊維」なる語は、通常使用されるに至っているとの判断は誤りである。なお、本件商標「感性繊維」はもちろんのこと「感性」自体が、商品の品質、効能を表すものでないことは、過去の登録例からも明らかである。
以上のとおり、本件商標は、その指定商品との関係においても、商品の品質、効能、用途などを直接的に表示しているものとはいえない。これは審査基準に照らせば、商標法第3条第1項第3号の基準にあてはまらないものである。
5 当審の判断
本件商標は、別紙に示すとおり「感性繊維」の文字よりなるところ、登録異議申立人「三菱レイヨン株式会社」の提出に係る甲第5号証は「新繊維科学」と題する書籍(平成7年8月18日財団法人通商産業調査会出版部発行)であって、その第2章「繊維材料における次元の概念とその制御」には、IVとして「感性繊維の設計」の項が設けられており、この項は、1「感性繊維の材料設計」、2「感性テキスタイルの設計」に項分けされ、「感性繊維とは」、「感性とは」等について記述がされていることが認められる。そして、「感性繊維とは」の項(165頁)には、「感性繊維と言っても特別な定義があるわけではなく、漠然としている。このことは特別悪いことではなく、現時点ではそれなりのイメージの共有があればよく、個人差が大きくてもかまわないと考えている。」と記載され、また、「新繊維とは『高強度・高弾性率繊維』と『感性繊維』であるといってまず間違いない。前者ははっきりした概念であるが、後者は漠然としている。このことは、『感性繊維』は全く新しい概念であることを意味している。」、「物質と人間を不可分のものとして認識する『感性繊維』は全く新しい科学方法論で取り扱うべき対象となる。」と記載されていることが認められる。
そして、この書籍は「次世代繊維科学の調査研究委員会」が編者となっており、その緒言に「本書は、今後の繊維科学の発展の方向性を鳥瞰することを目指して、平成6年度に通商産業省の提案に基づいて行った『次世代繊維科学の調査研究報告書』を公刊するものである。」と記載され、「執筆者一覧」には、大学の教授、助教授、あるいは企業の研究者、技術者等、計74名の所属、氏名が掲載されている。
以上によると、該甲第5号証「新繊維科学」は、単に個人の執筆に係る書物ではなく、繊維科学分野における70名を越える学識経験者、研究者、技術者等による、我が国における繊維科学の発展の方向性について調査、研究した報告書を掲載したものであり、同報告書において「新繊維」の一として「感性繊維」が取り上げられているのである。
また、同申立人の提出に係る甲第6号証「新繊維材料入門(1995年9月29日日刊工業新聞社発行)に「高感性繊維(103頁)、「感性繊維(125頁)の語が、甲第7号証「おもしろい繊維のはなし」に「感性繊維」(101頁)、甲第8号証「よくわかる新繊維のはなし」1997年6月30日日本実業出版社発行)に「感性素材」の語がそれぞれ使用されていることが認められる。
以上のとおりであって、「感性繊維」の語は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであること取消理由通知書に記載したとおりであるから、登録例を挙げて本件商標は登録されるべきであると主張する商標権者の主張は採用することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別紙

異議決定日 1999-07-12 
出願番号 商願平5-40517 
審決分類 T 1 651・ 272- Z (022 )
T 1 651・ 13- Z (022 )
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩浅 三彦 
特許庁審判長 秋元 正義
特許庁審判官 三浦 芳夫
原 隆
登録日 1997-10-17 
登録番号 商標登録第4068772号(T4068772) 
権利者 古宮 道世
商標の称呼 1=カンセイセンイ 2=カンセイ 
代理人 森本 義弘 
代理人 奥田 稲美 
代理人 中村 政美 

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