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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 113
管理番号 1004414 
審判番号 審判1996-3322 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-04-28 
種別 商標取消の決定 
審判請求日 1996-03-06 
確定日 1999-10-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2640785号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2640785号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2640785号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成4年1月14日に登録出願、第13類「手動利器、手動工具、金具(他の類に属するものを除く)」を指定商品として平成6年3月31日に登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効理由に引用する登録第1810700号商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和53年11月6日に登録出願、第7類「金属製建築用接合金具」を指定商品として、同60年9月27旧こ登録、その後、平成7年11月29日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対し概要次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)本件商標は、その出願前の出願にかかる引用商標と同一である。
つぎに、本件商標の指定商品は、その中に「金具(他の類に属するものを除く)」を含み、同「金具」には、旧商標法施行規則別表により「くぎ類(くぎ、カット、ネール、くさび、びょう、ねじくぎ、ボルト、ナット、ワッシャ、リベット、座がね)」を含むものであるが、引用商標の指定商品は、第7類「金属製建築用接合金具」であり、これには「建築用のくぎ類」を当然に含むものと解され、本件商標と引用商標とは、指定商品が類似する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し商標登録を受けることができない。
(2)引用商標は、請求人の創案に係り、請求人による長年に亘る独占使用により、請求人の証明業務に係る商品「くぎ類(くぎ、カット、ネール、くさび、びょう、ねじくぎ、ボルト、ナット、ワッシャ、リベット、座がね)を含む金属製建築用接合金具」を表示するものとして、本件商標の出願前相当以前から需要者の間に周知著名となっていた商標であるが、本件商標は、この周知著名とされた引用商標と同一であって同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当し商標登録を受けることができない。
すなわち、請求人は、木材住宅技術の研究開発等を目的として設立された公益法人であり(甲第3号証参照)、その事業目的の一環として、試験承認事業を行い、「木造住宅用接合金物の承認・認定にかかる事業を行う」(由第4号証)ものである。しかして、その事業の内容として、請求人は、「軸組工法用金物規格」を昭和53年(1978年)に定め、引用商標の出願を昭和53年11月6日に行うと共に、この規格に合致した工場の接合金物に引用商標の使用を許可し、この許可に基づいて引用商標を表示した接合金物が昭和53年当時から今日に至るまで継続して製造販売されて使用されている。甲第5号証は、引用商標の使用が許可された工場の一覧表であり、この工場出荷の建築用金具には、引用商標が表示されている。甲第7号証中には、その使用の態様の一例が示されている。また、請求人は、専門雑誌等に引用商標の使用を表示して解説し(甲第6号証参照)、請求人の出版するパンフレット類に引用商標の使用を表示して説明し(甲第7号証ないし同第10号証)、昭和53年当時から今日に至るまで継続して頒布し、引用商標を使用することにより、その周知著名化に努めている。上記のパンフレット類の本文中には、引用商標を、「Zマーク表示金物」として説明している。このように、引用商標は請求人の創案に係り、請求人による引用商標の使用は、長年にわたり継続しており、かつその公益性が強く、周知著名である。引用商標を使用する商品の範囲は、いわゆる「接合金物」のみならず「くぎ」や「ボルト・ナット」等の接合金具を当然に含み、この事実は、甲第10号証の第6頁の記載等からも明らかである。上述したように、引用商標は、請求人が創案した独自の図形と文字との一体結合商標であり、しかも上記証明商標としての公益性が強いものである。ところが、本件商標の権利者(被請求人)は、請求人に引用商標の使用許可を昭和57年10月16日に承認申請書(甲第11号証)を提出して申請し、引用商標使用の承認書(甲第12号証の1、2)を受けていたのであり、このような事実からも、本件商標の出願登録は、不正競争の目的で行われたものと推定せざるを得ない。
(3)引用商標の独自性、公益性、及び周知著名性から、本件商標を、その指定商品「金具」のみならず、建築に用いる「手動利器、手動工具」に使用する時には、請求人の業務にかかる商品と混同を生ずるおそれがあり、したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、商標登録を受けることができない。
(4)被請求人は、甲第11号証に示すとおり、請求人に対し、相当以前である昭和57年に引用商標の使用の承認申請書を提出し、請求人は、甲第12号証の1,2に示すとおり使用の承認書を交付した。使用承認の期限は、甲第12号証の2の承認書下列に示すとおり1996年12月31日であった。しかしながら、請求人は、通告書(甲第13号証)の送達後、その表示使用の承認を取消している(甲第14号証)。したがって、被請求人は、引例Zマークの登録の存在を熟知しているものであり、本件商標の出願登録及び使用は、権限無く引用商標の信用にただ乗りし、若しくは該信用を毀損しようとする不正競争の意思若しくは悪意が認められる。なお、被請求人は、「(引用商標)には何ら創作性はなく、不正競争の意思によるものではない。」と述べているが、識別力が問題とされる商標において、創作性と不正競争の意思とは関係がない。被請求人は、引例Zマークの識別力を認めて甲第11号証の承認申請書を提出しているのであり、不正競争の意志は明らかである。
4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、その理由及び請求人の弁駁に対して概要次のように述べている。
(1)本件商標と引用商標とは、確かに同一図柄であるが、指定商品が異なる。本件商標の指定商品では、「他の類に属するものを除く」と明記されており、したがって、第7類に属する金属製建築用接合金具は含まれないことになり、かつ指定商品も類似しない。
なお、商標の図柄が同一である点については、単に「家風」の線中に「Z」の文字を入れたものであり、極めて単純な図柄であって、そこには何ら創作性はなく、不正競争の意思によるものではない。
(2)引用商標は周知著名である、と主張している。確かに、公益法人の事業に使用されるものであることは認め得るが、これをもって周知著名とはいい難い。なぜならば、請求人たる財団法人日本住宅・木材技術センターは、甲第4号証の第2頁に記載されている「(7)設立の目的及び事業」からも明日なように、金属製建築用接合金具について引用商標を使用している訳ではない。すなわち、請求人は、木材関連事業を行う企業に対し、引用標の使用許諾を行っているにすぎない。しかも、使用許諾を受けた企業は特定の企業ではなく、一定の技術を有した製品を製造しうる能力のある企業であり、いわば雑多の企業である。したがって、引用商標が特定の企業の周知著名の商標となり得る筈がない。請求人が提出する甲各号証では、引用商標が周知著名と認めるには不十分である。
(3)本件商標を手動利器や手動工具に使用しても、請求人の使用許諾を受ける企業は、金属製建築用接合金具の製造販売を行っているのであるから、その間に需要者に商品の混同を生じるおそれはない。互いに、商品が流通する分野が異なり、その間に出所の誤認混同を生じることはない。
(4)以上のとおり、請求人の主張には理由がない。請求人は、甲第11号証及び甲第12号証により被請求人の悪意を立証すると述べているが、単に商標の図柄が同一であるのみで悪意を認定するのは、審理不尽のそしりをまぬがれない。使用する商品は、全く流通過程を異にするものであるから、需要者に出所の混同を生起することはない。
5 当審の判断
請求人が提出した各証拠をみる。
甲第2号証の1ないし3(商標公報、商標登録原簿(写)、商標登録出願等書類(写))によれば、引用商標が第7類「金属製建築用接合金具」を指定商品として昭和60年9月27日に登録されたことが認められる。また、甲第3号証(請求人の登記簿謄本)、甲第4号証(請求人平成7年7月発行の「財団法人日本住宅・木材技術センターの概要」)、甲第5号証(請求人1995年4月作成の「Zマーク金物(接合金物)承認有効期限一覧表」)、甲第6号証(「建築技術1979年9月 No337」抜刷)、甲第7号証(請求人平成7年発行パンフレット「HOWTEC」)、甲第8号証(請求人、木造住宅用優良接合金物推進協議会昭和57年8月発行、住宅金融公庫監修パンフレット「木造住宅用金物の使い方Zマーク表示金物」)、甲第9号証(請求人、木造住宅用優良接合金物推進協議会昭和57年4月25日発行、金物審査委員会監修パンフレット「Zマーク表示金物木造住宅用接合金物の使い方」)、甲第10号証(木造住宅用優良接合金物推進協議会昭和57年4月1日発行、請求人監修パンフレット「木造住宅用接合金物(Zマーク表示金物)」)、甲第11号証(被請求人による承認申請書)、甲第12号証の1及び2(被請求人に対する承認書)によれば、請求人は、木造住宅などにおける木材の利用技術を開発し、普及し、関連する産業を活性化することを目的として、昭和52年11月24日に農林水産省と建設省の許可を受け、設立された公益法人であって、木造住宅用接合金物の承認・認定にかかる事業を行っていること、日本合板工業組合連合会会長、(社)日本木材加工技術協会会長、(社)日本木造住宅産業協会会長、日本複合床板工業会会長、(社)東京都木材団体連合会会長、(社)全国木材組合連合会会長、(財)日本建築センター理事長、(社)リビングアメニティ協会会長、(社)日本建築大工技能士会理事、(社)日本左官業組合連合会相談役、(社)建築業協会会長、日本木材輸入協会会長、日本集成材工業共同組合理事長、(株)長谷川萬治商店社長、全国森林組合連合会副会長理事、(社)全国中小建築工事業団体連合会会長、北海道木材協会会長、日本繊維板工業会会長、(社)都市開発協会理事長が請求人の役員の理事になっていること、木造住宅用優良接合金物推進協議会会長、日本特殊合板工業会会長、(社)プレハブ建築協会会長、全国北洋材共同組合連合会理事長、スレート協会会長、日本米材原木共同組合連合会会長、東京南洋製材共同組合副理事長、(社)広島県木材組合連合会会長、全国建設労働組合総連合中央執行委員長、(社)東京中小建築業協会会長、全国天然木化粧合板単板工業共同組合連合会会長、(財)ベターリビング理事長、住宅金融公庫理事、日本フローリング工業会会長、(社)大阪府木材連合会会長、日本木材輸入協会名誉顧問、日本住宅パネル工業共同組合理事長、林野庁森林総合研究所所長、日本林業同友会常務理事、富山県木材共同組合連合会理事長、(社)石膏ボード工業会会長、(財)日本合板検査会理事長、(社)全日本木材市場連盟会長、(社)日本ツーバイフォー建築協会会長、(財)林政総合調査研究所理事長、新潟県木材組合連合会会長、福岡県木材共同組合連合会会長、硝子繊維協会会長、ロックウール工業会理事長、(社)全国木材組合連合会専務理事、(財)建築コスト管理システム研究所理事長、板硝子協会会長、(社)日本林業経営者協会専務理事、(社)全国林業改良普及協会専務理事、(社)日本ハウスビルダー協会理事長、住宅・都市整備公団理事、建設省建築研究所所長、全国納材協会連合会会長、(社)全国住宅供給公社等連合会会長、全国木材共同組合連合会副会長等が請求人の評議員になっていること、日本合板工業組合連合会専務理事、(社)リビングアメニティ協会事務局長、日本集成材工業協同組合専務理事、(社)日本左官業組合連合会相談役、(社)日本木造住宅産業協会専務理事、(社)東京都木材団体連合会事務局長、日本複合床板工業会専務理事、(社)全国中小建築工事業団体連合会専務理事、(社)日本建築大工技能士会専務理事、(株)長谷川萬治商店社長、(社)都市開発協会専務理事、日本繊維板工業会常務理事、(社)建築業協会専務理事、日本木材輸入協会専務理事、北海道木材協会専務理事、全国森林組合連合会専務理事、(社)全国木材組合連合会副会長等が請求人の運営委員になっていること、引用商標は、昭和53年当時から「軸組工法用金物規格」に合致した工場の接合金物(柱脚金物、短ざく金物、ひら金物、かね折り金物、ひねり金物、折曲げ金物、くら金物、筋かいプレート、かど金物、山形プレート、羽子板ボルト、火打金物、かすがい、アンカーボルト)に、「Zマーク表示金物」として、請求人がその使用を許可し、使用されていること、Zマークの使用を許可された工場は、大阪、埼玉、東京、栃木、長野、福岡、愛知、新潟、茨城、広島、兵庫、千葉、群馬等に所在しており、全国的に使用を許可されているといえること、そして、被請求人もZマーク表示の使用が許可されたことがあることが認められる。
以上の事実を総合し勘案すると、引用商標は、商品「接合金物(柱脚金物、短ざく金物、ひら金物、かね折り金物、ひねり金物、折曲げ金物、くら金物、筋かいプレート、かど金物、山形プレート、羽子板ボルト、火打金物、かすがい、アンカーボルト)」について請求人が証明する商標として、遅くとも本件商標の登録出願時には、建築業界において広く認識されるに至っていたものと認められる。
ところで、本件商標と引用商標とは、別紙(1)及び(2)に表示したとおり、いずれも家屋の形状線内に「Z」の文字を表したものであって、構成の軌を一にするものであるから、両商標が時と処とを異にして使用される場合には、その外観の点において互いに紛れ、彼此混同を生じさせるおそれが十分あるものと認められるものである。また、引用商標が使用されている商品「接合金物」と本件商標の指定商品「手動利器、手動工具、金具(他の類に属するものを除く)」とは、共に建築時に用いるものであって、互いに密接な関連性を有するものである。
してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者は、前記したことよりして、該商品が請求人の業務に係る商品であるかの如く混同するものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別紙


審理終結日 1999-07-07 
結審通知日 1999-07-23 
審決日 1999-08-18 
出願番号 商願平4-2376 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (113 )
最終処分 成立  
前審関与審査官 高山 勝治 
特許庁審判長 沖 亘
特許庁審判官 滝沢 智夫
箕輪 秀人
登録日 1994-03-31 
登録番号 商標登録第2640785号(T2640785) 
代理人 西村 教光 
代理人 松尾 憲一郎 

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