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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y0917
管理番号 1377986 
審判番号 取消2019-300678 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-09-09 
確定日 2021-09-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5065709号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5065709号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成18年11月21日に登録出願、「電線・ケーブル保護管用継手,その他の電線・ケーブル保護管用接続部材,電線及びケーブル,加工ガラス(建築用のものを除く。),アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽」を含む第9類、及び「雲母,ガスケット,管継ぎ手(金属製のものを除く。),パッキング,ゴム製又はバルカンファイバー製の座金及びワッシャー,蹄鉄(金属製のものを除く。)」を含む第17類、並びに第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同19年7月27日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年9月30日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年9月30日から令和元年9月29日までの期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第9類「電線・ケーブル保護管用継手,その他の電線・ケーブル保護管用接続部材,電線及びケーブル,加工ガラス(建築用のものを除く。),アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽」及び第17類「雲母,ガスケット,管継ぎ手(金属製のものを除く。),パッキング,ゴム製又はバルカンファイバー製の座金及びワッシャー,蹄鉄(金属製のものを除く。)」(以下「請求に係る商品」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、請求に係る商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)第1弁駁書(令和2年2月7日付け)
被請求人は、被請求人の使用権者が本件商標を要証期間に、日本国内において、請求に係る商品中、「電線・ケーブル保護管用接続部材」(以下「本件商品」という場合がある。)について使用していたことは明白であると主張し、乙1ないし乙10を提出しているが、証拠のいずれもが、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者又は通常使用権者による請求に係る商品についての本件商標の使用を裏付けるものではない。
ア 要証期間における本件商標の使用について
被請求人は、被請求人の通常使用権者である古河電工パワーシステムズ株式会社(以下「古河電工パワーシステムズ」という。)が、本件商標を本件商品について使用していることを示す書証として、乙7及び乙8を提出しているが、乙7は2014年2月14日、乙8は2016年5月に制作されたものである。
したがって、これらの証拠をもって、要証期間に本件商標を使用していたことを立証するものではない。
なお、乙8にあっては、本件商標すら表示されていない。
イ 使用している商品について
被請求人は、古河電工パワーシステムズが販売する「絶縁テープ」が「絶縁電線カバー、クランプカバーの取付部の防水、ズレ防止」といった「接続部材」としての機能を有しているため、第9類の「電線・ケーブル保護管用接続部材」について使用をしていると主張する(乙9及び乙10)が、当該機能がいかにして「接続部材」と結びつくか不明である。
また、「絶縁テープ」であっても、素材等によっては防水やズレを防止するための機能を有していることは容易に認識されるところであり、「絶縁テープ」は一般的に粘着性を有し、接着して電気を絶縁することを目的として使用されるものである。そのため、古河電工パワーシステムズがケーブルやケーブルの接続管を接着するための一つとして販売していたとしても、本件商品である「電線・ケーブル保護管用接続部材」に使用されているとは認められない。
また、「絶縁テープ」は、本件商標の出願時である国際分類第8版当時から、類似商品・役務審査基準(甲2)では第17類に分類され、現在も類似商品・役務審査基準やニース分類(甲3)、TM5のIDリスト(甲4)において第17類に分類され、電気絶縁用の商品の一種として認定されており、国際登録第1099193号商標(甲5)をはじめとして、我が国では「絶縁テープ」以外に、被請求人が販売する製品と同様の機能を有する「ケーブル接続用の電気絶縁テープ(electrical insulating tapes for cable links),ケーブル固定用の電気絶縁テープ(electrical insulating tapes for securing cables)」等が第17類で登録され、被請求人自らも、登録第4559589号商標(甲6)において、「電線又はケーブル結束用接着テープ」を第17類で登録していることからも、ケーブルの固定や接続、結束用のテープは絶縁機能の有無を問わず、第9類ではなく、第17類の指定商品として捉えられるべきである。
そして、本件商品である「電線・ケーブル保護管用接続部材」は、一般に認められている指定商品の表記ではなく、このように「接続部材」と一見すると特定することが難しい指定商品について登録がされていた場合は、他の区分に分類されるような商品も含めた、すべてのケーブル保護管用の接続部材が認められると判断されることは妥当ではなく、第9類の範ちゅうに属する商品のみが当該指定商品に含まれると考えるべきである。
以上の点から、古河電工パワーシステムズが販売する製品は、第9類の「電線・ケーブル保護管用接続部材」ではなく、第17類の「絶縁テープ」であり、そのため、本件商品について使用しているということはできない。
なお、被請求人は、業界として「絶縁テープ」が電線・ケーブルの保護管用接続部材として使用されることが一般的であることを主張するが(乙9及び乙10)、「絶縁テープ」への使用が第9類の「電線・ケーブル保護管用接続部材」についての使用に当たるものではなく、第17類の「絶縁テープ」の使用に当たるものであり、たとえ、業界として一般的に絶縁テープを接続用のテープの一種として使用しているような実情があったとしても、そのような実情が本件の判断に影響するものではない。
この点について更に述べると、古河電工パワーシステムズが販売する製品は、パンフレット(乙7)の記載より、JCAA(日本電カケーブル接続技術協会)の適合品としての規格認定(JCAAD004)を受けている製品であると認識することができる。この規格認定を受けた適合品(製品)は、「黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ」であり(甲7)、それをパンフレット(乙7)でうたっている以上、その製品は「黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ」として取引に資されているとみるのが極めて自然である。
一方、乙9及び乙10には、JCAA(日本電カケーブル接続技術協会)の規格認定を受けた適合品に関する表示は一切無い。
つまり、乙9及び乙10から想起される商品の取引の実情と、規格適合品の認定を受けている製品に求められる取引の実情とは、異なるとするのが妥当な判断であるのみならず、乙7の製品に係る規格認定は、古河電工パワーシステムズ自らが「黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ」として受けているのであるから、そのような製品をもって、第9類の「電線・ケーブル保護管用接続部材」に当たると主張するのは、規格品の範囲を超えて不当に広い権利範囲を保持し、第三者の商標選択の余地を狭めるものである。
以上より、被請求人又は被請求人の使用権者は、本件商品「電線・ケーブル保護管用接続部材」及びその他の指定商品について本件商標を使用しているとは認められない。
(2)第2弁駁書(令和2年11月30日付け)
ア 本件審判に係る指定商品の使用について
被請求人が提出する他社の事例(乙11ないし乙17)は、電気絶縁テープにしても、水密保護テープにしても、あくまで保護管を接続するために密閉用のパテやシーリングテープを巻き、その上から電気絶縁用テープや水密保護テープを巻いているのであって、電気絶縁テープのみでケーブル保護管等を接続してはいない。そのため、被請求人が提出した証拠からは、電気絶縁用テープのみでは接続用部材としては機能せず、電気の絶縁のためにテープを巻き付けており、「電線・ケーブル保護管用接続部材」とは商品としての用途や役割が明確に異なっている。
また、水密保護テープは防水テープの一種と考えられるところ、防水テープはその原材料や用途が絶縁テープとは異なることから、「水密保護テープ」と「電気絶縁テープ」を同列に扱うことは不可能であって、電気絶縁用テープについての事例は、単独で接続部材として使用されていないわずか一例であるから、一般的に電気絶縁テープが「電線・ケーブル保護管用接続部材」の範ちゅうに含まれていると認められないことは明らかである。そして、古河電工パワーシステムズの「電気絶縁テープ」への使用が電線やケーブル保護管の接続用に用いられるとしても、それは指定商品の取引の一般的な実情には該当しないことから、本件審判には何ら影響を及ぼさないものである。
イ 電子メールの写しについて
被請求人は、古河電工パワーシステムズと、同社の顧客との間で送受信した電子メールの写し(乙18)を提出しているが、これは単に「エフコテープ」という名称の絶縁テープを販売していることを示しているにすぎず、実際に本件商標を付したパンフレットを頒布しているか否かは不明である。
ウ 被請求人の有価証券報告書について
被請求人は、被請求人の有価証券報告書(乙19)を提出し、被請求人が、古河電工パワーシステムズの議決権を100%有しているため、古河電工パワーシステムズが、被請求人と通常使用権者の関係にあったことは明らかであると主張するが、子会社との関係で資本関係及び議決権を有している商標権者が、当該子会社と商標権者の有する商標について使用許諾も行われていると直ちに認識されるものではなく、子会社との間においても、商標の使用については何らかの取決めを行うことが一般的である。
そのため、古河電工パワーシステムズが本件商標についての通常使用権者であることは未だ不明確なままであるため、被請求人が提出した証拠からは、古河電工パワーシステムズが本件商標についての通常使用権者であると認められない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、審判事件答弁書、審尋に対する回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙19を提出した。
1 答弁の理由(令和元年12月9日付けの審判事件答弁書の要旨)
本件商標は、被請求人が、使用権者である古河電工パワーシステムズを通じて、要証期間に国内において、第9類の指定商品「電線・ケーブル保護管用接続部材」について使用しており、取消されるべきものではない。
(1)被請求人は、電線、ワイヤーハーネス等の製造を行う非鉄金属メーカーであり(乙1ないし乙3)、本件商標を使用した商品を販売している古河電工パワーシステムズは、2012年に設立された被請求人のグループ企業であって、2013年に被請求人のエフコ製品部を会社分割により事業承継している(乙4ないし乙6)。
(2)古河電工パワーシステムズは、上記した「エフコ製品」の1つである「エフコテープ2号」という名称の絶縁テープを販売し、パンフレットにおいて本件商標を使用しており(乙7)、当該商品は、絶縁のみならず、「絶縁電力バー、クランプカバーの取付部の防水、ズレ防止」といった「接続部材」としての機能をも併せ持つものであって(乙7)、同社の「電カケーブル接続用品総合カタログ」中の「JCAA規格品端末・直線接続材料」の欄(79及び80頁)にも掲載されているものである(乙8)。80頁上部に表示されたケーブルの断面図は、エフコテープ2号(図中では「11 絶縁テープ」、)が電線・ケーブルの保護管(図中では「4 絶縁筒」)の端部を固定し、接続部材として使用される例を示している。
なお、絶縁テープが電線・ケーブル保護管用接続部材として使用されることは業界では一般的であって、被請求人は、電線・ケーブル保護管「エフレックス」、絶縁テープ「エフレックバルコ」を製造・販売しているところ、この「エフレックバルコ」を、「エフレックス」を接続する部材として使用する用例が同社の技術資料等において公表されているものである(乙9及び乙10)。
(3)以上のとおり、被請求人が、使用権者である古河電工パワーシステムズを通じて、本件商標を要証期間に、日本国内において、請求に係る商品中、「電線・ケーブ護ル管保用接続部材」について使用していたことは明白である。
2 審尋に対する回答書(令和2年8月14日付け)の要旨
(1)答弁書においては、エフコテープ2号(絶縁テープ)が、電線・ケーブルの保護管の端部を固定し、接続部材として使用している例を示した(乙7及び乙8)。これは、絶縁を目的とするものではなく、電線・ケーブルの保護管の外傷を防止する目的から使用されるものであるところ、同業他社においても、同じ目的から、ビニール製の絶縁テープが電線・ケーブルの保護管の接続部材として用いられている。
電気設備資材等の製造販売を主たる事業としているA社の電設資材総合カタログ(286及び287頁)においては、ケーブルの保護管同士を接続する際に、3のシーリングテープを接続部に巻いて密閉し、さらにその上から4の電気絶縁用ビニルテープを巻く工程が示されている(乙11及び乙12)。
電線・電カ・通信ケーブル用保護管の製造販売等を主たる事業としているB社の製造販売に係るケーブルの保護管「TACレックスA」の使用例においては、異種の管継手の接続の際に、2の水密保護テープを巻いて密閉し、さらに、水密保護テープの巻き終わり部分を3のビニールテープを用いて押さえ巻きする工程が示されている(乙13及び乙14)。
土木資材、工業用品、電設資材等の製造販売を主たる事業としているC社の製造販売に係るケーブルの保護管「NEWカナレックス」の取扱方法に関して、その「技術資料」中、b-8及びb-9頁において、異種の管継手の接続の際に、シーリングテープ、水密保護テープを巻いて密閉し、さらに、その上からビニルテープを巻く工程が示されている(乙15ないし乙17)。
上記したように、「絶縁テープ」は、「電線・ケーブル保護管用接続部材」として一般的に用いられているものであって、「電線・ケーブル保護管用接続部材」の範ちゅうに含まれるものである。
(2)乙7は、古河電工パワーシステムズ自身の作成に係るパンフレットであって、発行した日付は2014年2月14日であるところ、同社は、営業活動において、当該パンフレットを顧客担当者へのメールに添付する形で配布して用いている。これを示すべく、2019年1月に、同社の営業担当者が顧客担当者との間で送受信した電子メールを提出する(乙18)。
(3)被請求人と古河電工パワーシステムズとの資本関係については、被請求人の有価証券報告書を提出する(乙19)。その「第一部企業情報」中の「第1 企業の概況」においては、被請求人が、古河電工パワーシステムズの議決権を100%所有していることが明記されており、被請求人と通常使用権者の関係にあったことは明らかである。
(4)上記のとおり、被請求人は、通常使用権者である古河電工パワーシステムズを通じて、本件商標を要証期間に、請求に係る商品中、「電線・ケーブル保護管用接続部材」について使用していたものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定によって取消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
(1)「エフコテープ2号」の商品パンフレットとされる「エフコテープ2号」、「FEPS」の見出しの書面(以下「本件パンフレット」という。)には、右上部に「技術資料Fc-09014B」の記載があり、当該商品が「絶縁テープ」(以下「使用商品」という。)である旨の説明が記載されている。また、本件パンフレットには、用途に「100V?33kVまでの電気絶縁用テープ」、「・高圧電力ケーブルおよび電線の端末処理および接続部の絶縁処理。」及び「・絶縁電線カバー、クランプカバーの取付部の防水・絶縁処理およびズレ防止。」の記載があり、さらに、最下部に「古河電工パワーシステムズ」及びその住所、「14.02.14」並びに別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されている(乙7)。
(2)古河電工パワーシステムズの開発営業担当者は、2019年(平成31年)1月17日に、「RE:FW:お問い合わせバルコテープについて」の件名で、顧客担当者へ電子メールを送信しており、当該メールの添付ファイルには、「Fc09014B エフコテープ2号FEPS.pdf」(以下「本件添付ファイル」という。)が添付されていたといえる(乙18)。
(3)乙12は、電気設備資材等の製造販売を主たる事業としているA社(乙11)の電設資材総合カタログ2020-2021であるところ、「エポキシパテ」の見出しの下、「防水処理部材施工一覧」、「●ミライの防水処理部材はハンドホール(コンクリート面)への管、付属品等の固定・接続、異種管同士の接続部の防水処理に使用します。」として、黒色のビニールテープの写真とともに「4 電気絶縁用ビニルテープ」の記載があり、ケーブルの保護管同士を接続する際に、「4」(上記、電気絶縁用ビニルテープ。)を巻く工程が示されている。
(4)乙14は、電線・電力・通信ケーブル用保護管等の製造販売を主たる事業としているB社(乙13)のJISC3653の管路式電線路の管「TACレックスA」についての商品パンフレットであるところ、「異種管接続材料」の見出しの下、ビニールテープの写真とともに「3 ビニールテープ」の記載があり、管路式電線路の異種管同士を接続する際に、「3」(上記、ビニールテープ。)を巻く工程が示されている。
(5)乙17は、工業用品、電設資材、土木資材等の製造販売を主たる事業としているC社(乙15及び乙16)のJISC3653電力用ケーブルの地中埋設の施工方法の波付硬質合成樹脂管「NEWカナレックス/難燃NEWカナレックス」についての技術資料であるところ、そのb-8ページには、異種管の接続の際に、ビニルテープを巻く工程が示されている。
(6)乙19は、2019年度(平成31年度)における被請求人の有価証券報告書であるところ、「関係会社の状況」の項に、古河電工パワーシステムズについて、議決権の所有割合(%)として「100.0」、関係内容として「役員の兼任等あり。」等の記載がある。
2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商品について
被請求人は、使用商品が本件商品である「電線・ケーブル保護管用接続部材」に該当するものであるから請求に係る商品について使用している旨主張しているので以下検討する。
「ある商品が指定商品のいずれに属するかの認定・判断は難しい場合があり、二つの指定商品に属する二面性を有することすらあり得る・・・。・・・その判断に当たっては、本件使用商品の名称、表示、原材料、機能、用途、使用実態等のほか、取引者・需要者の認識・・・等の取扱いを含む取引の実情を考慮するのが相当である。」(東京高裁 平成12年(行ケ)第447号 平成13年7月12日判決)
以上を前提として検討するに、前記1(3)ないし(5)のとおり、本件商品を取り扱う業界において、電線及びケーブルの保護管同士を接続する際に、電気絶縁用ビニールテープが使用されているといえる。なお、ビニールテープは、それ自体でも「絶縁テープ」を意味するものである(「デジタル大辞泉」小学館)。
そして、前記1(1)の本件パンフレットによれば、使用商品の用途説明中に「100V?33kVまでの電気絶縁テープ」、「・高圧電力ケーブルおよび電線の端末処理および接続部の絶縁処理。」及び「・絶縁電線カバー、クランプカバーの取付部の防水・絶縁処理およびズレ防止。」との記載があることから、当該商品は電気絶縁用テープであって、電線用保護管(カバー)の接続(取付)部の絶縁処理とズレ防止に使用される商品ということができる。
そうすると、たとえ使用商品が、「絶縁テープ」であるとしても、「電線・ケーブル保護管用接続部材」としての用途を有する商品ということができ、使用商品は、本件商品「電線・ケーブル保護管用接続部材」として使用されているとみることができるものである。
なお、請求人は、被請求人が提出した証拠からは、電気絶縁用テープはそれのみでは接続用部材としては機能せず、あくまで電気の絶縁のためにテープを巻き付けており、本件商品とは商品としての用途や役割が明確に異なっていること、また、その使用例もわずかで、電気絶縁用テープのみで接続しているのではなく、密閉用のパテやシーリングテープの上から絶縁のために使用されていることから、一般的に電気絶縁テープが本件商品の範ちゅうに含まれているとは認められない旨を主張するが、上記判決は、商品には二面性を有することがあり、その判断に当たっては取引の実情を考慮するとしているのであって、本件商品を取り扱う業界において、電線及びケーブルの保護管同士を接続する際に、電気絶縁用ビニールテープが接続用に使用されている実情があることは、上記のとおりであり、使用商品は、本件商品に該当するものといい得るから、上記請求人の主張は認められない。
(2)使用商標について
本件商標と使用商標は、前記第1及び別掲2のとおり、「F-CO」の欧文字をデザイン化して表してなるものである。
そこで、本件商標と使用商標を比較すると、使用商標は、本件商標とは色彩のみを異にする同一のデザイン化された文字からなるものと認められるから、商標法第50条に規定する「登録商標」に当たるというべきである(同法第70条第1項)。
(3)使用者について
前記1(1)によれば、使用商標に係る本件パンフレットには、古河電工パワーシステムズの表示があることから、同社が使用商標の使用者と認められる。そして、前記1(6)のとおり、古河電工パワーシステムズは、被請求人の議決権比率が100%の関係会社であって、役員の兼任もあることから、同社による商標の使用は、特段の事情がない限り、被請求人との間における明示又は黙示の使用許諾に基づくものと理解するのが自然であって、同社は被請求人の通常使用権者と推認することができる。
(4)使用時期について
前記1(2)のとおり、古河電工パワーシステムズの開発営業担当者が、顧客担当者に対して、本件添付ファイルを添付して、メールを送付したのは2019年(平成31年)1月17日であるところ、本件添付ファイルの名称は、本件パンレットの「エフコテープ2号」、「FEPS」見出し及び右上の「技術資料Fc-09014B」の記載中の「Fc-09014B」の記載を同一にするものであることから、上記メールに添付された本件添付ファイルは、本件パンフレットであると推認することができる。
なお、請求人は、当該メールは、「エフコテープ」という名称の絶縁テープの販売を示しているにすぎず、本件パンフレットを頒布しているかは不明である旨を主張するが、メールに、本件パンフレットと同じ本件添付ファイルが添付されていたと推認できることは上記のとおりであるから、上記請求人の主張は認められない。
また、本件パンフレットは、商標権者が顧客に対し、使用商品を説明し紹介するものであるから、当該商品を宣伝するものであり、当該商品の取引上必要な書類であるといえる。
そうすると、通常使用権者は、使用商品に関する広告又は取引書類に当たる本件パンフレットに使用商標を付して、顧客に2019年(平成31年)1月17日に電磁的方法により提供したものといえ、当該日付は、要証期間である。
(5)小括
以上によれば、通常使用権者は、要証期間である2019年(平成31年)1月17日に、本件商標の指定商品中、「電線・ケーブル保護管用接続部材」に含まれる使用商品に関する広告又は取引書類に、本件商標と同一と認められる使用商標を付して電磁的方法により提供したと認めることができる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、通常使用権者が、請求に係る商品中、「電線・ケーブル保護管用接続部材」について、本件商標と同一と認められる商標を使用していたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲1(本件商標)


別掲2(使用商標:色彩については、答弁書参照。)




審理終結日 2021-03-25 
結審通知日 2021-03-30 
審決日 2021-04-28 
出願番号 商願2006-108294(T2006-108294) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y0917)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石塚 利恵 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 黒磯 裕子
馬場 秀敏
登録日 2007-07-27 
登録番号 商標登録第5065709号(T5065709) 
商標の称呼 エフシイオオ、エフコ 
代理人 宮嶋 学 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 小出 俊實 
代理人 砂山 麗 
代理人 幡 茂良 
代理人 橋本 良樹 
代理人 永井 浩之 
代理人 高田 泰彦 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 柏 延之 
代理人 中村 行孝 
代理人 朝倉 悟 
代理人 本宮 照久 

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