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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X29303132
管理番号 1376937 
審判番号 取消2019-300114 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-02-15 
確定日 2021-08-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第1943324号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1943324号商標の指定商品中、第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「コーヒー豆,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「全指定商品」及び第32類「全指定商品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1943324号商標(以下「本件商標」という。)は、「ZARA」の欧文字を書してなり、昭和59年11月7日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同62年3月27日に設定登録され、その後、指定商品については、平成20年5月21日に第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜(「茶の葉」を除く。),茶の葉,糖料作物,果実,コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成31年3月4日であり、その請求の登録前3年以内の平成28年3月4日から同31年3月3日までの期間を以下「要証期間」という場合がある。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「コーヒー豆,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類及び第32類の全指定商品(以下「請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人提出の証拠は、本件商標が要証期間に使用された事実を立証していない。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、本件商標権者とPasta ZARA S.p.A社(以下「PastaZARA社」という。)との関係を示すものであるが、本件商標が要証期間に使用されたことを立証するものではない。また、この契約書に列記された商標には、「ZARA」の語単体からなる本件商標は含まれない。なお、ライセンス契約の対象商品も「in particular,to dried pastafor human consumption」とされており、請求に係る指定商品ではない。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、発行日付がなく、日本国内で頒布されたかも明らかでない。
一方、カタログには、「pastaZARA」(以下「使用商標」という。)がスペースをおくことなく一体化しており、たとえ「pasta」の部分が「パスタ」の一般名称であったとしても、使用商標は全体を一体のものとして把握されるべきものであり、本件商標と社会通念上同一視し得るものではない。また、使用商標に付されたRマークは、「pastaZARA」全体について使用されているとみるのが自然である。
(3)乙第3号証について
乙第3号証の納品書は、PastaZARA社により2017年7月10日付で、日本国所在の会社に対し、カタログ(乙2)の商品番号「911 pomodori pelati」及び「912 pomodori a cubetti」と一致する商品「トマトの缶詰」が納品されたように思われる。
しかしながら、そもそも「トマトの缶詰」は、下記(5)に述べるとおり、「加工果実」ではないし、当該納品書に使用された「pastaZARA」部分は、本件商標と社会通念上同一とはいえないものであるから、当該納品書は、本件商標が請求に係る指定商品について、要証期間に使用されたことを立証するものではない。
(4)乙第4号証ないし乙第6号証について
乙第4号証ないし乙第6号証においては、本件商標権者が2018年及び2019年の「FOODEX JAPAN」に出展したことは認められるが、本件商標が請求に係る指定商品について要証期間に使用されたことを立証するものではない。
(5)トマトの缶詰が「加工果実」に該当しないことについて
被請求人が提出する日本植物生理学会による見解(乙12)のように、トマトを植物学的にとらえた場合には、「果実」に該当するといわれるのもあるかもしれない。
しかしながら、商標法において、商取引の目的となり得る「商品」に関する商標使用の問題を対象としているのであるから、上記のような学術的見地ではなく、あくまでも取引段階の「取引者・需要者の認識」を基準として判断すべきである。
この点、商品としての「トマト」は、取引段階では、「くだもの屋・くだもの売場」ではなく、「八百屋・野菜売場」におかれ、「野菜」として取引・販売されており、取引者・需要者の認識を基準にすれば、野菜に該当するものとして理解すべきである。
このことは、「特許庁編・類似商品・役務審査基準」において、商品「トマト」が野菜として分類されていることからも裏付けられる(甲3)。
一方、被請求人は、辞書における「くだもの」の「草木の実」との記載(乙7、乙8)を根拠として、トマトが果実に含まれるとも主張しているが、むしろ辞書における直接的な記載として、「トマトは西洋野菜の一種」とされている(甲4)。また同様に、被請求人は、農林水産省における「果実」の取り扱いを証拠として提出しているが(乙9)、農林水産省における「トマト」の直接的な取り扱いとしては、「果実」ではなく、「野菜」に分類されている(甲5、甲6)。
その他、被請求人提出の乙第11号証では、むしろトマトは「緑黄色野菜の一種である」と冒頭の3行目に記載されているし、英英辞典(乙13)の記載は、わが国における言葉の意味合いに関するものではない。
以上より、商標法上の商品としての「トマト」は、「果実」ではなく「野菜」に該当することは明らかであり、被請求人の係る主張は失当である。
(6)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標を要証期間に日本国内において、請求に係る指定商品について使用したということはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とすると答弁し、その理由及び弁駁に対する回答(審決注:当合議体は被請求人が提出した令和2年11月19日付け審判事件弁駁書を回答書として取扱う。)を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
1 本件商標権者は、要証期間に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を指定商品中「加工果実」に付し、当該商品に本件商標を付したものを譲渡等し、さらに商品に関する広告、取引書類等に本件商標を付して頒布等してきた事実がある。
(1)要証期間における本件商標の使用
ア 本件商標権者(旧名称)は、2010年、イタリアのパスタ等の大手生産業者、かつ、輸出業者であるPastaZARA社との間で、本件商標の商標権の独占的通常使用権を許諾する旨の契約(以下「商標ライセンス契約」という。)を締結した(乙1、乙15)。
この商標ライセンス契約における、ライセンスの対象商標は「PASTA ZARA」等であると記載されており、本件商標は「PASTA ZARA」の一態様である。また、ライセンスの対象商品は「食品・食品加工部門に関連する商品」等であることが記載されているところ、「加工果実」は、「食品」の一種類であることから「食品に関連する商品」に該当する。この商標ライセンス契約を補完するための本件商標権者作成の「宜誓書」(乙16)においては、商標ライセンス契約の対象に本件商標登録第1943324号「ZARA」が含まれることが明記されている。
これらのことから、PastaZARA社は、本件商標の通常使用権者である。
イ この契約に基づいて、PastaZARA社は、本件商標を使用してきた。例えば、「CATALOGO GENERALE」と題されたPastaZARA社のカタログ(乙2)には、本件商標と同一の文字要素「ZARA」が、カタログ表面の中央及び最終ページの下部に大きく目立つように表示されており、トマトの缶詰の出所標識として使用されている。
カタログ表面には、使用商標のほか、小麦の束を抱えている女性の図柄部分等が描かれているが、商標に接する需要者は、その構成中、外観上見やすく、かつ、称呼しやすい文字部分に強く印象づけられるというのが相当であるから、使用商標中の文字部分は、他の構成要素と切り離されて独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。そして、乙第2号証の使用商標の文字部分「pastaZARA」の構成中、「ZARA」は、大文字の太文字で目立つように表示されているうえ、「ZARA」の文字部分には、登録商標であることを示すRマークが付されている。一方で、「パスタ」は、一般名称であることに鑑みると、「pasta」の文字は、パスタに合わせるトマトソースの材料として販売される「トマトの缶詰」との関係で商品の用途等と表示するものであって識別力が高いとはいえないから、使用商標において、自他商品識別機能を果たすのは「ZARA」の文字部分であり、本件商標と同一である。
該カタログにおいて、本件商標がトマトの缶詰に関して、独立して自他商品識別力を発揮する態様で使用されているのは明らかであり、かかるカタログにおける本件商標と社会通念上同一の商標の使用は、「商品に関する広告に標章を付して展示し、頒布する行為」に該当する(商標法第2条第3項第8号)。また、カタログ2枚目に、国内で販売されているトマトの缶詰に本件商標が付された写真が掲載されているが、これは同項第1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
ウ PastaZARA社取扱い商品の取引者、需要者は、上記カタログに掲載されている品名や型番を引用して注文や納品を行っている(乙3)ことから、上記カタログに掲載されている本件商標が付されたトマトの缶詰が国内の会社に納品されたのは明らかであって、同納品書では、本件商標と同一の構成要素からなる商標が、独立して自他商品識別力を発揮する態様で使用されている。よって、同納品書における本件商標の使用は、「商品に関する取引書類に標章を付して展示し、頒布する行為」に該当し(商標法第2条第3項第8号)、これは要証期間の国内使用である。また、同納品書に表示された、本件商標と社会通念上同一の商標が付されたトマトの缶詰は、実際に国内の会社に納品されており、これは、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡した行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当する。
エ PastaZARA社は、直近では、2018年度及び2019年度の「FOODEX JAPAN」に出展を行い、トマトの缶詰に本件商標を付して宣伝・広告を行った(乙4?乙6)。
オ 以上から、本件商標が、トマトの缶詰について要証期間に日本国内で使用されていたことは明らかである。
2 トマトの缶詰が請求に係る指定商品に含まれること
果物は、「食用となり、水けの多い、草木の実」等(乙7、乙8)と辞書においては定義され、農林水産省は、「概ね2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、果実を食用とするものを『果樹』として取り扱っている」(乙9)。
これに対して、トマトは、「南アメリカのアンデス山脈高原地帯原産のナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。多年生植物で、果実は食用として利用される」等(乙10、乙11)と定義されるところ、多年生植物であり、果実が食用とされ、水気の多いトマトが、辞書上の定義及び農林水産省の取扱いにおける「果実」に該当する。
一般社団法人日本植物生理学会のウェブサイトにおいても、「トマト、リンゴなどでの果物では・・。トマトでは葉緑体のクロロフィルが分解し・・・これらの果物の成熟はエチレンによって誘導されます。」と記載され(乙12)、実際にフルーツショップにおいてトマトが「果物」として取引され (乙17、乙18)、トマトが「フルーツ」である製菓材料として紹介され (乙19)、また、「Tomato(トマト)」は、「科学的に言えば、トマトは間違いなく果物です。・・・」(乙13)と定義されており、日本国外でも、「果物」として定義されている。
仮に、「トマト」が野菜であるとする見解があったとしても、それは、トマトが一般の果物よりも糖分が少ないことが多いため(乙14)、料理用の「野菜」と見なされるためにすぎないが、トマトは、植物学的にはあくまでも「果実」である。
したがって、「トマト」を水煮加工して缶詰にしたものが、「加工果実」に含まれることは明白である。
3 まとめ
以上のことから、本件商標権者、通常使用権者が、日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を「トマトの缶詰」について、商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号の使用をしている。

第4 当審の判断
1 被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を要証期間内に本件審判の請求に係る指定商品中、第29類「加工果実」に含まれる「トマトの缶詰」(以下「使用商品」という場合がある。)に使用していると主張しているので、以下検討する。
(1)請求人及び被請求人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 2010年6月1日に「FFAUF S.A.」(本件商標権者の旧名称)と「PastaZARA社」とが締結した商標ライセンス契約において、「FFAUF S.A.」が「PastaZARA社」に対して、「PASTA ZARA」等の商標についてライセンスを付与したとされるが、当該契約書において、本件商標と構成文字を同じくする「ZARA」の文字のみからなる商標は見当たらない(乙15)。
イ 本件商標権者による、宣誓書(2020年10月)には、上記商標ライセンス契約を補完するものとして、当該契約における商標登録及びその商標登録の全指定商品を含む旨宣誓し、その商標登録の一つとして本件商標及びその登録番号が記載されている(乙16)。
ウ PastaZARA社のカタログの表紙及び最終ページには、使用商標が表示され、当該カタログには使用商品と思しき画像並びにその商品名及び番号が掲載されているものの、「ZARA」の文字のみからなる商標は表示されていない(乙2)。
エ PastaZARA社の作成に係るとされる納品書の写しには、その上部に使用商標が表示され、乙第2号証のカタログに掲載されている使用商品と思しき商品の商品名及び番号の一部も記載されてはいるものの、「ZARA」の文字のみからなる商標は表示されていない(乙3)。
オ PastaZARA社は、「FOODEX Navi2018」及び「FOODEX Navi2019」に出展し、そこで、「パスタ・ザラ」と称する展示ブースにおいて、使用商標が表示されていることは確認できるものの、「ZARA」の文字のみからなる商標は確認することはできない(乙5)。
カ 「特許庁編 類似商品・役務審査基準」において、「野菜」の中に「トマト」が分類されており(甲3)、また、「三省堂国語辞典 第七版」には、「トマト」の項に「畑につくる西洋野菜の一種。」(甲4)との記載があり、さらに、農林水産省のホームページにおいて、「野菜の魅力」のタイトルの下に「トマト」が、プレスリリース「野菜の生育状況及び価格見通し(令和元年11月)について」の記事中に品目として「トマト」が、それぞれ掲載されている(甲5、甲6)。
2 判断
(1)本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。以下同じ。)の使用者について
本件商標権者は、2010年6月にPastaZARA社と、商標「PASTA ZARA」等についてライセンス契約を締結したことは認められるものの、当該契約の内容に本件商標の構成と同じくする「ZARA」の文字のみからなる商標は記載されていないことから、本件商標権者による宣誓書があるとしても、PastaZARA社に対して本件商標の使用を許諾したとはいえず、同社を本件商標の通常使用権者と認めることはできない。
(2)本件商標と使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「ZARA」の欧文字を横書きしてなり、その構成文字に相応して「ザラ」の称呼を生じるものである。
一方、使用商標は、「pastaZARA」の欧文字を横書きしてなり、被請求人の主張によれば、使用商品に使用されているものである。
そして、使用商標は、その構成中「pasta」の文字が、「パスタ(スパゲッティ・マカロニなどの総称)」(「ベーシックジーニアス英和辞典」(株)大修館書店発行)を表すものであるとしても、使用商品との関係において、商品の品質や用途等を表し自他商品識別標識としての機能を果たさないとはいえないうえに、使用商標から当該文字を捨象した「ZARA」の文字部分のみを要部としなければならない理由は見いだせないことから、全体としてまとまりのある一体不可分のものと理解されるとみるのが相当であり、構成文字に相応して「パスタザラ」の称呼を生じる。
そうすると、使用商標は、その構成中に「ZARA」の文字が含まれているとしても、本件商標とは、「pasta」の文字の有無により、その構成及び称呼を異にすること明らかであるから、本件商標と社会通念上同一の商標による使用とみることはできない。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
(3)請求に係る指定商品中「加工果実」と使用商品について
使用商品の原材料である「トマト」について、「三省堂国語辞典 第七版」には、「畑につくる西洋野菜の一種。」(甲4)との記載があり、また、農林水産省のホームページには、「野菜の魅力」や「野菜の生育状況」の記事中に野菜の一種として掲載されている(甲5、甲6)。
また、「特許庁編 類似商品・役務審査基準」(甲3)作成の基礎となる「商標法施行規則 別表」(第6条関係)の第31類「十 野菜」の下に「トマト」が分類されている。
そして、商標法における「商品」は、商取引における生産者や販売場所、用途等により、取引者、需要者の認識を基準として判断すべきところ、商品「トマト」は、取引段階では、フルーツショップや果物売場ではなく、八百屋やスーパーの野菜売場に並べられて、通常「野菜」として取引又は販売されていることから、取引者、需要者は「トマト」は野菜であると認識しているものとみるのが自然である。
そうすると、一般に「トマト」は「野菜」として定義付けられているといえるうえに、取引者、需要者の認識からすれば、商標法上の商品としての「トマト」は、「果実」ではなく「野菜」であること明らかであるから、使用商品は、野菜を加工したもの、すなわち「加工野菜」の範ちゅうに含まれる商品であるというべきであって、「加工果実」の範ちゅうに含まれる商品と認めることはできない。
したがって、請求に係る指定商品中「加工果実」には、使用商品は含まれないと判断するのが相当である。
3 小括
上記によれば、商標権者又は通常使用権者は、要証期間内に、本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品中「加工果実」について使用した事実を認めることができない。
また、被請求人が提出した証拠において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間内に、請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていたことを認めるに足る証拠はない。
4 被請求人の主張について
被請求人は、使用商標は、その構成中「pasta」の文字は、使用商品がパスタ用のトマトソースの材料として販売されていることからすると、商品の用途を表示するものであり、識別力は高いといえず、使用商標の構成中、自他商品識別機能を果たすのは「ZARA」の文字であるから、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標である旨主張する。
しかしながら、上記2(2)のとおり、使用商標は、一体不可分のものと理解されるものであり、使用商標に接する取引者、需要者が、その構成中の「pasta」の文字を、被請求人が主張するような使用商品の用途を表示したものとして理解するといった事情を、同人提出の証拠から何ら見いだせないものであるから、使用商品がパスタ用ソースの材料として使用される場合があるとしても上記判断は左右されないというべきである。
したがって、被請求人の主張はいずれも採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品について使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中の結論掲記の指定商品について、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
審理終結日 2021-03-04 
結審通知日 2021-03-11 
審決日 2021-03-29 
出願番号 商願昭59-117464 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X29303132)
最終処分 成立  
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
小田 昌子
登録日 1987-03-27 
登録番号 商標登録第1943324号(T1943324) 
商標の称呼 ザラ 
代理人 福井 孝雄 
代理人 青木 篤 
代理人 田島 壽 
代理人 外川 奈美 
代理人 小暮 君平 

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