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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0335
審判 全部申立て  登録を維持 W0335
管理番号 1375219 
異議申立番号 異議2019-685009 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-07 
確定日 2021-03-29 
異議申立件数
事件の表示 国際商標登録第1392637号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際商標登録第1392637号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際商標登録第1392637号商標(以下「本件商標」という。)は、「BlackMonster」の欧文字を横書きしてなり、第3類「Cosmetics;non-medicated soaps for personal use;mask pack for cosmetic purposes;tissues impregnated with cosmetic lotions;shampoos;hair conditioners;non-medicated hair treatments;dentifrices;perfumes;cosmetic sun-protecting preparations;non-medicated toiletries;hair rinses;depilatory preparations;cuticle removing preparations.」及び第35類「Wholesale store services for cosmetics;wholesale store services for perfumes;wholesale store services for cleaners for leathers;wholesale store services for wet wipes;wholesale store services for pre-moistened cleansing tissues of textile;wholesale store services for tissues impregnated with cosmetic lotions;retail store services for cosmetics;retail store services for perfumes;retail store services for cleaners for leathers;retail store services for wet wipes;retail store services for pre-moistened cleansing tissues of textile;retail store services for tissues impregnated with cosmetic lotions;provision of space on websites for advertising goods and services;promoting the goods and services of others;dissemination of advertising for others via the internet;commercial information agency services.」を指定商品及び指定役務として、2017年12月7日に大韓民国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2018年(平成30年)5月25日に国際商標登録出願(事後指定)されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の6件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5409582号商標
商標の構成:MONSTER BLACK(標準文字)
指定商品:第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成23年1月17日
優先権主張:2010年7月16日、アメリカ合衆国
設定登録日:平成23年4月28日
2 登録第5419507号商標
商標の構成:MONSTER DOUBLE BLACK(標準文字)
指定商品:第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成23年1月24日
設定登録日:平成23年6月17日
3 登録第5741168号商標
商標の構成:MONSTER ENERGY ULTRA BLACK(標準文字)
指定商品:第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成26年11月12日
優先権主張:2014年5月13日、アメリカ合衆国
設定登録日:平成27年2月13日
4 登録第5393681号商標
商標の構成:MONSTER ENERGY(標準文字)
指定商品:第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成23年2月25日
5 登録第5844119号商標
商標の構成:MONSTER ENERGY(標準文字)
指定役務:第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
登録出願日:平成27年1月30日
設定登録日:平成28年4月22日
6 登録第6104005号商標
商標の構成:#MonsterGaming
指定役務:第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
登録出願日:平成30年2月16日
優先権主張:2017年8月16日、ロシア連邦
設定登録日:平成30年12月7日
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第402号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人の使用に係る商標「MONSTER」(以下「申立人商標」という場合がある。)の周知性について
(1)申立人商標の使用
申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、創業以降、アルコールを含有しない飲料、すなわち、炭酸飲料、フルーツジュース、エネルギー補給用飲料等の様々な飲料製品の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事していたが、2015年(平成27年)6月からはエネルギー補給飲料(以下「エナジードリンク」という。)の事業に注力している(甲2、甲58)。
申立人商標は、申立人が2002年(平成14年)に創設したエナジードリンク事業のブランド「MONSTER ENERGY」の基軸商標として2002年(平成14年)から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものであり、同ブランドのエナジードリンクは、2002年(平成14年)に米国で最初に販売を開始後、日本では2012年(平成24年)5月から販売を開始し、現在では日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。
申立人は、2002年(平成14年)以降、現在まで継続して、当該ブランドから発売された数多くの異なる種類のドリンクの個別商品名の全てに「MONSTER」の文字を採択しており、当該各種ドリンクの缶の正面に「MONSTER」の文字を特徴的なデザインの太字を用いて大きく目立つ態様で表示して使用している。
このように「MONSTER」を基調とする商標を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は、経済界でも高い評価を受けている(甲2?甲33、甲51?甲58)。
2012年(平成24年)5月から現在までに、国内発売された「MONSTER」の文字が付されたエナジードリンクのシリーズは、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」、「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER COFFEE」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」、「MONSTER CUBA LIBRE」、「MONSTER PIPELINE PUNCH」である(甲5?甲7、甲10、甲12?甲15、甲59?甲62、甲101?甲103、甲118、甲127?甲131、甲252?甲264、甲274、甲291、甲323?甲326、甲353?甲360ほか)。
(2)広告及び販売促進活動
申立人による当該エナジードリンクの広告及び販売促進活動は、世界の有名アスリート、レーシングチーム、スポーツ競技会、アマチュアスポーツ選手、音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供、スポーツ、音楽、コンピュータゲーム(eスポーツ)などの娯楽イベントの開催、米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行、これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン、各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布)、販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」の提供、「MONSTER」の文字を付したポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示などを行っているほか、新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース、申立人ウェブサイト及びソーシャルメディアを通じ、2002年(平成14年)から現在まで世界規模で継続的に実施されている。
これらの広告物及び販売促進物には、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が独立の商品出所識別標識として認識される態様で使用されてきた(甲7?甲17、甲34?甲91、甲101?甲133、甲136?甲168、甲225?甲274、甲279?甲296、甲323、甲324、甲335?甲352、別紙2)。
(3)ライセンスによる申立人商標の使用
申立人は、2002年(平成14年)から、アパレル製品、運動用ヘルメット、バッグ類、ステッカー、傘、ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは、ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」、「Monster」の文字を単独で表示し、販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は、国内の実店舗のほか、オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47、甲48、甲58、甲92?甲100、甲134、甲135)。
これらのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?甲224、別紙1)。
(4)世界における商標出願及び登録
申立人は、エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について、引用商標をはじめ、「MONSTER」の文字を基調とする様々な構成の商標について日本を含む世界150を超える国及び地域で商標出願し、登録を取得している(甲58、甲362?甲389)。
(5)第三者による市場調査報告書
第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、2013年(平成25年)時点で申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており、それ以降も着実に売上げを伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層にとどまらず、女性層にも知名度、人気を拡大している。また、実際の市場で申立人の「MONSTER」エナジードリンクは「モンスター」と呼ばれ、「モンスター」の表記で認知されている(甲311?甲322)。
(6)小括
以上の事柄に照らせば、「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時(事後指定日)及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務の出所識別標識として国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていた。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標は、「BlackMonster」と横書きしてなり、その構成文字全体は成語ではなく、「Black」(甲392、甲393)と「Monster」(甲390、甲391)の2語を結合したものと容易に認識、理解されるものである。
また、その構成中の「Black」の文字は、「黒いさま、黒色、黒」を意味する外来語として一般に知られている(甲392、甲393)から、これを本件商標の指定商品及び指定役務(以下「本件指定商品等」という。)に使用しても、当該商品又は役務の提供を受ける者の利用に供する物等の色彩その他の品質・特性に関わる表示として認識、理解されるにとどまり、自他商品役務識別標識としての機能を果たさない。仮に「Black」の文字が自他商品役務の識別標識として機能し得るとしても、その出所識別力の程度は、「Monster」の文字部分と比べて極めて弱いことは明白である。
そして、「モンスター」及び「MONSTER」の文字が外来語の「モンスター」(甲390、甲391)として一般に親しまれていることを斟酌すれば、出所識別標識として強い印象を取引者、需要者に与えるのは、「Monster」の文字部分であるということができる。
そこで、本件商標と申立人商標及び「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」等の「MONSTER」の欧文字と他の文字等を結合してなる商標(以下、「『MONSTER』ファミリー商標」という場合がある。)を比較すると、「MONSTER(Monster)」の文字の外観、「モンスター」の称呼、外来語「モンスター」の観念を包含するものとして看取される点を共通にするから、両者は外観、称呼及び観念が近似する。
また、本件商標は、「Monster」に他の文字(「Black」)を結合した構成のものとして容易に認識、理解されるものであるから、申立人の使用に係る「MONSTERファミリー商標」と同一の構成の商標として把握される。
加えて、申立人は、2002年の「MONSTER」ブランド創設時から現在に至るまで、「Black」の文字が意味する「黒色」の缶及びボトルのデザイン、ウェブサイト、販売促進材料、広告物等のデザインの背景色又は基調色として広く使用しており、個別製品名にも、「MONSTER」と「BLACK」の文字の組合せを採用している(甲2、甲4?甲8、甲10?甲59、甲61、甲63、甲64、甲68?甲83、甲87?甲91、甲101、甲105?甲117、甲119?甲127、甲129、甲131?甲133、甲139?甲168、甲225?甲229、甲231?甲242、甲244?甲247、甲249?甲253、甲255、甲256、甲258?甲261、甲263?甲274、甲276、甲279?甲291、甲293?甲298、甲320、甲322?甲326、甲335?甲356、甲361、甲394?甲402)。
したがって、本件商標は、申立人商標及びMONSTERファミリー商標と類似性の程度が極めて高いものであることが明らかである。
(2)本件指定商品等中、第35類の指定役務は、申立人が引用する商標中、登録第5844119号商標及び登録第6104005号商標に係る指定役務、並びに申立人がウェブサイト及びプレスリリース等で継続的に行っている、MONSTERアスリート及びアーティスト等が出場・出演する他社主催のスポーツ・音楽・コンピュータゲーム等の娯楽イベントやゲーム製品販売展示会の開催に関する情報の提供、新製品ゲームソフトの発売情報の提供等と同一又は類似のものを含む。
また、本件商標に係る第3類の指定商品及び第35類の小売等に係る指定役務の最終的な需要者は、一般消費者であるから、商品又は役務の選択及び購入に際して払われる通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
(3)上記のとおり、本件商標の登録出願時(事後指定日)及び登録査定時には、「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として需要者の間で広く認識されていた。
(4)したがって、本件商標が本件指定商品等に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人商標及び申立人を想起連想し、当該商品等が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがある。
また、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所識別力希釈化するものであり、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標が使用された場合、申立人商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている申立人商標の出所表示力が希釈化するおそれが高いものであり、また、本件商標の使用は、申立人がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的及び精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであり、2002年(平成14年)にエナジードリンクのブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、米国において販売を開始した(甲7)。
イ 日本国内において、申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンク製品の販売は、アサヒ飲料株式会社を通じて行われ、2012年(平成24年)5月にエナジードリンク「Monster Energy(モンスターエナジー)」及び「Monster KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、同年12月には累計157万箱となった(甲7?甲9)。
ウ 申立人は、我が国において2013年(平成25年)5月に「モンスターアブソリュートリーゼロ」(甲10)、2014年(平成26年)8月に「モンスターエナジー M3」(甲59)、同年10月に「モンスターコーヒー」(甲60)、2015年(平成27年)7月に「モンスターウルトラ」(甲101)、2017年(平成29年)6月に「モンスターロッシ」(甲257)、2018年(平成30年)4月に「モンスターキューバリブレ」(甲323、甲324)、2019年(平成31年)4月に「モンスターパイプラインパンチ」(甲357?甲360)の販売を開始した(以下、これら商品と上記ア及びイの商品をまとめていうときは「申立人商品」という。)。
エ 日本で販売されている申立人商品のうち、「Monster Energy(モンスターエナジー)」、「Monster KHAOS(モンスターカオス)」、「モンスターアブソリュートリーゼロ」、「モンスターエナジー M3」、「モンスターウルトラ」、「モンスターロッシ」、「モンスターエナジーザドクター」及び「モンスターパイプラインパンチ」の容器には、その中央にデザイン化された「MONSTER」の文字(「O」の文字部分には、それを貫く縦線が描かれている。以下、同じ。以下、申立人商品の容器上の当該表示をいうときは、「MONSTERロゴ」という。)の下に「ENERGY」の文字を、比較的近接して配置してなる別掲のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲商標」という。)が表示されている(甲7、甲8、甲10、甲59、甲101、甲130、甲257?甲263、甲357ほか)。
また、「モンスターコーヒー」の容器には、その中央に「MONSTERロゴ」と「COFFEE+ENERGY」の文字が2段に表示され、「モンスターキューバリブレ」の容器には、「MONSTERロゴ」が表示されている(甲60、甲324ほか)。
そして、申立人商品には、各種の個別名称があるが、これら一連の申立人商品を指称する際には、「モンスターエナジー」ブランドと総称されている(甲8、甲10、甲59、甲130ほか)。
オ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体などに、別掲商標を表示している(甲74?甲80、甲82ほか)。
カ 我が国において、別掲商標が表示されたステッカー、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲98ほか)。
キ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標(国際商標登録第1048069号商標など)に係る商標権を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が発見されている(甲169?甲224)。
ク JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。
また、同消費者調査 No.232「エナジードリンク(2016年8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であった(甲312)。
ケ 有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。
コ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTERENERGY」であった(甲319)。
サ JMR生活総合研究所による消費者調査データ No.269「エナジードリンク(2018年5月版)」には、「モンスター、レッドブル、リアルゴールド 寡占化すすむエナジードリンク市場」のタイトルの下、「今回の調査では、『リアルゴールド(日本・コカコーラ)』『レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)・・・』『モンスターエナジー(アサヒ飲料)』の3ブランドがほとんどの項目で上位3位を独占した。」の記載がある(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking269.html)。
また、同消費者調査データ No.293「エナジードリンク(2019年5月版)」には、「リアルゴールド、レッドブル、モンスターエナジー。3強上位独占」のタイトルの下、「エナジードリンクの市場は、2桁の伸びの後に、2016年(平成28年)は対前年比5%増、2017年(平成29年)は同じく8%増とやや落ち着いたものの、依然として成長を続けている。(出所:サントリーインターナショナル)」の記載がある(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking293.html)。
シ 本件商標の登録出願時(事後指定日)から、申立人及びアサヒ飲料株式会社による申立人商品の販売促進のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスターなどにおいて、申立人商品を「モンスター」と表示しているものが見受けられ、また、両社以外のウェブページにおける当該キャンペーンについてのポスターやその他の記事においても「MONSTER(Monster)」及び「モンスター」の文字が表示されてはいるものの、これらの文字は、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等に、申立人商品の写真又は別掲商標若しくは「モンスターエナジー」の文字と共に表示又は掲載されているものである(甲69、甲71、甲79、甲101?甲103、甲111?甲113、甲115、甲118、甲119、甲124ほか)。
(2)上記(1)の認定事実によれば、次のとおりである。
申立人は、日本国内において、アサヒ飲料株式会社を通じて、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「Monster Energy(モンスターエナジー)」及び「Monster KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その後現在まで、計9種の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの認知度調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度は、その数値は不明であるものの、2位であったこと(甲312)に加え、2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)の調査において、いずれも申立人商品はエナジードリンク市場で3強の一つとされ、また、エナジードリンクの市場は、2017年(平成29年)において、成長を続けているとされていることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の登録出願時(事後指定日)(平成30年5月25日)から、登録査定日(令和元年6月27日)はもとより現在においても継続して、我が国のエナジードリンクの需要者の間においては、広く認識されているといい得るものである。
また、申立人商品には、各種の個別名称があるが、一連の申立人商品を指称する際には、「モンスターエナジー」ブランドと総称されていること、各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体などに別掲商標が表示されていること、別掲商標が表示されたステッカー、帽子、ヘルメットなどが販売されていることがうかがえるものの、申立人商品のほとんどの容器には「MONSTER」及び「ENERGY」の文字が別掲のとおりの態様で表示されている。
申立人商標は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として用いられる場合があるとしても、それらは必ずしも統一的に使用されているものではなく、宣伝広告における表示方法も一貫していない。
また、申立人商品の認知度を紹介するウェブサイト等の記事において、「モンスターエナジー」の認知度が紹介されているとしても、申立人商標単独での認知度は示されていない。
さらに、申立人商品の容器には、別掲のとおり、常に「MONSTERロゴ」及び「ENERGY」の文字が比較的近接して表示されており、特殊な態様とはいえない「MONSTER」の文字からなる申立人商標のみを申立人商品に使用したと認めるに足りる証拠はない。そして、上記のとおり、申立人商品が「モンスターエナジー」ブランドと総称されている実情があることも踏まえると、申立人商品の獲得した上記認知度は、「モンスターエナジー」を中心とした「モンスターエナジー」ブランドのエナジードリンクとして、集合的に生じているというべきである。
そうすると、特殊な態様とはいえない「MONSTER」の文字からなる申立人商標については、提出された証拠によっては、その周知性の程度を推し量ることができないから、我が国の取引者、需要者の間において、申立人商品を表示するものとして広く認識されているとはいえない。
また、他に、申立人商標が、申立人商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる事情は見いだせない。
したがって、申立人商標は、本件商標の登録出願時(事後指定日)及び登録査定時に、申立人商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人商標の周知性について
申立人商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時(事後指定日)及び登録査定時に、申立人商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
(2)本件商標と申立人商標との類似性の程度について
ア 本件商標について
本件商標は、「BlackMonster」の欧文字を表してなるところ、その構成中「Black」の語は「黒い、黒色の」(甲392、甲393)の意味を有し、「Monster」の語は「怪物、化け物」(甲390、甲391)の意味を有するものとして、いずれも我が国で広く親しまれた平易な英語であることから、全体として「黒い怪物、黒い化け物」程の意味合いを容易に理解させるものである。
そして、これらの文字は、大文字と小文字の組合せではあるものの、同じ書体で、横一列に書されていることから、視覚上まとまりの良い印象を与えるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「ブラックモンスター」の称呼を生じ、「黒い怪物、黒い化け物」程の観念を生じるものである。
イ 申立人商標について
申立人商標は、「MONSTER」の欧文字からなるところ、当該文字は、「怪物、化け物」(前掲参照)の意味を有する広く親しまれた平易な英語であることから、当該文字に相応して「モンスター」の称呼及び「怪物、化け物」の観念を生じる。
ウ 本件商標と申立人商標の類似性の程度について
本件商標「BlackMonster」と申立人商標「MONSTER」は、「MONSTER(Monster)」の文字のつづりを共通にするが、外観において、「Black」の文字の有無という明らかな差異を有するものである。
また、本件商標から生じる「ブラックモンスター」の称呼と申立人商標から生じる「モンスター」の称呼とは「ブラック」の音の有無において、明らかな差異があるため、これらを一連に称呼するときは、明瞭に聴別できるものである。
さらに、本件商標は、「黒い怪物、黒い化け物」程の観念を生じるものであるのに対し、申立人商標は、「怪物、化け物」の観念が生じるものであるから、両者は、観念において、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と申立人商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれがない非類似の商標であるから、その類似性の程度は低いというべきである。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務と申立人商品との関連性について
申立人商品である「エナジードリンク」と、本件商標の指定商品「化粧品,せっけん類」等及び指定役務「化粧品の卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等とは、商品(指定役務の取扱商品を含む。以下同じ。)の性質、用途、目的等が異なることから、その関連性は低いものというべきである。
(4)申立人商標の独創性の程度について
申立人商標を構成する「MONSTER」の文字は、一般に親しまれた成語であるから、申立人商標の独創性の程度は高いとはいえない。
(5)小括
上記(1)のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時(事後指定日)及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記(2)のとおり、本件商標と申立人商標とは、その類似性の程度は低いものであり、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人商品とは、商品の性質、用途、目的等が異なることから、その関連性は低いものであり、上記(4)のとおり、申立人商標の独創性の程度が高くないことからすると、本件商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が、申立人商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、申立人商標との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記2(2)アのとおり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、上記2(5)のとおり、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が、申立人商標を連想又は想起させることのないものである。
その他、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる具体的な証拠の提出もない。
そうすると、本件商標は、申立人商標の信用力、顧客吸引力にフリーライドするものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定商品又は指定役務に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号のいずれにも該当せず、その登録は、同項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別記】

異議決定日 2021-03-18 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W0335)
T 1 651・ 22- Y (W0335)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
小田 昌子
登録日 2018-05-25 
権利者 BLANK CORPORATION
商標の称呼 ブラックモンスター、モンスター 
代理人 柳田 征史 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 

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