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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W18242535
審判 全部申立て  登録を維持 W18242535
管理番号 1375204 
異議申立番号 異議2020-900191 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-03 
確定日 2021-06-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第6251495号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6251495号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6251495号商標(以下「本件商標」という。)は、「フードバイエア」の片仮名を標準文字により表してなり、平成30年2月1日に登録出願、第18類「皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,財布,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,皮革」、第24類「織物,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,織物製トイレットシートカバー,織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第35類「広告業,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、令和2年3月6日に登録査定、同年5月14日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)「HOOD BY AIR」(以下「申立人商標」という。)について
ア 申立人商標の歴史
「HOOD BY AIR」は、デザイナーのシェーン・オリバーが中心となり、2006年にニューヨークを拠点として立ち上げたブランドである。創設当時、彼は10代であったが、その後、活躍の場を広げ、ミラノ、パリ、ニューヨークでコレクションを展開し、世界中のファッション愛好家から注目を浴びるデザイナーとなった。
「HOOD BY AIR」がファッション界に与えたインパクトは大きく、例えば、ファッション界で最も権威のあるといわれる2つの賞、「LVMH審査員特別賞」及び「CFDAファッションアワード」を、それぞれ2014年及び2015年に受賞した。
シェーン・オリバーは、2013年に米国カリフォルニア州において、「HOOD BY AIR LICENSING,LLC」(以下「フードバイエアー・ライセンシング社」という。:甲4)と、「HOOD BY AIR,LLC」(以下「フードバイエアー社」という。)を設立した。
以下、シェーン・オリバー及び共同設立者である「Leilah Weinraub(レイラ・ウェインラブ)」等、並びにフードバイエアー・ライセンシング社及びフードバイエアー社を、まとめて「HBA側」ということがある。
イ 申立人商標について、フードバイエアー・ライセンシング社は、米国、我が国やその他の国において商標出願・登録しており、当該権利は、フードバイエアー・ライセンシング社から、2018年に米国所在のアパレル専門の金融会社「Hilldun Corporation(以下「ヒルダン社」という。)」に譲渡され、その後、2020年に申立人に譲渡された。
ウ HBA側と本件商標権者「グッドブレイク エルエルシー」(以下「グッドブレイク社」という。)の関係について
HBA側とグッドブレイク社は、申立人商標の所有者と中国におけるその供給業者という関係であった(甲32)。2015年、グッドブレイク社は、HBA側に対して、債務不履行等を理由に訴訟を提起したが、2016年6月、両者は和解することとなり、HBA側は、グッドブレイク社に対して、債務を返済することに同意した。しかしながら、上記和解において、申立人商標をグッドブレイク社に譲渡するという取り決めは一切なされていない。
エ 過去において、我が国及び米国で、申立人商標の正当な権利者でない第三者(グッドブレイク社による出願も含む。)によって、我が国及び米国で商標登録出願がなされている(甲33?甲36、甲39?甲41)。
オ グッドブレイク社の解散及び「HOOD BY AIR,LLC」(以下「新フードバイエアー社」という。)の設立について
グッドブレイク社は、2018年12月26日付けで、会社解散が登録された(甲42)。
また、カリフォルニア州、州務長官のウェブサイトの情報によると、新フードバイエアー社は、2018年7月3日付けで、設立が登録(登録番号:201818410594)された(甲43)が、HBA側は、その設立に一切、存知、関与しておらず、新フードバイエアー社は、シェーン・オリバーが2013年に設立したフードバイエアー社(登録番号:201320410229)とは、何ら関係のない会社である。
なお、新フードバイエアー社の設立に当たり、「DI LI LAW」が代理人となっているが、この事務所は、HBA側とグッドブレイク社との係争においても代理人を務めている。
カ グッドブレイク社が正当な権利の承継人でないことについて
シェーン・オリバーを始めとするHBA側は、我が国や米国を始め、申立人商標について、商標登録出願を行い、その権利の確保に適切に努めてきた。その一方で、従前より、正当な権利の承継人でないものが、継続的に「被服」等の商品分野のみならず、その他の分野においても、冒認出願を繰り返している実情がある。
また、本件商標の審査の過程で、当初の出願人である山川彰及び本件商標権者のいずれの者も、正当な承継人であることを、書面等の提出をもって何ら証明していない。本願商標の出願人より、「フードバイエアー社が保有していた米国の『HOOD BY AIR』関係の商標が、グッドブレイク社に移転された」との、事実とは異なる主張がされているが、実際には、当該商標権は、HBA側とは無関係の新フードバイエアー社に譲渡されていた。
HBA側は、我が国を含め各国において、登録出願、商標登録を確保していたが、我が国において当初所有していた、「HOOD BY AIR」(登録第5685146号商標)については、譲渡によりヒルダン社の所有になっていたため、不使用取消審判において登録取消となってしまい、権利の空白が生じてしまった。
本件商標は、このような権利空白の状況を奇貨として、剽窃的に登録出願し、登録を得ようとするものであって、不正の目的をもってなされたものという他ない。
また、正当な権利の承継人以外の者による本件商標の使用は、申立人商標に係る正当な権利の承継人又はこれと組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
なお、本件商標権者が申立人商標に係る正当な権利の承継人でないことを証するものとして、以上に述べた客観的事実に加え、シェーン・オリバーによる宣誓書を提出する(甲45)。
また、これに関連して、申立人商標に関する香港代理人は、2020年9月7日付けで、グッドブレイク社に対し、我が国における冒認出願について問い質す書簡を発送したが、グッドブレイク社の住所不詳により、送達できなかった(甲46)。その後の調査により、上述のとおり、グッドブレイク社は、既に解散していたことが判明した。
(2)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当する。

3 当審の判断
(1)申立人商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出した証拠並びに職権による調査によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人の主張によれば、「HOOD BY AIR」は、デザイナーのシェーン・オリバーが中心となり、2006年にニューヨークを拠点として立ち上げたファッションブランドである。
(イ)シェーン・オリバーは、2013年にフードバイエアー・ライセンシング社(甲4、甲45)及びフードバイエアー社(甲45)を設立した(以下、これらをまとめていうときは「HBA社」という。)。申立人の主張によれば、フードバイエアー・ライセンシング社は、申立人商標について、米国、我が国やその他の国において商標出願・登録し、これらの権利は、2018年にヒルダン社に譲渡され、その後、2020年に申立人に譲渡されているとのことである。以下、HBA社、ヒルダン社及び申立人をまとめて「申立人ら」ということがある。
(ウ)申立人商標は、フードバイエアー・ライセンシング社により、第25類の商品について、米国において、2014年8月11日に登録出願、2015年3月24日に商標登録されている(甲8)。我が国においても、申立人商標は、平成26年(2014年)1月29日に登録出願、同年7月11日に設定登録されていたが、その後、ヒルダン社に譲渡され、不使用取消審判により権利抹消された(甲15)。
(エ)HBA社を被告とするグッドブレイク社による米国カリフォルニア州裁判所への差戻し申立ては却下(2016年1月12日判決)されており、当該判決における背景の項によると、グッドブレイク社は、顧客に対して中国における被服の製造の取り次ぎを行い、HBA社は、オンライン及び小売店舗において、被服を販売し、シェーン・オリバーは、HBA社を所有・運営・管理している旨記載されている(甲32)。
(オ)第三者による「HOOD」、「BY」及び「AIR.」の文字を3段に横書きした商標に係る拒絶査定不服審判における、平成27年7月23日付けの審決では、「Hood By Air.」の構成よりなる商標は、「少なくとも本願商標出願前の2014年(平成26年)には、米国において、被服について、フード・バイ・エア社(決定注:『フードバイエアー社』と同一主体の表記の差と思われるので、本決定においては以下『フードバイエアー社』という。)の出所を表示するものとして、取引者、需要者の間に一定程度知られていた」とされている(甲33の4)。
(カ)「WWDJAPAN」のウェブサイト(https://www.wwdjapan.com/articles/1110271)には、「企業動向 2020/08/17」及び「2017年に活動を休止していた『フッド・バイ・エアー(HOOD BY AIR)』は先月、ブランドの再始動を発表した。」の記載がある(職権調査)。
イ 上記アにおいて認定した事実によれば、「HOOD BY AIR」は、デザイナーのシェーン・オリバーが中心となり、2006年にニューヨークを拠点として立ち上げたファッションブランドとうかがえるものであり、また、平成27年(2015年)7月23日付けの審決では、申立人商標に通じる「Hood By Air.」の構成からなる商標は、「少なくとも2014年(平成26年)2月には、米国において、被服について、フードバイエアー社の出所を表示するものとして、取引者、需要者の間に一定程度知られていた」とされている。
しかしながら、上記事実は、2014年及び2015年のものであって、本件商標の登録出願時及び登録査定時におけるものではない。そして、2018年には、フードバイエアー・ライセンシング社は、申立人商標に係る商標権をヒルダン社に譲渡していることに加え、上記ア(カ)の記載を併せてみれば、2017年頃には、HBA社による申立人商標を使用した営業活動は休止されていたと推認し得るものである。
そして、その他に、申立人商標について、本件商標の登録出願時(平成30年(2018年)2月1日)及び登録査定時(令和2年(2020年)3月6日)における申立人らの業務に係る商品の売上高、市場シェア、宣伝広告の範囲及び回数等は、明らかにされていない。
そうすると、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国はもとより外国の取引者、需要者の間に申立人らの業務に係る商品を表すものとして広く認識されていたものと認めることはできないものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 申立人商標の周知性について
上記(1)のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国はもとより外国の取引者、需要者の間に申立人らの業務に係る商品を表すものとして広く認識されていたものと認めることはできないものである。
イ 本件商標と申立人商標との類似性の程度について
本件商標は、前記1のとおり、「フードバイエア」の片仮名を標準文字により表してなるから、その構成文字に相応して、「フードバイエア」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に成語として載録されていないものであって、特定の意味合いを有するものとして認識されているような事情も見いだせないものであることからすれば、特定の観念は生じない。
他方、申立人商標は、「HOOD BY AIR」の欧文字で表されており、その構成文字に相応して「フードバイエアー」及び「フッドバイエアー」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に成語として載録されていないものであって、特定の意味合いを有するものとして認識されているような事情も見いだせないものであることからすれば、特定の観念は生じない。
そして、本件商標と申立人商標を比較するに、両者は、観念においては比較することができず、外観においては文字種を異にするとしても、いずれも特徴のある書体で表したものとはいえないものであり、また、称呼においては、本件商標から生じる「フードバイエア」の称呼と申立人商標から生じる「フードバイエアー」の称呼は、語尾における長音の有無の差異を有するのみであるから、称呼において類似する場合がある。
そうすると、本件商標は、申立人商標と一定程度の類似性を有するものといえる。
ウ 商品・役務の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品及び指定役務中には、申立人らの取扱いに係る商品「被服」と商品・役務の関連性が高く、需要者の範囲も共通するものが含まれているといえる。
エ 出所の混同について
上記アないしウのとおり、本件商標と申立人商標とは、一定程度の類似性を有するものであって、また、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人らの取扱いに係る商品「被服」とは関連性があり、その需要者を共通にする場合があるとしても、何より、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間に広く知られているとは認められないものである。
そうすると、本件商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する需要者が、申立人商標を連想、想起し、申立人ら又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品及び役務であると誤認し、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そして、申立人商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国はもとより外国の取引者、需要者の間に申立人らの業務に係る商品を表すものとして広く認識されていたものと認めることができないものであるから、本件商標は、本号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、我が国において、法人としての権利能力を有していないとは直ちに認め難く、その他、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号所定の他の要件を判断するまでもなく、同号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2021-05-26 
出願番号 商願2018-13179(T2018-13179) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W18242535)
T 1 651・ 271- Y (W18242535)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 馬場 秀敏
庄司 美和
登録日 2020-05-14 
登録番号 商標登録第6251495号(T6251495) 
権利者 グッドブレイク エルエルシー
商標の称呼 フードバイエア 
代理人 神保 欣正 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 門田 尚也 
代理人 長嶺 晴佳 
代理人 西尾 隆弘 
代理人 杉村 憲司 

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