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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1375191 
異議申立番号 異議2020-900249 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-30 
確定日 2021-05-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6271212号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6271212号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6271212号商標(以下「本件商標」という。)は、「iWork」の文字を標準文字で表してなり、令和2年2月1日に登録出願、第36類「コワーキング用事務所の貸与」及び第43類「一時宿泊施設の提供,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、同年7月3日に登録査定、同月17日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、引用する登録商標は、以下の4件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第1212432号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおり「WEWORK」の欧文字を書してなり、2013年(平成25年)11月18日国際商標登録出願、第36類「Leasing of office space; leasing of real estate; rental of office space.」並びに第9類、第35類、第41類、第42類及び第45類に属する国際商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2015年(平成25年)9月18日に設定登録されたものである。
(2)登録第5906106号商標(以下「引用商標2」という。)は、「WEWORK」の文字を標準文字で表してなり、平成28年4月28日登録出願、第43類「飲食物の提供,宿泊施設の提供,一時宿泊施設の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,喫茶店・バー・カフェテリア及びレストランにおける飲食物の提供,ケータリング,懇親会及びミーティング用のコミュニティーセンターの貸与,会議・展示会及びミーティングのための施設の提供,ビジネス及び社交行事のための会議室及び施設の貸与,保育所における乳幼児の保育・障害者入所施設及び高齢者入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),愛玩動物の一時預かり,一時宿泊施設・ホテル・レストラン・バー・ケータリングの予約の取次ぎ,ベッド用リネン製品及び浴用リネン製品の貸与,食卓用リネン製品の貸与」並びに第16類、第20類、第25類及び第38類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年12月16日に設定登録されたものである。
(3)登録第6157253号商標(以下「引用商標3」という。)は、「WE WORK」の文字を標準文字で表してなり、平成30年7月6日登録出願、第36類「不動産業務,不動産及びアパートの貸与,事務所の貸与,建物の貸与,建物・土地の売買又は貸借の代理又は媒介,建物内のオフィス用スペースの貸与,一時的及び共有型の事務所の貸与,共有型事務所の貸与」及び第43類「ホスピタリティサービスの一部としての飲食物の提供,飲食物の提供,会議室の貸与,レストラン及びラウンジにおける飲食物の提供」並びに第16類及び第35類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和元年6月28日に設定登録されたものである。
(4)国際登録第1453286号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおり「wework」の欧文字を書してなり、2018年(平成30年)7月30日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2019年(平成31年)1月23日国際商標登録出願、第36類「Real estate services, namely, leasing of office space and real estate; rental of office space; rental of shared office space.」及び第43類「Providing food and beverage services; providing meeting room services in the nature of rental of meeting rooms and conference rooms.」並びに第35類に属する国際商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、2020年(令和2年)11月20日に設定登録されたものである。
(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知著名性について
申立人は、2008年に創業したアメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市に本社を置く、コワーキングスペースを提供するアメリカの企業であり、この分野の先駆者的存在である(甲8の1)。
「コワーキングスペース」とは、オフィス空間の共有を意味する「シェアオフィス」に対し、利用者間の交流や協業を生むことを目的とする空間を目指している。2020年時点で、38カ国150都市に840カ所以上のコワーキングスペースの拠点を有し、50万人の会員にコワーキングスペースを提供している(甲5の1)。設立からわずか8年で評価額が2兆円とされるまでに急成長し(甲8の3)、世界中の注目を集めている企業である。発祥のアメリカをはじめ、ヨーロッパではイギリス、フランス等に拠点がある。その他、南米やアジア、イスラエルにもある。アジアでは、中国、ロシア等にネットワークを広げている。
日本においては、申立人は、ソフトバンクとの合弁会社WeWorkJapanを2017年に設立し、2018年2月に日本への上陸を果たした。日本初の拠点となる六本木の「WeWorkアークヒルズサウス」を皮切りに、半年の間に都内ビジネス主要エリアに5つの拠点を構え、2018年8月には6つ目の拠点を増やした。東京以外では、横浜、大阪等の主要都市へ拡張を続け、全国に800以上の拠点を持ち、2020年1月時点で、個人や企業を含めた2万2千を超える会員数を誇っている(甲10の128)。
2018年に日本に上陸した当初は、会員は、スタートアップ企業、小規模企業やフリーランスの個人事業主だったが、近年は、法人会員として、マイクロソフトや、アメリカンエキスプレス、KDDI、みずほ証券等が契約するなど、大企業が会員となる傾向が著しく増加している(甲5の1、甲8の2及び甲8の3、甲10の130)。加えて、民間企業だけでなく、地方自治体が入居するケースも相次ぎ、熊本市等も会員となっている。
さらに、申立人による引用商標のもとに展開しているコワーキングスペースを提供する事業は、これからの多様な働き方を支援し、新しいオフィスの価値を提供するきっかけともなり、政府が推し進める企業や人々の働き方改革にも影響を与えた(甲8の4、甲10の1?甲10の102、甲11の39?甲11の41、甲11の46?甲11の68)。
申立人が、引用商標に係る「コワーキングスペース」を利用した事業を推進していった結果、日本のビジネス成長や雇用に貢献したと紹介されるまでとなった(甲11の38)。
以上の引用商標に係る申立人のコワーキングスペース事業については、2018年に日本に上陸してから現在に至るまで、日本において、毎年、数百万ドル(日本円に換算すると数億円)を上回る広告宣伝費を投下して、引用商標を付したコワーキングスペース事業の広告宣伝活動を行ってきた(甲5、甲6、甲10の1?甲10の130、甲11の1?甲11の89)。
以上によれば、本件商標の出願時である2020年2月1日はもちろんのこと、登録査定時である2020年7月9日においても、引用商標は、申立人の業務に係るコワーキングスペースの事業に使用される商標として、我が国の取引者・需要者において周知著名性を有していたというべきである。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標の類否
本件商標は、「iWork」の欧文字よりなるから、その文字構成から、「アイワーク」及び「私は働く」の観念が生じる。これに対し、引用商標は、「WEWORK」、「WE WORK」あるいは「wework」の欧文字よりなるから、「ウィワーク」の称呼及び「私たちは働く」の観念を生ずる。そこで、両者の観念を比較すると、本件商標の「私は働く」は、引用商標に係る「私たちは働く」を主格(一人称)を単数的に表現したにすぎず、働く主体が単数か複数かの相違にすぎないものであり、「働く」という行為の面をごく普通に捉えれば、その意味は同じであって、結局のところ「わたし」といっても「私たち」といっても「(主体である私(私たち))が働くこと」を認識させることに変わりはないというべきである。本件商標に係る欧文字部分について、小文字の「i」の後に続く「work」の頭文字を大文字とする必要はないところを、「Work」と頭文字を大文字にしていることに鑑みても、「働く」という行為を強調させているようにみえる。そうとすれば、本件商標と引用商標は、共に「(主体である私(私たち))が働く」といった観念を生ずるといえるものである。してみれば、本件商標と引用商標は、観念において類似する商標というべきである。
そして、本件商標と引用商標とは、外観上においても後半の「WORK」部分を共通し、称呼上も語頭の「ア」と「ウ」以外の「イワーク」部分を共通にする。
さらに、単数形か複数形にすぎない「i」や「WE」、両商標の共通部分である「WORK」は、英和辞典において、基本単語として最重要語と位置付けられているように(甲7)、我が国において非常に馴染みのある語であるから、需要者は「私は働く」を意味する本件商標が、「私たちは働く」を意味する引用商標とは何らかの関係を有するものと取引者、需要者に想起させるとみるべきである。この事実に加えて、本件商標の指定役務はまさに引用商標の中心事業である「コワーキング用事務所の貸与」を指定している点を併せ考えると、両者に接する需要者等は、その語頭が「i(私)」なのか「WE(私たち)」なのかについて厳密な注意を払わず、両商標のもとに提供される役務を、「私(私たち)が働くコワーキングスペース」といった程度の認識だけで特定してしまうおそれがあり、あたかも引用商標のもとに提供されている「コワーキング」事業の一つの形態あるいは新シリーズであるかのように理解されるおそれがあるから、需要者をしてその出所につき混同を生ぜしむる可能性がある商標と言うべきである。
してみれば、本件商標と引用商標は、上記した両商標から想起される関連性及び両商標の称呼上及び外観上の紛らわしさを総合すれば、互いに類似のものというべきである。
加えて、申立人は、2008年に創業して以降、日本においては2018年以降、「コワーキングスペース」を提供する事業について、多額の広告宣伝費を投じて、引用商標の使用を重ねてきており、その結果周知著名となっている商標であり、このような引用商標の使用実績を無視することはできない筈であるから、本件商標に独占排他権を付与すべきではなく、本件商標は、引用商標との間に混同を生ずる可能性がある商標であると判断されるべきである。
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは互いに類似するものであり、引用商標の指定役務と同一又は類似の指定役務であって、かつ、引用商標の後願に係るものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 引用商標の周知著名性
引用商標に係る「WEWORK」商標は、申立人が2008年の創業から現在に至るまで10年以上にわたって一貫して使用してきたものであり、現在では、申立人の業務に係る役務を表すものとして、高い周知著名性を維持、向上させてきている。そして、引用商標は、「コワーキングスペース」事業に限らず多様な働きかたを支援し、新しいオフィスの価値を提供するきっかけともなり、我が国においては、政府や行政が推し進める企業や人々の働き方改革にも影響を与えたことにより、取引者及び需要者の間に広く知られたところとなっている。
イ 商標の類似性の程度
本件商標と引用商標の類似性については、上記で述べたとおりであり、本件商標と引用商標は、観念上及び称呼上の類似性の程度は極めて高いといわなければならない。
ウ 本件商標の指定役務と引用商標の使用役務との関連の程度、役務等の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定役務に係る「コワーキング用事務所の貸与」や「会議室の貸与、展示施設の貸与」等は、申立人が使用し周知著名性を有する引用商標に係る役務「コワーキングスペース」の提供事業と同一又は類似の役務である。したがって、両役務の提供の手段や目的、業種及び需要者の範囲がすべて一致する。
エ 周知著名商標が考慮された判決・異議決定・審判決例
審決等例においても、周知著名な商標であることが考慮されて、本件事案のように、両商標の間に語頭1音の差異しかない商標が商標法第4条第1項第15号に該当すると判断されている。
そうすると、本件においても、本件商標の「iWork」と引用商標の「WEWORK」を対比すると、語頭1音の差異のみであり、それを除く「イワーク」の称呼及び「WORK」の部分が共通し、さらに「私(私たち)が働く」といった観念が共通するから、審決例に鑑みれば、引用商標の周知著名性と相まって、両商標は相紛らわしく、出所の混同が生じるというべきである。
オ 以上述べたとおり、本件商標と引用商標との観念上及び称呼上の類似性、申立人の引用商標が周知著名性を獲得していること、申立人が周知著名性を獲得しているコワーキングスペース分野の役務を本件商標が指定役務としている点等の取引の実情(共通性)などに照らし、当該商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人若しくは申立人と何等かの関係がある者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人は、前記2記載の引用商標の周知著名性を主張しているところ、申立人の提出した証拠によれば、我が国において、平成30年(2018年)2月以降に申立人の業務に係る役務について使用されている商標は、「WeWork」の文字(「W」の文字だけを大文字で表した構成態様は、引用商標には存しない。)及び「wework」の文字を太字で表示してなる引用商標4と同一の構成態様の商標(以下、これらを「使用商標」という。)であって、前記2の引用商標(「WEWORK」の文字からなる商標を含む。)が全て使用されているわけではない。
そこで、申立人の業務に係る役務について、使用商標が、本件商標の登録出願時(令和2年(2020年)2月1日)及び登録査定時(同年7月3日)に、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標であるか否かについて検討する。
ア 申立人の主張及び申立人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)「Sankei News 2020年2月3日付記事」によれば、「WeWorkの最新データについて」として、「日本(2月時点)」の項目に「6都市 27拠点 メンバー22,000人以上(*メンバー数については2019年12月時点)」及び「※東京19拠点、横浜1拠点、名古屋1拠点、大阪3拠点、神戸1拠点、福岡2拠点」と記載されている。
また、同記事中の「世界(11月時点)」の項目に「33カ国 127都市 625拠点 メンバー約600,000人以上」と記載されている。
さらに、同記事中の「WeWork Japan合同会社の概要」の項目に「WeWorkは、2010年創業、ニューヨークに本社を置き、全世界の地域でコミュニティ型ワークスペースを提供・運営する企業です。2018年2月に日本で初めての拠点を開設。ベンチャー企業から大企業まで、多種多様な業種の方々がメンバーとして参加しており、世界中のコミュニティを通じて、お互いに刺激し合えるコラボレーション環境を提供しています。」と記載されている(甲10の127)。
(イ)「MdN Design INTERACTIVE」(2019年1月9日付)によれば、「こんなオフィスで働きたい!今、注目の次世代感覚のコミュニティ型ワークスペースWeWork」の見出しの下、「すでに数年前から、IT関連のフリーワーカーなどに積極的に利用されはじめているコワーキングスペース。従来の賃貸物件とは異なり、非常にフレキシブルな契約形態を擁することで、フリーランスから企業まで“固定コストを低減”したうえで、利便性の高いオフィスを持てるという大きなメリットが存在する。」と記載されている(甲11の1)。
(ウ)「Forbes JAPAN」(2019年7月1日付)によれば、「WeWorkが初の調査結果を発表-世界で68万件の仕事をサポート、8割が生産性向上を実感」の見出しの下、「全世界28カ国、105都市でビジネスを展開しているWeWork。創業から9年でワークスペースの数は485拠点にまで拡大し、メンバー数も約46万6000人(2019年3月時点)を超えているという。日本では、東京、横浜、大阪、福岡、名古屋に次いで、11月に神戸にもオープンすることを発表。2019年は昨年の2倍のペースで新拠点をオープンしている。」と記載されている(甲11の37)。
(エ)申立人と横浜市との提携の記事情報として、「INTERNET Watch」(2019年8月20日付)によれば、「横浜市がWeWorkと覚書を締結、企業の誘致や中小企業への支援で協力」の見出しの下、「横浜市とWeWork Japan合同会社は14日、スタートアップ企業や中小企業の支援、企業誘致などを共同で行うとした覚書を交わしたと発表した。同市によると、WeWorkとの覚書締結は、国内自治体として初めてだという。」と記載されている(甲11の54)。
(オ)申立人と神戸市との提携の記事情報として、「神戸新聞」(2019年8月30日付)によれば、「共有オフィスの活用促進へ 神戸市とウィーワーク連携」の見出しの下、「共有オフィス運営の『ウィーワーク ジャパン』(東京)と神戸市は30日、東京都内で会見し、同社が神戸・三宮に11月に開設する共有オフィスの利用者向けに、賃貸料などを補助・優待する制度を創設すると発表した。両者が連携してオフィスの活用を促進し、スタートアップ企業、市外、外国・外資企業の神戸進出を後押しする。」と記載されている(甲11の57)。
イ 上記アによれば、申立人は、2010年に創業したコワーキングスペースを提供するアメリカの企業であって、各国に拠点を有しており、我が国においては、平成30年(2018年)2月に初の拠点を開設して以降、2つの自治体との連携も含め、順次、拠点先を拡大していることがうかがえる。
しかしながら、本件商標の登録出願時(令和2年(2020年)2月時点)における、申立人による我が国でのコワーキングスペースの提供場所は、全国6都市に27拠点、メンバー数も約22,000人にすぎないものである(メンバー数については令和元年(2019年)12月時点)。
また、我が国における使用商標の周知性の程度を客観的に判断するためのその他の具体的な事実、例えば、売上実績、市場占有率や、使用商標を使用して広告・宣伝した時期、回数、方法、費用等については、何ら具体的な主張立証がなされていない。
その他、申立人提出の甲各号証を総合してみても、使用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足る証拠は見いだせない。
したがって、提出された証拠によっては、使用商標及び引用商標(使用商標とは大文字、小文字の違い等の差異があるものが存する。)が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものである。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、「iWork」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の語頭の「i」と第3文字ないし第5文字の「o」「r」「k」が小文字で表され、第2文字の「W」が大文字で表されており、文字全体の書体は同一で、等間隔に表されているものである。
そして、構成中の「i」の文字を大文字「I」と表記する場合は、「私は、私が」を意味する英語の代名詞として捉えられるとしても、その構成中の「i」の文字から直ちに「私は、私が」を想起するとはいい難く、また、そのように判断すべき特別の事情を有するとも認めることができないし、「Work」の文字が「仕事、働く」などを意味する英単語として知られているものであるとしても、かかる構成においては、本件商標は、その構成文字全体をもって、特定の観念を想起させない一体不可分の造語を表したと把握し、理解されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「アイワーク」の称呼を生じるものであって、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標1は、「WEWORK」の欧文字を書してなり、引用商標2は、「WEWORK」の文字及び引用商標3は、「WE WORK」の文字を標準文字で表してなり、引用商標4は、「wework」の欧文字を書してなるところ、引用商標1ないし引用商標3は、すべて大文字で表され(引用商標3は、「WE」と「WORK」の各文字の間に一文字程度の間隔を空けて表されている。)、引用商標4は全て小文字で表されており、当該文字は、それぞれ英単語の「WE(we)」及び「WORK(work)」の文字から構成されると見るのが自然であって、引用商標を構成する「WE(we)」の文字が「私たち」を意味する英単語として、また、「WORK(work)」の文字が「仕事、働く」などを意味する英単語として、それぞれ我が国において知られているものであるから、全体として「私たちは働く」程の意味を認識させるものといえる。
したがって、引用商標は、その構成文字に相応して「ウィワーク」の称呼を生じ、「私たちは働く」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類似性
本件商標と引用商標とを比較するに、外観において、それぞれの欧文字部分を比較しても、本件商標は2文字目以降及び引用商標は3文字目以降の4文字を同じくするとしても、文字を識別する上で極めて重要となる語頭において、「i」の文字と「WE(we)」の文字との差異を有し、その差異が両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくなく、5文字ないし6文字という比較的短い文字構成からすれば、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれはなく、外観上十分に区別し得るものといえる。
次に、本件商標から生ずる「アイワーク」の称呼と引用商標から生ずる「ウィワーク」の称呼とを比較すると、両称呼は、共に長音を含む4音という短い音構成からなるところ、どちらも称呼の識別上重要な要素である語頭において、「アイ」の音と「ウィ」の音に差異を有するものであり、該差異が共に4音という短い音構成である称呼全体に及ぼす影響は少なくなく、それぞれを一連に称呼するときは、聴者をして、容易にその差異を認識でき、称呼上、十分に聴別可能であると認められるものである。
また、本件商標は、特定の観念は生じず、引用商標は、「私たちは働く」の観念を生じるから、観念上相紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似であるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
また、上記(2)ウのとおり、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、全体として異なる視覚的印象や記憶を与え、看者に別異のものとして認識されるものといえるものであって、類似性の程度は低いものといわなければならない。
そうすると、上記に照らし、本件商標の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標をその指定役務について使用した場合に、これに接する取引者、需要者は申立人を連想、想起するようなことはないというべきであるから、その取引者、需要者をして、該役務が申立人又は同人と業務上何らかの関係を有する者の取扱業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。
その他、本件商標が申立人の業務に係る役務について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではなく、その登録は同条第1項の規定に違反してなされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標4)


異議決定日 2021-04-28 
出願番号 商願2020-11256(T2020-11256) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 262- Y (W43)
最終処分 維持 
前審関与審査官 守屋 友宏片桐 大樹 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 森山 啓
小田 昌子
登録日 2020-07-17 
登録番号 商標登録第6271212号(T6271212) 
権利者 株式会社ディメッション
商標の称呼 アイワーク 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 廣中 健 
代理人 池田 万美 
代理人 田中 克郎 
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