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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20208410 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 外観類似 登録しない W43
審判 査定不服 観念類似 登録しない W43
審判 査定不服 称呼類似 登録しない W43
管理番号 1375178 
審判番号 不服2020-11923 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-26 
確定日 2021-06-09 
事件の表示 商願2019- 36652拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成31年3月12日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして,本願の拒絶の理由に引用した登録商標は,以下のとおりであり,いずれの商標権も現に有効に存続している。
1 登録第5477624号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,平成23年8月11日に登録出願,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,同24年3月9日に設定登録されたものである。
2 登録第5885163号商標(以下「引用商標2」という。)は,「万福」の文字を標準文字で表してなり,平成28年3月18日に登録出願,第43類「飲食物の提供,おしぼりの貸与,食器の貸与」を指定役務として,同年9月30日に設定登録されたものである。
以下,引用商標1と引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)商標の類否について
商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照)。
また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,一個の商標から二個以上の称呼,観念の生ずることがあると解される(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁参照)。
(2)本願商標について
本願商標は,別掲1のとおり,牛とおぼしきシルエットと,樹木とおぼしき図とを円で囲み,赤の色彩を施した図形を配し,その右側に「まんぷく」の文字を横書きに配してなるものである。
そして,図形部分と文字部分とは,色彩の有無や,図形部分と文字部分とが接して配されていないなど,視覚上分離して看取されると共に,観念においても,図形部分と文字部分とを,常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだせない。
そうすると,図形部分と文字部分とは,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないものであるから,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものであると解される。
そして,「まんぷく」の文字部分は,独立して,自他役務識別標識としての機能を果たし得るものであって,「幸福の多いこと」を意味する「万福」及び「腹がいっぱいになること」を意味する「満腹」等(いずれも「広辞苑第七版」)の漢字の読みを平仮名で表したものである。
以上を踏まえれば,本願商標は,「まんぷく」の文字部分に相応して「マンプク」の称呼が生じ,「幸福の多いこと(万福)」又は「腹がいっぱいになること(満腹)」の観念が生じるものである。
(3)本願商標と引用商標1の類否について
引用商標1は,別掲2のとおり,「吉」の文字を顕著に表し,当該文字の右には縦書きの「かつどん」の文字を,左下には四角枠で囲んだ縦書きの「満福」の文字を,それぞれ小さな字で配してなるものである。そして,その構成中の「かつどん」の文字は,指定役務との関係では,提供する料理の内容を表すものであるから,自他役務の識別標識としては機能し得ないものである。また,構成中の「吉」の文字と「満福」の文字とは,字の大きさ,書体,色彩の有無等において顕著な差異があり,視覚上分離して看取されると共に,観念上においても,両文字を,常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだせない。また,それぞれが独立して,自他役務識別標識としての機能を果たし得ないとみるべき事情はない。
そうすると,引用商標1は,「満福」の文字部分に相応した「マンプク」の称呼をも生じ,当該文字部分は辞書等に載録のないものであるから,これよりは特定の観念は生じない。
そこで,本願商標と引用商標1との類否について検討するに,外観においては,その構成全体が相違することに加え,引用商標1は顕著に表された「吉」の文字が最も看者の注意を引くことから,両者は判然と区別し得るものである。
次に,称呼についてみるに,本願商標及び引用商標1からは,いずれも「マンプク」の称呼が生じるものであるから,両者は,その称呼を共通にするものである。
さらに,観念についてみるに,本願商標からは,「幸福の多いこと(万福)」又は「腹がいっぱいになること(満腹)」の観念が生じ,引用商標1から生じる特定の観念は,「吉」の文字部分に相応した「よいこと。めでたいこと。」(広辞苑第七版)のみであるから,両者の観念は相違する。
そうすると,本願商標と引用商標1とは,称呼において共通する場合があるとしても,外観において明らかに相違し,観念においても相違することから,外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)本願商標と引用商標2の類否について
引用商標2は,「万福」の文字を標準文字で表してなるところ,「万福」の文字は,「幸福の多いこと」を意味する語であり,その読み方は「マンプク」又は「バンプク」である(広辞苑第七版)。
してみれば,引用商標2からは,「マンプク」又は「バンプク」の称呼が生じ,「幸福の多いこと」の観念が生じるものである。
そこで,本願商標と引用商標2との類否について検討するに,本願商標と引用商標2の外観については,図形の有無等に差異が認められる。しかしながら,本願商標の文字部分と引用商標2との比較においては,「まんぷく」と「万福」は,平仮名と漢字という点において相違するものの,我が国においては,漢字を同じ称呼の平仮名で表記することが一般的に行われていることを考慮すると,文字種が異なることによる本願商標と引用商標2の外観の相違は,両商標が別異のものであると認識させるほどの強い印象を与えるものではない。
次に,称呼についてみるに,本願商標及び引用商標2からは,いずれも「マンプク」の称呼が生じるものであるから,両者は,その称呼を共通にするものである。
さらに,観念についてみるに,本願商標から生じる「幸福の多いこと(万福)」の観念と,引用商標2から生じる「幸福の多いこと」の観念は共通するものである。
そうすると,本願商標と引用商標2とは,称呼及び観念を共通にするものであり,外観において相違する点があるとしても,称呼及び観念を共通にすることによる称呼上及び観念上の類似性を凌駕するほどの顕著な差異があるとはいえないことからすれば,本願商標と引用商標2の外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は,全体として役務の出所について誤認混同を生じるおそれがある類似の商標と判断するのが相当である。
(5)本願商標の指定役務と引用商標2の指定役務との類否について
本願商標の指定役務「飲食物の提供」と,引用商標2の指定役務中の「飲食物の提供」は,同一の役務である。
(6)小括
以上のとおり,本願商標は,引用商標1とは非類似の商標であるものの,引用商標2と類似する商標であって,引用商標2の指定役務と同一の役務について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は,「まんぷく」や「万福」の文字は,飲食物の提供に係る分野において,店舗の名称に多数用いられているから,自他役務を識別する機能は弱い旨主張している。
しかしながら,特定の文字や語が,店舗の名称又はその一部に採用されていることのみをもって,直ちに当該文字や語が自他役務の識別標識としての機能が弱いということはできない。
(2)請求人は,本願商標と引用商標2とは,称呼及び観念が一部共通するものの,外観においては,一見して判然と区別し得る顕著な差異を有するものであり,称呼においても,引用商標2から生じる「バンプク」の称呼との比較においては,明確に区別することができ,また,飲食物を提供する分野においては多くの場合,需要者が役務の提供場所に出向いて役務の提供を受ける実情があることを併せ考慮すれば,「マンプク」の称呼以外の要素を加味して各店舗を区別しているとみるのが自然である旨主張する。
しかしながら,上記1のとおり,本願商標の文字部分と図形部分は,これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合したものとはいえないこと,また,文字部分については,文字種を相互に変換して使用をすることは一般に行われていることであるうえに,引用商標2は標準文字で表されていて特殊な態様で表示されてはいないことからすれば,本願商標と引用商標2の外観の相違は,両商標が別異のものであると認識させるほどの強い印象を与えるとはいい難いものである。
また,引用商標から「バンプク」の称呼が生じる場合があるとしても,「マンプク」の称呼をも生じることは上記1のとおりであり,さらに,飲食店において,「万福」の文字の読みを特定するために平仮名の「まんぷく」を併記している事例は,請求人提出の資料中,甲第4号証,甲第41号証及び甲第43号証からも確認することができる。
してみれば,引用商標2から「バンプク」の称呼を生じる場合があることや,需要者が飲食店へ出向くことがあるとしても,それが上記の類否判断に影響を及ぼすことはないというべきである。
(3)請求人は,過去の審決例を挙げて,本願商標と引用商標とも同様に捉えるべき旨主張する。
しかしながら,商標の類否の判断は,対比する商標について個別具体的に判断されるべきものである。また,本願商標と引用商標2とは,特定の意味を有する既成語と,その読み方を平仮名で表したものの関係にあたるなど,上記審決例と本願とは事案を異にするものであるから,当該審決例によって,ただちに本願商標の認定が左右されるものではない。
(4)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することはできない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。


別掲

別掲1(本願商標)(色彩は,原本を参照。)



別掲2(引用商標1)(色彩は,原本を参照。)




審理終結日 2021-03-25 
結審通知日 2021-03-29 
審決日 2021-04-15 
出願番号 商願2019-36652(T2019-36652) 
審決分類 T 1 8・ 263- Z (W43)
T 1 8・ 261- Z (W43)
T 1 8・ 262- Z (W43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 勉杉本 克治 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 小田 昌子
茂木 祐輔
商標の称呼 マンプク 
代理人 特許業務法人スズエ国際特許事務所 

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