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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W25
管理番号 1375005 
審判番号 取消2020-300465 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-06-26 
確定日 2021-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5925062号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5925062号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成27年9月29日に登録出願され、第25類「被服,皮革製被服,模造皮革製被服,ニット製被服,ジャージー製被服,新生児用被服,作業服,制服及びユニフォーム,外衣,ティーシャツ,プルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,半ズボン,パジャマ,パンティ,キャミソール,下着,ソックス,水泳着,海浜用衣服,水上スキー用ウエットスーツ,帽子,バンダナ,手袋,ベルト,サンダル,ビーチシューズ,ブーツ,ハーフブーツ,編上靴,運動靴及び運動用特殊靴,スキー靴,スキー用手袋,サーフィン用特殊衣服,サーフィン用ウェットスーツ,スノーボード用衣服」を指定商品として、同29年2月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和2年7月27日になされたものであり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年(2017年)7月27日から令和2年(2020年)7月26日までの期間(以下「本件要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証(以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように、「第」及び「号証」を省略して記載する。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用されていないものであるから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取消しされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人提出の審判事件答弁書及び乙1ないし乙12は、要旨以下のとおり、本件要証期間内の本件商標の使用を十分に立証できていない。
(1)商標権者による本件商標の使用
ア 商品「コーチジャケット」、「ロングスリーブティーシャツ」及び「ショートスリーブTシャツ」について
被請求人は、これらの商品について、本件商標を使用していることを証明するために、審判事件答弁書及び乙1ないし乙12を提出している。
しかしながら、乙1ないし乙12には、これらの商品について、本件商標と同一の商標の使用を特定するだけの明確な情報が含まれておらず、本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、本件商標の使用について十分な立証を行っていない。
また、乙1ないし乙12において実際に使用されている商標(ロゴ)は、「Old School」の文字を含む点では本件商標と共通するものの、「School」の文字部分の下にある下線のような図形、「Not a Fad!」の文字、「*Old School*」と一体となり円を形成する「International」の文字及び飛行機のような図形といった異なる構成要素を組み合わせて構成される結合商標である。つまり、これらの結合商標は、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」又は「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」のいずれにも該当しないから、本件商標と社会通念上同一であるとはいえないことは明らかである。
したがって、商品「コーチジャケット」、「ロングスリーブティーシャツ」及び「ショートスリーブTシャツ」について、本件商標が本件要証期間内に使用されていたとはいうことができないから、その登録は取り消されるべきである。
イ 「コーチジャケット」、「ロングスリーブティーシャツ」及び「ショートスリーブTシャツ」以外の商品について
被請求人は、乙1ないし乙12において、本件商標を、「コーチジャケット」、「ロングスリーブティーシャツ」及び「ショートスリーブTシャツ」以外の本件商標の指定商品について使用していることを、全く主張、立証していない。
したがって、「コーチジャケット」、「ロングスリーブティーシャツ」及び「ショートスリーブTシャツ」以外の本件商標の指定商品についても、本件商標が本件要証期間内に使用されていたとはいうことができないから、その登録は取り消されるべきである。
(2)各証拠の検討
ア 乙1ないし乙3
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「Old Schoolコーチジャケット制作、納品書(写し)」(乙1)、「Old Schoolロングスリーブティーシャツ制作、納品書(写し)」(乙2)及び「Old SchoolショートスリーブTシャツ制作、納品書(写し)」(乙3)を提出している。
乙1ないし乙3が、康貿易商事株式会社により、2019年10月8日付けで発行された納品書であることは確認できるものの、発行元である同社の押印がなく、証拠としての信ぴょう性に欠ける。また、商標権者と当該納品書(乙1ないし乙3)を発行している同社との関係について、商標権者は何ら主張、立証していない。加えて、乙1ないし乙3からは、商標権者の住所と実質的に同一の住所に所在する「Old School」を宛先としていることが確認できるものの、これらの証拠には、納品の対象となっている商品に実際に本件商標が使用されていたのかどうかについての情報が記載又は
主張、立証されておらず、全く確認することができない。
さらには、商標権者が審判事件答弁書の「8.証拠方法」で乙1ないし乙3について主張する「コーチジャケット」、「ロングスリーブティーシャツ」及び「ショートスリーブTシャツ」は、乙1ないし乙3の納品書中では、それぞれ、「ウィンドブレーカーウラアリ チャコール」及び「ウィンドブレーカーウラアリ ネイビー」、「長袖ポケットTホワイト」並びに「ウルトラコットンT」と記載されており、商品の同一性を欠いている。
よって、乙1ないし乙3に関する上記の不明確な情報を考慮すると、乙1ないし乙3が、それぞれ、被請求人が主張したとおりのものであるか否かが疑わしいといわざるを得ない。
したがって、このような不明確な情報に基づく乙1ないし乙3は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
イ 乙4
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「Old Schoolネームラベル(タグ)画像(写し)」(乙4)を提出している。
乙4は、その上部に「ネームラベル(タグ)」と思われる画像が配され、その下部には、複数の「ネームラベル(タグ)」が多少重なり合って配置された写真の写しが配されていることが確認できる。乙4の「ネームラベル(タグ)」には、青色で表された本件商標と、「SELECTIONS AND MADE BY Old School」の文字が含まれているものの、これらの「ネームラベル(タグ)」が、どのような商品に使用されているのか、また、いつの時点からどのように使用されているのか、商標権者は全く主張、立証していない。
よって、このような不明確な情報に基づく乙4は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
ウ 乙5
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「Old School商品カタログ画像(写し)」(乙5)を提出している。
乙5は、6枚の画像によって構成されていることが確認できるものの、これらの画像が、実際に商標権者の発行する商品カタログに使用・掲載されたかどうかについて、商標権者は一切、主張、立証していない。加えて、当該商品カタログが本件要証期間内に発行されているかどうかについても不明であり、かつ商標権者は一切、主張、立証していない。
さらに、これら6件の画像においては、本件商標と異なる商標(ロゴ)が使用されていることが確認できる。これらの商標(ロゴ)は、前記(1)アのとおり、本件商標と社会通念上同一であるとはいえないことは明らかである。
以上より、乙5は、実際の商品カタログヘの使用・掲載の有無及びその時期が不明であることに加え、「Old School」の文字を含むものの本件商標と社会通念上同一とはいえない他の構成要素を含む結合商標の態様で商品に使用されているものであるから、このような不明確な情報に基づく乙5は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
エ 乙6
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「Old School商標商品画像(写し)」(乙6)を提出している。
乙6は、上段、中段及び下段にある3枚の画像によって構成されている。しかしながら、上段及び中段の画像は、いずれも「Old School」の文字の一部分しか確認することできないため、本件商標が、実際に使用されているどうかが不明確であるから、本件商標の使用を証明する証拠には該当しない。
下段の画像は、シャツの中央部分に、青色の筆記体で「Old School」(Schoolの文字部分の下には、下線のような図形がある。)と「Not a Fad!」の文字を二段書きで表したロゴが入った商品の画像であることが確認できる。しかしながら、この商標(ロゴ)は、前記(1)アのとおり、本件商標と社会通念上同一であるとはいえないことは明らかである。よって、本件商標の使用を証明する証拠には該当しない。
さらには、乙6の商品が、いつの時点で実在したのか、また販売されたのかなど、商標権者は、全く主張、立証していない。さらには、上記商標(ロゴ)が使用されている商品が、「Tシャツ」なのかそれとも他の被服なのか、具体的な情報が主張、立証されていない。したがって、このような不明確な情報に基づく乙6は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
オ 乙7
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「Old School(鎌田 樹facebook)及びInstagram(oldschoolshigeru)販売告知画像(写し)」(乙7)を提出している。
乙7には、本件商標と思われる青色の商標のほか、複数の商標が告知画面に含まれているとともに、「2019年11月25日からキラー通りC.O.D.にて春夏物を先行展示販売」する旨が記載されている。しかしながら、当該展示販売にて、具体的に本件商標が、実際に使用されているかどうかが不明確であるため、本件商標の使用を証明する証拠には該当しない。
加えて、仮に、乙7の「今回T-Shirtsにnot a fad!」という部分から、「Old School」(「School」の文字部分の下には、下線のような図形がある。)と「Not a Fad!」の文字を二段書きで表したロゴを使用した商品が当該展示販売で販売されていたとしても、当該ロゴは、前記(1)アのとおり、本件商標と社会通念上同一であるとはいえないことは明らかである。よって、このような不明確な情報に基づく乙7は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
カ 乙8
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「C.O.D.への委託販売納品書(写し)」(乙8)を提出している。
乙8は、商標権者と思われる「Old School SHIGERU KAMATA」により、2019年11月24日付けで発行された委託納品書であることは確認できるものの、発行元である「Old School SHIGERU KAMATA」の押印がなく、証拠としての信ぴょう性に欠ける。また、納品の対象となっている商品に実際に本件商標が使用されていたのかどうかについての情報が記載又は主張、立証されておらず、全く確認することができない。さらには、商標権者と当該納品書(乙8)の宛先となっているC.O.D.との関係について、商標権者は何ら主張、立証していない。また、インターネットで検索したところ、甲2のとおり、C.O.D.は、青山キラー通りにあるアメリカンカルチャーの老舗バーとして紹介されており、被服を取り扱う衣料品店ではないようであるから、ますます商標権者との関係性が不明確であるといえる。
よって、このような不明確な情報に基づく乙8は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
キ 乙9
被請求人は、本件登標の使用を示す証拠として、「C.O.D.にて展示販売を示すfacebook画像(写し)」(乙9)を提出している。
しかしながら、乙9は、本件商標の使用を何ら立証するものではない。
乙9においては、商標権者の友人の思われる2、3名のfacebookユーザーとのコミュニケーションの履歴が確認できる。また、そのうち1名(U氏)は、「ピンク購入しました」とのコメントをしているため、その上部に掲載されている「Old School」(Schoolの文字部分の下には、下線のような図形がある。)と「Not a Fad!」の文字を二段書きで表したロゴが入った商品を購入したことが推測されるが、この点に関し、乙9から、その購入を裏付けることができる十分な情報や主張、立証が含まれていない。加えて、商標権者は、乙9に示すC.O.D.にて展示販売における販売商品数や売り上げなどの情報を全く明らかにしておらず、実際に展示販売が行われたことを裏付ける証拠が全く提出されていない。さらには、「Old School」(Schoolの文字部分の下には、下線のような図形がある。)と「Not a Fad!」の文字を二段書きで表したロゴは、前記(1)アのとおり、本件商標と社会通念上同一であるとはいえないことは明らかである。よって、本件商標の使用を証明する証拠には該当しない。
同様に、乙9においては、上記に加え、2点の写真がfacebook上に掲載されており、いずれも、黒又は紺色の上着らしき商品の中央部分に、「International*Old School*」の文字を円形に配し、中央部に飛行機のような図形を含む白いロゴが入った商品が含まれているようにもみえる。しかしながら、これらの写真は不鮮明で、乙9からは、当該商品を購入したことを確認することはできない。さらには、上述のロゴは、「Old School」の文字を含む点では本件商標と共通するものの、前記(1)アのとおり、本件商標と社会通念上同一であるとはいえないことは明らかである。
よって、このような不明確な情報に基づく乙9は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
ク 乙10
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「商品ダイレクトメール注文やりとり、納品書、発送伝票の画像(写し)」(乙10)を提出している。
乙10は、商標権者と推定される「Old School SHIGERU KAMATA」により、2019年12月12日付けで発行された納品書であることは確認できるものの、乙10の納品書には押印がなく、証拠としての信ぴょう性に欠ける。また、商標権者と当該納品書(乙10)の宛先となっているSurf SalonのY氏との関係について、商標権者は何ら主張、立証していない。
また、乙10においては、納品の対象となっている商品に実際に本件商標が使用されていたのかどうかについての情報が記載又は主張、立証されておらず、全く確認することができない。加えて、Surf Salonのウェブサイト(甲3)において、本件商標が使用された商品が掲載されているか確認したが、見つけることができなかった。
よって、このような不明確な情報に基づく乙10は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
ケ 乙11
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「Old School名義口座の預金通帳(写し)」(乙11)を提出しているが、当該銀行口座保有の事実は、本件商標に係る指定商品についての本件商標の使用を何ら立証するものではない。
したがって、乙11は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
コ 乙12
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「準備中のインターネット販売サイトSTORESの画像(写し)」(乙12)を提出している。
乙12からは、ウェブサイトと思われる画像の中央に「Old School」の文字が表示され、その上の赤い帯状の部分には、「現在ストアは非公開設定です。ストア設定より公開設定が可能です。」との文章が確認できるものの、ウェブサイトのURLが不鮮明で読み取ることができないため、当該ウェブサイト自体が、現実に存在するものであるか確認することが不可能である。加えて、商標権者は、当該ウェブサイトを「準備中」であると説明しているものの、乙12に係るウェブサイトが、本件要証期間内に存在するものであるのか、いつの時点で準備中の状態であったかについて、全く主張、立証していない。さらには、仮に、当該ウェブサイトにおいて、どのような商品を販売する予定であるか、また、当該販売予定の商品に、本件商標が使用されているのかどうかについても全く主張、立証していない。
よって、このような不明確な情報に基づく乙12は、本件商標の本件要証期間内における使用を何ら立証するものではない。
(3)結語
以上のとおり、被請求人によって提出された証拠によっては、本件商標の使用の事実は何ら証明されていないから、本件商標の登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙12を提出している。
乙1は、Old Schoolコーチジャケット制作、納品書(写し)である。
乙2は、Old Schoolロングスリーブティーシャツ制作、納品書(写し)である。
乙3は、Old SchoolショートスリーブTシャツ制作、納品書(写し)である。
乙4は、Old Schoolネームラベル(タグ)画像(写し)である。
乙5は、Old School商品カタログ画像(写し)である。
乙6は、Old School商標商品画像(写し)である。
乙7は、Old School(鎌田 樹facebook)及びInstagram(oldschoolshigeru)販売告知画像(写し)である。
乙8は、C.O.D.への委託販売納品書(写し)である。
乙9は、C.O.D.にて展示販売を示すfacebook画像(写し)である。
乙10は、商品ダイレクトメール注文やりとり、納品書、発送伝票の画像(写し)である。
乙11は、Old School名義口座の預金通帳(写し)である。
乙12は、準備中のインターネット販売サイトSTORESの画像(写し)である。
本件商標の指定商品の範ちゅうに属する本件商標を使用した商品は、2019年に制作し、鎌田 樹 facebook(https://www.facebook.com/shigeru.kamata.3)及びInstagram(@oldschoolshigeru)にて告知し、同年11月25日より、青山キラー通りのC.O.D.にても展示販売を開始している。
本件商標を使用した商品は、実存し、商標権者により使用している事実がある。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。なお、乙10は、2019年12月12日付け納品書に係る部分、電子メールのやり取りに係る部分及び発送伝票に係る部分の3部分からなるため、以下、それらに言及する場合は、それぞれ、「乙10納品書部分」、「乙10電子メール部分」及び「乙10発送伝票部分」という。
(1)2019年10月8日に、「康貿易商事株式会社」から、住所を本件商標の登録原簿に記載された商標権者の住所とする「Old School」宛てに「長袖ポケットT ホワイト(030)」が、S、M、L及びXLの各サイズについて、それぞれ、2枚、10枚、12枚及び1枚、合計25枚納品された(乙2。なお、乙2は、2019年10月8日付け納品書であり、以下「乙2納品書」という。)。
(2)撮影日は明らかではないものの、商品カタログ画像(写し)(乙5)及び商標商品画像(写し)(乙6)とされるものには、胸にポケットがあり、当該ポケット、袖部分には不鮮明であるが何らかの文字が表示され、また、背面部分に「Old School Not a Fad!」と表示された長袖の白色Tシャツが写されている。
(3)Y氏は、2019年12月11日21時7分、被請求人に対し、自身の住所、氏名及び電話番号を内容とする電子メールを送信した(乙10電子メール部分)。
(4)被請求人は、同日21時30分、Y氏に対し、前記(3)の電子メールの内容を確認した旨、及び、翌12日には発送できると思われる旨を内容とする電子メールを送信した(乙10電子メール部分)。
当該電子メールには、被請求人の氏名及び電話番号のほか、「shigeru kamata」のメールである旨記載されている。
(5)Y氏は、同月12日9時14分、被請求人に対し、前記(4)の電子メールの内容を承知した旨を内容とする電子メールを送信した(乙10電子メール部分)。
(6)被請求人は、依頼主欄に「Old School」、住所(本件商標の登録原簿に記載された商標権者の住所と同一の住所)及び電話番号、届け先欄にY氏の氏名、住所及び電話番号、品名欄に「洋服」、配達希望日欄に「12月13日」とそれぞれ記載した発送伝票(以下、この発送伝票を「本件発送伝票」という。)を作成した(乙10発送伝票部分)。
そして、本件発送伝票に記載されたY氏の氏名、住所及び電話番号は、前記(3)においてY氏により伝えられた内容と同一である。
(7)2019年12月12日付け納品書(以下「本件納品書」という。)には、納品元として、「Old School」の欧文字(その右側に、少し間隔をあけて、判読しがたい略円形図形が配されている。)、「SHIGERU KAMATA」の欧文字、電話番号及び振込先口座情報が記載され、納品先として、「Surf Salon」の欧文字及びY氏の氏名が記載され、品名「Tシャツ(カルフォルニア ピンク)」が、単価「2,460(上代 4,100)」及び数量「M×1 L×1」であって、4,920円であること、品名「Tシャツ(ベルジーランド ブルー)」が、単価「2,460(上代 4,100)」及び数量「M×1 L×1」であって、4,920円であること、品名「ロングスリーブ ポケットT」が、単価「3,480(上代 5,800)」及び数量「M×1 L×1」であって、6,960円であること、品名「コーチジャケット」が、単価「6,600(上代 11,000)」及び数量「M×1 L×1」であって、13,200円であること、合計(税込)が30,000円であること、が記載されている(乙10納品書部分)。
(8)2019年11月24日付け委託納品書は、「C.O.D」を宛先とし、納品元の記載を前記(7)と同じくするものであり、品名欄には、前記(7)と同じ商品名が記載され、ほかにサイズ内訳及び展示用サンプルについて記載されている(乙8)。
2 判断
前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、別掲のとおり、デザイン化された「Old School」の欧文字(以下「欧文字部分」という。)の右下に、丸囲みされた「R」の欧文字からなる記号を配してなるところ、当該記号は、登録商標を意味する記号として一般に広く知られているとともに、欧文字部分に比べごく小さく表されていることから、付記的部分にあたるものであって、出所識別標識としての機能を有さない記号にすぎない。したがって、本件商標は、欧文字部分が、出所識別標識としての機能を有する要部として認識、把握されるというのが相当である。
他方、前記1(7)によれば、本件納品書には、「Old School」の欧文字(以下「使用商標」という。)が記載されている。
そうすると、使用商標と本件商標の要部とは、文字のデザイン化の有無の差異を有するものの、つづり字を同じくするものであって、称呼を共通にし、観念も異なるものではないから、使用商標と本件商標とは、社会通念上同一といえるものである。
(2)使用者について
前記1(1)の乙2納品書の宛先は本件納品書の納品元と一致し、乙2納品書に記載された住所は商標権者の住所と一致している。そして、同(7)のとおり、本件納品書には、納品元として、さらに、「SHIGERU KAMATA」の欧文字も表示されているところ、同(4)のとおり、乙10電子メール部分には、被請求人の氏名とともに「shigeru kamata」の記載があることからすれば、当該表示は、被請求人の氏名の読みをローマ字表記したものとみるのが自然であり、また、同(6)のとおり、本件発送伝票に記載されている住所は、商標権者の住所と一致していることから、使用商標の使用者は、被請求人である商標権者である。
(3)使用商品について
前記1(7)によれば、使用商標は、「ロングスリーブ ポケットT」(以下「使用商品」という。)を含む商品に関する本件納品書に付されているといえるところ、「ロングスリーブ」の文字は「長袖」を、数量欄の「M」の文字は被服のサイズをそれぞれ表示する際にいずれも普通に使用されるものであること、本件納品書に記載されている他の商品は被服であるTシャツ及びジャケットであること、並びに前記1(1)及び(2)によれば、被請求人に2019年10月8日に「長袖ポケットT ホワイト」と乙2納品書に記載されているポケット付きの長袖Tシャツが納品されたものと推認できることからすれば、使用商品は乙2納品書で納品された商品とみることができるものであり、当該商品「長袖Tシャツ」は、本件商標の指定商品中、「被服」の範ちゅうに属するものである。
(4)使用時期及び使用行為について
前記1(3)ないし(5)によれば、被請求人とY氏とは、電子メールを用いて、Y氏の氏名、連絡先及び発送予定日を含む取引情報(以下「本件取引情報」という。)を取り交わしていたといえるところ、同(6)によれば、本件発送伝票に記載されたY氏の氏名及び連絡先は、本件取引情報に係る氏名及び連絡先と一致し、同じく記載された配達希望日の「12月13日」は、本件取引情報に係る発送予定日(2019年12月12日)の翌日の月日と一致する。
また、同(7)によれば、本件納品書に記載された納品先の氏名は、本件取引情報に係る氏名と一致しており、同じく記載された日付である「2019年12月12日」は、本件取引情報に係る発送予定日と一致している。そして、商品が配送される際に、その配送される荷物に当該商品に係る納品書が同梱されることは、ごく一般的に行われているものである。
このように、本件発送伝票の記載内容、本件納品書の記載内容及び本件取引情報との間に、互いに不自然なところはなく、被請求人は、本件取引情報に係る発送予定日である2019年12月12日に、Y氏に対し、使用商品を含む商品を梱包した荷物を本件発送伝票を用いて発送し、その荷物には本件納品書が同梱されていたものと推認でき、上記日付は要証期間内である。
そして、前記(3)のとおり、本件納品書は、使用商品を含む商品に関する納品書であるから、使用商品に関する取引書類といえるものである。
そうすると、被請求人である商標権者は、本件要証期間内に、使用商品に関する取引書類に使用商標を付してY氏に頒布したと認めることができる。
(5)小括
以上によれば、本件商標の商標権者は、本件要証期間内において、本件商標の指定商品中「被服」の範ちゅうに属する商品「長袖Tシャツ」について、当該商品に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して頒布したと認めることができる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、乙2納品書及び本件納品書に押印がなく、証拠としての信ぴょう性に欠ける旨主張し、さらに、商標権者が、乙2納品書の発行者及び本件納品書の宛先であるY氏との関係について主張、立証していない旨主張する。
しかしながら、上記各納品書に押印がないことのみをもって、証拠としての信ぴょう性に欠けるとまではいい難いものである。そして、乙2納品書は、康貿易商事株式会社が商標権者に使用商品を含む当該納品書記載の商品を納品したことを内容とするものであるから、両者は取引関係にあるものと考えるのが自然であり、また、前記2(4)で説示したとおり、本件納品書に記載された内容と本件取引情報との間に不自然なところはなく、商標権者と宛先であるY氏との関係については、前記2(4)によれば、使用商品を含む商品の取引関係にあるものと考えるのが自然である。
(2)請求人は、Y氏の所属先である「Surf Salon」のウェブサイト(甲3)に、本件商標が使用された商品が掲載されていることを確認できなかった旨主張する。
しかしながら、甲3に本件商標が使用された商品が見当たらないとしても、そのことをもって、直ちに、前記2の認定判断を左右することはない。
(3)よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
4 まとめ
したがって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その請求に係る商品に含まれる使用商品中「被服」の範ちゅうに属する商品「長袖Tシャツ」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(本件商標)


審理終結日 2020-11-27 
結審通知日 2020-12-02 
審決日 2020-12-21 
出願番号 商願2015-98211(T2015-98211) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 木村 一弘
山村 浩
登録日 2017-02-24 
登録番号 商標登録第5925062号(T5925062) 
商標の称呼 オールドスクール 
代理人 中山 真理子 
代理人 竹中 陽輔 
代理人 達野 大輔 
代理人 稲垣 朋子 

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