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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W0942
審判 一部申立て  登録を維持 W0942
審判 一部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1374092 
異議申立番号 異議2020-900253 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-05 
確定日 2021-05-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第6270523号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6270523号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6270523号商標(以下「本件商標」という。)は、「3D NAND OS memory」の文字を標準文字で表してなり、令和元年7月16日に登録出願、第9類及び第42類に属する別掲に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同2年7月1日に登録査定され、同月16日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 具体的理由
(1)商標法第3条第1項第3号及び同項第6号について
ア 各語の記述性について
本件異議申立の対象の商品及び役務は、本件商標の指定商品及び指定役務中の第9類「半導体素子,電子回路,メモリーチップ,メモリーモジュール,半導体メモリー,コンピュータメモリー装置,フラッシュメモリカード,CPUを含む半導体集積回路,画像処理用半導体チップ,プログラム可能な半導体チップ,デジタルデータ記憶装置,半導体素子を搭載した電子応用機械器具,ランダムアクセスメモリ(RAM)カード,メモリーカード用読み取り・書き込み装置,コンピュータ記憶装置,データ記憶装置,半導体記憶装置,コンピュータープログラムを記憶させた記録媒体,コンピュータ用データ記憶媒体,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),コンピュータハードウエア,ソリッドステートドライブ」及び第42類「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験及び研究並びに開発,半導体に関する試験及び研究並びに開発,金属酸化物・半導体・電子応用機械器具・電気通信機械器具に関する試験及び研究並びに開発,金属酸化物・半導体・電子応用機械器具・電気通信機械器具の製造・加工に関する技術研究情報の提供,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する指導・助言又は情報の提供」(以下「申立商品及び役務」という。)であるところ、これらは、いずれも、半導体に関係する商品及び役務である。
そして、申立商品及び役務との関係において、本件商標中の「3D NAND」、「OS」及び「memory」の各語は、識別性のない記述語である。
(ア)「3D NAND」の記述性について
「NAND」とは、「Not AND」の略であり、半導体業界においては、NAND型フラッシュメモリを意味する。フラッシュメモリは、電気的にデータを書き換えることが可能で、電力を供給しなくてもデータを保持することができる(不揮発性の)半導体メモリであるが、このうち、NAND型フラッシュメモリは、データストレージ用に適しており、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルオーディオプレーヤーなどの記憶媒体として広く普及している。
NAND型フラッシュメモリは、その大容量化、低コスト化が常に求められているところ、大容量化の限界を打ち破ることを狙い、一枚のSi基板上でメモリ・セルを三次元方向に積み上げる技術が開発された。「2010年代3D NANDと多値で大容量化」(甲3)とあるとおり、2014年には、Samusungが「世界初の公式な3D NAND」(甲3)を発表している。
「従来の2D NANDは、メモリセルアレイが水平方向に伸びていますが、3D NANDは垂直方向に伸びています。」、「2018年と2019年には、TLC技術、QLC技術といった多値技術と3D NANDを併用して1チップで1Tbitを実現した発表が相次ぎました」(甲3)、「構造の三次元化においては、メモリでは縦方向に素子を積層する3D-NANDが急速に拡大し、積層数は2?3年のうちに100層に達することが予想されている。」(甲4)、「3D NANDの登場で変わるSSDのラインナップ/昨年まではSamusung1社のみが3D NAND搭載SSDを販売していたが、今年に入り、東芝/Western Digital(旧SanDisk)陣営、Intel/Micron陣営、SK hynixといったNANDメーカー陣営もいよいよ3D NANDの量産を開始した。これによって、3D NAND採用SSDの本格普及の兆しが見えてきている。」(甲5)とあるとおり、「3D NAND」の語は、三次元化したNAND型フラッシュメモリの一般名称となっている。
なお、申立人であるマイクロン テクノロジー(Micron)は、3D NAND市場の世界トップ企業のひとつである(甲5)。
(イ)「OS」の記述性について
科学技術の分野においては、物質を英語名称の頭文字によって、略称することは、広く行われている。
また、申立商品及び役務は、最先端の技術を巡って国内・海外に関係なく、トップ企業同士の激しい世界的競争が行われる技術分野に属しており、我が国においても、英語での表現や論文が通用する状況にある。
甲第6号証は、「OS」及び「Oxide Semiconductor」をGoogleにて検索した結果であるが、本件技術分野では「OS」が「Oxide Semiconductor」の略語であると一般的に認識されていることがわかる。
さらに、Oxide Semiconductor(OS)は、酸化物半導体を意味するところ(甲7)、「OS」と他の語を組み合わせて、酸化物半導体を表すことも一般に行われている。
例えば、本件分野において、それぞれ金属酸化物半導体、相補型金属酸化物半導体の意味の一般名称として使用される「MOS」、「CMOS」の語において「OS」が酸化物半導体を意味していることは当該分野において周知である(甲8、甲9)。
さらに、アモルファス酸化物半導体は「Amorphous OS」又は「AOS」(甲10)、アモルファス透明酸化物半導体は「TAOS」(甲11)のように表示されている。
このように、本件分野において、「OS」の語は、単独又は他の語との組み合わせにおいて酸化物半導体を記述する識別性のない語であると認識されている。
(ウ)「memory」の記述性について
「memory」の語は、我が国で馴染みのある語であり、申立商品及び役務においては、「記憶機能を備えた」程度の意味を想起させるといえる。申立商品及び役務においては、記憶機能を備えていることは通常であり、当該「memory」の語は、申立商品及び役務との関係において著しく識別性を欠いていると考えるのが相当である。
イ 本件商標の識別性について
上述のとおり、申立商品及び役務との関係においては、本件商標中、「3D NAND」は、三次元化したNAND型フラッシュメモリを意味する識別力のない語であり(甲3?甲5)、同じく「OS」の部分は、「Oxide Semiconductor(酸化物半導体)」の単なる略語であり(甲6?甲11)、さらに「memory」は、記録媒体「メモリ」を意味するいずれも識別力がない語(甲12)である。
そうすると、本件商標は、申立商品及び役務の分野において、いずれも識別力のない記述語「3D NAND」、「OS」及び「memory」を組み合わせた語にすぎず、全体として、「酸化物半導体を使用した三次元化したNAND型フラッシュメモリ」の観念が生じるにすぎない。
よって、「酸化物半導体を使用した三次元化したNAND型フラッシュメモリ」を使用した申立商品及び役務について本件商標を使用した場合、単に商品の品質又は役務の質を記述する語として認識されるにすぎないため、本件商標は識別力がなく商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標は、識別力のない語の単なる組み合わせにすぎないことから需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、上記(1)のとおり、申立商品及び役務との関係において、その品質及び質を表示するものであるから、これを「酸化物半導体を使用した三次元化したNAND型フラッシュメモリ」を使用していない申立商品及び役務に使用した場合、商品の品質及び役務の質の誤認を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当するというのが相当である。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するので、その登録を取り消されるべきものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査(インターネット情報、新聞記事情報)によれば、フラッシュメモリには「3D NAND(フラッシュメモリ)」と称される商品があること、「OS」の文字が「酸化物半導体」の略語として用いられる場合があること、及び、「memory」の文字が「記憶、記憶装置」等の意味を有することは認められる(甲3?甲5、甲7、甲12)。
しかしながら、本件商標は、前記第1のとおり、「3D NAND OS memory」の文字からなるところ、その構成各文字は、「3D」、「NAND」、「OS」及び「memory」のそれぞれの文字の間に1文字分の空白はあるものの、横一列にまとまりよく表されており、かかる構成からなる本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、全体として一体のものと理解、認識させるものとみるのが自然である。
そして、当審において職権をもって調査したところ、本件商標の指定商品及び指定役務を取り扱う業界において、「3D NAND」の文字は、この構成をもって「3次元に積層したNAND型フラッシュメモリ」を指称する語として一体的に使用されている語である。
また、「OS」の文字が、これに接する取引者、需要者をして、直ちに「酸化物半導体(Oxide Semiconductor)」の略語であることを認識させるほど普通に使用されていること、及び、本件商標「3D NAND OS memory」が、「酸化物半導体を使用した三次元化したNAND型フラッシュメモリ」を意味する商品の品質等及び役務の質等を表示したものとして用いられていること等の事実は発見できなかった。
さらに、当該文字が、「酸化物半導体を使用した三次元化したNAND型フラッシュメモリ」の意味合いを認識させるというべき事情はもとより、何らかの特定の意味合いを想起、認識させるというべき事情も発見できなかった。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、全体を特定の意味合いを想起、認識させることのない造語として認識、把握させるものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、本件商標の登録査定時において、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、商品の品質及び役務の質を表示するものでなく、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、上記1のとおり、その指定商品の品質及びその指定役務の質等を表示するものと需要者、取引者に認識されないものであるから、本件商標を、その指定商品及びその指定役務に使用しても、商品の品質や役務の質について誤認を生じさせるおそれはないと判断するのが相当である。
その他、本件商標が、その指定商品の品質及びその指定役務の質について誤認を生じるおそれがある商標と判断するべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当するものでなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲(本件商標の指定商品及び指定役務)
第9類「太陽電池,電池,蓄電池,リチウムイオン二次電池,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,半導体素子,電子回路,液晶ディスプレイ,液晶パネル,有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いたディスプレイ,メモリーチップ,メモリーモジュール,半導体メモリー,コンピュータメモリー装置,フラッシュメモリカード,CPUを含む半導体集積回路,画像処理用半導体チップ,プログラム可能な半導体チップ,イメージセンサ用半導体素子,デジタルカメラ及びその部品並びに付属品,デジタルビデオカメラ及びその付属品,CMOSカメラ,CCDカメラ,タッチパネル,測定機械器具及びその部品並びに付属品,車載用液晶表示装置,車載用画像表示装置,車載用有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置,携帯電話機,スマートフォン,テレビジョン受信機,音声再生装置,コンピュータ及びコンピュータ周辺機器,ノートブック型コンピュータ,ラップトップ型コンピュータ,タブレット型コンピュータ,パーソナルコンピュータ,マイクロコンピュータ,その他のコンピュータ,コンピュータ用モニター,コンピュータ用タッチパネル,半導体素子を搭載した電子応用機械器具,その他の電子応用機械器具,電子タグ,ICカード(スマートカード),ICカード又は磁気カード読み取り装置,ICカード又は磁気カード書き込み装置,無線通信用送信機・受信機,デジタルデータ記憶装置,テレビ電話,テレビ会議システム用電気通信機械器具,電子計算機,電子式卓上計算機,フラットパネルディスプレイ,ヘッドマウントディスプレイ,ランダムアクセスメモリ(RAM)カード,メモリーカード用読み取り・書き込み装置,コンピュータ記憶装置,データ記憶装置,半導体記憶装置,コンピュータープログラムを記憶させた記録媒体,コンピュータ用データ記憶媒体,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),グラフィックボード,コンピュータ用キーボード,マザーボード,電子回路ボード,コンピュータハードウエア,コンピュータ用ハードディスク,ソリッドステートドライブ,タッチセンサ機能付き液晶ディスプレイ,タッチセンサ機能付き有機ELディスプレイ,ナビゲーション装置,カーナビゲーション用表示装置,腕時計型携帯情報端末,腕時計型モバイルコンピュータ,腕時計型スマートフォン,電子出版物表示用携帯端末,自動車用電子制御装置,自動車に係わる各種情報を検出するための測定機械器具」
第42類「技術的な研究,化学の分野に関する試験及び研究並びに開発,科学に関する試験及び研究並びに開発,機械器具に関する試験及び研究並びに開発,金属材料の試験及び研究並びに開発,材料科学及び電気工学の分野に関する試験及び研究並びに開発,電気に関する試験及び研究並びに開発,電気通信機械器具に関する試験及び研究並びに開発,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験及び研究並びに開発,半導体に関する試験及び研究並びに開発,金属酸化物・半導体・電子応用機械器具・電気通信機械器具に関する試験及び研究並びに開発,金属酸化物・半導体・電子応用機械器具・電気通信機械器具の製造・加工に関する技術研究情報の提供,科学に関する試験・調査又は研究,科学的分析,科学に関する試験・調査又は研究についての情報の提供,工業上の開発,技術研究に関する情報の提供,科学的及び技術的な研究開発に関する情報及びデータの提供,科学技術情報の提供,製品開発に関する技術的な助言,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する指導・助言又は情報の提供」

異議決定日 2021-05-07 
出願番号 商願2019-97204(T2019-97204) 
審決分類 T 1 652・ 13- Y (W0942)
T 1 652・ 272- Y (W0942)
T 1 652・ 16- Y (W0942)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2020-07-16 
登録番号 商標登録第6270523号(T6270523) 
権利者 株式会社半導体エネルギー研究所
商標の称呼 スリーデイナンドオオエスメモリー、サンデイナンドオオエスメモリー、スリーディーナンドオオエスメモリー、ナンドオオエスメモリー、ナンドオオエス、ナンド 
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 

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