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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W41
管理番号 1374026 
審判番号 取消2020-300237 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-04-01 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5935826号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5935826号商標の指定役務中,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催」についての商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5935826号商標(以下「本件商標」という。)は,「Spartan」の文字を標準文字で表してなり,平成28年3月29日に登録出願,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,通訳,翻訳」を指定役務として,同29年3月31日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,令和2年4月28日である。
なお,本件審判において,商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは,平成29年4月28日ないし令和2年4月27日である(以下「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書及び弁駁書において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催」(以下「本件役務」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用をした事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の使用するドメイン名について
被請求人は,2014年(平成26年)9月14日に,ドメイン取得サービス提供業者との間で,本件商標が使用されているドメイン名(以下「本件ドメイン名」という。)の使用に係る契約を締結し,現在に至るまで当該契約を更新・継続していること,本件ドメイン名を使用したウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)において,自らの英会話教室に関する広告,価格表及び受講規約を内容とする情報を電磁的方法により提供していること,及び,被請求人ウェブサイトのURLは,被請求人の事業について紹介した2018年(平成30年)6月25日付けのブログ記事においても引用されていることを主張している。
しかしながら,以下のとおり,被請求人の答弁及び被請求人の提出する乙第2号証ないし乙第4号証(枝番含む)では,本件商標の使用を立証できていない。
ア 本件ドメイン名の使用について
ドメイン名と商標は根本的に異なるものであるから,本件ドメイン名が,本件商標の欧文字のつづり「spartan」を含むとしても,本件商標をその指定役務について使用しているとはいえない。
そして,本件ウェブサイトにおいて表示されているのは,「SPARTA」「スパルタ」「スパルタ英会話」「SPARTA ENGLISH METHOD」等であるから,本件商標「Spartan」とは,社会通念上同一であるといえない(商標法第38条第5項)。
また,本件ドメイン名は,いずれも極めて小さく表示されており,需要者は,これが何らかの役務に関する商標であると認識しない。さらに,本件商標に格別に周知性があるとは認めることができない本件においては,ウェブサイトの画面を閲覧したものが,本件ウェブサイトにおいて,本件ドメイン名から,本件商標「Spartan」のみをあえて分離抽出して認識することはない。
イ 本件ドメイン名と本件商標は同一ではないし,社会通念上同一でもない
(ア)仮に,本件ドメイン名の使用が,商標法第50条第1項所定の「商標」の「使用」に該当するとしても,本件ドメイン名は,本件商標と同一でないことはもとより,社会通念上同一でもない。
(イ)本件ドメイン名は,「spartan-english.jp」の文字からなる。「spartan」は英語で,「スパルタの,スパルタ人の,スパルタ式の,質実剛健な」という意味で一般的に使用され,「english」は,「英語」という意味を有し,「.jp」の部分はインターネットの定型アドレスの一部であることからすれば,本件ドメイン名は,全体として「スパルタ式の英語に関するインターネットアドレス」の観念が生じる。よって,本件ドメイン名は,全体が一体となってインターネットアドレスを表すものであって,一体であることによって特定の意味を持つから,本件ドメイン名は,一連一体で不可分に看取される。また,本件ドメイン名から生じる「スパルタ式の英語(教育)」といった観念と,本件商標から生じる「スパルタ人」等の観念とは,全く異なることも明らかである。したがって,本件商標と本件ドメイン名とは,外観や称呼が異なることはもとより,観念も相違するから,相互に同一でないばかりか,社会通念上の同一性もない。
ウ 他人のブログ記事における本件ドメイン名の表示は,商標法第50条1項所定の「商標」の「使用」ではない
被請求人は,本件ウェブサイトのURLは,被請求人の事業について紹介した2018年(平成30年)6月25日付けのブログ記事においても引用されていると主張する。
しかし,当該ブログ記事の運営会社は,株式会社Saccoであり(甲5),被請求人自身ではなく,株式会社Saccoが,本件商標の専用使用権者又は通常使用権者であると認めるに足りる証拠もないので,本件商標の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の商標の使用であるとは認められない。
また,当該ブログ記事において表示されている本件ドメイン名は,単に被請求人の本件ウェブサイトを表示する役割しかないから商標として使用されているとはいえない。
(2)被請求人が自らの英会話レッスンで利用する教材(以下「本件レッスン教材」という。)について
ア 被請求人は,PDFファイル形式で保存されている本件レッスン教材(乙5の1)のプロパティ情報を表示したものの写しを乙第5号証の2として提出し,そこには「文書のプロパティ」「作成日2017/10/20」「更新日2017/10/20」という記載があるから,本件商標が使用されていると主張している。
しかしながら,これをもって,要証期間内に,被請求人により,本件商標が英会話教室等でレッスン教材に表示されて配布されたことの証明にはならない。
すなわち,「電子記録はその性質上改ざんしやすいものであるから,これを証拠資料として採用するためには,その記録が作成者本人によって作成され,かつ,作成後に改ざんされていないことを確認する必要がある」(大阪高等裁判所平成20年(ネ)第894号判決:甲6)ところ,被請求人は,この教材が現実に配布されたこと,すなわち,いかなる内容の教材をどのように,どのような需要者に,いつ配布されたのかも,一切立証していない。
したがって,被請求人の答弁及び被請求人の提出する乙第5号証の1及び乙第5号証の2の証拠では,本件商標の使用が立証されているとはいえない。
イ 本件商標のレッスン教材の内容は全く不明であり,かつ,教材の題号として本件商標が使用されても,「技芸・スポーツ又は知識の教授」等役務に使用されたとはいえない
被請求人は,証拠説明書において,「乙第5号証の1は全39枚にわたる教材であるが,その内容は被請求人の営業秘密に関わるため,本件商標の使用の事実が分かる範囲で,当該教材のうち1枚目,9枚目,及び10枚目を抜粋し,計3枚を証拠提出している。」と述べている。しかしながら,提出されたこれらの証拠は,表紙部分のみであり,上記のとおり,当該教材の内容すら一切不明である。
したがって,被請求人が当該教材を使用したとしても,本件役務である「技芸・スポーツ又は知識の教授」等に使用したことの立証にはならない。被請求人は,本件商標を,印刷物(教材)に使用したと主張しているようであるが,ある商標を印刷物に使用することと,現実に,「技芸・スポーツ又は知識の教授」等に使用することは全く異なることはいうまでもない。
(3)本件ドメイン名及び本件レッスン教材中に表示されている「Spartan English Course」「Spartan Point」の語と,本件商標の同一性について
本件ドメイン名(spartan-english.jp)及び本件レッスン教材中に表示されている「Spartan English Course」「Spartan Point」の語は,それぞれ一連一体で不可分なので,本件商標とは別異の標章であって,社会通念上同一であるといえず,これらの語の使用は本件商標の使用といえない。
(4)まとめ
以上述べたとおり,本件ドメイン名の使用は,本件商標をその指定役務について使用していた事実を証明するものではなく,本件ドメイン名と本件商標とは社会通念上同一であるともいえないから,本件ドメイン名の使用は,本件商標の使用とはいえない。
また,本件レッスン教材は,要証期間における証拠であるかどうかについて立証されていないし,当該教材の内容も一切が不明である。
さらに,レッスン教材中に表示されている「Spartan English Course」「Spartan Point」の語は,本件商標と同一でないばかりか社会通念上同一であるともいえない。
よって,本件商標は,商標法第50条第2項本文の規定によってその登録を取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人の事業内容等
被請求人は,主に外国語教室の経営を業とする会社であり(乙1),2014年(平成26年)に設立されてから現在に至るまで,継続して,英会話教室を運営している(乙2の2,乙3)。被請求人は,現在,東京都内の3校(新宿御苑校,銀座校,自由が丘校),大阪府内の1校(梅田校)及びオンライン校において,英会話教室を運営している(乙2の1)。
なお,被請求人は,2017年(平成29年)12月25日付けで,その商号を「株式会社Story Land」から「株式会社スパルタ英会話」に変更した(乙1)。
2 被請求人による本件商標の使用
(1)本件ドメイン名及び本件ウェブサイトについて
ア 本件ドメイン名に係る契約関係について
被請求人は,2014年(平成26年)9月14日に,ドメイン取得サービス提供業者との間で,本件ドメインの使用に係る契約を締結し,現在に至るまで当該契約を更新・継続している(乙4)。本件ドメイン名に係るドメイン契約情報画面(乙4)はドメイン取得サービス提供業者の会員サイトの画面であり,契約者のみが閲覧可能な情報である(乙6)。
イ 本件ウェブサイトについて
被請求人は,2018年(平成30年)1月頃以降継続して,本件ドメイン名を使用した自らのウェブサイトにおいて,自らの英会話教室に関する広告,価格表及び受講規約を内容とする情報を掲載し,これらの情報が掲載されているURLに「spartan」という文字を含む本件ドメイン名を付して電磁的方法により提供している(乙2)。なお,広告,価格表及び受講規約の内容は,全ての掲載期間を通じて,概ね乙第2号証と同様の内容である(乙2,乙6)。
また,本件ウェブサイトが一般に公開されていたことは,そのURLが,被請求人の事業について紹介された2018年(平成30年)6月25日付けのブログ記事において引用されている(乙3)ことからも明らかである。
ウ 本件ドメイン名について
被請求人は,自らのウェブサイトのURLに「spartan」という文字を含む「spartan-english.jp」というドメインを使用しており,かかるドメインはブラウザのURL表示欄に表示されている(乙2)。また,被請求人が運営している「スパルタ英会話」という英会話教室は,これを欧文字で表すとすれば,「spartan english」等と表され,「spartan」という文字が含まれ得る。そして,被請求人は当該ウェブサイトにおいて,「スパルタ英会話」という英会話教室の広告等の情報を掲載しているため(乙2,乙6),被請求人のウェブサイトを閲覧した者は,「spartan」というURLの文字列が,そのURLによって表示される画面に表示された役務(「スパルタ英会話」という英会話教室における英語講座の提供)と関連する文字列であると認識し得たというべきである。したがって,閲覧者は「spartan」というURLの文字列を商標として認識することがあった。
また,英会話教室のウェブサイトのドメイン名に「english.jp」の文字列が使用されている例は「247-english.jp」「one.v-english.jp」等多数存在する(乙6,乙9)。これらは,自他役務の識別標識としての機能を有する各英会話教室の名称等の文字をドメインに含み,かつ,汎用的な表現である「english.jp」との間に「-」(ハイフン)を配置することで両者を明確に区切っている。被請求人の使用しているドメイン名も「spartan-english.jp」という文字列であり,上記のとおり英会話教室名を示す「spartan」と,汎用的な表現である「english.jp」との間を「-」で区切っている。このようなドメイン名については,ウェブサイトを閲覧した者は「english.jp」という部分には着目せず,英会話教室の名称等の文字部分を他社のサービスとの識別標識として認識するというべきである。したがって,本件ドメイン名については,「spartan」の文字部分が自他役務の識別標識としての機能を発揮しているというべきである。
エ 小括
以上のとおり,被請求人は,本件商標を要証期間内に使用した(商標法第2条第3項第8号)といえる。
(2)本件レッスン教材(乙5の1)について
被請求人は,自らの英会話教室において体験レッスンを提供しており,2017年(平成29年)10月20日から2020年(令和2年)3月頃まで,当該レッスンで利用する教材においても,本件商標を使用していた(乙5)。
被請求人は,体験レッスンにおいては,講師が「Spartan English Course」や「Spartan Point」といった文字が記載された本件レッスン教材(乙5の1)を自らのパソコン画面上に表示し,隣に着席している生徒にそれをみせながらレッスンを行っている。「Spartan Point」(乙5の1)とは,被請求人が生徒に対して英会話における質問法を伝授する際に,一般的にいわれる5W1Hではなく,更に問いを掘り下げるための発想である5W3Hについて説明するにあたって使用している表現である(乙6,乙8)。
本件レッスン教材(乙5の1)は,被請求人が2017年(平成29年)10月20日に作成したものであり,乙第5号証の2は,本件レッスン教材(乙5の1)の電子データのプロパティ情報を表示した画面の写しである。被請求人は,本件レッスン教材(乙5の1)が作成されて以降,その電子データのプロパティ情報を変更していない。したがって,本件レッスン教材(乙5の1)は2017年(平成29年)10月20日以降,体験レッスンの教材として存在していた(乙5,乙7)。
そして,上記のとおり,被請求人は,2017年(平成29年)10月20日ないし2020年(令和2年)3月頃までの間(少なくとも2020年(令和2年)2月16日に),英会話教室におけるレッスンの提供にあたり,その提供を受ける生徒の利用に供するパソコン画面上に表示される教材(乙5の1)に「Spartan」という文字を付しており,また,当該教材を用いてレッスンを提供していた。そして,「Spartan」という文字は,本件商標と同一のつづりからなるものであり,本件商標と社会通念上同一である。
したがって,被請求人は,本件商標を要証期間内に使用(商標法第2条第3項第3号,同項第4号,同項第7号)したといえる。
(3)まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に,日本国内において,本件審判請求に係る指定役務である「知識の教授」について本件商標を使用している(商標法50条2項本文)。
よって,本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば,以下のとおりである。
(1)本件商標権者について
本件商標権者は,2014年(平成26年)12月に設立された外国語教室を経営する会社であり,2017年(平成29年)12月25日付けで,その商号を「株式会社Story Land」から「株式会社スパルタ英会話」に変更した(乙1)。当該会社は,東京都内の3校(新宿御苑校,銀座校,自由が丘校),大阪府内の1校(梅田校)及びオンライン校において,英会話教室を運営している(乙2の1)。
平成30年1月16日付けの履歴事項全部証明書(乙10)には,「役員に関する事項」欄に取締役「Y」の記載がある。
(2)本件ドメイン名及び本件ウェブサイトについて
ア 本件ウェブサイト(乙2)には,当該英会話教室の利用料金プランや利用規約等が掲載されており,欄外左上には,本件ウェブサイトを印刷した日付である「2020/7/14」の記載が,欄外左下には,本件ウェブサイトのURLである「https://spartan-english.jp」の記載がある。
イ 株式会社Saccoが運営する「Biglife21」のウェブサイトの企業記事(2018年6月25日,乙3)において,「3カ月短期集中型英会話教室『スパルタ英会話』-株式会社スパルタ教室」の見出しの下,本件商標権者が運営する英会話教室が紹介され,問合せ先に本件商標権者の名称とともに「URL:http://spartan-english.jp」の記載がある。
ウ ドメイン名に係るドメイン契約情報画面の写し(乙4)には,ドメイン情報欄にドメイン「spartan-english.jp」,登録者情報の確認欄に登録者名「Y」(審決注:元取締役),契約情報欄の契約種別「新規」として契約期間「14/09/14?15/09/30」,契約種別「更新」として契約期間「15/10/01?16/09/30」,「16/10/01?17/09/30」,「17/10/01?18/09/30」,「18/10/01?19/09/30」,「19/10/01?20/09/30」の記載がある。
(3)本件レッスン教材について
ア 本件レッスン教材(乙5の1)には,その1ページ目の中央には大きく「Spartan English Course」及び「-Trial Lesson-」の文字が,3ページ目の中央上部には「Spartan Point」の文字が記載されており,各ページ右下には「Sparta English」及び「英会話アカデミー」の文字が記載されている。
また,同教材の1ページ目及びそのプロパティ情報をパソコン画面に表示し,それをスクリーンショットしたもの(乙5の2)の,プロパティ情報には,作成日「2017/10/20 11:03:18」,更新日「2017/10/20 11:03:18」の記載がある。
イ 電子データのプロパティ情報(乙5の2)が本件レッスン教材(乙5の1)のものであることを説明した動画(乙7)には,本件商標権者の代表取締役がパソコンを操作し,本件レッスン教材(乙5の1)及びそのプロパティ情報を表示させ,当該プロパティ情報には作成日及び更新日が2017年(平成29年)10月20日である旨が記載されていることを説明するとともに,当該プロパティ情報は変更されていない旨を説明している。なお,説明の際,乙第5号証の1では「Spartan Point」の記載があるのは3ページ目であるのに対し,この動画においては,10ページ目にある旨の説明がなされている。
(4)本件商標権者の代表取締役による2021年(令和3年)1月7日付けの「陳述書」(乙6)には,要証期間内における本件商標の使用に係る事実経緯等が記載されている。
(5)体験レッスンを受講した生徒による2020年(令和2年)12月24日付けの「陳述書」(乙8)には,要旨,(ア)2020年(令和2年)2月16日に新宿校で体験レッスンを受講し,その後も継続してレッスンを受講していること,(イ)体験レッスンでは「Spartan English Course」というタイトルの教材が講師のパソコン画面上に表示され,それを見ながらレッスンが行われ,その際の教材は,乙第5号証の1と同じであったこと,(ウ)レッスンの内容は,英語の発音の練習から始まり,自己紹介や質問・説明の仕方などを練習した上で,実際にいくつかのシチュエーションを想定して実践的な会話の練習を行うものであって,その中には,乙第5号証の1の三葉目にあるとおり,「Spartan Point」として,5W3Hという独自の発想であったこと,の各記載がある。
なお,日付,生徒の氏名及び住所,体験レッスンを受けた日付,校舎名は,当該生徒が手書きしており,それら以外は,あらかじめ準備されたものである。
2 判断
(1)本件ドメイン名及び本件ウェブサイトについて
上記1(2)ア,ウによれば,本件ドメイン名は,少なくとも2014年(平成26年)9月14日ないし2020(令和2)年7月14日まで継続して存在し,「Biglife21」のウェブサイトの企業記事(2018年6月25日)において,問合せ先に本件商標権者の名称とともにドメイン名が記載されていることは確認できるものの,要証期間内に本件ドメイン名を使用して,どのようなウェブサイトが公開されていたのかは確認できない。
また,本件ウェブサイトは,要証期間後に印刷されたものであり,欄外左下には,本件ウェブサイトのURLである「https://spartan-english.jp」の記載があるものの,当該URLの表示以外に「spartan」の文字が本件ウェブサイトについて使用されていることは確認できない。
そして,本件ドメイン名は「spartan-english.jp」であるところ,これは,同書,同大,等間隔でまとまりよく一体的に表されているものである。そして,英会話教室のウェブサイトのドメイン名の一部に「english.jp」が使用されている例が複数存在するとしても,「english.jp」が特定の役務の質や特徴を表している等,自他役務の識別標識としての機能を発揮しないということはできないこと,さらに「-」(ハイフン)は,「欧文で,2語を結びつけたり,1語を行末で区切って2行に分けて書いたりするときに間に記す短い横線の符号」(「デジタル大辞泉」株式会社小学館)であることからすれば,本件ドメイン名から「spartan」の文字部分のみが自他役務の識別標識としての機能を発揮するというべき合理的な理由は見当たらない。そうすると,本件ドメイン名に接する取引者,需要者は,これを不可分一体のものとして認識するというべきである。
してみれば,本件商標は「Spartan」であるところ,本件ドメイン名は「spartan-english.jp」であり,両者には「-english.jp」の有無という顕著な差異があるから,本件商標と本件ドメイン名は社会通念上同一の商標とはいえない。
したがって,要証期間内に本件ウェブサイトが公開され,ブラウザのURL表示欄に本件ドメイン名が表示されていたとしても,本件ドメイン名は本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものであるから,これをもって,商標法第2条第3項各号にいう商標の使用があったということができない。
(2)本件レッスン教材について
上記1(3)によれば,本件レッスン教材(乙5の1)に「Spartan English Course」及び「Spartan Point」の記載があるものの,本件レッスン教材はいかなる内容の教材であるか不明であり,役務の提供を受ける者に,いつ頒布等したかも不明である。
なお,被請求人は,当該教材は,2017年(平成29年)10月20日に作成されたものであって,2020(令和2)年3月頃までの間,被請求人の運営する英会話教室の体験レッスンで使用されたものであることを主張し,本件レッスン教材のプロパティ情報(乙5の2),本件商標権者の代表取締役の陳述書(乙6),同人の説明動画(乙7)及び英会話教室の生徒の陳述書(乙8)を提出している。
しかしながら,プロパティ情報は,任意に変更可能なものであるところ,本件商標権者の代表取締役はプロパティ情報の変更方法については不知であり,修正したことはないと述べるのみであって,他に証拠の提出はない。
また,本件商標権者の代表取締役の陳述書(乙6)及び同人の説明動画(乙7)は,本件商標権者による作成であるから,客観的な証拠とはいえない。
そして,英会話教室の生徒の陳述書(乙8)については,あらかじめ本件商標権者が準備した陳述書に,作成年月日(日付のみ),氏名,住所,受講年月日及び受講した校舎を当該生徒が手書きするという形のものであることに加え,陳述者が10か月以上も前の体験レッスンにおいて,講師のパソコン画面で見たものについて明確に記憶していたとは,直ちに認めがたく,これを首肯できるような証拠もない。
したがって,本件商標権者が,本件商標を本件レッスン教材(乙5の1)に付して,要証期間内に,本件役務のいずれかについて,役務の提供を受ける者に対し,頒布等したと認めることはできないから,これをもって商標法第2条第3項各号にいう商標の使用があったということができない。
(3)小括
上記(1)及び(2)のとおり,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に本件商標権者が,本件役務のいずれかについて,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の商標法第2条第3項各号にいう使用があったことを認めるに足る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件役務のいずれかについて,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件役務について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標は,商標法第50条の規定により,その指定役務中「結論掲記の役務」についての登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。


別掲

審理終結日 2021-02-16 
結審通知日 2021-02-18 
審決日 2021-03-23 
出願番号 商願2016-41611(T2016-41611) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 達広小林 正和 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 平澤 芳行
須田 亮一
登録日 2017-03-31 
登録番号 商標登録第5935826号(T5935826) 
商標の称呼 スパルタン、スパータン 
代理人 金村 公樹 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 村瀬 純一 
復代理人 小林 彰治 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 池田 万美 
代理人 田中 克郎 
代理人 宮川 美津子 

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