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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W03
審判 全部無効 外観類似 無効としない W03
審判 全部無効 商標の周知 無効としない W03
審判 全部無効 外観類似 無効としない W03
審判 全部無効 観念類似 無効としない W03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W03
管理番号 1373921 
審判番号 無効2020-890036 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-03-31 
確定日 2021-04-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第6009212号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6009212号商標(以下「本件商標」という。)は、「ポリリンコンクール」の文字を標準文字で表してなり、平成29年5月15日に登録出願、第3類「歯磨き,歯用漂白剤,口内洗浄剤及び口内すすぎ剤(医療用のものを除く。),せっけん類,化粧品,香料,口臭用消臭剤」を指定商品として、同年12月5日に登録査定、同30年1月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとし、引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2300458号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:昭和63年10月25日
設定登録日:平成3年1月31日
書換登録日:平成14年2月6日
指定商品:第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,薫料」
(2)登録第5825744号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成27年8月4日
設定登録日:平成28年2月12日
指定商品:第3類「マウスウォッシュ」
2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとし、引用する商標は、ウエルテック株式会社(以下「ウエルテック社」という。)の使用に係る「ConCool」(以下「引用商標3」という。)及び「コンクール」(以下「引用商標4」という。)の文字からなるものである。
上記、引用商標1ないし引用商標4をまとめて、以下「引用商標」という場合がある。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第72号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、「ポリリンコンクール」の片仮名からなるところ、その構成中「ポリリン」の文字は、歯のホワイトニングに有効な「ポリリン酸」という生体成分を意味するものとして、当該商品分野において、通用されている事実がある(甲4?甲18)。
そして、このポリリン酸は、歯の着色汚れを浮かせて除去し、さらに歯をコーティングして歯石やステインの付着を防止し、歯質を強化する薬剤である(甲4?甲20)。そして、ポリリン酸は、歯のホワイトニングの他に、育毛・発毛ケアや、肌の再生力、抗菌に有効な成分でもあり(甲21?甲23)、オーラルケア商品の他、肌用化粧品、頭髪用化粧品等に使用され、使用においては、「ポリリン酸」「ポリリン」「分割ポリリン酸」等と表示されて、「ポリリン」は、「ポリリン酸」を意味する語として理解・通用されている。
現に、被請求人は、商品の販売時において、被請求人自身が「ポリリンはポリリン酸のことです」と説明し、ポリリン酸を意味する語として「ポリリン」を使用していたことがうかがえる(甲24、甲25)。
そして、本件商標の称呼については、全体から生ずる「ポリリンコンクール」なる称呼は、9音であり、その構成音数が冗長である。
さらに、本件商標の観念や意味合いにおいて、本件商標を一体不可分にみるべき特段の事情も見いだせない。
そうすると、簡易迅速を尊ぶ商取引においては、本件商標は、その自他商品識別力を有する「コンクール」の部分をもって認識され、「コンクール」の称呼によって取引に資されることも多いといい得る。
以上より、本件商標からは、その全体の構成に相応して「ポリリンコンクール」の称呼が生じるほか、「コンクール」の称呼も生じることは明らかである。
イ 引用商標1及び引用商標2について
引用商標1は、その構成に相応して、「コンクール」の称呼が自然に生じ、引用商標2は、欧文字「ConCool」が中央に大きく書されていることから、「コンクール」の称呼が生じる。
ウ 本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否について
本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、上記ア及びイのとおり、外観は相違し、観念は比較できないとしても、「コンクール」の称呼を共通にする類似の商標であることに加え、下記(2)のとおり、実際の取引の場において引用商標1及び引用商標2を付した商品の人気の高さにより、引用商標1及び引用商標2には大きな信用が化体し、非常に強い識別力があるといえる。
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、出所の混同を生じる程に類似する商標である。
エ 指定商品について
本件商標と引用商標1及び引用商標2は、その指定商品において、それぞれ抵触するものである。
オ まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標1及び引用商標2に類似するものであり、その指定商品においても抵触するものであることから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)取引の実情
引用商標は、請求人の子会社であるウエルテック社のブランドとして使用されているところ、請求人は、親会社として同社の商標の権利化・権利維持を図るべく、引用商標1及び引用商標2を登録出願し、商標権を管理している(甲2、甲3、甲40、甲41)。
そして、引用商標1は、ウエルテック社の予防歯科用製品に関するブランドであり、「マウスウォッシュ(洗口液)」を含む口腔ケア製品に使用され、「マウスウォッシュ(洗口液)」については30年、「歯みがきジェル」については18年、「ホームケアクリーニング剤」には17年、「歯肉活性化歯みがき剤」には16年、「洗口用マウスリンス」には10年使用されている(甲42?甲49)。
また、引用商標2は、ウエルテック社が商品「マウスウォッシュ(洗口液)」のパッケージボトルとして、2004年1月に採用し、マイナーチェンジしつつ継続して使用してきた。
その結果、引用商標1は、洗口液や歯みがき、口腔化粧品を含む口腔ケア製品ブランドとして、引用商標2は、当該ブランドの中核商品「マウスウォッシュ(洗口液)」について、商品の出所を表示し自他商品を識別するための標識として取引者及び需要者の間に広く認識されるものとなっている。
ア 引用商標1及び引用商標2の使用開始時期
引用商標1は、ウエルテック社が1990年からマウスウォッシュ(洗口液)のブランドとして使用を開始し、その後、歯みがきや口腔化粧品を含む口腔ケア製品にも製品ラインナップを拡大しながら、30年もの長期にわたって使用されてきた(甲42?甲49)。
引用商標2は、商品「マウスウォッシュ(洗口液)」のパッケージボトルとして2004年1月に採用され、マイナーチェンジしつつ約16年継続して使用してきた。
イ 販売実績、販売数量
「歯科機器・用品年鑑」(甲50、甲51)には、ウエルテック社の2014年度の販売実績は、7.7億円、シェアは77.1%、2017年度の販売実績は、10.6億円、シェアは77.4%で高シェアを維持している旨の記載がある。
ウエルテック社が販売するマウスウォッシュ(洗口液)は、CONCOOLブランドのみであるから、引用商標1及び引用商標2に係る製品の販売実績及びシェアが、他のメーカー各社とは比較にならないほど高いことが理解できる。
具体的な販売数量は、引用商標1を使用し、引用商標2をパッケージとした「コンクールF」は、年間約150万個、引用商標1を使用した「ジェルコートF」は、年間130万個と、この2種類の製品だけでも年間280万個を売上げ、販売数量を伸ばしている(甲52)。
ウ 宣伝広告
ウエルテック社は、多方面で積極的に引用商標1及び引用商標2を使用した商品の宣伝広告を行っている。具体的には、歯科医院等の医療機関へのDMによる宣伝広告を年間12回、医療系専門雑誌への広告掲載を年間30回(甲53?甲55)、歯科学会への出展を年間24回、医科学会への出展を年間8回行っている(甲57)。
デンタルショーを含む展示会や学会は、当業界の取引者・需要者に対するブランド発信が積極的に行われる場であるが、日本デンタルショー福岡におけるブースでは、引用商標1及び引用商標2を使用した商品が展示され、ブース全体のいたるところに引用商標が目立つように配されていて、引用商標1及び引用商標2が強くブランド発信されている(甲56、甲58)。
また、ウエルテック社は、口腔ケアに関するセミナーを開催しており、当該セミナーにおいて、当該商品の認知度を高めている(甲59)。
エ インターネットWebサイトでの紹介記事
上記アないしウのとおり、引用商標1及び引用商標2を使用した商品は、30年若しくは16年の間継続して販売されてきたものであり、取引者・需要者の間で高い認知度を有するものとなってきていることから、注目され、様々なインターネットWebサイトの記事で取り上げられており、「オーラルケアの大定番」、「おすすめ度1位」、「歯科推奨」というように、高い評価を得ている(甲60?甲68)。
また、Amazon.co.jpにおけるマウスウォッシュの「ほしい物ランキング」及び「人気ギフトランキング」では1位、「売れ筋ランキング」においては2位となっており(甲69?甲71)、楽天市場では、「人気ランキング」の2位と3位を占めており(甲72)、その認知度及び人気の高さがうかがえる。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標1と、引用商標3及び引用商標4とは、実質的に同一のものであるといえる。
また、上記(2)のとおり、洗口液や歯みがき、口腔化粧品を含む口腔ケア商品の取引者・需要者において、引用商標1、ひいてはこれと実質的に同一の商標である引用商標3及び引用商標4は、広く知られるに至っているといえる。
そして、本件商標は、「ポリリンコンクール」のほか、「コンクール」の称呼をもって取引に資されることから、引用商標3及び引用商標4と、その称呼において類似することは明らかであり、本件商標の指定商品のうち、少なくとも「歯磨き,歯用漂白剤,口内洗浄剤及び口内すすぎ剤(医療用のものを除く。),化粧品」については、引用商標3及び引用商標4が使用される洗口液や歯みがき、口腔化粧品と商品が類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標の指定商品のうち、少なくとも「口臭用消臭剤」は、類似商品・役務審査基準上、引用商標に係る商品に必ずしも類似するものではない。しかしながら、「口臭用消臭剤」は、口腔ケア商品の一つであり、一般的に、歯みがきや口内洗浄剤等とともに同じ店舗・売り場で販売されており、需要者の範囲も一致し得るものであって、関連性が高いものである。
そうすると、引用商標の周知・著名性や、本件商標と引用商標との類似性を踏まえれば、被請求人によって本件商標が使用された場合には、その商品が請求人あるいは請求人の子会社であるウエルテック社に係る商品であるとか、若しくは、請求人やウエルテック社と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると、取引者・需要者において誤認混同を生じさせる蓋然性が高いものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
本件商標については、本件審判の請求に先立ち、請求人を登録異議申立人として、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとの理由に基づく登録異議申立て(異議2018-900072)がされたところ、当該申立てについては、令和元年7月4日に「本件商標の商標登録を維持する」旨の異議の決定がされているから、本件審判の請求においては、当該異議の決定を踏まえて判断されるべきである。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)請求人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア ウエルテック社は、1967年に請求人の事業部として創業し、その後、請求人のグループ会社(子会社)として、予防歯科製品の販売を事業内容とするものである(甲40、甲41)。
イ ウエルテック社は、1990年に「薬用マウスウォッシュ『コンクールF』」、2002年に「フッ素コート歯みがきジェル『ジェルコートF』」を発売している(甲43)。また、ウエルテック社のウェブサイトにおいては、包装容器に引用商標3を付した「洗口液、歯磨きジェル」等の口腔ケア商品(以下「使用商品」という。)が、「予防歯科に着目したコンクールブランド」の記載と共に紹介され(甲42)、また、「薬用マウスウォッシュ/コンクールF」、「フッ素コート歯みがきジェル/ジェルコートF」等の記載とともに引用商標3を付した使用商品が表示されている(甲48)。
ウ 株式会社アール アンド ディが発行した「歯科機器・用品年鑑2016年版」には、「医薬部外品洗口液の14年度のマーケットサイズは10億円と推定した。(中略)このマーケットに計上していたサンスターの『ガム・デンタルリンス』,ライオン歯科材の『Systema薬用デンタルリンス』は液体ハミガキとして分類し,『歯磨剤』のマーケットに含めている。ウエルテックの14年度の販売実績は7.7億円と推定した。・・・シェアは77.1%で高シェアを維持している。」の記載(甲50)、「同2019年版」には、「ウエルテックの17年度の販売実績は10.6億円と推定した。前年比伸び率は6%増。シェアは77.4%で高シェアを維持している。」の記載がある(甲51)。
エ 2016年に発行された、「nico」、「DHstyle」、「別冊Quintessence 小児歯科・デンタルホーム YEARBOOK 2016」(甲53?甲55)の歯科向けの医療系専門雑誌には、引用商標3を付した使用商品の広告が掲載されている。
オ 「デンタルラボ」のウェブサイトには、引用商標3を付した使用商品の写真とともに「歯医者さんが勧めるコンクールfって市販のモノとどう違うの?」の記載(2017年2月2日:甲60)がある。また、「歯医者がおすすめする歯磨き粉『コンクールジェルコートF』は低刺激で効果的」の記載(2016年12月9日出力:甲61)、「歯周病に予防おすすめ!研磨剤未使用の歯磨き粉コンクールジェルコートF」の記載(2014年12月18日:甲62)、「お口の悩み解説には、コンクールジェルコートFがおすすめ!」の記載(2016年9月25日:甲63)のブログ記事がある。
そして、「@cosme」のウェブサイトには、「その他オーラルケアランキング(最新口コミ情報)」として、ジェルコートFが2位に位置し、「クチコミ5件」の記載(2016年12月9日:甲64)、「デンタルセレクトショップSMILEYS」のウェブサイトには、「歯磨き粉/人気No.2」として、「歯磨剤としてもフッ素コート剤としても使える『ジェルコート』」の記載(2016年12月9日出力:甲65)とともに引用商標3を付した使用商品が掲載されている。
上記以外のインターネットのウェブサイトでは、例えば、2018年5月1日出力の「Amazon.co.jp」の「マウスウォッシュの人気ギフトランキング」又は「マウスウォッシュの売れ筋ランキング」において、それぞれ第2位、第1位に「コンクールF」の文字とともに使用商品の写真が掲載されているものの(甲66?甲72)、本件商標の登録査定後のものが大半である。
(2)上記(1)からすれば、ウエルテック社は、1990年から現在に至るまで、主に歯科医院を通じて患者等に使用商品を販売しており、使用商品の包装容器には、引用商標3が表示されている。
そして、「歯科機器・用品年鑑」2016年版及び2019年版における医薬部外品洗口液について、ウエルテック社の2014年度の販売実績は7.7億円、シェアは77.1%、同社の2017年度の販売実績は10.6億円、シェアは77.4%であることからすれば、使用商品に付されている引用商標3は、歯科医院の関係者及びその患者並びに虫歯や歯周病の予防に特に高い注意を払う一部の需要者の間でウエルテック社の取扱いに係る商品を表すものとして、ある程度知られていたということはできる。
しかしながら、同年鑑において、「このマーケットに計上していたサンスターの『ガム・デンタルリンス』,ライオン歯科材の『Systema薬用デンタルリンス』は液体ハミガキとして分類し,『歯磨剤』のマーケットに含めている。」と記載されていることからすると、このシェアが、我が国における全ての口腔ケア商品の市場におけるものであるとはいえないから、使用商品が口腔ケア商品の市場全体に占める割合は不明であるというべきである。
また、請求人は、2008年4月から2016年3月までの期間の「コンクールF売上推移」及び「ジェルコートF売上推移」(甲52)を提出しているが、その作成者、出典などは不明であって、該内容を客観的に裏付ける証拠の提出はない。
さらに、宣伝広告の実績について、請求人は、ウエルテック社は歯科医院等の医療機関へのDMによる宣伝広告を年間12回、医療系専門雑誌への広告掲載を年間30回行っている(甲53?甲55)旨主張しているが、提出された証拠は、歯科向けの医療系専門雑誌に2016年にわずか3回掲載されたものでしかなく、それ以外に上記回数を実施したとされる広告の実績は明らかにされていない。
インターネットのウェブサイトにおいて、使用商品に関するランキングが紹介されているとしても、これらは特定のウェブサイトにおけるランキングにすぎないうえに、このランキングがどの程度の間継続していたのかは不明である。
そうすると、請求人から提出された証拠から、本件商標の登録出願時及び登録査定時における、使用商品に関する販売個数、販売地域及び市場シェアなどの販売実績は不明であるうえに、広告宣伝の実績については明らかではない。
さらに、使用商品に使用されている引用商標3はもとより、引用商標1、引用商標2及び引用商標4が使用されて需要者の間に広く認識されていると認めるに足る証拠は見当たらない。
以上からすれば、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標がウエルテック社の業務に係る商品(口腔ケア商品)を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
なお、請求人は、引用商標が使用商品に使用されて周知である旨主張しているが、使用商品には、引用商標3のほか「コンクールF」が表示されてはいるものの、「コンクール」(引用商標4)のみで使用されているものはわずかしかなく、また、「CONCOOL」及び「コンクール」の2段からなる引用商標1が使用されている事実は見当たらず、さらに、引用商標2と似通った標章が使用されていることは見受けられるとしても、証拠の画像が不鮮明な箇所もあり、引用商標2が使用商品に使用されているということはできないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が使用商品に使用されて需要者の間で周知であるとする請求人の主張を採用することはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ポリリンコンクール」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大、同間隔で表されているものであり、視覚上、その構成全体をもって、まとまりある一体的なものと看取、把握されるものといえ、また、上記1のとおり「コンクール」の文字(引用商標3)が広く認識されているものでもないから、その構成中のいずれかの文字部分が強く印象付けられるものではない。
また、本件商標は、その構成全体から生じる「ポリリンコンクール」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、その係る構成及び称呼から、その構成全体をもって、看取、把握されるとみるのが相当であるから、その構成文字に相応して「ポリリンコンクール」の称呼のみを生じ、また、当該文字は、辞書類に載録されている既成の語でなく、特定の意味合いを表す語として知られているものともいえないことから、これより特定の観念を生じない。
なお、請求人は、本件商標の構成中の「ポリリン」の文字部分は、歯のホワイトニングに有効な「ポリリン酸」を意味し、指定商品との関係においても、原料を表示するものにすぎず、自他商品識別標識としての機能を有しないものであり、かつ、本件商標全体から生じる「ポリリンコンクール」の称呼は9音と冗長であることから、「コンクール」の称呼も生じる旨主張し、証拠(甲4?甲18)を提出している。
しかしながら、「ポリリン酸」が歯のホワイトニングに使用されることはうかがえるとしても、本件商標の登録査定時において「ポリリン」の文字が「ポリリン酸」を指称するものとして、使用されている事例はわずか(甲4、甲5)でしかないうえに、いずれも「ポリリン酸」の文字が使用されていることを前提に「ポリリン」のように略されて使用されているというべきであり、また、「ポリリンコンクール」の称呼は、上記のとおり、無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標の構成中から「ポリリン」の文字を捨象して、「コンクール」と称呼しなければならない理由は見いだせないから、請求人の上記主張は、採用することができない。
(2)引用商標1及び引用商標2
引用商標1は、前記第2のとおり、「CONCOOL」の欧文字と「コンクール」の片仮名を、両文字の大きさは違えてはいるものの、それぞれ同じ書体、同じ大きさで表してなるところ、下段の片仮名部分は、上段の欧文字部分の読みを表したものと容易に理解し得るものであるから、その構成文字に相応して、「コンクール」の称呼を生じるものである。また、「CONCOOL」の欧文字は、一般の辞書類に載録がなく、また、上記1のとおり、引用商標1は需要者の間に広く知られていた商標でもないから、これより特定の観念を生じない。
引用商標2は、別掲2のとおり、マウスウォッシュの包装容器と思しき図形及び複数の文字からなるところ、そのほぼ中央に看者の注意をひくように大きく「ConCool」の白抜き文字を有するものであるから、該文字部分に相応して、「コンクール」の称呼を生じ、引用商標1と同様の理由により該文字部分及び引用商標2より特定の観念を生じない。
(3)本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否
本件商標と引用商標1及び引用商標2を比較すると、上記(1)及び(2)のとおり、構成態様及び構成文字並び図形の有無において明らかに相違するものであるから、外観において、判然と区別することができ相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「ポリリンコンクール」の称呼と引用商標1及び引用商標2から生じる「コンクール」の称呼とは、語頭における「ポリリン」の音の有無に差異を有するものであるから、称呼において、明瞭に聴別することができ相紛れるおそれはない。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、観念において比較できないものであるとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのないものであるから、両商標は非類似の商標である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標1及び引用商標2の指定商品とが同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1のとおり、引用商標3及び引用商標4は、ウエルテック社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
(2)本件商標と引用商標3及び引用商標4の類否について
引用商標3及び引用商標4は、前記第2のとおり、「ConCool」の欧文字又は「コンクール」の片仮名からなるところ、これらの構成文字は、引用商標1の構成文字と共通することから、上記2(2)と同様に、それぞれの構成文字に相応して、「コンクール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そうすると、本件商標と引用商標3及び引用商標4とは、上記2(3)と同様の理由により、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(3)小括
上記(1)のとおり、引用商標3及び引用商標4は、ウエルテック社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められず、また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標3及び引用商標4は、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標3及び引用商標4の使用商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、上記1のとおり、ウエルテック社の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標とは認められない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標と引用商標とは、上記2及び3(2)のとおり、非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
(3)本件商標の指定商品とウエルテック社の業務に係る商品との関連性
本件商標の指定商品には、「歯磨き、歯用漂白剤、口内洗浄剤及び口内すすぎ剤(医療用のものを除く。)、口臭用消臭剤」など口腔ケア商品を含むものであり、薬局や、ドラッグストアを通じて一般消費者向けに販売され、他方、ウエルテック社の業務に係る商品(口腔ケア商品)は、主に歯科医院を通じて患者に販売されるものの、両者は用途を同じくする商品であり、需要者層も一部共通するものといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
本件商標の指定商品とウエルテック社の業務に係る商品とは、上記(3)のとおり、用途を同じくし、需要者層も一部共通するとしても、上記(1)のとおり、引用商標は、ウエルテック社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないうえに、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、類似性の程度が極めて低い別異の商標である。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が引用商標を想起、連想して、当該商品をウエルテック社の業務に係る商品、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
加えて、本件商標が、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標と認めるに足る事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲 別掲
1 引用商標1


2 引用商標2(色彩については原本参照。)



審理終結日 2021-02-09 
結審通知日 2021-02-19 
審決日 2021-03-09 
出願番号 商願2017-66058(T2017-66058) 
審決分類 T 1 11・ 253- Y (W03)
T 1 11・ 255- Y (W03)
T 1 11・ 252- Y (W03)
T 1 11・ 251- Y (W03)
T 1 11・ 271- Y (W03)
T 1 11・ 261- Y (W03)
T 1 11・ 263- Y (W03)
T 1 11・ 262- Y (W03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
岩崎 安子
登録日 2018-01-05 
登録番号 商標登録第6009212号(T6009212) 
商標の称呼 ポリリンコンクール 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 貝塚 亮平 

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