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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0112
審判 全部申立て  登録を維持 W0112
審判 全部申立て  登録を維持 W0112
審判 全部申立て  登録を維持 W0112
審判 全部申立て  登録を維持 W0112
審判 全部申立て  登録を維持 W0112
管理番号 1372934 
異議申立番号 異議2020-900222 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-07 
確定日 2021-04-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第6261005号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6261005号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6261005号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成31年2月19日に登録出願、第1類「自動車用コーティング剤,自動車の窓ガラス用撥水性コーティング剤」及び第12類「自動車の部品及び付属品,自動車用ホイール,自動車用ホイールカバー,自動車用ホイールの付属品,自動車の外装用部品,自動車のフロントフェンダー,自動車のリアフェンダー」を指定商品として、令和2年6月2日に登録査定され、同月18日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下の引用商標1ないし引用商標4をまとめて「引用商標」という場合がある。)は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第1600636号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品 :第12類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日:昭和54年6月15日
設定登録日:昭和58年7月28日
(2)登録第1600638号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品 :第12類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日:昭和54年6月15日
設定登録日:昭和58年7月28日
(3)登録第4406720号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
指定商品及び指定役務:第12類及び第37類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
登録出願日:平成9年6月20日(商願平9-129239を原出願とする分割出願における遡及日)
設定登録日:平成12年8月4日
(4)国際登録第1047361号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲5のとおり
指定商品 :第3類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品
国際商標登録出願日:2009年(平成21年)10月13日
設定登録日:平成23年4月1日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人は、1947年にイタリア国にて設立された世界有数のスポーツカー製造業者である。
申立人は、当初イタリア国アルファ・ロメオ社のレーシングチーム運営のために設立された後、自社のレーシングカーの開発を行うようになり、1950年から世界最高峰の自動車レースであるフォーミュラ・ワン(F1)に出走するなど、自動車レース活動を積極的に行ってきた。また、申立人は、市販用のスポーツカーやGTカーも製造しており、世界各国で販売するほか、関連グッズとして、模型自動車等のおもちゃ、衣服、かばん、アクセサリー類等、広く商品展開を行っている(甲6、甲7)。
申立人の親会社の2019年度の年次報告書によれば、年間連結売上高は、約3,766百万ユーロ(約4,700億円)に及び、その事業規模は甚大である(甲8)。
申立人の名声が、F1への参加及びスポーツカー等の販売活動を通じて、特定のモータースポーツ愛好家のみならず、広く一般人にも及んでいることは顕著な事実である。また、申立人の市販用スポーツカーは、1台あたり2、3千万円で取引され、高級かつ高性能であるとの羨望のブランドイメージが、一般の消費者にも幅広く浸透している。その結果、申立人が企画、販売する衣服やかばん類などの関連グッズについても、広く需要者の間で認知され、自動車やモータースポーツなどの分野に限定されない、幅広い商品分野における我が国の需要者間に申立人のハイエンドなブランドイメージや高い名声が確立されている。
イ 世界の有名な自動車メーカーは、各社それぞれに自社製品を識別するためのエンブレム(紋章)を有し、各社製品に歴史的に一貫して使用されてきた結果、各社のブランドイメージを象徴する役割を果たしている。申立人も、前身であるレーシングチーム時代の1932年から現在に至るまで、「Ferrari」のロゴと共に、後ろ足で立ち上がった馬(跳ね馬)をモチーフにした紋章をコーポレートシンボルとして使用し、この紋章は、申立人のあらゆる製品のみならず、モータースポーツの分野におけるチームの象徴としても使用されている(甲9、甲10)。
申立人は、跳ね馬の図形を含む商標について、広く世界において使用及び商標登録を所有し、この跳ね馬図形の商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を象徴するものとして、日本国内外において広く認識されている。
ウ 申立人の所有に係る引用商標1は、「日本国周知・著名商標」とされており(甲11)、過去の異議決定において周知著名性が認められている(甲12)。
また、世界のブランドランキングによれば、申立人は世界79位にランクされており、そのブランド価値は、6,379百万米ドル(約6,653億円)とされている(甲13)。
エ 以上のとおり、引用商標は、申立人の代表的な出所標識(ハウスマーク)としての長年にわたる継続的な使用により、申立人の業務に係る商品又は役務を象徴するものとして、日本国内外において広く認識されていることは、顕著な事実であり、その周知著名性は、遅くとも本件商標の出願日に存在し、かつ、現在も継続している。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標の類否について
本件商標及び引用商標は、その構成中に、後ろ足で斜め上に立ち上がった馬のシルエットと思しき図形を含む点で共通する。
本件商標の構成中、馬のシルエットと思しき図形は、盾型の図形の枠内において、その中央の目立つ位置に最も大きく表示されており、看者の注意を引く。とりわけ、その指定商品である自動車関連商品について使用されるとき、その盾型図形の構成から、自動車メーカーのエンブレムであることが容易に想像される。自動車メーカーのエンブレムには、動物の図柄がモチーフとされることは少なくなく、申立人は「跳ね馬」、ランボルギーニは「闘牛」、アルファ・ロメオは「蛇」、ジャガーは「豹」、プジョーは「ライオン」を採用している。
エンブレムに表される動物のモチーフは、象徴的に把握されやすく、他の要素から独立して認識されやすい。本件商標の構成中の「後ろ足で立ち上がった馬と思しき図形」は、独立した出所識別標識、すなわち要部として認識され得るものである。
本件商標の要部である「後ろ足で立ち上がった馬と思しき図形」は、引用商標の「跳ね馬図形」と、後ろ足で立ち上がった馬のシルエットを表す点、さらに、立ち上がる方向が向かって左斜め上である点で、基本的な構成態様を共通にし、また、両者共に「後ろ足で立ち上がった馬」なる観念で共通するから、本件商標に時と所を異にして需要者が接したとき、引用商標との間で出所を誤認混同するおそれがある。特に、引用商標の周知著名性を考慮すれば、需要者及び取引者が本件商標に接したときは、その出所の誤認混同の蓋然性は極めて高い。
よって、本件商標は、引用商標と外観及び観念において相紛らわしく、互いに類似する。
イ 本件商標と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品中、第1類の指定商品は、引用商標4に係る指定商品と類似し、第12類の指定商品は引用商標1ないし引用商標3に係る指定商品と類似する。
ウ 審査例について
本件商標と同様に、後ろ足で立ち上がった馬と思しき図形を有するエンブレム調の商標の審査において、商標法第4条第1項第11号の拒絶理由として、引用商標を始めとする申立人所有の先行商標が多数引用され、拒絶査定に至っている(甲14?甲16)。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 商標の類似度について
本件商標と引用商標とは、「後ろ足で立ち上がった馬と思しき図形」を共に要部とし、極めて高い類似度がある。
イ 引用商標の周知度について
引用商標は、長年にわたる継続的な使用により、申立人の業務に係る商品又は役務を象徴するものとして、日本国内外において広く認識されている。
その結果、遅くとも本件商標の出願日には、引用商標は、関連する需要者及び取引者の間で申立人の業務に係る商品の出所を示す表示として広く知られており、その周知著名性は現在まで維持されている。
ウ 引用商標が造語かハウスマークであるかについて
引用商標は、業界においてありふれて採択されていない、申立人によって創作、採択された商標であり、「跳ね馬(後ろ足で立ち上がった馬)といえばフェラーリ」と称されるほどに、申立人固有の出所を表示する標識として認識されている。
また、引用商標は、申立人のハウスマークとして、長年にわたって使用されてきた。
このように、引用商標は、創造性の高い造語であり、また、申立人の業務を代表する固有の商標として一貫して使用されてきた。
エ 多角経営の可能性について
申立人は、スポーツカー等の自動車製造業に加えて、モータースポーツビジネスを通じた、各種関連グッズの販売ないしライセンスビジネスを展開しており、そのグッズ展開は多岐にわたる。
オ 商品・役務間の関連性、需要者の共通性その他取引の実情について
本件商標の指定商品中、第12類の商品は、申立人の主要業務に係る商品(自動車並びにその部品及び附属品)と重複する。
本件商標の指定商品中、第1類の指定商品は、専ら自動車の整備や保守に用いるものであり、自動車の交換部品や附属品と共通する流通経路(カー用品店、自動車ディーラーなど)を通じて流通し、需要者層も共通するから、これらの商品も、申立人の主要業務(自動車製造業)と極めて密接な関連性を有する。
カ 小括
以上のように、(ア)本件商標は引用商標との間で高い類似度を有すること、(イ)引用商標は、申立人の業務に係る商品を示すものとして、需要者・取引者の間で高い周知著名性を有していること、(ウ)引用商標は、申立人により採択された創造商標であること、(エ)申立人のハウスマークないしその要部として用いられてきたこと、(オ)申立人の業務は、自動車製造業にとどまらず、モータースポーツ分野の業務や関連グッズの販売に広く展開されていること、(カ)本件商標に係る指定商品はいずれも申立人の業務に係る商品と重複ないし密接に関連していることを踏まえると、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接した需要者及び取引者は、申立人又は同人と資本関係又は業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について誤認混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標は、申立人の代表的な出所標識(ハウスマーク)としての長年にわたる継続的な使用により、申立人の業務に係る商品又は役務を象徴するものとして、日本国内外において広く認識されているから、遅くとも本件商標の出願日には、その需要者及び取引者の間で、申立人の業務に係る商品の出所を示す表示として広く知られるに至っており、その周知著名性は、現在に至るまで維持されている。
また、申立人のブランド価値は、世界79位、6,379百万米ドル(約6,653億円)とされており、引用商標の顧客吸引力は計り知れない。
イ 本件商標と引用商標は、互いに類似する。
不正の目的について
本件商標権者は、ビジネスコンサルティング、アプリケーション開発等を提供する業者であるものの、中国法人と思われる子会社を所有しており(甲17)、当該子会社のウェブサイトによれば、ポルシェ、BMW、メルセデスベンツ等の高級自動車の販売、改造を事業としているようである(甲18)。
同ウェブサイトにおいて、本件商標を表示しており、本件商標権者が、子会社を通じて、自動車関連の商品、役務に本件商標を使用する意図で出願したことは疑いない。
また、同ウェブサイトの一部ページには、申立人の製造に係るスポーツカーの写真が大々的に掲載されており、その写真と本件商標が重なるように表示されている(甲18)。
このように、本件商標権者は、自動車関連、とりわけスポーツカーを含む高級自動車への知識が豊富にあることが推測され、当該業界において周知著名な引用商標を、その出願時点において知っていたことは明らかである。すなわち、商標権者は、その知り得る立場からすれば、申立人又は引用商標に何ら依拠せず、偶然に本件商標を採択したとは考えられない。
よって、本件商標権者は、本件商標の出願時点において、外国又は日本国内において周知著名な引用商標の存在を知りながら、その顧客吸引力にフリーライドする目的で、引用商標と類似する本件商標を登録出願したものである。
エ 以上のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似し、また、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 本件商標権者は、引用商標が申立人の業務に係る商品を示す商標として周知著名であることを知りながら、それと類似する本件商標を、引用商標の有する顧客吸引力にフリーライドする目的で登録出願した。かかる本件商標の独占使用を認めることは、社会公共の秩序を著しく混乱させるおそれがあり、取引秩序の維持を目的とする商標法の予定するところではなく、保護に値しない。
また、かかる使用によって、本件商標権者と申立人との関係が誤認され、申立人のこれまで築き上げてきた名声・信用が希釈化するおそれがあるばかりでなく、誤認した需要者及び取引者にまで損害が生じる可能性もある。
イ 以上のとおり、本件商標の登録出願は、その経緯において社会的相当性を欠くものであって、本件商標の指定商品についての使用は社会公共の利益に反する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、下端をとがらせた盾型形状の枠内(一回り小さな同様の構成の枠内は、上部を赤色、残りを黒色で塗ってなる。)に、上部の赤色枠内に「LS」の文字を、その下の黒色枠内の上部に「POWER STyLE」の文字を、その下に大きな羽を広げた馬のような動物(前足と後ろ足が確認できる。)が左上方に向けて飛び立つ様子を表した図形を、いずれも白抜きで表した構成からなる。
そして、本件商標の動物の図形部分は、その構成上の特徴(羽を広げた馬、飛び立つような態様)から、いわゆる飛翔しようとするペガサス(ギリシア神話の有翼の天馬)を描写してなると想起できるものの、具体的な称呼及び観念は生じない。
また、本件商標の構成中、「POWER STyLE」の文字部分は、当該文字単独又は「LS」の文字と結合してみたところで、具体的な意味合いを認識、理解させるものではなく、「エルエスパワースタイル」又は「パワースタイル」の称呼が生じるとしても、具体的な観念は生じない。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「エルエスパワースタイル」又は「パワースタイル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないというべきである。
(イ)引用商標について
a 引用商標1は、別掲2のとおり、黄色の縦長長方形状の枠内(上部に緑色、白色及び赤色を組み合わせた横長の帯を配する。)に、左上方に向けて後ろ足で立ち上がった状態の馬(2本の前足と2本の後ろ足が確認できる。)のような動物の図形(以下「引用図形」という。)及び「Ferrari」の文字(「F」の文字の上部の横棒が長く伸びている。)を黒色で表した構成からなる。
そして、引用図形は、その構成上の特徴(馬、後ろ足で立ち上がった状態)から、立ち上がった馬を描写してなると想起できるものの、具体的な称呼及び観念は生じない。
そうすると、引用商標1は、その構成文字に相応して、「フェラーリ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
b 引用商標2は、別掲3のとおり、下端をとがらせた盾型形状の枠内(上部に緑色、白色及び赤色を組み合わせた横長の山状の帯を配する。)に、引用図形と同様の構成よりなる図形を黒色で表した構成からなるところ、引用図形は、上記aのとおり、具体的な称呼及び観念は生じるものではなく、その他の構成要素からも、具体的な称呼及び観念は生じない。
そうすると、引用商標2は、特定の称呼及び観念は生じない。
c 引用商標3及び引用商標4は、別掲4及び別掲5のとおり、引用図形と同様の構成よりなる図形を表した構成からなるところ、上記aのとおり、その構成要素からは、具体的な称呼及び観念は生じない。
そうすると、引用商標3及び引用商標4は、特定の称呼及び観念は生じない。
(ウ)本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標を比較すると、外観については、何らかの動物を描写してなる図形を含む点で共通するものの、その動物の種別(羽を広げたペガサスと馬)や構成態様(飛び立つような状態と立ち上がる状態、確認できる足の数。)が異なるもので、その他の図形部分や文字部分の差異(枠の構成態様や色彩、構成文字の有無など)に鑑みると、互いに異なる客体を異なる態様で表してなると認識できるもので、外観における印象は互いに相違する。また、称呼については、構成音の明らかな差異又は有無により、互いに明らかに異なるもので、観念については、両商標とも特定の観念は生じないため、比較できない。
そうすると、本件商標は、引用商標とは、観念は比較できないとしても、外観の印象が相違し、称呼も明らかに異なるから、それぞれの外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに別異の印象を与えるもので、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
イ 申立人の主張に対し
申立人は、本件商標の「後ろ足で立ち上がった馬と思しき図形」は、引用商標の「跳ね馬図形」と、基本的な構成態様において共通し、観念が共通するから、両商標を時と所を異にして需要者が接したときは、出所の誤認混同をするおそれがあり、外観及び観念において相紛らわしく、互いに類似する旨を主張する。
しかしながら、本件商標の動物の図形部分は、上記ア(ア)のとおり、飛翔しようとするペガサスを描写してなると想起できるから、立ち上がった馬を想起させる引用図形を顕著に表示した引用商標とは、描写してなる動物の種別や態様が異なるもので、外観において記憶される印象は互いに異なるから、その主張は採択できない。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、同一又は類似する商標ではないから、その指定商品が同一又は類似するかにかかわらず、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性について
申立人提出の証拠及び主張によれば、(ア)申立人(親会社など関連会社を含む。)は、イタリア国で設立された自動車メーカーであって、フォーミュラ・ワン(F1)などのレーシングチームとしての活動に関与しており、我が国において申立人の商品は、1950年代後半以降から個人輸入や販売代理店を通じて輸入されていること(甲10)、(イ)引用商標は、申立人の事業活動と関連して、車体やカタログ、ウェブサイト等に付されるロゴとして表示、使用されていること(甲6の1、甲6の2、甲7、甲8)、(ウ)申立人の関連会社を含めた年間連結売上高は、2019年度で、約37.6億ユーロ(約4,700億円)であること(甲8)が認められる。
以上の認定事実によれば、引用商標は、長年にわたりレース活動にも関与する自動車メーカーである申立人の業務に係る商品(自動車)と関連して使用されており、我が国における需要者の間においても、広く認知されていることがうかがえる。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用商標は、上記(1)アのとおり、それぞれの構成中、動物の図形部分を比較しても、いずれも何らかの動物を描写してなるという漠然とした共通点があるとしても、その動物の種別(羽を広げたペガサスと馬)や構成態様(飛び立つような状態と立ち上がる状態。確認できる足の数。)が異なるから、互いに異なる客体を異なる態様で表してなると認識できるもので、外観における印象は互いに相違する。
そのため、本件商標と引用商標は、上記以外の構成要素の差異(外観、称呼及び観念における差異)も踏まえて全体的に考察すれば、互いに別異の商標であるとの印象を与えるものである。
混同を生じるおそれの有無
以上を踏まえると、本件商標は、引用商標とは、互いに別異の印象を与える商標であるから、引用商標の周知性の程度や商品の関連性の程度などを総合的に考慮したとしても、それに接する需要者をして、申立人又は申立人の業務に係る商品との具体的関連性を連想、想起することは考えにくく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標との間において商品の出所の誤認を生じるおそれはなく、また、その出願が不正の目的でなされたことを示す具体的な証拠はない。
さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでなく、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、上記(1)ア(ウ)のとおり、引用商標とは、同一又は類似する商標ではない。
また、本件商標が、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的など)をもって使用、出願されたことを示す具体的な証拠はない。
したがって、本件商標は、引用商標とは同一又は類似せず、不正の目的をもって使用をするものとも認められないから、引用商標の我が国の国内又は外国における需要者の間における周知著名性の程度にかかわらず、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲

別掲1(本件商標。色彩は原本を参照。)


別掲2(引用商標1。色彩は原本を参照。)


別掲3(引用商標2。色彩は原本を参照。)


別掲4(引用商標3)


別掲5(引用商標4)



異議決定日 2021-03-29 
出願番号 商願2019-26476(T2019-26476) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W0112)
T 1 651・ 261- Y (W0112)
T 1 651・ 262- Y (W0112)
T 1 651・ 22- Y (W0112)
T 1 651・ 263- Y (W0112)
T 1 651・ 222- Y (W0112)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦辺 淑絵 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 鈴木 雅也
阿曾 裕樹
登録日 2020-06-18 
登録番号 商標登録第6261005号(T6261005) 
権利者 株式会社クローバーホールディング
商標の称呼 エルエスパワースタイル、エルエス、パワースタイル、スタイル 
代理人 山尾 憲人 
代理人 勝見 元博 
代理人 青野 哲巳 
代理人 渡辺 昇 
代理人 原田 三十義 

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