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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W35
管理番号 1372889 
審判番号 取消2019-300815 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-10-25 
確定日 2021-02-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5619187号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5619187号商標(以下「本件商標」という。)は、「fika」の欧文字を横書きしてなり、平成25年2月26日に登録出願、第35類「化粧品及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同25年10月4日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年11月11日であり、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年11月11日ないし令和元年11月10日である(以下「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第13号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の事業について
証明書(乙3)はあくまでも廃止届の受理にすぎず、営業を行っていた証拠とはいえない。また、既に閉店している美容室「fika」(以下「本件店舗」という。)のホームページでは2018年8月以降更新をしておらず(甲2)、同年9月以降営業が行われていた形跡はない。被請求人が提示した証拠は2018年12月まで長期にわたり営業していたと印象付けるために提示した証拠にすぎず、被請求人の主張を裏付ける証拠にはなり得ない。
(2)本商標権の使用許諾契約について
平成28年3月7日に株式会社Lycka(以下「Lycka社」という。)を設立したことは認めるが、契約書(乙5)は被請求人が代表取締役を務める会社と被請求人が締結した契約であるため、被請求人は自身の意思でいつでも記載、押印が可能であり、また、諸手続きが煩雑になる会社設立日に、一商標の使用許諾契約書を結ぶことは考え難い上、仮に、平成28年3月7日に誤った契約を締結した場合、当該契約書は直ちに破棄することが通常であるが、契約締結日が同一の内容が異なった二通の契約書を3年間以上保管していることは不自然である。
さらに、上申書とともに提出した被請求人が主張する正しい契約書は、答弁書提出後に再作成したと推認できる。
(3)被請求人の使用状況について
ア 本件店舗の看板に表示しての使用
本件店舗の外観写真(乙6)は作成された日付の証拠はなく、当該写真の電子データ(乙30)の作成日付はコンピュータOSの日付を変更することで簡単に変更できるため、主張を裏付ける証拠にはなり得ない(甲11、甲12)。
また、現在は閉店している本件店舗の表記を5年間一度も表記や外観を変更することを検討しないということは通常考え難い。
イ 使用態様
「東京都美容生活衛生協同組合」の店名リスト(甲3)のとおり東京都に存在する同協会に加入する美容院4138店のうち、「by」を「由来する」といった観念で使用している店舗はわずか11店舗のみで、0.3%にも満たないから、これが美容業界に普通にみられるという被請求人の主張は失当である。
また、本件店舗の写真(乙6)の文字は非常に小さく、看板というより、店名の表記を表したものに近い。
本件店舗の写真(乙6)で確認できる「by cottie」の表記は、表記可能なエリアに対し、全ての文字が左端に小さく記載されているため、表記エリアに対する文字面積割合は「fika」も「by cottie」も大差はなく、被請求人が使用していた標章は「fika by cottie」といえる。
さらに、本件商標は4文字の英単語のみで形成されている非常にインパクトが強い商標であるが、一行に表記した「by cottie」という8文字の英単語を付け加えてしまうことによって一連一体の標章と捉えることができ、本件商標とは称呼、外観、観念とも類似とはいい難い。
よって、本件店舗の写真(乙6)及びその電子データ(乙30)の作成日付は、本件商標が看板に使用されていたという主張を裏付ける証拠にはなり得ない。
ウ 小売用商品の仕入れ
答弁書で示されている小売用商品の仕入れは、本件商標の指定役務に当たらない。
なお、売上伝票(乙14)は店名の記載がない上に、店舗側の控えであり、複写伝票である証拠でもないことから、当該伝票と同様のものを役務の便益を受ける者である顧客に引き渡した証拠にはなり得ず、さらに姉妹店舗に納品されていた商品を閉店した本件店舗で販売していた伝票である証拠にはなり得ない。
エ 取引書類に表示しての使用
(ア)商標としての使用に当たらない
標章を付した取引伝票を顧客に提供する行為が使用(商標法第2条第3項第3号、同第4号、同第6号)に当たるが、被請求人が証拠として示している取引書類(乙15及び乙16)は全て店舗側の書類であり、顧客に提供する取引伝票の写しではない。
また、本件商標のスタンプが後から追加されたように押印されているが、スタンプは通常複写伝票には使用せず、本件商標のスタンプが顧客に引き渡された取引書類上に記載されている可能性は限りなく低い。
仮に、「fika」の表示がしてある未使用の伝票が本件審判前から存在していた場合、以前使用していた伝票も併せて証拠として提出すると考えられるが、本件審判の答弁書では提出されていない。
よって、スタンプ自体も本件審判請求後に追加で押印されたと推認することができる。
(イ)本件商標「fika」を使用していない
クレジット決済伝票(乙16)には、「フィーカ」という文字が記載されており、被請求人は本件商標「fika」と「フィーカ」は社会通念上同一と主張しているが、本件商標の公報(甲1)には称呼として「フィカ、ファイカ」と記載されており、特許庁も本件商標を「フィーカ」と称呼するとは認めていない。
また、被請求人は本件商標とは別の商標「商標登録第5603610号(標準文字:fika)」(甲10)が登録された後に、さらに「商標登録第5676670号(標準文字:フィーカ)」(甲11)を出願していることから、被請求人自身も「fika」は「フィーカ」と社会通念上同一ではないと認め、別出願をしたものと推認される。
よって「fika」と「フィーカ」は商標法第50条第1項に定める社会通念上同一と認められる商標には当たらない。
また、クレジット決済伝票(乙16)と同じ表記の取引書類が顧客に引き渡された証拠もない。
(ウ)本件商標の使用は指定役務についてされていない
仮に乙第15号証及び乙第16号証が被請求人の主張を裏付けているとしても、通常カットやヘアカラーといったサービス中にシャンプーを行うため、同サービス中にシャンプーを使った可能性が高く、被請求人が有している本件商標とは別の商標「商標登録第5603610号」(甲10)の指定役務「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」の便益を受ける者である顧客に引き渡した書証と判断することができ、本件商標の指定役務が行われた証拠にはなり得ない。
(エ)本件商標の使用の主体が不明
乙第15号証及び乙第16号証の証拠には、被請求人及び同人が使用契約を締結したと主張するLycka社の名称の記載がないから、商標を使用した主体が不明であり、上記乙各号証の存在をもって本件商標が「使用」されたとの主張は失当である。
オ チラシに表示しての使用
(ア)チラシの電子データの作成日付はコンピュータOSの日付を変更することで簡単に変更できるため、チラシ及びその電子データ(乙17ないし乙19)の作成日が平成29年9月25日という主張を裏付ける証拠にはなり得ない。
また、被請求人が株式会社グラフィックに対してチラシ印刷を依頼した証拠と主張する注文詳細(乙20)及び代引領収書(乙21)は、チラシと関連性を示す記載が一切なく、チラシ制作を依頼した証拠にはなり得ない。
さらに、チラシ(広告)は頒布しなければ使用に該当しないが(商標法第2条第3項第8号)、その証拠はない。
(イ)本件商標「fika」を使用していない
チラシ(乙17)には、被請求人が本件商標と類似と主張する「フィーカ」という文字が記載されているが、前述したように本件商標とは社会通念上同一と認められる商標には当たらない。
なお、被請求人の店舗のイラストの上部に白文字で「fika」と記載しているが、それ以外に「フィーカ」との記載が五箇所あり、顧客が店舗名を「fika」と認識することは非常に難しい。
(ウ)本件商標の使用は指定役務についてされていない
被請求人が本件商標を使用した証拠と主張している「癒しのプチスパ」及び「艶々トリートメント」の広告(チラシ)(乙17)は、被請求人が有している本件商標とは別の商標「商標登録第5603610号」(甲9)の指定役務「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」という便益を受ける者へのチラシ(広告)と判断することができ、本件商標の指定役務の広告が行われた証拠にはなり得ない。
(エ)本件商標の使用の主体が不明
乙第17号証ないし乙第19号証の証拠には、被請求人及び同人が使用契約を締結したと主張するLycka社の名称の記載がないから、使用した主体が不明であり、上記乙各号証の存在をもって本件商標が「使用」されたとの主張は失当である。
カ その他の使用
価格表(乙24ないし乙26)に表示しての使用、商品の陳列写真(乙27ないし乙29)及び商品ポップ(商品価格表)(乙31ないし乙33)は、いずれも、これらの存在をもって、本件商標が「使用」されたとの被請求人の主張は失当である。
(4)結語
被請求人の答弁からは、被請求人が有している本件商標とは別の商標、商標登録第5603610(標準文字:fika):指定役務「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」、及び商標登録第5676670(標準文字:フィーカ):指定役務「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」の使用については認める余地はあるものの、被請求人が要証期間のうちいずれかの時点において本件商標を使用したとの証明がなされているとはいえない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第33号証を提出した。
1 被請求人の事業
被請求人は、平成19年3月に東京都墨田区緑に店舗「cottie」(以下「姉妹店舗」という。)を設立し(乙1)、現在まで美容業を営んでおり、平成25年8月には東京都墨田区江東橋に本件店舗を設立し(乙2)、平成30年12月31日まで、本件店舗においても美容業を営んでいた(乙3)。
2 本件商標の使用許諾契約
本件商標は、当初は個人事業主であった被請求人が本件店舗において使用していたが、平成28年3月7日に、被請求人はLycka社を設立(乙4)し、本件店舗の経営を個人事業から法人に移行したことに伴い、本件商標についても、被請求人とLycka社の間で、使用許諾契約を同日付で締結した(乙5)。(審決注:被請求人は答弁書において、被請求人とLycka社を併せて「被請求人」というとしている。)
なお、乙第5号証の使用許諾契約書について、誤って正式な書面ではないものを提出してしまったので、新たに「使用許諾契約書」を提出する。
3 被請求人の使用状況
(1)本件店舗の看板に表示しての使用
被請求人は、本件商標を、本件店舗の設立の日から、閉店するまでの期間に、看板に表示して使用している(乙6及び乙30)。
(2)使用態様
最近の美容業界では、同一経営による姉妹店の名称が異なることが珍しくないことから、新しく設立された美容室店舗の看板や広告における店舗名称に、本店又は母体となる店舗との関連性を示すための表示を併記することが普通に行われており(乙7)、本件店舗の看板においても、そのような慣例に基づき本件商標を本件店舗の看板に表示して使用すると共に、その語尾の後ろに小さな文字で「by cottie」と表示していた。
本件店舗の外観写真(乙6)における表示は、「fika」の部分の方が「by cottie」の部分よりも格段に大きく、取引者、需要者に対し、本件商標に係る役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
また、「fika」と「by cottie」の文字の大きさが著しく異なることに加え、「by cottie」の部分が、社会通念上一般に想起される店舗看板における文字の大きさとしては視認が困難なほど極端に小さいことからすれば、取引者や需要者が、その外観から、「fika by cottie」という一連一体の標章として認識することは考えられない。
さらに、「by cottie」の部分からは「バイ コティエ」の称呼及び「コティエに由来する」といった観念が生じるものの、美容室店舗に付された固有の名称に、関連する店舗の名称が併せて表記されることは、美容業界において通常見られることであるので、取引者や需要者から、「by cottie」の部分が、上記意味合いと理解され、本件商標に係る役務の標章の一部とは認識され得ないことが容易に推認できる。
よって、「by cottie」の部分からは、本件商標に係る役務の出所識別標識としての称呼、観念も生じないというべきである。
したがって、本件店舗の看板における商標としての表示は「fika」の部分であり、当該表示は、本件商標と社会通念上同一と認められるから、被請求人は、平成25年8月の本件店舗の設立から同30年12月の閉店に至るまでの期間に、本件店舗の看板に表示することによって、本件商標を使用している。
(3)小売用商品の仕入れ
本件店舗において、主に販売していたヘアトリートメントやシャンプーは、美容商材の卸売り業者である株式会社マイディアから仕入れていた(乙8及び乙9)ムクエシリーズ(乙10)と、卸売業者の株式会社東和(以下「東和社」という。)から仕入れていた(乙11及び乙12)商品類である(乙13)。
仕入れの請求書及び支払票(乙11及び乙12)並びに仕入れ商品の写真(乙13)から、被請求人が東和社に仕入れ代金を支払い、本件商標の指定役務に係る商品を仕入れていることが理解できる。
請求書(乙11)並びに売上伝票及びクレジット売上票(乙15)のとおり、本件店舗では、顧客が広い商品範囲の中から気に入った商品を選択できるように、様々な種類の頭髪用化粧品やせっけん類を取り扱っていた。本件店舗における営業は、本来美容業が主体であるところ、商品の購入だけを目的に来店する顧客もいた。
(4)取引書類に表示しての使用
被請求人は、平成25年8月の本件店舗の設立日から同30年12月の閉店に至るまでの期間に、顧客との取引書類に本件商標を表示して使用している(乙15及び乙16)。
本件店舗では、顧客の来店毎に担当美容師が売上伝票を作成し、施術終了後にレジカウンターにおいて、顧客に対して売上伝票を提示して、伝票に記載された施術内容や購入商品に係る記載と請求金額を確認してもらったうえで会計をしていた。
本件店舗で使用していた伝票は、姉妹店舗と全く同じ市販品だったので、姉妹店舗に在籍する美容師が、本件店舗において勤務するときは、経理業務における便宜性の観点からも、伝票に「fika」の表示を使用し、姉妹店舗の売上伝票と区別していた。平成30年10月頃には、本件店舗を閉店することが決定しており、以後、「fika」の表示がしてある未使用の伝票の使い道がなくなることから、錦糸町店での通常業務において、乙第15号証のとおり、10月頃から当該伝票の使用を開始した。
乙第15号証は、本件店舗において「fika」の表示を使用した売上伝票6枚とクレジットカード決済売上票の加盟店控え1枚であり、6枚の伝票には、いずれも「fika」の表示を使用しており、本件商標の指定役務に係る商品を販売していることが記載されていることから、被請求人は、本件商標を取引書類に表示して使用していることが理解できる。
また、乙第16号証は、平成28年11月から同30年9月までの売上伝票14枚とクレジット決済の売上票15枚が対になった取引書類であり、売上伝票には顧客に販売した本件商標の指定役務に係る商品の商品名と販売価格が記載されており、売上票には「フィーカ」の表示がある。顧客に手渡す利用伝票にも同様に「フィーカ」の表示があるところ、当該利用伝票は、売上伝票によって取引内容を提示したことに基づき決済を行い、購入商品と併せて顧客に手渡されることから、その一連一体の取引の態様に鑑みて、本件商標の指定役務に係る取引書類であるといえる。
これらのことから、乙第15号証及び乙第16号証によって、被請求人が本件店舗において、本件商標を顧客との取引書類に表示して使用していることが理解できる。
(5)チラシに表示しての使用
被請求人は、平成29年10月21日頃から本件店舗の同30年12月の閉店に至るまでの期間に、チラシに、本件商標を表示して使用している(乙17ないし乙19)。
本件店舗では、チラシの原稿の印刷を、平成29年10月に株式会社グラフィックに対して依頼し(乙20及び乙21)、完成したチラシは、本件店舗の従業員が近隣のマンション等の住宅ポストへ投函したほか、店頭に置いて、紹介による新規顧客の獲得を目的として、本件店舗へ来店した顧客に対して配布するなどした。
チラシ(乙17)の左上には、茶色の太枠の中に「両国・錦糸町の美容室」という記載があり、その下に「コティエ&フィーカ」と片仮名で本件商標が記載されており、チラシの左下には左上の太枠の中と同様に、片仮名で「フィーカ」と記載された後に「錦糸町店」の記載があり、本件店舗の住所と電話番号が記載されている。ほかにも、チラシには、本件店舗を「フィーカ」と指称している箇所があり、さらに、左側中央には、姉妹店舗とともに本件店舗の外観のイラストが描かれており、イラストの上部に白文字で「fika」と表示されている。
チラシにおける「フィーカ」の表示については、本件商標の文字種の変更であり、「fika」及び「フィーカ」は、称呼が一致することに加え、観念においても、スウェーデン語で「コーヒータイム」又は「休憩」といった意味があり、お互いに呼称及び観念が一致する関係にあることから、社会通念上同一と認められることは明らかである。
次に、本件店舗のイラストの上の「fika」の表示についても、構成文字が本件商標と同一で、かつ、文字として認識できるものであるから、同一性が認められる。
本件店舗では、ムクエシリーズについて、チラシの配布前から、メーカー主導の「半額キャンペーン」(乙22)を行い、販売している(乙23)。
請求書(乙8)におけるムクエ商品の仕入れ時期に加え、乙第14号証ないし乙第16号証及び乙第23号証の売上伝票におけるムクエ商品の販売時期並びに乙第25号証に電磁的に記録されている価格表の作成日によれば、乙第21号証に記載されているチラシの受取日以降、少なくとも、それらと同時期にチラシが配布されていたことが推認でき、このことから、少なくとも当該期間において、被請求人が本件商標をチラシに表示して使用していることが理解できる。
(6)その他の使用
ア 被請求人は、本件店舗において、平成29年6月14日頃から閉店した同30年12月31日に至るまでの期間、店内に掲示した商品の価格表に本件商標を表示して使用した(乙24ないし乙26)。
イ 本件店舗では、商品の陳列写真(乙27ないし乙29)のとおり、商品を店内の各所に陳列していた。
ウ 被請求人は本件商標を本件店舗において、陳列した商品とともに掲示していたポップに表示して使用していた(乙31ないし乙33)。
4 結語
被請求人は、本件店舗が設立された時から閉店するまでの期間、本件商標を本件店舗の看板に表示することによって使用していることに加え、本件店舗内においては、本件商標を顧客との取引書類に表示することによって使用し、また、本件商標を本件店舗内に掲示した商品価格表に表示することによって使用していることが推認される。
さらに、本件商標を表示したチラシを、被請求人が受取り後、近隣に配布を開始したと解することが社会通念上相当であるところ、これらは商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものであるから、商標権者たる被請求人が、要証期間内に日本国内において、本件商標を使用していたことは明白である。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人は、名称を「fika」とする美容室(本件店舗)を平成25年8月に墨田区に開店し、同30年12月末に当該店舗の廃止届を提出した(乙2、乙3)。また、平成は同19年3月に名称を「cottie*(コティエ)」とする美容室(姉妹店舗)を設立した(乙1)。
(2)被請求人は、美容室、エステティックサロン及びネイルサロンの経営並びに化粧品及び美容用品等の製造及び販売等を目的として、平成28年3月7日に設立されたLycka社の代表取締役である(乙4)。
(3)上記(1)の本件店舗の入り口上部には、別掲のとおりの構成からなる、「fika by cottie*」(以下「使用商標」という。)の表示が掲示されていた(乙6、乙30)。
(4)東和社は、平成28年11月20日ないし同30年11月20日の期間に本件店舗にヘアトリートメントやシャンプー等の商品を販売した(乙11)。
(5)平成28年11月4日ないし同30年10月20日の加盟店名を「フイーカ」とするクレジット売上票(乙15、乙16)には、チラシ(乙17)の2店の店舗のうちの「フィーカ」と同じ電話番号が記載されている。
また、上記クレジット売上票中、平成28年12月3日付けの2枚の伝票の合計金額は、その左側の売上伝票の合計額と一致しており、当該売上伝票には、「200gトリートメントR」及び「250mlシャンプーS」の記載がある。
2 前記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
被請求人は、本件商標を個人事業主である被請求人が本件店舗において使用していたが、平成28年3月7日にLycka社を設立後は、同社に本件店舗の経営を移行し、本件商標の使用を許諾した旨主張している。
そして、前記1(3)によれば、本件店舗の入り口上部に使用商標が表示されているところ、前記1(1)によれば、被請求人は、平成25年8月に本件店舗の営業を開始し、同30年12月末に当該店舗の廃止届を提出していることから、使用商標を使用していた者は被請求人である商標権者とみることができ、また、前記1(2)によれば、Lycka社の代表取締役は被請求人であるから、本件店舗をLycka社が経営していたとしても、被請求人は、本件商標についての黙示の使用許諾を同社に対して与えていたとみて差し支えない。
そうすると、使用商標の使用者は、被請求人である商標権者又は通常使用権者であるLycla社であると認められる(以下、被請求人と「Lycka社をまとめていうときは「被請求人ら」という。)。
(2)使用商標について
使用商標は、別掲のとおり、「fika」の文字を大きく表し、その右側に小さく「by cottie*」と表示してなるものであり、大きく顕著に表された「fika」の文字が看者の注意を強くひくものといえる。また、「by」の文字は「・・・による」の意味合いを有する簡易な英単語であり、被請求人は、「cottie*」という美容室を平成19年3月から営業している(乙1)ことから、「by cottie*」の部分は、「cottie*に関係した」といった店舗の由来を認識させるものであり、さらに、チラシにおいて「fika」と表示され、請求書の宛先が「fika」であることを総合勘案すれば、使用商標中、「fika」の文字部分が独立した要部として需要者に認識されるものといえる。
そうとすれば、「fika」の文字からなる本件商標と使用商標の要部「fika」とは、そのつづりを同一にするものであって、書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものであるから、両者は、社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用役務及び使用時期について
上記1(3)によれば、本件店舗の入り口上部に使用商標が表示されているところ、使用商標は本件店舗名を表す看板といえるものであるから、広告的な使用といえる。
そして、被請求人らは、本件店舗において販売する商品「トリートメント及びシャンプー」等を要証期間内である平成28年11月20日ないし同30年11月20日の間に東和社から購入したことが認められる。
また、要証期間内である平成28年12月3日の売上伝票に「200gトリートメントR」及び「250mlシャンプーS」の記載があるところ、「200g」及び「250ml」の記載は、いずれも当該商品の容量を表すものであり、上記記載は、美容の役務において提供される「ヘアトリートメント」及び「シャンプー」の役務を意味するものではなく、上記容量の商品が顧客に販売された記載とみるのが自然であるから、これらの商品が顧客のために品揃えされ、販売されたことは、本件商標の指定役務に含まれる「ヘアトリートメント及びシャンプーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の役務と認められる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)によれば、被請求人である商標権者又は通常使用権者であるLycka社は、要証期間内に、本件店舗において、本件審判の請求に係る指定役務に含まれる「ヘアトリートメント及びシャンプーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を行い、当該店舗の広告として、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して使用したのであるから、その行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する広告に標章を付して展示する行為」に該当するものと認められる。
3 請求人の主張について
請求人は、使用商標が表示されている写真(乙6)には作成された日付の証拠はなく、当該写真の電子データ(乙30)の作成日付はコンピュータのOSの日付を簡単に変更できる旨、及び営業状態が芳しくない場合、店舗名を変更してリニューアルすることは珍しくなく、現在閉店している店の表記を、5年間一度も表記や外観を変更しないということは考え難い旨主張している。
しかしながら、写真のデータ作成の日の変更ができることをもって、要証期間内に使用商標が本件店舗を表す看板として表示されていなかったことを客観的に裏付けるということはできず、また、店舗名の変更やリニューアルについては、請求人の独自の見解にすぎず、使用商標が、要証期間内に使用されていたと認められることは、前記2のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の権利者又は通常使用権者が、その請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(使用商標)


審理終結日 2020-12-09 
結審通知日 2020-12-11 
審決日 2020-12-23 
出願番号 商願2013-16871(T2013-16871) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小俣 克巳 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 板谷 玲子
中束 としえ
登録日 2013-10-04 
登録番号 商標登録第5619187号(T5619187) 
商標の称呼 フィカ、ファイカ 

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