• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X29
管理番号 1372819 
審判番号 取消2019-300902 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-12-11 
確定日 2021-03-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5472066号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5472066号商標の指定商品中,第29類「乳製品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5472066号商標(以下「本件商標」という。)は,「ソクール」の文字を標準文字で表してなり,平成23年6月6日に登録出願,第29類「食用油脂,乳製品」及び第30類「菓子・パンに充填又は塗布して用いるでん粉・小麦粉を主原料とするフラワーペースト,菓子・パンの生地に練り込んで用いるでん粉・小麦粉を主原料とするフラワーペースト」を指定商品として,同24年2月17日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,令和元年12月23日であり,当該登録前3年以内の期間である平成28年12月23日ないし令和元年12月22日までの間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した(当合議体は,弁駁書に添付された甲第1号証ないし甲第9号証を甲第2号証ないし甲第10号証に読み替えた。)。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,第29類「乳製品」(以下「請求に係る指定商品」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)通常使用権者について
被請求人は,カネカ食品株式会社(以下「カネカ食品」という。)は,本件商標権者の100%子会社であり,本件商標の使用については,本件商標権者からカネカ食品に対して黙示の使用許諾がされ,カネカ食品は,本件商標の通常使用権者である旨主張している。
しかしながら,被請求人自身が「黙示の使用許諾」と述べているように,本件商標の使用について,本件商標権者からカネカ食品に明示的に許諾されたことを示す契約書等の資料が一切提出されていない。
被請求人によれば,カネカ食品は本件商標権者の100%子会社であるとのことであるが,仮にそうであったとしても,100%子会社が親会社名義の登録商標すべてについて,何ら明示の許諾なく使用することが認められると規定する法規等は存在せず,本件商標の使用がカネカ食品に許諾された旨を証明するものではない。
よって,上記主張及び証拠資料のみでは,本件商標が本件商標権者の通常使用権者によって使用されたことを立証するに至っていないことは明白である。
(2)被請求人提出の証拠について
ア 乙第5号証及び乙第6号証について
これらの証拠は,マスキングが施されていることにより,取引先,金額等が確認できず,真正な取引資料であるか不明である。
また,「ソクールイチゴAO」について,「納品書」(乙5)の商品コードが「34329」であるのに対し,「物品受領書」(乙6)の商品コードが「139622」となっており相違している。
上記商品コードの相違については,「顧客側で独自の商品コードを設定していることに起因するもの」とのことであるが,被請求人の主観的な解釈にすぎず,そのことを裏付ける客観的な証拠は何ら提出されていないことから,同解釈は採用するに値しない。
上記の点を踏まえると,両証拠の信ぴょう性及び関連性には疑義がある。
また,「ソクールイチゴAO」(乙6)に係る「備考」欄には,「ペストリー」との記載がある。「ペストリー」は,第30類(類似群コード:30A01)の商品であり(甲2),請求に係る指定商品である「乳製品」(第29類,類似群コード:31D01)に該当しないことから,乙第6号証は,それが仮に真正な取引資料であるとしても,請求に係る指定商品の使用に係る証拠資料とはなり得ないことは明白である。
イ 乙第5号証,乙第6号証及び乙第11号証について
被請求人は,「乙第5号証及び乙第6号証に表示される『ソクールイチゴAO』は,乙第11号証(顧客へ配布する商品案内)の『製品特長』欄に記載されているように,『あまおうを使用したイチゴ風味のホイップ済みのクリーム』,すなわち『ホイップクリーム』である。」旨主張している。
しかしながら「製品特長」(乙11)欄は空欄となっており,上述の「あまおうを使用したイチゴ風味のホイップ済みのクリーム」という記載はないことから,本証拠の信ぴょうには疑義がある。
また,「名称」欄には「乳等を主要原料とする食品」と記載されているが,この「乳等」とは「乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品」を指すことから,「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(甲3)上,「乳等を主要原料とする食品」は「乳製品」に含まれない概念である。
さらに,「商品及び役務の区分解説」(特許庁商標課編)においては,「乳製品」について,「この概念には,牛乳等の動物の乳及びこれらを加工したものが含まれる。」とする一方で,「単にミルクを調味的に加えたものはこの概念に含まれない。」としていることから(甲4),乙第11号証からは,「ソクールイチゴAO」が商標法上の「乳製品」に包含される商品かどうか判別できない。
さらにいうならば,被請求人が提出した証拠のいずれにも,「ソクールイチゴAO」なる商品自体の写真が掲載されていないことから,そもそもそのような商品が実際に存在するのかどうかも不明である。
以上を踏まえると,乙第5号証及び乙第6号証に記載の「ソクールイチゴAO」が「ホイップクリーム」であることを示す客観的な証拠は提出されていないといえ,「ソクールイチゴAO」が請求に係る指定商品に属する商品かどうかは不明である。
ウ 乙第7号証,乙第9号証及び乙第10号証について
これらが仮に,本件商標権者が販売に係る商品ラベルとして作成したものであるとしても,実際に取引の場において,指定商品中「乳製品」(以下「本件商品」という。)について使用された事実を示す証拠は提出されていない。
また,仮に本件商品について使用されていたとしても,これらのラベルには,使用に係る具体的な年月日や使用場所が記載されておらず,要証期間内に日本において使用されたことを示す証拠とはなり得ない。
よって,これらの証拠は証拠能力を有しないことから,考慮するに値しない。
工 乙第11号証ないし乙第13号証について
被請求人は,これらの証拠が「願客へ配布する商品案内」であると主張しているが,実際に取引の場において頒布等された事実を示す証拠は何ら提出されていない。
また,上述のとおり,「製品特長」(乙11)欄が空欄となっていることも併せて考慮すると,これらの証拠の信ぴょう性については疑義があるといわざるを得ない。
オ 乙第7号証及び乙第8号証について
これらの証拠について,被請求人自身が「乙第5号証及び乙第6号証に記載の商品そのものが出荷されたときのラベル及び荷姿の写真ではなく,後日,乙第7号証及び乙第8号証に記載された商品と同じ商品が出荷された際に撮影されたもの」と述べている。
また,上述のとおり,乙第7号証には使用に係る具体的な年月日や使用場所が記載されていない。これらの点を踏まえると,乙第7号証及び乙第8号証は,乙第5号証及び乙第6号証に記載の商品の出荷を裏付ける証拠として考慮すべきではない。
(3)登録商標と社会通念上同一と認められる商標について
ア 本件商標と「ソクールイチゴAO」について
被請求人は,「ソクールイチゴAO」は,「ソクール」が要部であり,本件商標と称呼が同一であることから,「ソクールイチゴAO」が「ソクール」と社会通念上同一と認められる商標であると主張しているが,商標法上,そのような解釈はとられていない。
商標法第38条第4項及び同法第50条第1項における「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」に該当するかどうかの判断に当たっては,同法第4条第1項第11号識別力を有しない文字を構成中に含む場合の結合商標類否判断の手法のように,要部を抽出した上で本件商標と対比するのではなく,本件の場合に当てはめると,「ソクールイチゴAO」全体と本件商標を対比した上で,「社会通念上同一と認められる商標」に該当するかどうかで判断すべきである。
そして,本件商標と「ソクールイチゴAO」は,外観・称呼・観念いずれも相違であり,「ソクールイチゴAO」は,本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」には該当しないものといえる。
イ 「ソクールイチゴAO」について
被請求人は,「ソクールイチゴAO」の「AO」は,「あまおう」を意味する略記号として使用されている。「イチゴAO」の部分は,当該取引者間においては,原材料に「あまおう」を使用した「イチゴ」風味の商品であることを認識させる商品の品質表示部分となる。アルファベット2文字は,一般に商品の型番・記号・符号等として用いられるものである。「ソクールイチゴAO」中,「ソクール」の部分が自他商品識別標織として機能する要部である旨主張している。
上記アでも述べたとおり,本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」に該当するかどうかを判断するにあたって,実際に使用している商標について要部認定を行い,要部と本件商標を対比させるという手法が,そもそも不適切である。
また,「ソクールイチゴAO」の要部が「ソクール」と認定することについても疑義がある。
まず,「AO」からは,「エイオー」あるいは「アオ」の自然的称呼が生じると考えられ,さらには,「アオ」の称呼に呼応して「青(色)」の観念も生じ得るといえるが,「アマオウ」の称呼・観念が生じる余地はない。
被請求人は,「AO」が「あまおう」を意味する略記号として使用されていると主張しているが,客観的な証拠は何ら提示されておらず,被請求人の主観的な解釈にすぎない。
そして,被請求人は「ソクールイチゴAO」中「イチゴ」及び「AO」それぞれが,識別力がないか又は弱い語であるので,「ソクール」が要部であると主張するが,仮に「イチゴ」と「AO」いずれもが,識別力がないか又は弱い語であったとしても,このような語同士を,例えば「イチゴAO」のように結合させた場合には,構成全体で一体不可分の造語として識別力を有することも大いにあり得るのである。
以上のように,「ソクールイチゴAO」から要部認定を行い,要部と本件商標を対比させるという手法が,そもそも不適切であり,また,「ソクール」が要部であるとする被請求人の主張自体も無理があるのは明らかであることから,本主張は採用するに値しない。
さらにいうならば,本件商標に2つの語・要素(「イチゴ」「AO」)を結合させた商標までも「社会通念上同一と認められる商標」として取り扱うのは,商標法第38条第4項及び同法第50条第1項の趣旨からして,あまりにも拡大した解釈であり,妥当ではない。
ウ 「ソクール巨峰風味」について
被請求人は,「ソクール巨峰風味」なる語が記載された資料を乙第9号証及び乙第12号証として提出しているが,これらの証拠資料は,既に上記(2)で述べたとおり,証拠能力を有しないか,その信ぴょう性に疑義がある。
また,被請求人は,「ソクール巨峰風味」中,「ソクール」の部分が自他商品識別標識として機能する要部である旨主張しているが,要部認定を行い,要部と本件商標を対比させるという手法が,そもそも不適切なのは,上記イのとおりである。
そして,被請求人は,「ソクール巨峰風味」中「巨峰」及び「風味」それぞれが,識別力がないか又は弱い語であるので,「ソクール」が要部である旨主張していると推測されるが,識別力がないか又は弱い語同士を結合させた場合には,構成全体で一体不可分の造語として識別力を有することもある点についても,上記イで述べたとおりである。
以上のように,「ソクール巨峰風味」に係る証拠資料が,証拠能力を有しないか,その信ぴょう性に疑義があり,また,要部認定を行い,要部と本件商標を対比させるという手法が,そもそも不適切であり,さらには,「ソクール」が要部であるとする被請求人の主張自体も無理があるのは明らかであることから,本主張は採用するに値しない。
さらにいうならば,本件商標に2つの語・要素(「巨峰」「風味」)を結合させた商標までも「社会通念上同一と認められる商標」として取り扱うのは,商標法第38条第4項及び同法第50条第1項の趣旨からして,あまりにも拡大した解釈であり,妥当ではない。
エ 「ソクール抹茶C」について
被請求人は,「ソクール抹茶C」なる語が記載された資料を乙第10号証及び乙第13号証として提出しているが,これらの証拠資料は,既に上記(2)で述べたとおり,証拠能力を有しないか,その信ぴょう性に疑義がある。
また,被請求人は,「ソクール抹茶C」中,「ソクール」の部分が自他商品識別標識として機能する要部である旨主張しているが,要部認定を行い,要部と本件商標を対比させるという手法が,そもそも不適切なのは,上記イのとおりである。
さらに,「ソクール抹茶C」の要部が「ソクール」と認定することについても疑義がある。
被請求人は,「C」が,「Concentrate(濃縮物)」や「(抹茶の)色調・風味が濃い」という意味合いを表す記号として当該取引者間で使用されていると主張しているが,客観的な証拠は何ら提示されておらず,被請求人の主観的な解釈にすぎない。
また,本件商標の需要者との関係では,「C」の語からは「ビタミンC」が想起されやすいことから,「抹茶C」の語からは,「濃い抹茶」が想起されることはなく,むしろ「ビタミンC入りの抹茶」の方が想起され得るともいえる。
そして,被請求人は,「ソクール抹茶C」中「抹茶」及び「C」それぞれが,識別力がないか又は弱い語であるので,「ソクール」が要部である旨主張していると推測されるが,識別力がないか又は弱い語同士を結合させた場合には,構成全体で一体不可分の造語として識別力を有することもある点についても,上記イで述べたとおりである。
以上のように,「ソクール抹茶C」に係る証拠資料が,証拠能力を有しないか,その信ぴょう性に疑義があり,また,要部認定を行い,要部と本件商標を対比させるという手法が,そもそも不適切であり,さらには,「ソクール」が要部であるとする被請求人の主張自体も無理があるのは明らかであることから,本主張は採用するに値しない。
さらにいうならば,本件商標に2つの語・要素(「抹茶」「C」)を結合させた商標までも「社会通念上同一と認められる商標」として取り扱うのは,商標法第38条第4項及び同法第50条第1項の趣旨からして,あまりにも拡大した解釈であり,妥当ではない。
オ 「ソクール」シリーズについて
被請求人は,「ソクール巨峰風味」及び「ソクール抹茶C」を,「ソクール」シリーズ商品としている。
しかしながら,「ソクールイチゴAO」も併せて考慮した場合,「ソクール」の後の表現が「イチゴAO」「巨峰風味」「抹茶C」といった構成であり,例えば,1文字分の空白後に「イチゴ味」「巨峰味」「抹茶味」とするような構成の場合と比較しても明らかなように,全く統一されていない表現構成であるといえ,これらを「ソクール」シリーズ商品であるとする被請求人の主張は,客観性に乏しく,採用するに値しない。
(4)むすび
以上のように,被請求人の主張は失当であり,商標法第50条第2項の要件を満たすものではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 本件商標権者と,「株式会社カネカフード」(以下「カネカフード」という。),「株式会社東京カネカフード」(以下「東京カネカフード」という。)及びカネカ食品について説明すると,乙第1号証ないし乙第4号証に示されているように,カネカフード,東京カネカフード及びカネカ食品は,本件商標権者のグループ会社である。
本件商標権者と上記3社の関係及び製品の流通過程を説明すると,本件商標権者が処方開発を行った製品を,カネカフード又は東京カネカフードに製造を委託する。
当該製品は,本件商標権者からカネカ食品に販売され,カネカ食品から,その顧客に販売されるという流れとなっている。
なお,乙第4号証のとおり,カネカ食品は,本件商標権者の100%子会社である。
そして,本件商標の使用については,本件商標権者からカネカ食品に対して黙示の使用許諾がされており,その意味において,カネカ食品は,本件商標の通常使用権者である。
乙第5号証は,本件商標の通常使用権者であるカネカ食品が,その顧客に対して,品名「ソクールイチゴAO」を納品した際の「納品書」(出荷日及び納期:2019年12月22日)である。
乙第6号証は,同納品に対して,その顧客が当該商品を受け取ったときの「物品受領書」(納品日:2019年12月22日)である。
なお,「納品書」(乙5)の当該商品コード「34329」は,「物品受領書」(乙6)の当該商品コード「139622」と相違しているが,これは顧客側で独自の商品コードを設定していることに起因するものであり,乙第5号証と乙第6号証は,品名,数量,日付が符号しており,同一の商品の取引に係る書類である。
なお,上記「納品書」に記載の住所から本件取引が日本国内での取引であることが確認できる。
また,上記「納品書」及び「受領書」の納品日及び受領日(2019年12月22日)から,本件取引が,要証期間内のものであることが明らかである(乙5,乙6,乙14)。
さらに,乙第5号証及び乙第6号証に表示されている「ソクールイチゴAO」は,顧客へ配布する商品案内(乙11)の「製品特長」欄に記載されているように,「あまおうを使用したイチゴ風味のホイップ済みのクリーム」,すなわち「ホイップクリーム」である。
「ホイップクリーム」は,第29類(類似群コード:31D01)の商品であり,請求に係る指定商品,第29類「乳製品」(類似群コード:31D01)に該当する商品である(乙15)。
なお,「ソクールイチゴAO」の「AO」は,「あまおう」を意味する略記号として使用されているので,「イチゴAO」の部分は,当該取引者間においては,原材料に「あまおう」を使用した「イチゴ」風味の商品であることを認識させる商品の品質表示部分となる。
また,アルファベット2文字は,一般に商品の型番・記号・符号等として用いられるものでもあるので,いずれにしても「ソクールイチゴAO」中,「ソクール」の部分が自他商品識別標識として機能する要部である。
乙第9号証及び乙第10号証は,本件商標権者の販売に係る「ソクール」シリーズ商品の商品ラベルであり,それぞれのラベルに「ソクール巨峰風味」及び「ソクール抹茶C」の商品名が表示されている。
「ソクール巨峰風味」(乙9)は,顧客へ配布する商品案内(乙12)に示されているように,「国産の巨峰を使用したホイップ済のクリーム」,すなわち「ホイップクリーム」である。
よって,「巨峰風味」部分は,商品の原材料及び風味が「巨峰」であることを認識させる商品の品質表示部分となるので,「ソクール巨峰風味」中,「ソクール」の部分が自他商品識別標識として機能する要部である。
また,「ソクール抹茶C」(乙10)は,顧客へ配布する商品案内(乙13)に示されているように,「香り豊かな宇治抹茶を使用したホイップ済クリーム」,すなわち「ホイップクリーム」である。
また,「ソクール抹茶C」の「C」は,「Concentrate」(濃縮物)の頭文字「C」であり,「(抹茶の)色調・風味が濃い」という意味合いを表す記号として当該取引者間で使用されており,「ソクール」の後ろに表示されている「抹茶C」は,原材料に.「茶抹」を使用した「濃い抹茶」風味の商品であることを認識させる商品の品質表示部分である。
また,アルファベット1文字は,一般に商品の型番・記号・符号等として用いられるものでもあるので,いずれにしても「ソクール抹茶C」中,「ソクール」の部分が自他商品識別標識として機能する要部である。
このように,「ソクール」に続く部分の記載は,共通して商品の原材料や風味が表示されている部分であることは,乙第9号証及び乙第10号証からも明らかである。
したがって,乙第5号証及び乙第6号証に記載の「ソクールイチゴAO」は,「ソクール」の部分が自他商品識別標識として機能する要部と認められ,簡易迅速を尊ぶ商取引においては,「ソクール」の称呼でもっても取引に供されると考えられるので,本件商標と称呼を同じくする社会通念上同一の商標である。
乙第7号証は,本件商品のパッケージに貼付するラベルの写真であり,乙第8号証は,本件商品のラベルが梱包されたパッケージに貼付された状態の荷姿の写真である。
通常,本件商標権者の業務の中で,商品の出荷前に,このようなラベル及び荷姿を写真に撮っておくというようなことは行わないので,乙第7号証及び乙第8号証は,乙第5号証及び乙第6号証に記載の商品そのものが出荷されたときのラベル及び荷姿の写真ではなく,後日,乙第7号証及び乙第8号証に記載された商品と同じ商品が出荷された際に撮影されものであるが,乙第5号証及び乙第6号証に記載の商品が出荷された際のパッケージにも同様のラベルが貼付され納品されている。
2 以上のとおり,要証期間内に,日本国内において本件商標権者及び通常使用権者が,本件商品について本件商標を使用している。

第4 審尋及び被請求人の回答
1 審尋
審判長は,令和2年10月6日付け審尋において,被請求人に対し,被請求人が提出した証拠によっては,被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認めることができない旨の合議体の暫定的見解並びに請求人提出の同年3月30日付け審判事件弁駁書及び同年4月13日付け手続補正書(自発)に対する回答を求めた。
2 被請求人の回答
被請求人は,上記1の審尋に対し,何ら応答していない。

第5 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(1)本件商標権者のウェブサイト(乙2)には,連結子会社として「カネカ食品」の記載がある。
(2)カネカ食品のウェブサイト(乙4)には,会社概要の「株主」の項に「株式会社カネカ100%」の記載がある。
(3)カネカ食品が神奈川県横浜市(名称と住所の一部はマスキングされている。)の取引先に宛てた出荷日を2019年12月22日とする納品書(乙5)及びカネカ食品が横浜工場資材課(名称はマスキングされている。)に宛てた納品日を同日とする物品受領書(乙6)には,「ソクールイチゴAO」について,「12個」の記載はあるが,納品先の名称と物品受領先の名称はいずれもマスキングされ,物品受領書の受領・検査印の名称もマスキングされており,「ソクールイチゴAO」の商品コードも,納品書が「34329」,物品受領書が「139622」とカネカ食品の作成にも関わらず双方で相違している。
(4)本件商標権者が2020年1月22日に発行した「ソクールイチゴAOのご案内」(乙11)は,製品名「ソクールイチゴAO」,名称「乳等を主要原料とする食品」の記載があるが,要証期間外の作成であり,製品特長の項には何も記載がない。
また,包装箱のラベル(乙7,乙8)には「ソクールイチゴAO」,名称「乳等を主要原料とする食品」の記載があり,商品ラベル(乙9,乙10)には,「ソクール巨峰風味」及び「ソクール抹茶C」並びに名称「乳等を主要原料とする食品」の記載がある。
(5)「ソクール巨峰風味のご案内」(2019年6月10日発行:乙12)及び「ソクール抹茶Cのご案内」(2017年2月20日発行:乙13)には,名称「乳等を主要原料とする食品」の記載があるが,頒布時期,頒布先,頒布方法は不明である。
2 判断
(1)使用者について
上記1(1)及び(2)のとおり,本件商標権者のウェブサイトには,連結子会社として「カネカ食品株式会社」の記載があり,カネカ食品のウェブサイトには,「株主」として「株式会社カネカ100%」の記載があるから,本件商標権者とカネカ食品との間に本件商標の使用許諾契約がなくても,カネカ食品は本件商標権者から本件商標について黙示の使用許諾を受けているものと推認することができる。
したがって,カネカ食品は,本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)カネカ食品と神奈川県横浜市在の取引先との取引について
上記1(3)のとおり,カネカ食品による納品書(乙5)及び物品受領書(乙6)には,「ソクールイチゴAO」の記載はあるが,納品先の名称と物品受領先の名称はいずれもマスキングされ,物品受領書の受領・検査印の名称もマスキングされていること,カネカ食品の作成にも関わらず「ソクールイチゴAO」の商品コードも,納品書が「34329」,物品受領書が「139622」と双方で相違していることから,納品先の名称と物品受領書先の名称が同一の者であるか不明といわざるを得ない。
したがって,カネカ食品から取引先へ「ソクールイチゴAO」が譲渡されたものということはできない。
(3)使用商品について
ア 「ソクールイチゴAOのご案内」,「ソクール巨峰風味のご案内」及び「ソクール抹茶Cのご案内」について
上記1(4)のとおり,「ソクールイチゴAOのご案内」(乙11)は,要証期間内に作成されたものではなく,製品特長の項には何も記載がない。また,「ソクール巨峰風味のご案内」(乙12)及び「ソクール抹茶Cのご案内」(乙13)は,頒布時期,頒布先,頒布方法が不明である。
イ 包装箱のラベル及び商品ラベルについて
「ソクールイチゴAO」の包装箱のラベル(乙7,乙8)は,名称「乳等を主要原料とする食品」の記載があるものの,箱の中にどのような商品が入っているか不明であり,当該ラベルの使用時期,使用場所も不明である。また,「ソクール巨峰風味」及び「ソクール抹茶C」の商品ラベル(乙9,乙10)からは,上記同様にどのような商品に使用されるか不明であり,当該ラベルの使用時期,使用場所も不明である。
ウ よって,「ソクールイチゴAO」,「ソクール巨峰風味」及び「ソクール抹茶C」の商品が請求に係る指定商品「乳製品」に属する商品であるか不明といわざるを得ない。
(4)小括
上記(1)のとおり,カネカ食品は,本件商標の通常使用権者と認められるものの,上記(2)及び(3)のとおり,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に,本件商標の通常使用権者が,本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用したことを認めるに足る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者及び通常使用権者のいずれかが,本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標を使用していた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件商標を請求に係る指定商品に使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品中の「結論掲記の商品」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-12-25 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-27 
出願番号 商願2011-38802(T2011-38802) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松本 はるみ 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
平澤 芳行
登録日 2012-02-17 
登録番号 商標登録第5472066号(T5472066) 
商標の称呼 ソクール 
代理人 特許業務法人不二商標綜合事務所 
代理人 柳野 隆生 
代理人 伊東 美穂 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ