• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W1144
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない W1144
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W1144
管理番号 1370224 
審判番号 無効2019-890083 
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-12-13 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5913254号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5913254号商標は,別掲のとおりの構成からなり,平成28年6月29日に登録出願,第11類「業務用電気式美容機械器具」及び第44類「美容,理容,マッサージ」を指定商品及び指定役務として,同29年1月13日に設定登録がされ,現に有効に存続しているものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は,「HYDRAFACIAL」又は「HydraFacial」の文字からなる商標(以下「使用商標」という場合がある。)であり,「肌の洗浄、クレンジング、角栓除去、ピーリング、美容成分の注入及び保湿の機能をすべて備えた美肌用機械器具及びその機械器具を使用したトリートメント美容」(以下「使用商品及び役務」という場合がある。)に使用しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 無効事由
本件商標は,商標法第4条第1項第19号,同項第15号及び同第10号に該当し,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。
2 無効理由
(1)商標法第4条第1項第19号について
周知性について
使用商標「HYDRAFACIAL」は米国において周知の商標である。請求人の商品である「HYDRAFACIAL」は,肌の洗浄,クレンジング,角栓除去,ピーリング,美容成分の注入,保湿の機能を全て備えた美肌用機械器具である。この米国で人気のある健康美肌トリートメントは,ハリウッドセレブのファンが多いことでも有名である。2005年以来,請求人は,美しい肌に整えることができるこの機械に「HYDRAFACIAL」を商標として使用しており,「HYDRAFACIAL」は請求人の業務に係る商品,またその役務を表示するものとして使用してきた。請求人の「HYDRAFACIAL」は米国において需要者に広く認識され,米国における周知性を示す例として,次のようなものが挙げられる。
(ア)雑誌「NEWYORK」(ニューヨーク:甲2)
「NEWYORK」は,1968年から発行されてきたニューヨーク市の生活,文化等に特化した情報を提供する雑誌であり隔週で発行されているが,著名人の執筆によるアメリカの文化に関する記事を掲載するなど,徐々に米国全体のトピックを扱うように変化している。全米で40万部発行され販売されているこの雑誌は,優れた雑誌に送られる「National Magazine Award」を他のどの雑誌よりも多く受賞している。この雑誌には,「HydraFacial」のシステムを使用したサービスが「Silk」というスパで受けられるという広告が掲載されている。
(イ)雑誌「MAGAZINE Malibu」(雑誌マリブ:甲3)
「MAGAZINE Malibu」は,カリフォルニア州マリブ及びその周辺のライフスタイル等様々なトピックを掲載する,隔月で出版される雑誌である。甲第3号証にマリブにオープンした「キュアスパ」というスパで,この記事の筆者自らが「HydraFacial」のトリートメントを体験し,どんなに素晴らしかったかをレポートし,最新のテクノロジーの中でのベストとして「HydraFacial」を紹介している記事が掲載されている。
(ウ)雑誌「ESSENCE」(エッセンス:甲4)
雑誌「ESSENCE」は米国でも数少ない,黒人女性向けのファッション雑誌で,黒人女性に関する現代の様々なトピックを扱っている。米国「TIME INC.」が発行する月刊誌で,発行部数は100万部以上である。甲第4号証に「肌の色合いを均一にするための7つの方法」が紹介されているが,その方法の一つとして「HYDRAFACIAL」が選ばれている。「HYDRAFACIAL」がどのように肌を美しくするかが記載され,皮膚科医又はスパでこのトリートメントが受けられると記載されている。
(エ)雑誌「InStyle」(インスタイル:甲5,甲6)
雑誌「InStyle」は,米国「TIME INC.」から発行される女性ファッション雑誌で,発行部数は約181万部である。米国の雑誌だが,現在ではオーストラリア,ドイツ,韓国,ロシア,ブラジル,南アフリカ及びトルコ等世界16か国で販売されている。
甲第5号証は,2011年10月号に掲載された広告で,ラスベガスにあるサーラスパ&ハッマームというスパで,「HYDRAFACIAL」によるトリートメントがこの雑誌の読者価格で受けられることが記載されている。
甲第6号証は,2012年10月号に掲載された広告で,ワシントン州ベルビューにあるユアンスパで,「HYDRAFACIAL」のトリートメントが,やはり読者価格で受けられることが記載されている。
(オ)雑誌「InStyle Weddings」(インスタイルウェディング:甲7)
この雑誌は,米国「TIME INC.」が発行する,ウェディングに関する様々な情報を提供する結婚式を控えた人をターゲットにした雑誌「InStyle」のウェディング雑誌である。甲第7号証に,結婚式を素晴らしいものにするための25の最善の方法が紹介されているが,その13番目にセレブが推薦する,美肌を手に入れるための新しいトリートメントとして「HYDRAFACIAL」が選ばれている。
(カ)雑誌「PULSE」(パルス:甲8?甲16)
雑誌「PULSE」は,「International SPA Association」(国際スパ協会)が年10回発行する,スパ経営者向けの専門誌で,スパ業界におけるトレンドや,経営に役立つ様々な情報を提供している。
ここには,「HYDRAFACIAL」を導入したスパを経営するプロたちの声が掲載され,「HYDRAFACIAL」のマシンによるトリートメントが施されている写真も掲載されている。また,2018年ワールドツアーに関する広告も掲載されているが,これは,世界各地を訪れ,参加者に「HYDRAFACIAL」によるトリートメントを体験してもらうという企画である。8月号,9月号,10月号には具体的な訪問先リストが掲載されているが,全米各地の他,ヨーロッパ,メキシコ,中東,アジア及びオーストラリアなど世界の各都市を訪問し,2018年12月現在では59の都市を訪問してきたことが掲載されている。この中には東京も含まれている。2019年も引き続きワールドツアーを行っている。
(キ)オンラインマガジン「xoJane」(甲17)
「xoJane」(「xoJane.com」としても知られている。)は,米国の女性用オンライン雑誌である。2011年に開始されたが,開始後2か月で,雑誌「Forbes」により,女性向けライフスタイルウェブサイト,トップ10にランクづけされた。甲第17号証は,2014年5月14日に掲載された記事である。筆者自らが「HYDRAFACIAL」のトリートメントを受け,思ってもみなかったほどの効果に驚き,読者に向け,「HYDRAFACIAL」を推奨している記事である。
(ク)オンライン新聞「The Baltimore Sun」(甲18)
「The Baltimore Sun」は,米国メリーランド州に本拠を置く,日刊紙である。本紙は,印刷物としての新聞の他,オンライン上での提供を行っている。甲第18号証は,2014年6月5日に掲載された記事である。冬から夏への季節の移り変わりに合わせたスキンケアについて,メリーランド州バルチモア周辺で,請求人の「HYDRAFACIAL」のサービスを提供しているスパを紹介している記事である。西海岸では「HYDRAFACIAL」はすでに人気があり,ハリウッドのセレブ達が注目しているが,東海岸に位置するここバルチモアのスパでも,ベストの結果が得られるとして「HYDRAFACIAL」が紹介されている。
(ケ)雑誌「LaTina」(甲19)
「LaTina」は,アメリカのライフスタイル,エンターテイメント,ビューティー,ファッションを題材とするヒスパニック(ラテンアメリカ系)女性用雑誌である。2000年には,「Advertising Age」により,ベストマガジンに選ばれている。甲第19号証は,2014年5月19日に掲載されたウェブバージョンの記事で,30分で素晴らしい効果が得られる「HydraFacial」のトリートメントについて紹介されている。また,その機械を使用しトリートメントが施されている写真も掲載されている。
(コ)テレビ番組「GOOD DAY LA」(甲20)
甲第20号証は,「GOOD DAY LA」というテレビ番組で,2014年2月20日に「HYDRAFACIAL」が紹介された時の写真である。「GOOD DAY LA」は,アメリカの朝のテレビニュース及びエンターテイメントプログラムで,平日の午前4時から午前10時までKTTVで放送されている。KTTVは,フォックスコーポレーションの子会社である「Fox Television Station」が所有する,カリフォルニア州ロサンゼルスにあるFoxが運営するテレビ局である。
上記,(ア)ないし(コ)が示すように,画期的な結果が得られる請求人の商品「HYDRAFACIAL」はハリウッドのセレブ間で人気を博し,また「HYDRAFACIAL」を導入したスパの経営者たちは,満足度の高い結果をもたらす「HYDRAFACIAL」により,リピーター数は増加,固定客を獲得し,ビジネスの成功を証言している。このように,美容界において注目度の高い商品であることがわかる。さらに,結婚式を控えた花嫁向けの雑誌でも,美肌のためのトリートメントとして,請求人の「HYDRAFACIAL」が選ばれている。数多く存在する美肌のトリートメントの中でもベストのものとして選ばれているのである。このように,全米各地のスパで提供される「HYDRAFACIAL」は,トリートメント直後から素肌のちがいを実感できる,高品質の商品として評価され,美容業界において注目の商品なのである。
これまでの,「HYDRAFACIAL」の経営について説明すると,2018年9月30日現在で,「HYDRAFACIAL」のサービスを提供する店舗数は7,500以上あり,全米各地に存在する。これらの店舗で「HYDRAFACIAL」の機械を使用しそのサービスを提供されてきた顧客の数は計り知れない。
上述の証拠に示したとおり,全米各地の雑誌,新聞,サーチエンジン,メディアサイトなど,様々な媒体をとおして,請求人の「HYDRAFACIAL」は紹介されており,2006年以来,長年にわたり,継続的に全米中に流布され続け,全米各地で請求人の「HYDRAFACIAL」は使用されてきた。
さらに,請求人の売上は年々増加し,現在では年間6,000万ドル以上の売り上げを計上し,これまでの総売上は,2億ドル以上の金額となっている。また広告に関しては,2005年以来ネット上で,「Google AdWords」を中心に,「HYDRAFACIAL」のサービス提供者,及びそれらのサービス,情報を求めてネット検索する顧客(需要者)の両方をターゲットに広告を掲載してきた。甲第21号証は広告に関する情報であるが,例えば,2005年には,広告の掲載回数は,2,006,349回で,その経費は16,301ドルだったが,2018年(2018年9月現在)には,11,408,401回の掲載回数で,それに費やした経費は150,710ドルとなっている。また,これまでに様々なメディアで取り上げられてきたが,2018年9月現在までのその回数は,886,000,000回となっている(甲21)。
さらに2009年以来,フェースブック,インスタグラム,ツイッターなどのソーシャルメディアを開始したが,211,000人のフォロアーを獲得している。
このように,長年にわたり,高額の費用をかけ広告を流布し続けてきた結果,「HYDRAFACIAL」は,美しい肌に仕上げるトリートメントとして,全米で高い評価を受けるに至ったのである。
このような事実から,肌の洗浄,ピーリング,保湿の全ての機能を備えた請求人の商品を示すもの,またそのサービスを示すものとして,使用商標「HYDRAFACIAL」が米国において周知であることは明らかである。
イ 同一又は類似の商標
上述のとおり,請求人は,「肌の洗浄、クレンジング、角栓除去、ピーリング、美容成分の注入、保湿の機能を備えた美肌用機械器具」に「HydraFacial」あるいは「HYDRAFACIAL」の商標を付し,またそのマシンを使用した美肌トリートメントを,全米各地のスパで提供してきた。なお,請求人は,係る商標について,米国商標登録を所有している(甲22,甲23)。
一方,被請求人(商標権者)の本件商標は,上段には「Hydra Facial」の欧文字,下段には「ハイドラフェイシャル」の片仮名が表記された二段構成の態様であり,片仮名は欧文字の称呼を表記したものである。「Hydra」と「Facial」の間にはブランクが存在するが,下段の片仮名は横書き一連で表記され,また無理なく一気一連で称呼できるため,係る商標からも,「ハイドラフェイシャル」の称呼が生じる。請求人と被請求人の商標を比較すると,外観においては,片仮名の有無の相違はあるものの,両商標ともに欧文字のつづりは同一である。そうすると,両商標の外観は類似する。また,同一のつづりで表記された両商標の称呼は同一である。なお,「HydraFacial」は造語である。したがって,外観において著しく類似し,称呼が同一である請求人と被請求人の商標は類似する。
また,上述のとおり,請求人の商品は,「肌の洗浄、クレンジング、角栓除去、ピーリング、美容成分の注入、保湿の機能を備えた美肌用機械器具」であり,そのマシンを導入したスパなどの施設において,美肌トリートメントのサービス,つまり美容が役務として提供されている。本件商標の指定商品は,「業務用電気式美容機械器具」であり,指定役務は,「美容,理容,マッサージ」である。
被請求人と請求人の商品は,その目的,用途,機能において共通するため,両者の商品は類似する。また,両者の需要者は,美肌を求めてそのサービスを受ける顧客であり,またそのサービスを提供する施術者である。このように両者の役務「美容」も類似する。
以上述べたように,両者の商標,及び商品・役務は同一又は類似する。
不正の目的について
(ア)使用商標が一以上の外国において周知な商標であること
上述においては,使用商標が米国で周知であることを証明してきた。この事実だけでも,そのブランド力や信用にただ乗りするなどの不正の目的をもって被請求人が本件商標を登録したことは明らかであるが,請求人はさらに米国以外の国においても周知であることを証明する。
甲第27号証は,WIPOにおける「HYDRAFACIAL」のブランドサーチ結果である。51件の商標がこれまでに出願,登録されてきたが,このうち4件はすでに放棄になっているため,現在有効に存在する出願商標,及び登録商標は,世界各国に47商標存在する。そのうち,被請求人所有の商標登録は,本件商標1件のみであるが,その他46商標は全て請求人の使用商標である。国の内訳を見ると,米国の他に,タイ,韓国,シンガポール,フィリピン,インドネシア,カナダ,チュニジア,モロッコ,コスタリカ,イスラエル,ドイツ,メキシコ,欧州共同体,ウルグアイ及びオーストラリアである。このように,請求人は米国以外の数多くの国に商標を出願,登録してきた。
また,請求人の「HYDRAFACIAL」は海外の数々の雑誌に紹介されているが,その例をいくつか提出する。甲第28号証ないし甲第34号証は,海外の雑誌・新聞に紹介された記事がネット上に掲載されたものである。インドネシアの「Fimela」(甲28),ドミニコ共和国の「Listin Diario」(甲29),ドイツの「FURSIE」及び「This is JaneWayne」(甲30,甲31),イタリアの「GRAZIA」(甲32)。英国の「METRO」(甲33),ノルウェーの「kk.no」(甲34)などである。
また,甲第8号証ないし甲第16号証として提出した雑誌にも広告が掲載されていたように,2018年にはワールドツアーが世界の各都市を訪問している。2018年の広告に掲載された外国の都市は,上海,東京,ソウル,ドバイ,ムンバイ,ゴールドコースト,マドリッド,ロンドン,パース,メルボルン,メキシコシティ,シドニー,クウェート及びドーハである。2019年も引き続きワールドツアーを開催しているため,外国の訪問先は増加している。
さらに,甲第35号証は,英国に「The HydraFacial UK」を設置することを発表したプレスリリースであるが,ここには,すでに世界中に450人以上の従業員を擁し,80以上の国々において50を超える販売店と連携しビジネスを展開していることが掲載されている。なお,「The HydraFacial Company」は請求人の業務を行う上での会社名,つまり商号である。
このように,請求人は「HYDRAFACIAL」の商品・役務について,様々な媒体をとおして,米国のみならず全世界に向けて継続的に発信し続け,すでに80を超える世界の各国でビジネスを展開している。したがって,美容業界に身を置く被請求人が,請求人の「HYDRAFACIAL」について認識していなかったとは考えられない。しかも,「HYDRAFACIAL」は造語である。このように外国で周知の請求人の「HYDRAFACIAL」のブランド力にただ乗りし,不正に使用,登録したことは悪質といえる。これらの事実から,米国において造語からなる周知の商標と同一又は類似の商標について,被請求人は請求人に先んじて日本において商標登録出願を行うことにより,請求人が日本国内の美容の分野に参入することを阻止したりする不正の目的をもっていたものであり,日本において請求人がその商品・役務を表示する商標について商標登録を受けていないことを奇貨として,請求人の名声や信用にただ乗りする不正の目的をもって被請求人が本件商標を登録したことは明らかである。
つまり,本件商標は「我が国において登録されていないことを奇貨として,外国の権利者の国内参入を阻止したりする等の目的で,先取り的に出願した」もので,商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」をもって使用をするものに該当する。
(イ)まとめ
以上のとおり,本件商標は,他人(請求人)の業務に係る商品・役務を表示するものとして,外国(米国)における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,「我が国において登録されていないことを奇貨として,美容の分野における請求人の国内参入を阻止する目的で,先取り的に出願した」ものである。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
周知性について
上記に述べたとおり,使用商標は米国において周知である。2005年以来,「HYDRAFACIAL」の商標を使用し続け,様々な雑誌への広告の掲載,ネット上での広告の掲載,その他のメディア報道など,様々な媒体をとおして広告され続けた結果,「HYDRAFACIAL」の商標は,全米の需要者,取引者にすでに周知となっている。
イ 商品・役務
被請求人の指定商品は,「業務用電気式美容機械器具」(第11類)であり,さらに,甲第24号証の被請求人ホームページ上で説明されているように,美容液で毛穴の汚れを落とし古い角質を除去する機械器具は,請求人の商品とその目的,性質,用途,機能において共通にするため,商品は類似し,また,両者の役務「美容」は同一である。
ウ 混同のおそれ
本件商標と使用商標とは,片仮名の有無の違いはあるものの,欧文字のつづりは同一である。本件商標の片仮名が「ハイドラフェイシャル」と一気一連で表記されているため,両商標の称呼は同一である。
したがって,外観が類似し,同一の称呼を生じる両商標は類似する。
両商品ともに,肌を洗浄し,美しい肌に仕上げるという美肌のための機械器具であるから,その性質,用途,目的において共通する。そのため,被請求人の商標が,その商品に使用された場合,請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,その商品の需要者が商品等の出所について混同するおそれが生じる。
また,両者の役務は同一である。被請求人の指定役務は「美容,理容,マッサージ」(第44類)であり,請求人も美容の役務を提供している。
つまり,両者ともに美容に係るサービスを提供している。請求人が提出した各種の雑誌等に掲載された記事・広告からもわかるように,スパにおいて提供される請求人の「HYDRAFACIAL」はサービスの名称として使用されている。
さらに,両者のその需要者は共通する。つまり,両者の商品を使用し,美容のサービスを提供する者(つまりその商品の取引者),及びそのサービスを提供される顧客(需要者)は共通する。
したがって,使用商標に類似する商標を被請求人がそのサービスに使用した場合,その取引者及び需要者は,請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務にかかるサービスであると誤認し,その役務の需要者は役務の出所について混同を生じるおそれがある。
甲第38号証は,これまでに請求人の商品を導入した日本における取引者の一覧である。この一覧によると,日本においては請求人の商品は,2012年から(本件商標が出願された2016年より以前)多くの取引先において使用されてきた。これらの取引先は,美容形成外科,美容皮膚科,皮膚科,美容クリニックなど美容,美肌を専門とする医療機関である。このように,美容,美肌に関する日本のプロたちが,米国において周知な商標を付した請求人の商品を導入し使用してきたのであるから,日本においてもその取引者及びその需要者に使用商標は広く認識されている。
したがって,被請求人が本件商標をその性質,目的,用途を共通にするその指定商品又は指定役務に使用した場合,当該商品又は役務が請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認されるおそれがあるのみならず,当該商品又は役務が請求人との間に経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認され,出所の混同が生じるおそれがあることは必然である。
エ 小括
このように,米国で周知の使用商標と外観が類似し,同一の称呼を生じる被請求人の商標が,その性質,用途,目的において共通するその商品に付され,また共通するその役務に使用される場合,本件商標に接した取引者及び需要者に対して使用商標を連想させて出所の混同が生じるおそれがあり,請求人のブランドの持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くという結果になりかねない。
したがって,本件商標は混同を生ずるおそれがある商標であるから,商標法第4条第1項第15号により無効にされるべきである。
(3)商標法第4条第1項第10号について
ア 需要者の間に広く認識されている商標
上述のとおり,請求人は米国において商標登録を有し,2005年以来商標を使用し続け,その使用地域は米国全土に及ぶ。さらに,2006年以来,各種媒体をとおし,広告・宣伝を続け,その範囲は全米に及ぶ。使用商標は米国で周知である上に,その他の国においても請求人の商品は紹介され,商標は使用されている。甲第27号証に示されるとおり,請求人は米国以外の国,タイ,韓国,シンガポール,フィリピン,インドネシア,カナダ,チュニジア,モロッコ,コスタリカ,イスラエル,ドイツ,メキシコ,欧州共同体,ウルグアイ及びオーストラリアに商標を出願,登録している。また,甲第8号証ないし甲第16号証に掲載されているように,2018年のワールドツアーでは,上海,東京,ソウル,ドバイ,ムンバイ,ゴールドコースト,マドリッド,ロンドン,パース,メルボルン,メキシコシティ,シドニー,クウェート,ドーハなど,世界各都市を訪問している。さらに,2019年も引き続きワールドツアーを開催しているため,外国の訪問先は増加している。このように,米国以外の数多くの国においても請求人は商標登録を行い,またワールドツアーにより精力的に外国にその商品を紹介し,その役務を提供している。また,甲第35号証に掲載されているように,すでに世界80か国を超える国でビジネスを展開している。
これらの事実により,使用商標は,「需要者の間に広く認識されている」周知商標であることは明白である。
イ 同一又は類似の商標,及び商品・役務
これまでに述べてきたように,使用商標及び被請求人の本件商標は類似し,両者の商品及び役務も類似する。
ウ 以上のとおり,本件商標は,他人(請求人)の業務に係る商品若しくは役務に表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって,その商品若しくは役務,又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するものである。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 請求の理由に対する反論
(1)商標法第4条第1項第19号について
請求人は,2005年以来「HYDRAFACIAL」を商標として使用してきたと主張するが,当該商標の米国における出願日は2012年8月1日,出願公開日は2013年1月22日である(甲23:当該請求人の米国での登録商標を以下「米国商標」という。)。米国商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において,米国全土で需要者に広く認識されていたことは確認できない。
なお,甲第2号証ないし甲第20号証によっては,使用商標として使用されていたことや各雑誌の本件商標の登録出願時及び登録査定時における発行部数,発行地域等の確認もできない。
請求人は,米国以外の数多くの国に商標を出願,登録してきたと主張するが,現在請求人が有する登録商標の過半は,被請求人が本件商標を出願した後に出願されたものである(甲27)。
被請求人は,請求人が米国商標を持っていることなど全く知らなかった。また,「HYDRAFACIAL」は,普通名称である水力を意味する「Hydra」と,同じく普通名称である顔を意味する「Facial」の造語である。そのため,「HydaFacial」は,顔に水圧をかけて何らかの美容行為を行うものと一般・普通名称として認識することが可能な造語であり,それ自体で請求人の商品・役務に対する識別機能はない。
被請求人において請求人に対する不正の目的などない。現に,請求人は,2018年7月に日本において「HydraFacial」の名称を付した機器の販売を始めたようであるが,被請求人は一度も警告文を送ったこともライセンス契約の要求をしたこともない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件においては,請求人の米国商標が本件商標出願時において周知・著名であったとはいえない。また,後述するとおり,請求人の商品は医療機器という扱いであり,請求人が自認するとおり取引先は医療機関に限られる。これは薬機法からくる制限であり,取引者及び需要者において医療機器とそうでない単なる美容機器とを誤認混同する現実的おそれはない。加えて,被請求人の取引先に医療機関はなく,請求人と取引先の重複もあったとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
周知商標にいう周知性は,商品・役務の性格,商品・役務の取引の実情,商標として使用された期間,使用した商品・役務の数量・提供量などを具体的に総合考慮して判断されているところ,外国商標だとの一事を持って,これらの立証を免れるものではない。請求人が引用する甲第39号証においても,主として外国で使用されている商標についての判断要素は,これらを「十分に考慮して判断する」とあるだけである。そもそも,商標法第4条第1項第10号は,商品・役務の出所の混同を防止するとともに,一定の信用を蓄積した未登録周知商標の既得権を保護する趣旨の規定である。しかしながら,本件商標の登録出願時において,請求人の米国商標は我が国内において周知のものとはなっていなかった。そのため,これらに基づく既得権や被請求人の登録商標による出所の混同など起こりようがない。
2 被請求人の主張
請求人の米国商標は,医療機器又は医学的役務の区分にかかるものであり(甲23),いわゆる美容医療の領域にかかるもので,需要者は医療機関となる(甲38)。これに対し,被請求人の本件商標は美容,理容,マッサージ等の区分であり(甲1の1等),需要者はエステの業者等であり,医療機関は需要者にはならない。また,美容医療に用いられる機器は(いわゆるエステ業界等で用いられる機器よりも)高出力で,用いられる溶液等は医薬品となる。
これに対し,エステ業界では医薬品とされる溶液は扱うことはできず,使用される溶液は化粧品基準のものである。そして,この違いは,一般消費者にも周知の事実となっている。現に,請求人の商品は,被請求人やその他のハイドラフェイシャルの検索で出てくる多数の商品(乙1)と異なり,「医療機関専用のピーリングマシン」である(乙2)。医療機関も,請求人の機器について,未承認医薬品又は医療機器との扱いをしている(乙3)。医師以外が未承認医薬品・医療機器を扱うことは当然法律上問題があるため,請求人の商品は,医療機関しか需要者となれないはずである。
被請求人は,請求人の米国商標で保護されている医療機器等を販売等することはなかったが,そもそも法律上販売することすらできないものであった。そのため,請求人の米国商標に関する商品・役務と,被請求人の本件商標に関する商品・役務を扱う可能性のある需要者が,請求人の商品・役務と被請求人の商品・役務とを誤認混同することはなく,類似性もないものというべきである。
3 まとめ
したがって,本件においては,諳求人が主張する商標法第4条第1項第10号,同項第15号及び同項第19号の各号に該当しない。

第5 当審の判断
1 使用商標の周知性について
(1)請求人提出の証拠及び同人の主張によれば,以下のことがわかる。
ア 雑誌について
(ア)2006年(平成18年)11月号(甲2)の「NEW YORK」(ニューヨーク)において,「HydraFacial」のシステムを使用したサービスがスパで受けられるという広告が掲載されている。
(イ)2007年(平成19年)5月号(甲3)「MAGAZINE Malibu」(マリブ)において,「HydraFacial」のトリートメントを体験したレポートの記事が掲載されている。
(ウ)2009年(平成21年)11月号(甲4)の「ESSENCE」(エッセンス)において,「HYDRAFACIAL」がどのように肌を美しくするか,また皮膚科医又はスパでこのトリートメントが受けられるとする旨の記事が記載されている。
(エ)2011年(平成23年)10月号(甲5),2012年(平成24年)10月号(甲6)の「InStyle」(インスタイル)において,「HYDRAFACIAL」のトリートメントが,読者価格で受けられることが記載されている。
(オ)2009年(平成21年)夏号(甲7)の「InStyle Weddings」において,美容液と真空の管を使用してやさしく角質を取り除く方法で・・・全く新しいトリートメントとして「HYDRAFACIAL」のことが記載されている。
(カ)2018年(平成30年)1月/2月号(甲8,甲9),同年5月?12月(甲10?甲16)「PULSE」)おいて,「Hydrafacial」は,「エッジ システムズ エルエルシーの登録商標です。」と掲載されている。
イ オンライン雑誌について
(ア)2014年(平成26年)5月の「xoJane」(甲17)において,「HydraFacial」は,器具の先端が肌をクレンジングし,角栓を除去し,グリコール酸/サリチル酸ピーリングを行います。そして,真空チップで絞り出してから,保湿の美容液を供給するものです旨の記載がある。
(イ)2014年(平成26年)6月「THE BALTIMORE SUM」(甲18)において,「HydraFacial」トリートメントは,強い化学薬品やレーザーを使用せずに,健康的で活気のある輝きを肌に与えてくれます旨の記載がある。
(ウ)2014年(平成26年)5月「LaTiNa」(甲19)において,「HydraFacial」を予約してください。30分で張りのある健康的でより引き締まった顔になるのです旨の記載がある。
(エ)海外のオンライン雑誌
インドネシア,ドミンゴ,ドイツ,イタリア及び英国のオンライン雑誌にも「HYDRAFACIAL」の文字が記載されているが,ほとんどのものが2014年(平成26年)に出されたものである(甲28?甲34)。
ウ テレビ番組
「GOOD DAY LA」というテレビ番組(甲20)で,2014年(平成26年)2月20日に「HYDRAFACIAL」が紹介された時の写真である。
エ 広告掲載回数と広告費
甲第21号証によれば,使用商標の2005年(平成17年)の広告掲載回数は2,006,349回で,その経費は,16,301ドルあり,2018年(平成30年)9月現在の広告掲載回数は,11,408,401回で,その経費は150,710ドルとなっている。
また,これまで使用商標がメディアに取り上げられてきた回数は,2018年(平成30年)9月までで,886,000回となっている。
しかしながら,当該資料は,請求人が作成した一覧表である。
(2)上記(1)の事実によれば,以下のことがいえる。
雑誌は,2006年(平成18年)から2018年(平成30年)の13年の間にわずか15の雑誌に使用商標のことが掲載されているのみで,その中で,本件商標の出願前に発行されているものは,6紙にとどまり,それらの内容は,広告の記載,トリートメントの体験記事の紹介,読者価格でトリートメントが受けられる記事等であり,これらの雑誌の発売部数についても,請求人の主張のみで具体的な証拠の提出はないことから,実際の発行部数については不明である。
また,オンライン雑誌については,2014年(平成26年)に出されたものがほとんどで,その内容はトリートメントの実際の方法やそれに伴う効果を記載しているものである。
さらに,海外のオンライン雑誌は,インドネシア,ドミンゴ,ドイツ,イタリア及び英国のわずか5か国のみであり,使用商標が掲載されているものは2014年(平成26年)のものがほとんどである。
テレビ番組において「HYDRAFACIAL」が紹介されたことはうかがえるが,2014年(平成26年)2月20日に放送されたとするわずか1件のみである。
そして,広告掲載回数と広告費は,これを証明する証拠は,請求人が作成した一覧表のみの資料であり,この数字を裏付ける具体的な証拠の提出もないし,仮に,この広告掲載回数や広告費がそうであったとしても,これがどの程度のものであるかを判断する他社の広告掲載回数や広告費や業界全体の広告掲載回数や広告費等が不明であるから,その多寡を評価することができない。
また,請求人の業務に係る商品及び役務の売上高,製造数量,提供回数,市場のシェア等の具体的な数字の記載もないし,それを裏付ける具体的な証拠の提出もない。
そうすると,使用商標は,請求人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されるものと認めるに足りる証拠を見いだすことができないから,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第19号該当性
(1)使用商標の周知性について
上記1のとおり,使用商標は,請求人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されたものと認めることはできないものである。
(2)本件商標と使用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は,別掲のとおり上段に「Hydra Facial」の文字,下段に「ハイドラフェイシャル」の片仮名を上下二段書きに書してなるところ,下段の片仮名は上段の欧文字に比してやや小さく書してなるものであり,その構成態様からして,下段の「ハイドラフェイシャル」の片仮名は,上段に横書きされた「Hydra Facial」の欧文字の読みを特定したものと理解するのが自然である。
そして,本件商標の「Hydra Facial」の文字部分は,それぞれの文字の間に1文字程度の間隔があるから「hydra」と「facial」の文字の結合商標をみるのが相当であり,「hydra」の文字は,「【ギリシャ神話】ヒドラ(Herculesに殺された九つの頭を持ったヘビ,腔腸動物の一種,ウミヘビ)等の意味を有する語であり,「facial」の文字は,「顔の,顔に用いる」等の意味を有する語であるが,我が国において,「hydra」の文字は,広く知られた語ではないから,一種の造語としてみるのが相当であり,本件商標からは,特定の観念を生じないものである。
したがって,本件商標からは,「ハイドラフェイシャル」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものでる。
イ 使用商標
使用商標は,上記第2のとおり「HYDRAFACIAL」の文字を書してなるところ,当該文字は,本件商標と同じつづりであるから,上記アより「ハイドラフェイシャル」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と使用商標との類否について
本件商標と使用商標とを比較すると,まず,外観においては,それぞれの構成態様の差異はあるものの,文字のつづりが同一であることから,外観上,近似した印象を与えるものである。
次に,称呼においては,両者とも「ハイドラフェイシャル」の称呼を同一にするものである。
さらに,観念においては,両者とも造語であるから,特定の観念を生じないものである。
してみれば,本件商標と使用商標とは,観念において比較できないとしても,外観において,近似した印象を与えるものであり,称呼において,同一であることから,その外観及び称呼において,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両商標は,類似の商標と判断するのが相当である。
エ 本件商標の指定商品及び指定役務と使用商標に係る使用商品及び役務の類否について
本件商標の指定商品及び指定役務は,第11類「業務用電気式美容機械器具」及び第44類「美容,理容,マッサージ」であり,使用商標に係る使用商品及び役務は,「肌の洗浄、クレンジング、角栓除去、ピーリング、美容成分の注入、保湿の機能をすべて備えた美肌用機械器具及びその機械器具を使用したトリートメント美容」であるから,両者は,類似する商品及び役務である。
オ 小括
したがって,本件商標と使用商標とは類似の商標であるから,商品及び役務の出所について誤認混同を生じるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
(3)不正の目的について
請求人は「我が国において登録されていないことを奇貨として,美容の分野における請求人の国内参入を阻止する目的で,先取り的に出願した」と主張するが,本件商標が不正の利益を得る目的,他人たる請求人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足る具体的な証拠の提出はないものであるから,本件商標は,使用商標について獲得した業務上の信用及び顧客吸引力にただ乗りするものとはいえないし,また,請求人商標の出所表示機能を希釈化したり,その名声を毀損したりするものでもない。
(4)小括
以上のとおり,上記(2)のとおり,本件商標と使用商標とは類似の商標であるものの,上記1のとおり,使用商標は,請求人の業務に係る使用商品及び役務であることを表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されたものと認めることはできないものであり,上記(3)のとおり,本件商標が不正の利益を得る目的,他人たる請求人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足る具体的な証拠はないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性
上記2(2)のとおり,本件商標と使用商標とは,類似の商標であり,類似性の程度は高いものであるが,上記1のとおり,使用商標は,請求人の業務に係る使用商品及び役務であることを表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されたものと認めることはできないものである。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても,取引者,需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく,その商品及び役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように,その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
そして,その他に,本件商標と使用商標とが取引者,需要者において出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきでない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲
別掲(本件商標)




審理終結日 2020-07-28 
結審通知日 2020-08-03 
審決日 2020-08-21 
出願番号 商願2016-70612(T2016-70612) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (W1144)
T 1 11・ 271- Y (W1144)
T 1 11・ 222- Y (W1144)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢澤 一幸 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 榎本 政実
小松 里美
登録日 2017-01-13 
登録番号 商標登録第5913254号(T5913254) 
商標の称呼 ハイドラフェイシャル、ハイドラフェーシャル、ヒドラフェーシャル、ハイドラ、ヒドラ、フェーシャル 
代理人 上原 孝太 
代理人 岡田 英夫 
代理人 杉浦 達也 
代理人 矢口 太郎 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ