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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1369155 
異議申立番号 異議2020-900028 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-30 
確定日 2020-11-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第6195848号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6195848号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6195848号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成30年10月24日に登録出願,第25類「ソックス,スポーツブラジャー,スポーツシャツ,スポーツ用の帽子,ジャージー製被服,タイツ及びタイツストッキング,ズボン及びパンツ,ヨガ用パンツ,ウェスト用ベルト,コート」を指定商品として,令和元年10月18日に登録査定,同年11月8日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標に係る登録異議申立ての理由において,引用する商標(以下,まとめていうときは「引用商標」という。)は,以下のとおりであり,米国及び中華人民共和国(以下「中国」という。)において「スポーツウェア,スポーツブラ,ヨガパンツ」等に使用するものであると主張するものである。
(1)米国における商標登録第5305823号商標,欧州連合における商標登録第017918388号商標,英国における商標登録第00003318421号商標,及びオーストラリア国における商標登録第1934342号商標並びに商標登録第1934343号商標と同一であって,別掲2のとおりの構成からなるものである(以下「引用商標1」という。)。
(2)中国における商標登録第17348666号商標,欧州連合における商標登録第017918387号商標,英国における商標登録第00003318418号商標,及びオーストラリア国における商標登録第1934335号商標並びに商標登録第1934336号商標と同一であって,「FIRM ABS」の欧文字からなるものである(以下「引用商標2」という。)。
(3)台湾における商標登録第02016728号商標及び香港における商標登録第304898477号商標と同一であって,別掲3のとおりの構成からなるものである(以下「引用商標3」という。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。
(1)引用商標の周知性について
引用商標は,遅くとも2017年ないし2018年から現在まで,中国や米国のECサイトにおいて,商品「スポーツウェア」,「スポーツブラ」及び「ヨガスーツ」等に使用され(甲14?甲16),中国や米国での販売イベントや広告において使用されている(甲17,甲18)。
そのため,引用商標は,少なくとも中国や米国における需要者において,広く認識され,同国で一定の周知性を獲得し,現在に至っている。
なお,この周知性を裏付ける販売実績表(甲19)からは,中国や米国での一定の売上げ実績や市場占有率が推認され,申立人の商標として,引用商標には,一定の顧客吸引力があるものと認定できる。
(2)引用商標と本件商標の類似性について
本件商標は,「Firm」の文字と「abs」の文字との間に,所定の図形が配置されてなるものである。
一方,引用商標1は,図形商標であり,その図形の構成は,本件商標の図形部分と外観上酷似するものであり,引用商標2は,文字商標「FIRM ABS」で構成され,本件商標の文字部分と比較すると,大文字と小文字の相違のみで,外観,称呼ともに需要者にとって紛らわしいものとなっている。
引用商標3は,文字商標「FIRM ABS」とその左側部分近傍に本件商標の図形部分に外観上酷似した図形を配してなるものである。
本件商標と引用商標1及び引用商標2とを対比すると,文字部分又は図形部分のいずれも酷似する上に,引用商標3に至っては,文字部分と図形部分の配置が若干異なる程度の相違があるにすぎない。
以上から,需要者にとってみれば,商品を選択,購入するにあたり,接した商標が本件商標である場合,引用商標のいずれの商標とも混同する蓋然性は極めて高く,本件商標と引用商標とは,類似する関係にある。
(3)不正の目的について
申立人と商標権者とは,本件商標の登録出願前の2017年代から現時点まで,中国での商標権侵害訴訟や米国での異議申立てにおける紛争を経ている(甲20?甲22)。
そのため,商標権者が,我が国への登録出願時,登録査定時ないし現時点においても,申立人の引用商標を知ることなく,偶然にも,本件商標が,米国等における周知商標である引用商標と類似したものとはいい難い。
さらには,商標権者は,すでに,米国等における周知商標となっていた引用商標の存在を知りうる立場にあり,引用商標の存在を知らなかったとはいい難い。そして,本件商標を「スポーツウェア」等の商品に使用した場合,これに接する需要者をして,申立人やその関係者の業務に係るものであるかのごとく,その商品について出所の混同を生じせしめるおそれがある。
そのため,本件商標は,引用商標の顧客吸引力を利用しようとするもので,その行為は不正の利益を得る目的などの不正の目的で使用するものと考えられる。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標の周知性
申立人の提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(ア)中国のウェブサイト(甲14)において,例えば,2018年5月13日に引用商標1及び引用商標2が付されたスポーツウェア,2018年5月14日に引用商標3が付されたスポーツブラ,2017年11月11日に引用商標3が付されたスポーツウェアが掲載されていたことがうかがえるものの,これらが申立人の業務に係る商品であるかどうかについては確認できない。
また,甲第15号証及び甲第16号証は,スポーツウェア,スポーツブラ等に引用商標が付されている写真が掲載されたウェブサイトの写しであるが,これらが申立人の業務に係る商品であるかどうかやその掲載日は確認できない。
(イ)申立人が広告であると主張するもの(甲17)には,左上に引用商標3が表示され,引用商標1が付されたスポーツウェア(パンツ)の写真が表示されているが,広告日,配布日及び申立人の業務に係る商品であるかは確認できない。
(ウ)申立人が販売イベントの写真と主張するもの(甲18)には,背景のボードに引用商標3が表示されているが,イベントの開催場所,開催日時,内容,申立人との関係及び申立人の業務に係る商品であるかは確認できない。
(エ)申立人が販売実績表と主張するもの(甲19)は,販売金額や販売数量が確認できないものであって,引用商標に係る商品の販売実績や市場占有率が推認できるものではない。
(オ)上記(ア)ないし(エ)からすると,中国において,引用商標がスポーツウェア等に使用されていることはうかがえるものの,その製造者,販売者,広告の範囲,販売売上高,市場占有率については不明である。
そうすると,申立人の提出に係る証拠をもって,引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において,米国や中国における需要者の間に広く認識されているとはいい難く,また,当該主張を裏付ける客観的な証拠は提出されていない。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,別掲1のとおり,「Firm」の欧文字と「abs」の欧文字との間に,縦長の黒色逆三角形の中央に白色の横線を配し湾曲させたものを左右対称となるように二つ並べた図形が配置されてなるものである。
一方,引用商標1は,別掲2のとおり,縦長の黒色逆三角形の中央に白色の横線を配し湾曲させたものを左右対称に二つ並べた図形からなり,引用商標2は,「FIRM ABS」の欧文字を横書きしてなるものであり,引用商標3は,別掲3のとおり,「FIRM ABS」の欧文字を横書きし,その左側に引用商標1の図形部分と同様の図形を配したものである。
本件商標と引用商標とを比較すると,本件商標の欧文字部分と引用商標2及び引用商標3の欧文字部分とは,書体が異なる点,本件商標が2文字目から7文字目が小文字であるのに対し,引用商標2及び引用商標3は全て大文字で表されている点において差異を有するものの,文字のつづりを共通にするものであるから外観上相紛らわしいものであって,それぞれの構成文字に相応して生じる「ファームアブス」の称呼を共通にする類似のものというべきである。また,本件商標の図形と引用商標1及び引用商標3の図形は,別掲のとおり,その図形の構成・態様が酷似するものといえる。
したがって,本件商標は,引用商標とは相紛れるおそれのある類似の商標であるといわざるを得ない。
(3)不正の目的について
申立人は,商標権者と,本件商標の登録出願前に,商標権侵害訴訟や異議申立てにおける紛争を経ている(甲20?甲22)と主張しているが,外国語で記載された証拠であるにもかかわらず,甲第20号証については翻訳文の提出がなく,甲第21号証及び甲第22号証については翻訳文の提出はあるものの,本件商標との関係や事件の概要等について,その内容が確認できないものである。その他,申立人と商標権者との間に紛争があったことを示す証拠の提出もない。
そして,上記(1)のとおり,引用商標は,米国や中国における需要者の間に広く認識されていたものとはいい難いものである。
そうすると,本件商標は,上記(2)のとおり,引用商標と類似するものであるとしても,提出された証拠のみによっては,引用商標の顧客吸引力を利用しようとするものとはいえず,不正の利益を得る目的があるとはいえない。
また,その他,本件商標が,引用商標の名声などにただ乗りする,引用商標の出所表示機能を希釈化させるなど不正の目的をもって使用をするものであることを示す証拠の提出もなく,職権で調査するも不正の目的をもって使用するとの事情は見いだせない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標1)

別掲3(引用商標3)


異議決定日 2020-10-19 
出願番号 商願2018-132651(T2018-132651) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 和田 恵美 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 須田 亮一
平澤 芳行
登録日 2019-11-08 
登録番号 商標登録第6195848号(T6195848) 
権利者 東莞市易瞬電子商務有限公司
商標の称呼 ファームアブス、フィルムアブス、ファームエイビイエス、フィルムエイビイエス、ファーム、フィルム、アブス、エイビイエス 
代理人 篠崎 史典 
代理人 金子 宏 

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