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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z30
管理番号 1369096 
審判番号 取消2018-300871 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-11-19 
確定日 2020-11-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4366438号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4366438号商標(以下「本件商標」という。)は,「クリンクル」の文字を標準文字で表してなり,平成11年4月1日に登録出願,第30類「菓子及びパン」を指定商品として,同12年3月10日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成30年12月5日である。
なお,本件審判において,商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは,平成27年(2015年)12月5日から同30年(2018年)12月4日までの期間である(以下「要証期間」という。)。

2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条の規定により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
請求人は,被請求人の答弁に対して弁駁していない。

3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は,商標権者である山崎製パン株式会社(以下「山崎製パン」という。)及び通常使用権者である秋田いなふく米菓株式会社(商標権者の100%子会社,以下「秋田いなふく米菓」という。)により,本件商標の指定商品である「菓子」について,要証期間内に国内で継続的に使用されていた事実がある。
(2)本件商標の使用対象米菓製品(以下「本件製品」という。)は,秋田いなふく米菓が製造し,商標権者が販売するものであり,本件製品のパッケージに付されている「良味100選」は商標権者が販売する製品のシリーズ名(ブランド)である。
(3)使用の事実
ア 乙第1号証は,被請求人に係る有価証券報告書(平成29年1月1日ないし同年12月31日)の抜粋である。乙第1号証の5頁には,「また,米菓は,(株)末広製菓及び秋田いなふく米菓(株)があられ,煎餅などを製造し,主として当社が販売しております。」との記載があり,6頁の事業系統図には,秋田いなふく米菓が商標権者の連結子会社として掲載されているとともに,秋田いなふく米菓が製造した製品が山崎製パンへ販売されている関係が矢印で示されている。
イ 乙第2号証は,秋田いなふく米菓が作成し,法務局へ提出した「株主リスト」と呼ばれる書面である。商標権者である山崎製パンが秋田いなふく米菓の議決権の100%を支配する親会社であることが記載されている。すなわち,秋田いなふく米菓は山崎製パンを中核とする企業グループに属する企業で,商標権者の実質的支配下でその収支計算の下に米菓の製造販売事業を行っているものであることから,秋田いなふく米菓が製造販売する製品について商標を使用する行為は商標法上通常使用権者による商標使用行為に該当することは明らかである。
ウ 乙第3号証は,本件製品の包装材に係る印刷用版下である。本件商標「クリンクル」がペットブランド(個別商標)として中央に大きく表示されている。また,製造者の記載欄に,「秋田いなふく米菓株式会社」と記載されている。
エ 乙第4号証は,乙第3号証の包装材を製造した東協包装工業株式会社(以下「東協包装工業」という。)による包装材の納品証明書である。平成29年1月10日に秋田いなふく米菓より乙第3号証の包装材の作成依頼を受け,同月20日から同年4月5日にかけて64,000枚の包装材を同社へ納品した事実を証明するものである。
オ 乙第5号証は,乙第4号証に示された包装材の作成依頼の事実を示す発注書である。平成29年1月10日付の発注書が秋田いなふく米菓から東協包装工業へFAX送信され,同日,東協包装工業から秋田いなふく米菓へ受領確認のFAX返信がされたものである。
カ 乙第6号証は,通常使用権者側が作成した本件製品の広告媒体で,同社はこれを商標権者の各工場へ送付し,各工場のセールス担当者が本件製品の販売店に配布していた。販売店では本件製品を販売するに際して店内にこれを掲示して使用していた。
キ 乙第7号証は,商標権者の商品部長による本件製品の販売事実証明書である。商品名は「良味100選 クリンクル(トマトバジル味)」,製造者は秋田いなふく米菓,販売者は山崎製パン,本件製品は小袋入りの米菓,販売地域は沖縄県を除く日本全国,販売時期は平成29年2月から同年7月までの6か月間,販売数量は合計44,500個であった旨が記載されている。
ク 乙第8号証は,本件製品の小売店が商標権者の武蔵野工場宛に交付した物品受領書の一例である。長野県北安曇郡白馬村所在のヤマザキショップ白馬ジャジャ店に「いなふく 良味クリンクルトマトバジル」が,平成29年3月5日に10個(乙8の1),同月10日にも10個(乙8の2),それぞれ販売されたことが記録されている。
(4)以上の乙号証により,本件商標の商標権者及び通常使用権者による要証期間内の本件商標の指定商品についての日本国内使用事実(商標法第2条第3項第1号及び同項第2号)を立証し得たものと確信する。

4 当審の判断
(1)被請求人が提出した証拠及びその主張によれば,以下の事実が認められる。
ア 本件商標権者等について
(ア)本件商標権者は,食品事業として,パン,和・洋菓子,調理パン・米飯類,製菓・米菓等の製造販売を行っている(乙1)。
(イ)秋田いなふく米菓は,本件商標権者が議決権を100%有する連結子会社であり,秋田いなふく米菓が,あられ,煎餅などを製造し,本件商標権者が販売している(乙1,乙2)。
(ウ)東協包装工業は,印刷業務全般を事業内容とする株式会社である(乙4)。
イ 本件製品の包装材の印刷用版下(乙3)には,中央上部及び右側上部の計3箇所に,格別特異とはいえない書体で横書きされた「クリンクル」の文字が表示され,名称欄に「米菓」,製造者欄に「秋田いなふく米菓株式会社」の各記載がある。
ウ 秋田いなふく米菓は,東協包装工業に対して,平成29年1月10日付け「発注書」をもって,「品名」を「良味クリンクル(トマトバジル味)」,「発注数量」を「64,000枚」,種類を「製袋」とする発注を行い,東協包装工業は,乙第3号証と同一の米菓製品包装材(品名:良味100選 クリンクル(トマトバジル味))を,同年1月20日から同年4月5日に64,000枚納品した(乙4,乙5)。
エ 本件商標権者の商品部長による「クリンクル製品の販売事実証明書」には,「良味100選 クリンクル(トマトバジル味)」を商品名とする小袋入りの米菓は,秋田いなふく米菓が製造し,山崎製パンが沖縄県を除く日本全国で平成29年2月から同年7月まで販売し,販売数量は合計44,500個であった。」旨の記載がある(乙7)。
オ 長野県北安曇郡白馬村所在のヤマザキショップ白馬ジャジャ店が本件商標権者の武蔵野工場に宛てた「物品受領書」によれば,品名「いなふく 良味クリンクルトマトバジル」が,平成29年3月5日に10個,同月10日に10個ヤマザキショップ白馬ジャジャ店に納品された(乙8の1・2)。
(2)上記(1)において認定した事実によれば,次のとおり判断できる。
ア 使用者について
上記(1)ア(イ)によれば,秋田いなふく米菓は,本件商標権者が議決権を100%有する連結子会社であって,米菓の製造を行っており,本件商標権者がその販売をしていることからすると,秋田いなふく米菓は,本件商標権者から本件商標の使用について黙示の許諾を受けた者であると推認することができる。
したがって,秋田いなふく米菓は,本件商標の通常使用権者であると認めることができる。
そして,上記(1)イないしオによれば,通常使用権者は,本件製品の包装材(製品袋)に,格別特異とはいえない書体で横書きされた「クリンクル」の標章(以下「本件使用商標」という。)を付して,本件製品である「米菓」(以下「本件使用商品」という。)を製造して,本件商標権者が販売していることが認められ,当該包装材(製品袋)に記載された「クリンクル」の文字部分は,包装材(製品袋)の正面上部の位置に大きく表され,看者の注意を引くものといえるから,これに接する需要者をして,「クリンクル」の文字部分が本件使用商品の出所標識と認識されるというべきである。
そうすると,通常使用権者は,本件使用商品に関する包装材(製品袋)に,本件使用商標を付して,本件使用商品を製造し,かつ,本件商標権者は,本件使用商品を販売(譲渡)したものと認められる。
したがって,本件使用商標の使用者は,本件商標権者及び通常使用権者である。
イ 本件商標と本件使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は,「クリンクル」の文字を標準文字で表してなるところ,上記アのとおり本件使用商標は,「クリンクル」の文字を格別特異とはいえない書体で横書きされたものであって,その文字のつづりも,それぞれから生じる称呼「クリンクル」も同一であるから,本件商標と本件使用商標は社会通念上同一の商標と認められる。
ウ 使用時期について
本件使用商品の包装材(製品袋)は,平成29年1月10日に通常使用権者より東協包装工業に発注され,東協包装工業は同年1月20日から同年4月5日にかけて,通常使用権者に64,000枚納品し(乙3?乙5),その後,本件商標権者がヤマザキショップ白馬ジャジャ店に対し,平成29年3月5日及び同月10日に本件使用商品を各10個販売(譲渡)している(乙8)ことからすると,通常使用権者は,少なくとも,平成29年1月20日から同年3月5日の間,本件使用商品に,本件使用商標を付して,製造したものと認められる。
また,本件商標権者は,通常使用権者により,本件使用商標が付されるとともに製造された本件使用商品を,ヤマザキショップ白馬ジャジャ店に平成29年3月5日及び同月10日に譲渡(販売)したことが認められる。
そして,当該平成29年1月20日ないし同年3月5日及び同月10日は,要証期間内である。
エ 本件使用商品について
本件使用商品は,上記アのとおり,「米菓」であるから,本件審判の請求に係る指定商品中の「菓子」に含まれるものと認められる。
オ 小括
以上によれば,本件商標の通常使用権者は,要証期間内である平成29年1月20日から同年3月5日に本件使用商品の包装に本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を付したものと認められる。また,本件商標権者は,要証期間内である平成29年3月5日及び同月10日に本件商品の包装に本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を付したものを日本国内の取引先に譲渡又は引き渡したものと認められる。
そして,通常使用権者による上記行為は,商標法第2条第3項第1号にいう「商品の包装に標章を付する行為」であり,また,本件商標権者による上記行為は,同法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡又は引き渡す行為」に該当する。
(3)まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者及び通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品中の「菓子」に含まれる「米菓」について,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したというべきである。
したがって,本件商標の登録は,本件審判の請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審理終結日 2020-06-16 
結審通知日 2020-06-23 
審決日 2020-07-15 
出願番号 商願平11-27998 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z30)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 平澤 芳行
須田 亮一
登録日 2000-03-10 
登録番号 商標登録第4366438号(T4366438) 
商標の称呼 クリンクル 
代理人 小林 十四雄 
代理人 岡村 信一 
代理人 安達 友和 

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