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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W34 審判 全部申立て 登録を維持 W34 |
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管理番号 | 1368378 |
異議申立番号 | 異議2020-900070 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-03-06 |
確定日 | 2020-11-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6203983号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6203983号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6203983号商標(以下「本件商標」という。)は、「FASTER HEAT UP」の欧文字を標準文字で表してなり、平成30年11月29日に登録出願、第34類「紙巻たばこ,たばこ,たばこ製品,代用たばこ(医療用のものを除く。),葉巻たばこ,シガリロ,ライター,マッチ,喫煙用具,紙巻たばこ用紙,紙巻たばこ用筒,たばこ用フィルター,たばこ紙巻き器,紙筒にたばこを挿入するための手持型喫煙用具,電子たばこ,電子たばこ用液体,加熱して使用することを目的とするたばこ製品,たばこ及び代用たばこを吸引するために加熱するための装置及びその部品」を指定商品として、令和元年11月8日に登録査定され、同年12月6日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。 (1)指定商品であるたばこ業界における本件商標の認識について ア 本件商標は、その指定商品との関係で、熱を発生したり、熱を利用した喫煙用の商品に使用した場合、「速く加熱することができる」、「加熱の速度が速い製品であること」を表示するものとして、これらの指定商品を取り扱う業界において普通に使用されている事実がある(甲3ないし甲23)。 イ 近年のたばこ産業界においては、従来の可燃式のたばこに加えて、「煙の出ない商品」「(燃やすのではなく)加熱式のたばこ製品」、「電子たばこ」などの製品が製造、販売され、これらが主流となっている状況がある(甲3ないし甲23)。 (2)本件商標の一般需要者の認識及び識別力について ア 本件商標を構成する「FASTER HEAT UP」についてみると、これらの語は、いずれも親しまれた単語であり、辞書等への掲載事情から、一般の者及び英語の初学者であっても容易にその意味合いを理解できる(甲9ないし甲11)。 イ 「FASTER」の原型である「fast」は、「ファストフード(fast food)」や「ファストファッション(fast fashion)」などが一般の語として使用され、「速く」「素早く」などの意味合いとして広く知られている。 ウ 「HEAT UP」についても「熱くする」の意味合いとして、英語及びカタカナも親しまれている。また、「heat」が熱を意味する語であることから、「熱があがる」などの意味合いや、暖房器具や加熱調理器具を「ヒーター(heater)」と称したり、熱を利用した様々な産業用機器についても広く一般に使用され認識されている(甲9ないし甲11)。 エ 本件商標を構成する各語について、平易な一般的な英語であって、「速く加熱する」との意味合いを容易に認識させる。 オ 本件商標の指定商品の需要者の認識についてみると、たばこ等の需要者は成人喫煙者であり、本件商標が平易な英語からなることから、加熱して喫煙する商品に関して、「加熱速度が速く、喫煙できるようになるまでの待ち時間が少ない商品」であることを直ちに理解、認識させる(甲12ないし甲23)。 (3)本件商標の指定商品を取り巻く業界の状況について ア 近年のたばこ産業界では、たばこを燃やして喫煙する従来型のたばこではなく、「加熱式たばこ製品」が世界的な傾向であり、たばこ業界大手である、申立人及び日本たばこ産業株式会社をはじめとする各社が「(燃やすのではなく)加熱式のたばこ製品」を製造・販売している(甲3ないし甲8、甲13及び甲14)。 イ 申立人は、平成26年11月4日から、たばこを加熱する独自の技術を採用した「加熱式たばこ及び加熱式たばこ用器具」の「IQOS」を販売している(甲3及び甲4)。 日本たばこ産業株式会社は、平成25年12月12日から「加熱式たばこ及び加熱式たばこ用器具」として「Ploom(プルーム)」を発売し、その機能や技術についても詳細な説明をしている(甲5ないし甲7)。 その他にも、2019年よりインペリアル・タバコ・ジャパンが「加熱式たばこ」の「PULZE」を販売し、その製品の特徴等を紹介している(甲8)。 ウ このように、本件商標権利者及び申立人以外の者によっても「加熱式たばこ及び加熱式たばこ用具」の製造・販売がされ、「紙巻たばこ」に代替するものとして年々その需要・製造の割合が増え、成人喫煙者の認識も変化してきている。需要者のニーズにこたえるため、各社それぞれが技術や外観に特徴を持たせた「加熱式たばこ用器具」を製造・販売しており、においや副流煙など健康上のリスクが比較的低い「加熱式たばこ」は、今後、紙たばこにとって代わる製品であることが予想される(甲3ないし甲8)。 エ このようなたばこ産業をとりまく状況から、成人喫煙者のみならず一般需要者においても、「加熱式たばこ及びその器具」が従来の燃やして喫煙するたばこ製品に代替する商品であるとの認識が広がっており、「電子的にたばこを加熱する製品」が一般的な商品であることを容易に認識・理解可能であるということができる。 (4)本件商標権利者が「FASTER HEAT UP」をその製品の品質、特徴、機能、製品の目的として使用していること ア 本件商標権利者は、「電子たばこ、加熱式たばこ製品」等の開発をしており(甲12)、次世代の「加熱式たばこ」として紹介している(甲13及び甲14)。 イ 本件商標権利者は、「FASTER HEAT UP」の語を自らの商品「加熱式たばこ用器具」である「glo」の説明において、単に「速く加熱ができる商品」「加熱の待ち時間が少ない商品」として説明的に使用している。例えば、その製品について、「高温高速加熱のブーストモードで、パワーを落とさず、速く加熱する。」、「高温高速加熱でより早く、より強い吸いごたえを」と紹介している(甲13)。また、「起動スピードがアップ」として「現行のgloと比べ加熱時間が半分以下。」との記載がある(甲14)。 ウ このような製品の紹介は、「加熱が速い」という点で、他社製品及び自社の旧型の製品よりも優れた品質であることを強調するものである。そして、この「加熱が速い」ことが需要者(成人喫煙者)のニーズを反映した商品であることに疑いの余地はない。 エ そうとすれば、本件商標権利者は「FASTER HEAT UP」の語を、商品の品質、特徴、機能、製品の目的として使用し、需要者(成人喫煙者)に対してアピールするために説明的に使用しているから識別力を有しない商標であることは明らかである(甲12ないし甲14)。 (5)「加熱式たばこ用器具」に関する需要者(成人喫煙者)の認識について ア 「加熱式たばこ用器具」の需要者(成人喫煙者)が各社の「加熱式たばこ用器具」を購買するにあたり、どのような性能、品質等を有しているかを比較検討し、その品質・特徴を紹介しているブログ情報(甲15ないし甲17)によれば、加熱時間の長さが商品選択の重要な要素であること(甲15)、喫煙可能となるまでの予熱時間の比較表が記載されていること(甲16)、本件商標権利者の製品紹介において「・・・ブーストモードを採用することで、最速で約10秒というスピーディーな加熱と、より深い味わいを実現した」との記載があり、これらは、予熱時間が短いことを製品の特徴として喫煙者に紹介している(甲17)。 イ これらの証拠よりわかるとおり、各たばこ製造・販売会社は需要者の嗜好にあわせるべく、自社の製品に様々な特徴を持たせるなどの企業努力を行っている。その中で「加熱の速度が速い」商品は、「加熱式たばこ用器具」の品質・特徴として、選択する際の重要な要素の一つである。 ウ そうとすれば、本件商標は、指定商品の品質、特徴及び商品の使用の目的等を表し、容易に「加熱の速度が速い」商品であると需要者に理解させる識別力を有しない商標であり、また、この語を一者に独占させることは自由な競争を妨げるものであるから、独占適用性を欠く商標である。 (6)本件商標を構成する語が品質を表すものとして加熱式たばこ用器具に使用されていること ア 本件商標を構成する語を用いて、商品「加熱式たばこ用器具」が特に「速く加熱することができる」といった、品質、特徴、機能を有していることを説明している(甲18ないし甲20)。 イ 加熱式たばこ用器具の購入を希望する需要者(成人喫煙者)にとって、加熱時間が速いかどうかは購入判断の重要な要素であり、決め手となる(甲15ないし甲17)。 ウ 加熱式たばこ用器具を製造・販売する各社は、需要者(成人喫煙者)のニーズにあわせて商品開発をしている(甲3ないし甲8)。 (7)本件商標を構成する語が品質を表すものとして一般的な加熱して使用する商品に使用されていること ア 本件商標を構成する「faster heat up」の語が、「プラグ」や「家庭用電磁調理器具」等に使用され、親しまれていることを示す(甲21ないし甲23)。 イ このように、「faster heat up」の語は、「速く加熱する」「加熱時間が速い(短い)」という意味合いを容易に理解・認識させ、熱を利用した商品の品質を誇示するものである。 (8)本件商標が誤認を生じさせるものであることについて(商標法第4条第1項第16号該当性) ア 上述のとおり、本件商標をその指定商品中の加熱をすることが必要な商品、すなわち、「電子たばこ,電子たばこ用液体,加熱して使用することを目的とするたばこ製品,たばこ及び代用たばこを吸引するために加熱するための装置及びその部品」に使用しても商品の品質、機能を普通に用いられる方法で表示しているにすぎず、自他商品の識別標識として機能を果たし得ない。 イ 本件商標を上記以外の商品、例えば、従来の「燃やして喫煙するたばこ製品」に使用した場合には、「電子を利用した加熱たばこ製品またはその器具」であると需要者に誤認させるから、上記以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じるおそれがある。 (9)小括 ア 本件商標は、これを構成するそれぞれの語が平易な一般的な語であることから、需要者(成人喫煙者)のみならず、一般需要者においてもその意味合いを容易に理解し、「速く加熱する」「加熱時間が速い」商品であることを直ちに認識させる。 イ 本件商標を構成する語は、「加熱式たばこ用器具」のみならず、電磁調理器具などの一般的な器具にも使用されている語であることから、識別力を有するものといえない。 ウ たばこ業界の大手各社が、それぞれ特徴を持たせた「加熱式たばこ及びその器具」を製造・販売しており、加熱時間が製品の品質を表示するために必要適切な表示であって、需要者(成人喫煙者)の購買意欲の向上の重要な要素であるから、何人もこれを使用することを欲するものであり、本件商標を一者に独占させることは適当ではない。 エ 先行審決例において、商標が英語のみからなる構成であっても、その語が平易な語である場合には、容易にその意味合いが理解されると判断している(甲24)。 オ 本件商標を基礎とするEUIPO(欧州共同体知財庁)を指定官庁とした国際登録において、本件商標は、識別力を有する商標とは認められていない(甲25)。 カ 上述のとおりであるから、本件商標はその指定商品中の加熱することが必要な商品、すなわち、「電子たばこ,電子たばこ用液体,加熱して使用することを目的とするたばこ製品,たばこ及び代用たばこを吸引するために加熱するための装置及びその部品」について使用しても商品の機能を普通に用いられる方法で表示しているにすぎず、自他商品の識別標識として機能を果たし得ない。また、本件商標を上記商品以外の本件商標の指定商品に使用した場合には、商品の品質について誤認を生じるおそれがある。 (10)むすび 上記(1)ないし(9)の事実から、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである。 3 当審の判断 (1)申立人の主張及び提出された証拠について 「FASTER HEAT UP」の文字(語)について、申立人が提出した証拠、及び同人の主張によれば、「煙の出ない商品」「(燃やすのではなく)加熱式のたばこ製品」、「電子たばこ」などの製品が製造、販売がされていること(甲3ないし甲8、甲13及び甲14)、該商品においては、加熱のスピードが商品の特徴として重要な要素として認識されていること(甲15ないし甲17)は認められる。 しかしながら、本件商標の構成と同一の語の使用であると示された証拠(甲18ないし甲20)は、加熱式たばこ用器具についてのインターネット上の情報であるところ、英語で記載された商品の特徴の説明における記述的な記載の中から、前後の文脈を排除し、一部分のみを切り出したものであるから、その文中に「FASTER HEAT UP」の記載があることをもって、かかる文字が商品の品質を表すものと認めることはできない。 そして、本件商標の指定商品とは異なる商品における本件商標の構成と同一の語の使用であると示した証拠(甲21ないし甲23)は、本件商標の指定商品とは取引者、需要者の異なる商品についての使用の事実を示しているにすぎないから、それをもって、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者をして、その商品の品質を表示するものと認識させるということはできない。 なお、国際商標登録の経過を示した証拠(甲25)については、暫定拒絶通報がなされているものであり、最終処分がなされていない上、国際商標登録の判断が、直ちに、我が国における審理判断に影響を与えるものではない。 (2)商標法第3条第1項第3号について 前記(1)のとおり、本件商標の構成文字「FASTER HEAT UP」が、本件商標の指定商品の品質を表示するものと認めるに足る証左は見いだせなかった。 そして、本件商標は、本件商標を構成する各単語の意味から、全体として「速く熱が上がる」ほどの意味合いを想起させる場合があるとしても、その指定商品について特定の品質を表すものと理解されるものとはいえず、暗示にとどまるものというのが相当である。 また、「FASTER HEAT UP」の文字のみで、本件商標の指定商品の品質を表示するとして、自他商品識別標識としての機能を有しないものというべき、その他の事情は発見できなかった。 してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質などを表示するものではなく、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。 したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものとはいえない。 (3)商標法第4条第1項第16号について 本件商標は、前記(2)のとおり、本件商標の指定商品の品質を表示するものではないから、これをその指定商品に使用しても商品の品質の誤認を生じるおそれはないものである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものとはいえない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当するものとはいえず、その登録は同法第3条及び同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。 他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせない。 したがって 本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2020-10-26 |
出願番号 | 商願2018-147058(T2018-147058) |
審決分類 |
T
1
651・
13-
Y
(W34)
T 1 651・ 272- Y (W34) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 白鳥 幹周 |
特許庁審判長 |
木村 一弘 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 馬場 秀敏 |
登録日 | 2019-12-06 |
登録番号 | 商標登録第6203983号(T6203983) |
権利者 | ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(ブランズ)リミテッド |
商標の称呼 | ファースターヒートアップ、ファスターヒートアップ |
代理人 | 中山 真理子 |
代理人 | 竹中 陽輔 |
代理人 | 達野 大輔 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |