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審決分類 審判 査定不服 称呼類似 登録しない W35
審判 査定不服 外観類似 登録しない W35
審判 査定不服 観念類似 登録しない W35
管理番号 1368321 
審判番号 不服2019-14290 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-08 
確定日 2020-11-02 
事件の表示 商願2018- 75153拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成30年5月25日に登録出願され、その後、指定役務については、原審における同31年4月9日付けの手続補正書及び審判請求と同時に提出された令和元年10月8日付けの手続補正書により、最終的に、第35類「せっけん類・歯磨き・化粧品・香料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、登録第5201647号商標(以下「引用商標1」という。)と類似の商標であって、その商標に係る指定役務と類似の役務に使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
なお、引用商標1は、その概要が別掲2のとおりであり、現に有効に存続しているものである。

3 当審における審尋
当審において、令和2年5月28日付けの審尋をもって、本願商標は、原審における拒絶理由通知において引用した登録第1926514号商標(以下「引用商標2」という。)と類似の商標であって、その商標に係る指定商品と類似の役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の見解を通知し、相当の期間を指定して請求人に対し回答を求めた。
なお、引用商標2は、その概要が別掲3のとおりであり、現に有効に存続しているものである。

4 審尋に対する請求人の回答の要点
(1)商標の類否について
ア 外観について
本願商標は、上段の葉図形と下段の独自のロゴが一体となり、独特のイメージ、略正方形の植物の葉という観念を創り上げているのに対し、引用商標2は、筆記体風の墨文字一色の平仮名表記のみの構成であり、本願商標とは顕著に相違している。
イ 観念について
本願商標は、上段の図形部分からは略正方形の植物の葉という独特のイメージ、雰囲気が醸し出されており、下段の欧文字表記部分に関しては既成語として一般の英語辞書に存在せず、本願商標の取引者・需要者層においては商標全体で特定の観念を想起させない一種の造語商標と理解、認識されるか、若しくは上記の略正方形の葉という独特のイメージが想起されるものである。
引用商標2は、日本語の「常盤」、「常磐」の自然的な読みと認識されるところ、当該語は一般の国語辞書に記載されており、本願商標と比較すると顕著に相違している。
ウ 称呼について
本願商標から「トキワ」の称呼が生ずるとしても、裁判例や近年の審決例を考慮すると、仮に同一の称呼が生ずる関係にあっても、外観及び観念の要素において顕著に相違する場合に非類似と判断されている事例が多数存在している。
エ 登録例について
本件と同様に「トキワ」の称呼が生ずる商標が併存登録されている例が複数存在している。
オ 取引の実情について
本願商標の指定役務である「せっけん類・歯磨き・化粧品・香料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」では、需要者は店頭販売では商品の陳列をみて、通信販売、インターネットを介した商品の販売では紙面やウェブ上の役務提供者である出店元表示を必ず確認し、さらに商品の記載をみて購入するのが常である。このような取引の実情からは、本願商標が指定する小売等役務分野では取引における需要者の注視度の割合はかなり高く、外観が顕著に異なる本件事案については、十分識別可能なものである。特に近年成長著しい通信販売を代表とするウェブ取引にあっては、出店元の信頼性が一層問われることもあり、商品商標以上の注意力によって選定されることも在り得る。
カ 総合観察
仮に称呼を共通にするとしても、外観、観念の点では明確に相違すること、また指定役務に係る取引の実情から、本願商標と引用商標は非類似である。本願商標と引用商標が併存したとしても、本願商標は引用商標に比し、外観は顕著に相違し、想起される観念も顕著に異なることから、取引者、需要者層においては十分識別可能であり、出所の混同も生じ得ない。
(2)審尋の是非について
ア 原査定で類否が解消された引用商標2につき、査定判断を覆し類似と判断することは、請求人にとって新たな不意打ちとなる。不意打ち防止の観点からも、あくまで審判における類否判断の対象は、拒絶査定で類似と判断された引用商標1に限られるべきである。
イ 本件審判請求は拒絶査定で類似と判断された引用商標1との関係で、抵触関係を解消する目的で手続補正を行うことにより抵触している商品(役務)を削除し、登録審決を導く目的で行われたものである。そのような前提に基づくと、拒絶査定段階で非類似が認められている商標は当然に議論の対象外と考え審判請求しているものであり、査定において非類似と判断されていなければ審判請求自体も含め請求人側の対応は大幅に異なるものである。これは、審判請求に係る事務的な手間、審理期間及び請求人の費用負担の面を考慮しても容易に想像できるものであり、問題となる。
ウ 引用商標2と類似と判断されるとすれば、公平かつ公明を旨とする行政処分たる審決に対する信頼性が著しく損なわれることとなり、極めて妥当性を欠くものといわざるを得ず、ひいては商標登録制度に対する信頼を失わせるような事態を惹起させるものである。もし仮に原査定と異なる見解が示されるのであれば、その合理的理由を示されるべきである。

5 当審の判断
(1)本願商標と引用商標1について
本願の指定役務は、上記1のとおり補正された結果、引用商標1の指定役務と類似する役務は削除された。
その結果、本願の指定役務は、引用商標1の指定役務とは類似しない役務になった。
したがって、本願商標は、引用商標1との関係においては、商標法第4条第1項第11号に該当しないものとなった。
(2)商標の類否判断について
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照)。
また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されないが、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁、最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁、最二小判平成20年9月8日集民228号561頁参照)。
上記の観点から、本願商標と引用商標2との類否について判断する。
(3)本願商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、緑色のグラデーションが施された四隅を丸く表したひし形様の図形の中心に白抜きの直線を配し、さらに当該直線から両辺に向かって白抜きの直線を左右2本配してなる図形とその下に茶色で「TOKIWA」の欧文字を横書きした構成からなるものである。
そこで、本願商標の構成中の図形部分についてみるに、当該図形は、我が国において特定の事物を表したもの又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないものであるから、これよりは、特定の称呼及び観念を生じないものである。
また、本願商標の構成中の文字部分についてみるに、「TOKIWA」の欧文字は、一般的な英語の辞書等に掲載されていない語であるから、特定の観念を生じないものというのが相当である。
そして、本願商標において、図形部分と文字部分とは、やや間隔が空いていることに加え、図形部分は緑色からなるのに対し、文字部分は茶色からなるものであるから、両者は、視覚上、分離して看取されるものであり、また、観念上のつながりもなく、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいい難いものであるから、それぞれが独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす要部となり得るものである。
そうすると、本願商標から「TOKIWA」の文字部分を抽出し、他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。
してみれば、本願商標は、その構成文字に相応して「トキワ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標2について
引用商標2は、「ときわ」の文字を縦書きしてなるところ、当該文字は、「常盤」、「常磐」、「常葉」などの漢字の読みとして国語辞典に掲載があるとしても、例えば「常磐」の文字は、「常にかわらない岩。永久不変なこと。松・杉など、木の葉の常に緑色で色をかえないこと。」など複数の意味を有しており(「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)、また、上記のとおり、「ときわ」を読みとする複数の語句があることから、直ちに特定の意味合いを想起させる語とはいい難いものである。
してみれば、引用商標2は、その構成文字に相応して「トキワ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本願商標と引用商標2との類否について
本願商標と引用商標2の類否について検討すると、外観においては、その全体の構成において差異を有するものであるが、本願商標の要部である「TOKIWA」の欧文字と引用商標2との比較においては、両者は、欧文字と平仮名の差異があるとしても、いずれも特殊とはいえない書体をもって表されており、商標の構成文字を同一の称呼の生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記することが一般的に行われていることからすると、それぞれの文字を置き換えたものとして、取引者、需要者に認識されるものであるから、この文字種の相違が出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえないものである。
次に、称呼においては、本願商標と引用商標2とは、共に「トキワ」の称呼を生じるものである。
そして、観念においては、本願商標と引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができない。
してみれば、本願商標と引用商標2とは、観念において比較できないとしても、称呼を同一にし、外観において、称呼を共通にすることによる称呼上の類似性を凌駕するほどの顕著な差異があるとはいえないものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本願商標と引用商標2とは互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
エ 本願の指定役務と引用商標2の指定商品との類否について
本願の指定役務である「せっけん類・歯磨き・化粧品・香料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標2の指定商品である「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」とは、小売等の役務とその取扱商品の関係にあり、その対象となる商品を共通にするものであって、それらの商品の小売等役務とその商品の販売は、一般的には同一事業者によって行われることが多いことからすると、役務の提供場所と商品の販売場所とを同一にする場合が多く、取引者、需要者を共通にするものであるから、本願の指定役務と引用商標2の指定商品とは、相互に類似するといえるものである。
オ 小括
以上によれば、本願商標は、引用商標2と類似する商標であって、その指定役務は、引用商標2の指定商品と類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は、「本願商標から『トキワ』の称呼が生ずるとしても、裁判例や近年の審決例を考慮すると、仮に同一の称呼が生ずる関係にあっても、外観及び観念の要素において顕著に相違する場合に非類似と判断されている事例が多数存在している。・・・本件と同様に『トキワ』の称呼が生ずる商標が併存登録されている例が複数存在している。」旨主張し、過去の審判決例及び併存登録例を挙げ、本願商標もこれらの事例と異なる解釈をする合理的理由は存しない旨主張する。
しかしながら、本願商標と引用商標2とは、上記(3)ウのとおり、外観において、称呼を共通にすることによる称呼上の類似性を凌駕するほどの顕著な差異があるとはいえないものであり、請求人の挙げる審判決例及び併存登録例は、いずれも本願商標とは、構成文字や構成態様が異なるものであって、本願とは事案を異にするというべきものであるばかりでなく、商標の類否の判断は、登録出願に係る商標と他人の登録商標との対比において、個別具体的に判断されるべきものであるから、請求人の挙げた事例は、上記判断を左右するものではない。
イ 請求人は、「本願商標の指定役務・・・では、需要者は店頭販売では商品の陳列をみて、通信販売、インターネットを介した商品の販売では紙面やウェブ上の役務提供者である出店元表示を必ず確認し、さらに商品の記載をみて購入するのが常である。このような取引の実情からは、本願商標が指定する小売等役務分野では取引における需要者の注視度の割合はかなり高く、外観が顕著に異なる本件事案については、十分識別可能なものである。特に近年成長著しい通信販売を代表とするウェブ取引にあっては、出店元の信頼性が一層問われることもあり、商品商標以上の注意力によって選定されることもあり得る。」旨主張する。
しかしながら、請求人の主張する上記の取引の実情を裏付ける証拠の提出はなく、かつ、商標の類否判断において考慮することのできる取引の実情とは、単に当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではなく、その指定商品全体についての一般的・恒常的な実情を指すものと解すべきであり(最高裁昭和47年(行ツ)第33号参照)、役務についても同様に解されているところ、請求人の主張する上記実情は、取引における一場面を抽出した特殊的、限定的なものといわざるを得ないものであり、商標の類否判断にあたり考慮すべき一般的、恒常的な取引の実情ということはできない。
ウ 請求人は、審尋で示した合議体の見解について、「原査定で類否が解消された引用商標2につき、査定判断を覆し類似と判断することは、請求人にとって新たな不意打ちとなる。不意打ち防止の観点からも、あくまで審判における類否判断の対象は、拒絶査定で類似と判断された引用商標1に限られるべきである。・・・引用商標2と類似と判断されるとすれば、公平かつ公明を旨とする行政処分たる審決に対する信頼性が著しく損なわれることとなり、極めて妥当性を欠くものといわざるを得ず、またひいては商標登録制度に対する信頼を失わせるような事態を惹起させるものである。」旨主張する。
しかしながら、拒絶査定不服審判における審理の対象は、拒絶査定の理由の当否ではなく、当該出願に拒絶理由があるか否かであり(知財高裁令和元年(行ケ)第10135号参照)、本願については、原審における平成31年2月25日付けの拒絶理由通知書において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当する旨を通知し、請求人は、同年4月9日付け意見書において意見を述べている。
そして、当審において本願に拒絶理由があるか否か審理した結果、上記拒絶理由通知書で拒絶の理由として引用した引用商標2との関係において、いまだ拒絶の理由が存在するとして、当審における令和2年5月28日付けの審尋により、その旨を通知し、請求人に対して意見を述べる機会を与え、請求人はそれに対し、同年7月8日付けの回答書をもって意見を述べているのであるから、請求人にとって不意打ちとなるものではなく、その手続は何ら妥当性を欠くものではない。
エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(5)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1 本願商標(色彩については、原本参照。)


別掲2 引用商標1(登録第5201647号商標)
商標の構成:

(色彩については、原本参照。)
登録出願日:平成19年6月15日
設定登録日:平成21年1月30日
更新登録日:平成30年9月18日
指定役務:第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品・うちわ・せんす・ガーター・靴下止め・ズボンつり・バンド・ベルト・腕止め・頭飾品・傘の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花及び木の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,たばこ及び喫煙用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,愛玩動物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

別掲3 引用商標2(登録第1926514号商標)
商標の構成:


登録出願日:昭和59年2月3日
設定登録日:昭和62年1月28日
書換登録日:平成19年3月14日
最新更新登録日:平成29年1月24日
指定商品:第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」


審理終結日 2020-08-27 
結審通知日 2020-09-04 
審決日 2020-09-16 
出願番号 商願2018-75153(T2018-75153) 
審決分類 T 1 8・ 263- Z (W35)
T 1 8・ 261- Z (W35)
T 1 8・ 262- Z (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 佐代子水落 洋 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 小田 昌子
木住野 勝也
商標の称呼 トキワ 
代理人 小川 雅也 

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