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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y09
管理番号 1368238 
審判番号 取消2018-300021 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-01-12 
確定日 2020-10-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第1456816号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第1456816号商標(以下「本件商標」という。)は,「APEX」の欧文字を横書きしてなり,昭和49年9月26日に登録出願,第11類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同56年3月31日に設定登録され,その後,平成15年6月4日に,指定商品を第9類「電気通信機械器具(ラジオ受信機、テレビジョン受信機、音声周波機械器具を除く。),電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」とする,指定商品の書換登録がされ,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判請求の登録日は,平成30年1月29日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定商品中,第9類「電気通信機械器具(ラジオ受信機、テレビジョン受信機、音声周波機械器具を除く。),電子応用機械器具及びその部品」(以下「取消請求商品」という。)についての登録を取消す,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を審判請求書,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,取消請求商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 使用標章について
(1)弁駁書における主張
ア 平成25年11月25日付け日本電気株式会社(以下「NEC」という。)によるニュースリリース(乙5)で示されている「コミュニケーションサーバ」旨の商品に使用されている標章は,「UNIVERGE SV9500」及び「UNIVERGE SV9300」であり,本件商標とはまったく別異の標章である。
さらに,「UNIVERGE SV9500」に関する,2017年(平成29年)10月25日付けの販売価格表の表紙(乙7の1)に,「UNIVERGE SV9500(V5)販売価格表」と他の文字に比して特に目立つように太字で記載されていることからすると,当該販売価格表において出所識別標識として機能しているのは,「UNIVERGE SV9500(V5)」であるといえる。そして,当該販売価格表には,「SN158 MDFA-A」,「PR-25BIX ジャック盤」等と並んで,「APEX 2000 50P JUMP TERM」等からなる文字・数字が記載されている。これらの文字・数字は,その構成及び当該販売価格表が「UNIVERGE SV9500(V5)」の販売価格表であることからすると,「UNIVERGE SV9500(V5)」の中に,これらの文字・数字からなる品番の商品が存在しているとみるのが自然である。そうすると,「APEX2000 50P JUMP TERM」の文字・数字は品番のひとつとして記載されているにすぎないといえる。
イ ある文字又は数字が商品の品番として認識されるのは,ニュースリリース(乙5)に示されているように,「UNIVERGE SV9500」と「UNIVERGE SV9300」が同列に記載されている場合や,「APEX2000」と同時に「APEX1000」や「APEX3000」が使用されている場合のように,文字又は数字部分が商品の品番を表していると容易かつ明確に認識できる場合に,「SV9500」,「SV9300」,「1000」,「2000」又は「3000」の文字や数字を捨象して認識することが許されるのであって,本件においては,「APEX」の文字以外の文字や数字を捨象して認識することが許されることを示す証拠は一切提出されていない。
そうすると,当該販売価格表から認識されるのは,あくまでも「APEX2000 50P JUMP TERM」等といえる。もっとも,当該販売価格表において出所識別標識として機能しているのは,あくまでも「UNIVERGE SV9500(V5)」であるから,「UNIVERGE SV9500(V5)」の品番中に「APEX」の文字が含まれていることは,そもそも本件商標の使用の事実とは一切関係ない。
(2)上申書における主張
被請求人が提出した,平成14年6月に発行されたNECの社内報(内部資料)(乙20)に「APEX○○○」の表示があったとしても,このような表示は,「商標」(商標法第2条第1項第1号の)として,「使用」(商標法第2条第3項各号)されていたことにはならない。
この点に照らすと,「商標」としての「使用」でない「APEX○○○」が社内報に掲載されたからといって,そのことが,販売価格表の49ページ(乙7の2)の「APEX2000 50P JUMP TERM」の「2000」が品番を表すことにはならない。
ましてや,「50P」,「JUMP」及び「TERM」については,推測だけで,その意味さえ証明されていない以上,当該販売価格表の「APEX2000 50P JUMP TERM」の「2000」以降の部分を省略する理由にはならないのはもちろんのこと,「APEX」部分だけが分離して認識される理由にもならない。
よって,「APEX2000 50P JUMP TERM」は,その構成全体をもって一体不可分と把握されるべきものであり,「APEX」部分が分離して認識されるものではない以上,「APEX2000 50P JUMP TERM」の使用をもって,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていたとは認められない。
3 「販売価格表」における使用について
(1)弁駁書における主張
「販売価格表」(乙7の1)には,「UNIVERGE SV9500 (V5)販売価格表」と記載されていることから,「UNIVERGE SV9500(V5)」の販売価格表であることが推認できると共に,「発行:2017年10月25日」と記載されていることから,2017年(平成29年)10月25日に発行されたことが推認できる。
しかしながら,当該販売価格表をもって本件商標が使用されたとするには,単に本件審判請求の登録日前3年以内(以下「要証期間」という。)に当該販売価格表が発行されたというだけでは足りず,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって,当該販売価格表をもって商標法第2条第3項第8号所定の使用行為があったと認められることが必要である。にもかかわらず,被請求人は,当該販売価格表が展示又は頒布された事実を示す証拠を一切提出していない。さらにいうと,当該販売価格表には,「NECグループ外秘」(乙7の1,乙11の3)の記載があり,NECグループ外への開示は禁止されているものと思われる。そうすると,そのような開示禁止の書類について,展示又は頒布がされたとは到底考えられない。
(2)口頭審理陳述要領書における主張
NEC販売店サイト(乙11)を閲覧するにあたっては,予めユーザーID登録を行い,ユーザーIDを取得する必要があり,そのユーザーIDとパスワードを入力して,初めて当該サイトに入り,閲覧することができるものである。
(3)したがって,被請求人は,当該販売価格表が展示もしくは配布又は電磁的方法により提供された事実を立証したとはいえず,当該販売価格表の存在のみをもって商標法第2条第3項第8号所定の使用行為があったと認めることはできない。
4 商品の譲渡又は引き渡しに係る使用について
(1)口頭審理陳述要領書における主張
「出荷明細」,「受注通知書」,「物品受領書」(乙13,乙14)に記載されているのは,「APEX2000 50P JUMP TERM」であり,これらの文字列は,「APEX2000 50P JUMP TERM」の全体でひとつの品番を表しており,「APEX」の文字以外の文字や数字が捨象されたうえで,取引されているわけではない。
したがって,これらの書証に記載されている「APEX2000 50P JUMP TERM」は,本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
5 使用商品について
(1)弁駁書における主張
商標権者がNECに本件商標の使用を許諾している商品は,商標使用許諾契約書(乙1)の第1条に記載されているとおり,「自動交換機,手動交換機,中継交換機,電話機」である。
平成25年11月25日付けNECによるニュースリリース(乙5)で示されている「コミュニケーションサーバ」が「電話機械器具」であることを示す証拠は何ら提出されていない。
「販売価格表」の49ページ(乙7の2)で示されている表中の「APEX2000 50P JUMP TERM」について,その「略号/品名補足」をみると,「50対ローカル端子板」と記載されているところ,「端子」は,類似群コード11A01の範ちゅうに属する商品と考えられる。
そうすると,「APEX2000 50P JUMP TERM」が「電気通信機械器具」(11B01)の範ちゅうに属する商品といえるかは甚だ疑わしいといわざるを得ない。
このような観点からすると,仮に,「APEX2000 50P JUMP TERM」から「APEX」の文字以外の文字及び数字が捨象され「APEX」のみが認識されるとしても,当該「APEX」が使用されている商品は,類似群コード11A01の範ちゅうに属する商品であり,電気通信機械器具(類似群コード11B01)の範ちゅうに属する「電話機械器具の部品又は附属品」には使用されていないことになる。
さらには,当該「APEX」が使用されている商品は,商標使用許諾契約書(乙1)第1条において,NECが使用を許諾されている「自動交換機,手動交換機,中継交換機,電話機」のいずれにも該当しないことになり,本件商標が電気通信機械器具(11B01)の範ちゅうに属する商品について使用されている事実は何ら立証されていないことになる。
(2)口頭審理陳述要領書における主張
電気通信事業法によるところの「電子交換機」の定義と商標法上の「電気通信機械器具」の定義が同一であるとは限らないのであって,「技術基準適合自己確認届出書」において「UNIVERGE SV9500」なる標章が付された商品を「電子交換機」として届け出たからといって,当該商品が商標法上の「電気信機械器具」の範ちゅうに属する商品であるということはできない。
「UNIVERGE SV9500」なる標章が付された商品は,NECによるニュースリリース(乙5)で示されるとおり,「コンピュータサーバ」の範ちゅうに属する「コミュニケーションサーバ」である。
そして,「コミュニケーションサーバ」は,商標権者がNECに許諾した商品「自動交換機,手動交換機,中継交換機,電話機」に含まれておらず,本件商標の使用について,NECに許諾がされたものと認めることはできない。
この点,被請求人は,商標権者とNECとの商標使用許諾契約書(乙1)及び覚書(乙2)に関連する覚書(乙16)を提出しているところ,当該覚書には,商標権者の押印のみがなされており,NECの押印がなされていない。被請求人がこれまでに提出した商標権者とNECとの契約書の写しには,すべて商標権者とNEC双方の押印がなされていることからすると(乙1?乙4),当該覚書は,証拠としての信ぴょう性に乏しいといわざるを得ない。
また,口頭又は書面にかかわらず,契約は当事者の合意によって成立するものであるところ,契約当事者の一方の押印しかなされていない以上,当事者双方の合意があったとは認められず,商標使用許諾契約書(乙1)の使用許諾対象に「コンピュータおよびコンピュータプログラム」が追加されたとは認められない。
仮に,商標使用許諾契約書(乙1)の使用許諾対象に「コンピュータおよびコンピュータプログラム」が追加されているとしても,使用されている商品は,電子応用機械器具の範ちゅうに属する「コミュニケーションサーバ」であって,「電話機械器具の部品又は附属品」についての使用が証明されたことにはならない。
(3)上申書における主張
「NEC技報」(Vol.55 No.6/2002)(乙20)12ページ及び製品カタログ(乙23,乙24)によると,「APEX74001MS」,「APEX3000」なる標章が,要証期間に近い時期に,「サーバシステム」に使用されていたことがうかがえる。
つまり,「APEX2000」の後の「APEX3000」の時点で,既に「サーバシステム」に使用されていたのであり,要証期間前に「デジタル交換機」から「サーバシステム」に切り替えられていたことがわかる。
そして,「サーバシステム」は,「電子応用機械器具」(11C01)に属する商品なのであって,しかも,その部品又は附属品もllC0lの範ちゅうに属する商品であるから,「電話機械器具の部品又は附属品」に属する商品ではない。
過去に「APEX2000」が「デジタル交換機」に使用されていたとして,販売価格表の49ページ(乙7の2)に記載されている「APEX2000 50P JUMP TERM」が,過去に販売されていた「APEX2000」の部品であることを示す証拠が提出されていない以上,「APEX2000 50P JUMP TERM」が「デジタル交換機」の部品であるということはできない。
加えて,「50対ローカル端子板」,「50対ジャンパ端子板」が,「電話機械器具の部品又は附属品」に属する商品であるとの立証はされていない。
しかも,商品「UNIVERGE SV9500」の販売価格表(乙7)の当該「UNIVERGE SV9500」は,NECのプレスリリース(乙5)によれば,コンピュータサーバの範ちゅうである「コミュニケーションサーバ」である。
そして,「サーバ」は,その用途にかかわらず,「電子応用機械器具」(11C01)の範ちゅうに含まれるのであって,通信用のサーバであっても,「電子応用機械器具」(11C01)に属する商品である(甲3)。
してみれば,「APEX2000 50P JUMP TERM」は「電子応用機械器具」(11C01)に属する商品であって,「電話機械器具の部品又は附属品」に属する商品ではない。
また,「NEC販売店一覧」(乙12),NECのウェブサイトの「ホーム>製品>パソコン/ワークステーション/タブレット>ビジネスPC(法人向け)>ご相談窓口>販売店一覧」に掲載されている店舗一覧であり,「ビジネスPC」の販売店一覧と考えられるところ,これらの店舗が販売価格表(乙7の1)に記載されている「NEC販売店」であることの証拠は一切提出されていない。
それ以前に,これらの店舗が「ビジネスPC」の販売店であるならば,これらの店舗が販売しているのは「電子応用機械器具」(11C01)の範ちゅうに属する「コンピュータ」であり,その観点からも,「電話機械器具の部品又は附属品」についての使用には疑念があるといわざるを得ない。
6 要証期間の使用であるかについて
(1)上申書における主張
「NEC技報」(Vol.55 No.6/2002)(乙20)の12ページ及び13ページ(同号証の下部にあるページ数)によれば,「APEX2000」は,1987年に市場に投入されたが,1994年には,「APEX1000/3000」に切り替えられたとされており,「APEX2000」が要証期間の商品でないことは明らかである。
さらに,被請求人は,「APEX2400」等についても触れているが,同書証によれば,これらも要証期間の商品でないことは明らかである。
製品カタログ(乙21?乙24)に至っては,作成年月日が不明であり,要証期間外に「APEX○○○」が使用されていたことが推認できるのみである。
すなわち,これらの書証(乙20?乙24)は,要証期間外に「APEX○○○」なる標章が使用されていたことを示すのみであり,要証期間に本件商標が使用されていたことを示すものではない。
要証期間外に「APEX○○○」が使用されていたことを示す証拠しか提出されていないのは,要証期間には本件商標は使用されていないということを物語るに他ならない。
7 結論
以上の点を総合すると,被請求人の提出に係る乙各号証によっては,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標の使用をしていたことを証明していないといわざるを得ない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を,答弁書,口頭審理陳述要領書,平成30年10月31日付け及び同31年2月1日付け上申書において要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 通常使用権者について
商標権者は,昭和56年10月6日,NECとの間で,「自動交換機,手動交換機,中継交換機,電話機」について,同年3月31日開始の商標使用許諾契約を締結した(乙1)。
昭和56年3月31日の日付は,本件商標の登録原簿の丙区1番の原因日と同一である(甲1)。
当該契約は,その後,覚書(乙2?乙4)によって契約期間等を変更することにより,現在有効に存続している。
さらに,当該契約に係る平成11年6月11日付けの覚書(乙16,乙19)によって,原契約第1条に規定する使用許諾対象に「コンピュータおよびコンピュータ用プログラム」を追加した。
したがって,商標権者がNECに許諾した商品は,「自動交換機,手動交換機,中継交換機,電話機」に加え,「コンピュータおよびコンピュータ用プログラム」(以下,これらの商品をまとめて「許諾商品」ということがある。)である。
2 本件商標の使用について
(1)「販売価格表」における使用について
ア NECは,平成25年(2013年)11月5日に,コミュニケーションサーバ「UNIVERGE SV9500」及び「UNIVERGE SV9300」の販売を開始した(乙5)。
イ 「UNIVERGE SV9500」に関する,2017年(平成29年)10月25日付けの「販売価格表」(乙7)は,NECイントラネット加入会社,NECの販売店等(乙12)に展示し又は頒布若しくは電磁的方法により提供されたものである(乙11)。
当該販売価格表の表紙には,「UNIVERGE SV9500モデル140」に関しては,「19T2」の「機種コード」が,また「UNIVERGE SV9500 モデル160」に関しては,「19U3」の「機種コード」が記載されている(乙7の1)。
また,「販売価格表」49ページには,「大項目」が「MDF関係」であって,「中項目」が「その他MDF用品」である商品群中の,番号「392」には,「機種コード」として「19T2」及び「19U3」,「品目コード」として「BE000878」,「品名」として「APEX2000 50P JUMP TERM」,「略号/品名補足」として「APEX2000 50対ローカル端子板」の記載がある(乙7の2)。
当該「大項目」の「MDF関係」及び「中項目」の「その他MDF用品」における「MDF」というのは,「電話設備のひとつ,Main Distributing Frame」の略で,日本語では通常「主配線盤」と称されているものであり(乙8),この「主配電盤」は,電話局や集合住宅・オフィスビル等に設置される通信線路の集線盤である(乙9)。
そして,「主配電盤用品」すなわち「主配電盤の部品又は附属品」である「50対ローカル端子板」の識別標識として「APEX2000」が使用されている。
ウ 「50対ローカル端子板」に関する「APEX2000 50P JUMP TERM」の表示中,「50P」は,「50対のペア線(通信線)」を意味するものであり,当該表示自体,識別力がない。
そして,「JUMP」及び「TERM」について,「JUMP」は,「ジャンパ線」,「TERM」は「端子」(terminal)に由来する,と考えられる。
また,「電話局・ビル・マンションなどに設置される通信ケーブルの集線盤内の盤内配線変更時に利用される端子板のこと」を「ジャンパ端子板」といい,「JUMP」がこれに由来する。
したがって,「APEX2000」の表示は,他から独立して識別力を発揮するものである。
そして,この識別標識たる「APEX2000」中,数字「2000」部分は,商品の品番(乙20,乙23?乙25)として取引上広く使用されているものであり,残余の「APEX」が独立して自他商品識別標識として機能するものである。
したがって,販売価格表の49ページ(乙7の2)における「APEX」は,登録商標と同一と認められるものである。
エ 実際の商品の「外装箱」の写真(乙10の1,乙15)のラベルには,「B-CODE:BE00878」の文字が,また「2018/02」の下部には「APEX2000 50P JUMP TERM」の文字が表されており,この「B-CODE」である「BE00878」,及び,「APEX2000 50P JUMP TERM」の文字は,販売価格表(乙7の2)の番号「392」の「品目コード」及び「品名」と同一である。
したがって,商品の「外装箱」の写真(乙10の1,乙15)は,販売価格表(乙7の2)の「50対ローカル端子板」の商品の「外装箱」であり,写真(乙10の2,乙15)は,その「外装箱」内に梱包される「製品梱包箱」及び「製品」の写真である。
オ 上記のとおり,販売価格表の49ページ(乙7の2)に表された「APEX」の欧文字は,本件商標と同一と認められるものであり,要証期間に,NECが,取消請求に係る指定商品中,「電話機械器具の部品又は附属品」に関する販売価格表に「APEX」の文字を付して展示し又は頒布若しくは電磁的方法により提供していた事実があるから,かかる行為は,商標法第2条第3項第8号に該当する。
(2)商品の譲渡又は引き渡しに係る使用について
ア 「出荷明細」(乙13の1,乙25の1)には,「No.65」として,「NEC受注番号」が「X92-04779」,「受注項番」が「800」,「品目コード」が「BE000878」,「品名」が「APEX2000 50P JUMP TERM」,「出荷数」が「12」,出荷日が「2018/1/10 0:00」,「出荷年月」が「Jan-18」とある。なお,「最終ユーザ名」はAである。
「受注通知書」(乙13の2,乙25の2)の右上の欄には,「X9204779」とあり,下方オレンジの線で囲った欄には,「品目」が「BE000878」,「品名」が「APEX2000 50P JUMP TE」とあり,「受注数量」が「12」,「納入」が「2018/01/10」とある。
さらに,「物品受領書」(乙14の1・2,乙26の1・2)には,右上部「受注番号」の欄に「X92-04779」の記載があり,「搬入指定日時」の欄には「18.01.10(水)」とあり,「品名」の2つめ又は3つめの欄に「APEX2000 50P JUMP TERM」が記載されており,下方の「受領」欄には,「1/10」及び署名がなされている。
イ これらの取引書類(乙13,乙14,乙25,乙26)及び販売価格表(乙7の2,乙11の2)により,「品名」が「APEX2000 50P JUMP TERM」である商品「50対ローカル端子板」ないし「50対ジャンパ端子板」が,要証期間である2018年(平成30年)1月10日に譲渡され又は引き渡しされていることがわかる。
ウ 実際の商品の包装箱(乙10の1,乙15)には,「B-CODE」が「BE000878」とあり,中段には「APEX2000 50P JUMP TERM」と表示されていることから,その品名及び品番コードで特定される商品「50対ローカル端子板」の包装箱に「APEX2000 50P JUMP TERM」の文字が表示されており,商品写真(乙10,乙15)には,ペア線(通信線)が50個で対になっている形状が認識できる。
エ したがって,これらの事実を総合して勘案すれば,NECが商品「50対ローカル端子板」ないし「50対ジャンパ端子板」の包装に本件商標を付したものを要証期間に譲渡し又は引き渡している事実は容易に推認できるものであり,この行為は商標法第2条第3項第2号に該当する。
3 使用商品について
(1)NECの関連会社であるNECプラットフォームズ株式会社は,平成27年4月20日に,総務大臣に対し,「技術基準適合自己確認届出書」を提出しているが,その技術基準適合自己確認に係る設計に基づく特定端末機器の名称の一つとして,「UNIVERGE SV9500」を,「電子交換機」として届け出ている(乙17)。
そして,平成27年5月8日に,「技術基準適合自己確認に係る届出番号について(通知)」と題された書面が総務大臣からNECプラットフォームズ株式会社に通知されている(乙18)。
この「電子交換機」というのは,電話交換を目的としているのであるから,「電子式電話交換機」のことであり,商標権者及びNECとの契約の内容からすれば,許諾商品である「自動交換機,手動交換機,中継交換機,電話機」に包含されると解されるものである。
(2)実際の製品写真の外装箱全体(開封状態)の写真(乙15)の内装箱中,「品名」の欄に「APEX2000 50対ジャンパ端子板」の表示がある。
また,その外装箱のラベルを拡大した写真の上部には,「B-CODE」として「BE000878」の表示があり,これは,「UNIVERGE SV9500」に関する販売価格表(乙7の2)の「品名コード」と同一のものであり,当該外装箱のラベル中央及びラベル左下方の「APEX2000 50P JUMP TERM」の表示は当該販売価格表の「略号/品名補足」の「APEX2000 50対ローカル端子板」,及び「説明」の「50対ジャンパ端子板」を指称するものである。
(3)したがって,「APEX2000」は,NECの製造,販売に係る「50対ローカル端子板」ないし「50対ジャンパ端子板」について使用されており,当該「50対ローカル端子板」ないし「50対ジャンパ端子板」は,「電話機械器具の部品又は附属品」に含まれる「電子式電話交換機の部品又は付属品」である。
4 結論
以上のとおり,本件商標と社会通念上同一と認められる商標が要証期間にNECによって「電話機械器具の部品又は附属品」に含まれる「電子式電話交換機の部品又は付属品」について使用されている。
また,本商品が「コミュニケーションサーバ」の部品又は付属品であるとしても,許諾商品に「コンピュータおよびコンピュータ用プログラム」が含まれているので,許諾商品について使用されている。

第4 当審の判断
1 当事者が提出した証拠及び当事者の主張並びに職権調査によれば,以下の事実が認められる
(1)本権商標権者及びNECについて
ア 本件商標権者は,NECに対し,昭和56年10月6日付けで,同年3月31日から10年間,本件商標を自動交換機,手動交換機,電話機に使用する旨の商標使用許諾契約を締結した(乙1)。
イ その後,当該契約は,平成3年8月29日付け,同13年7月23日付け,同23年1月19日付けの覚書により,それぞれ10年ずつ延長されている(乙2?乙4)
ウ 本件商標の商標登録原簿には,丙区1番に【通常使用権の設定】とあり,受付年月日として,昭和56年11月17日,原因として,同年3月31日許諾,通常使用権者として日本電気株式会社,1.範囲 内容として,自動交換機,手動交換機,中央交換機,電話機 とある。なお,当該通常使用権に係る終期の記載はない(甲1,職権調査)。
エ また,当該契約は,平成11年6月11日付けの覚書により,使用許諾対象に「コンピュータおよびコンピュータ用プロクラム」が追加された(乙19)。
(2)使用商標及び使用商品について
ア 商品及び商品の2つの包装箱の写真(乙10,乙15)には,商品として上下に50ずつの対になったスリットのある機器(以下「使用商品」ということがある。)が示されている。
そして,使用商品の包装箱(外箱)には,「B-CODE:BE000878」の文字,「APEX2000 50P JUMP TERM」の商標(以下「使用商標」ということがある。)が表示され,包装箱(内箱)には「品名」として「APEX2000 50対ジャンパ端子板」の表示がある。
イ 「発行:2017年10月25日」の「UNIVERGE SV9500(V5)販売価格表」49ページ(乙7の1)には,「UNIVERGE SV9500 テレフォニーモデル M140/M160(V5) 価格表」の表題の下,「大項目」として「MDF関連」,「中項目」として「その他のMDF用品」の欄に「品名コード」として「BE000878」,「品名」として「APEX2000 50P JUMP TERM」の文字が表示され,「略号/品名補足」として「APEX2000 50対ローカル端子板」及び「説明」として「50対ジャンパ端子板」と表示されているところ,上記「品名コード」と包装箱(外箱)の「B-CODE」の文字が同一であり,「商品名」と使用商標が同一の文字からなるから,当該販売価格表に掲載されている「APEX2000 50P JUMP TERM」旨の商品は,使用商品であると認められる。
ウ そして,当該販売価格表の49ページ(乙7の1)に表示されている「MDF」の文字が,「電話設備のひとつである『主配電盤』」の意味を有する文字であるから(乙8),「その他のMDF商品」として表示されている使用商品は,「UNIVERGE SV9500 テレフォニーモデル M140/M160(V5)」旨の商品の「主配電盤」の関係商品である「50対ローカル端子板」及び「50対ジャンパ端子板」であると認められる。
エ なお「UNIVERGE SV9500」は,「UCサーバモデル」と「テレフォニーモデル」の型式(乙5)並びに「モデル140」及び「モデル160」の型式(乙7の1)が存在するから,「UNIVERGE SV9500 テレフォニーモデル M140/M160(V5)」旨の商品は,「UNIVERGE SV9500」の型式の一種類と認められる。
オ ところで,NECプラットフォームズ株式会社は,平成27年4月20日付けの総務大臣あての「技術基準適合自己確認届出書」(乙17)において「UNIVERGE SV9500」旨の機器が「電話交換を目的とした蓄積プログラム方式電子交換機」であることの技術基準適合自己確認を届け出た。
そして,平成27年5月8日付けの総務大臣よりNECプラットフォームズ株式会社にあてた「技術基準適合自己確認に係る届出番号について(通知)」(乙18)によって,当該「UNIVERGE SV9500」の上記届け出に係る届出番号が通知された。
したがって,「UNIVERGE SV9500」は「電話交換を目的とした蓄積プログラム方式電子交換機」であると認められる。
(3)使用商品の取引の状況について
ア 被請求人が,NECが使用商品の取引を行った証拠として提出している,「出荷明細」(乙25の1)の「NEC受注番号」,「受注通知書」(乙25の2)の「外部受付番号」及び「物品受領書」(乙26の1・2)の「受注番号」にある欧文字及び数字は全て同一である。
イ そうすると,NECは,Aより2017年(平成29年)12月28日付けで,商品コード「BE000878」,商品名「APEX2000 50P JUNP TERM」旨の商品を合計で14個受注し(乙25の2),当該商品は,2018年(平成30年)1月10日にAあてに出荷された(乙25の1)。そして2018年(平成30年)1月9日付けのNECよりAあての「物品受領書(B)」(乙26の1・2)の「上記物品を受領しました」の欄には,Aの社員とおぼしきBが1/10の数字を記し,署名していることから,Aは同月10日(出荷日と同日)に当該商品を受領したことが認められる。
ウ そして,当該取引における商品コードは,使用商品の「B-CODE」及び使用商標と同一のものであり,商品名は使用商標と同一の文字からなるから,当該取引に係る商品は,使用商品であると認められる。
なお,「受注通知書」(乙25の2)の品名は「APEX2000 50P JUNP TE」であるが,当該文字は使用商標の末尾の「RM」を除いた全ての文字であって,受注番号及び商品コードが同一であることから上記「APEX2000 50P JUNP TE」の商品は,使用商品であるとみて差し支えない。
2 判断
被請求人は,通常使用権者が「電話機械器具の部品又は附属品」に含まれる「電子式電話交換機の部品又は付属品」の包装に本件商標を付したものを要証期間に譲渡し又は引き渡したとして,これをもって本件商標の使用をした旨主張するので,これについて検討する。
(1)通常使用権者について
本権商標権者とNECは上記1(1)のとおり,昭和56年3月31日から,本件商標を自動交換機,手動交換機,電話機に使用する旨の商標使用許諾契約を締結しており,当該契約は,覚書によって,現在においても継続されているものである。
そうすると,NECは要証期間において本件商標の自動交換機,手動交換機,電話機に係る通常使用権者と認められる。
(2)本件商標と使用商標の同一性について
ア 本件商標は,「APEX」の欧文字よりなるものである。
イ 使用商標は,商品の包装箱に付された「APEX2000 50P JUMP TERM」の文字及び数字であるところ,上記1(2)ウのとおり,使用商品は「50対ジャンパ端子板」である。
ところで,「50対」,「ジャンパ」及び「端子」は,英語でそれぞれ「50 PAIRS」,「JUMPER」及び「TERMINAL」である。
そうすると,使用商標の構成中,「50P」,「JUMP」及び「TERM」の文字は,上記の「50 PAIRS」,「JUMPER」及び「TERMINAL」のそれぞれの文字の語頭の3文字又は4文字と同一の文字であるから,それぞれ「50対」,「ジャンパ」及び「端子」を表す文字と認められ,これらの文字は使用商品の品質,用途を表示しているものである。
また,「2000」の数字は,商品の品番又は規格等を表示するための数字として取引上普通に採択,使用されているものである。
そうすると,使用商標の構成中「2000 50P JUMP TERM」の文字部分は自他識別力を欠くものといえるから,「APEX」の文字のみが出所識別標識としての機能を有する要部として認識,理解されるというのが相当である。
ウ 以上よりすると,本件商標と使用商標の要部は,同一の文字からなる商標といえる。
したがって,本件商標と商品に付されている使用商標とは,社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用商品について
ア 上記1(2)ウ及びエのとおり,使用商品は,「UNIVERGE SV9500」の型式の一である「UNIVERGE SV9500 テレフォニーモデル M140/M160(V5)」の「主配電盤」の関係商品である「50対ローカル端子板」及び「50対ジャンパ端子板」である。
イ そして,上記1(2)オのとおり「UNIVERGE SV9500」旨の商品は「電話交換を目的とした蓄積プログラム方式電子交換機」である。
ウ 以上よりすると,使用商品は,「電子式電話交換機の部品及び付属品」であるといえる。
そして,電子式電話交換機の部品及び付属品は,取消請求商品の範ちゅうの商品であり,かつ,許諾商品であると認められる。
(4)使用商品の使用期間について
上記1(3)のとおり,NECは,Aより2017年(平成29年)12月28日付けで使用商品を14個受注し,2018年(平成30年)1月10日にAに出荷され同日Aにより受領されており,これらの日付はいずれも要証期間である。
(5)小括
以上によれば,本件商標の通常使用権者は,要証期間に,取消請求商品の範ちゅうの商品であり,かつ,許諾商品に含まれる商品である「電子式電話交換機の部品」の包装箱に,本件商標と社会通念上同一の商標を付したものを譲渡し又は引き渡した行為を行ったものと認めることができる。
3 請求人の主張について
請求人は,当該「UNIVERGE SV9500」は,NECのプレスリリース(乙5)によれば,コンピュータサーバの範ちゅうである「コミュニケーションサーバ」であるところ,「サーバ」は,その用途にかかわらず,「電子応用機械器具」の範ちゅうに含まれるのであって,通信用のサーバであっても,「電子応用機械器具」に属する商品であるから(甲3),使用商品は「電子応用機械器具」に属する商品であって,「電話機械器具の部品又は附属品」に属する商品ではない旨,主張する。
しかしながら,上記2(3)のとおり,使用商品は「電子式電話交換機の部品」であるといえるから,「電話機械器具の部品又は附属品」の範ちゅうの商品であって,かつ許諾商品に含まれる。
仮に,「UNIVERGE SV9500」が「サーバ」であるとしても,「サーバ」はコンピュータの一であるから,使用商品はコンピュータの部品と認められ,取消請求商品の範ちゅうの商品であり,また,上記1(1)エのとおり,許諾商品には「コンピュータおよびコンピュータ用プログラム」も含まれるものであるから,許諾商品に含まれる。
したがって,請求人の主張は,採用できない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間に,本件商標の通常使用権者が,取消請求商品の範ちゅうの商品であり,かつ,許諾商品に含まれる商品である「電子式電話交換機の部品」の包装箱に,本件商標と社会通念上同一の商標を付したものを譲渡し又は引き渡した行為を行ったことを証明したと認め得る。
そして,本件商標の通常使用権者の上記使用行為は,商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回路を通じて提供する行為。」に該当するものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審理終結日 2020-05-13 
結審通知日 2020-05-18 
審決日 2020-06-10 
出願番号 商願昭49-129825 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 大森 友子
半田 正人
登録日 1981-03-31 
登録番号 商標登録第1456816号(T1456816) 
商標の称呼 アペックス、エイピイイイエックス 
代理人 古関 宏 
代理人 篠田 貴子 
代理人 渡辺 仁 
代理人 林 栄二 

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