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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W3233
管理番号 1368195 
審判番号 取消2018-300751 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-09-27 
確定日 2020-10-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5790016号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5790016号商標(以下「本件商標」という。)は,「大人かき氷」の文字を標準文字で表してなり,平成27年5月14日に登録出願,第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒,清涼飲料,アルコール分を含まないビール風味の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,麦芽または麦を使用したビール風味のアルコール飲料(ビール・ビール風味の麦芽発泡酒を除く。),中国酒,薬味酒」及び第43類「飲食物の提供,飲食物の提供に関する指導・助言及び情報の提供,インターネットによる飲食物のレシピに関する情報の提供,料理のレシピに関する助言」を指定商品及び指定役務として,同年8月20日に登録査定,同年9月4日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成30年10月11日である。
以下,本件審判の請求の登録前3年以内の期間(平成27年10月11日ないし同30年10月10日)を「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項により,本件商標をその指定商品中,第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒」及び第33類「全指定商品」についての商標登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒」及び第33類「全指定商品」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証より,アサヒビール株式会社(以下「アサヒビール」という。)及びニッカウヰスキー株式会社(以下「ニッカウヰスキー」という。)が請求人の子会社であることは認める。しかしながら,請求人とアサヒビール及びニッカウヰスキーとの間に本件商標について使用許諾があったと示す資料は何ら提出されておらず,これを認めることはできない。
(2)乙第2号証は,アサヒビールの製造販売に係る缶酎ハイ「アサヒハイリキザ・スペシャル」の期間限定商品「ブルーハワイサワー」のニュースリリース(2016年6月21日)の写しであり,この中で「アレンジレシピ『大人のかき氷』をご提案」,「本商品を使った『大人のかき氷』のアレンジレシピを提案します」とある。
しかしながら,当該「大人のかき氷」は商品表示ではなくレシピ名にすぎず,請求に係る指定商品「酎ハイ,洋酒(リキュール及びウィスキー)」の出所表示としての商標の使用と認めることはできない。乙第2号証における「酎ハイ,洋酒(リキュール及びウィスキー)」の出所表示としての商標は,あくまでも「アサヒハイリキザ・スペシャル」である。仮に,「大人のかき氷」が商品表示とすれば,商品は「かき氷」であるとするのが相当である。
(3)乙第3号証は,アサヒビールのウェブサイト内の「大人のひんやり,はじめました」のページの写しであり,この中で「爽やかさがたまらない大人かき氷♪」,「大人かき氷みかん味♪」,「サングリアの大人かき氷」とあるが,当該ページの印刷日が2018年10月25日とあるのみであり,要証期間内の使用としてこれを認めることはできない。
(4)乙第4号証は,ニッカウヰスキーのウェブサイト内の「ワンショットコラム」の写しであり,「No.28 ウィスキーやリキュールで『大人かき氷』」,「『大人かき氷』で夏を涼やかにお過ごしください。」とあるが,当該ページの印刷日が2018年11月22日とあるのみであり,要証期間内の使用としてこれを認めることはできない。
(5)乙第5号証は,アサヒビールが行なっている営業活動資料の写しであり,この資料において「Otona Kakigori-『大人かき氷』のご提案-」等,「大人かき氷」の文字が複数見られる。請求人は,この資料は「料飲店への営業活動資料」と主張するが,配布先,配布時期,配布部数などが明らかではないため,要証期間内の使用としてこれを認めることはできない。
(6)乙第6号証は,アサヒビールによる「ツイッター」の写しであり,この中の2016年8月3日,2017年1月16日,及び2016年7月25日の投稿に「大人かき氷」の文字が見られる。
しかしながら,当該「大人のかき氷」は商品表示ではなくレシピ名にすぎず,請求に係る指定商品「酎ハイ,洋酒(リキュール及びウィスキー)」の出所表示としての商標の使用と認めることはできない。乙第6号証における「酎ハイ,洋酒(リキュール及びウィスキー)」の出所表示としての商標は,あくまでも「ボルスクレームドカシス」,「カルピスサワー」,「ハイリキザ・スペシャル」である。仮に,「大人のかき氷」が商品表示とすれば,商品は「かき氷」であるとするのが相当である。
したがって,被請求人が主張する本件商標の指定商品中,第33類「酎ハイ,洋酒(リキュール及びウィスキー)」における本件商標の使用はなく,被請求人の主張は,その正当な理由がない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 被請求人は,ビール,発泡酒,焼酎,酎ハイ,洋酒,ワインなどのアルコール飲料の製造販売をするアサヒビールなどを子会社としてもつ持株会社であり,グループ全体の経営戦略の策定,推進,経理管理などを行っている(乙1)。
本件商標「大人かき氷」は,アサヒビールが,酎ハイやリキュールの販売促進のための商標として,継続して使用しているものである。以下に,具体的な使用態様を資料と共に説明する。
(1)乙第2号証として,アサヒビールの製造販売に係る缶酎ハイ「アサヒハイリキザ・スペシャル」の期間限定商品「ブルーハワイサワー」のニュースリリース(2016年6月21日)のコピーを提出する。
ここで,本件商標「大人かき氷」を使用している。具体的には,本商品を使ったアレンジレシピの名称として「大人かき氷」を使用している。このレシピ名称「大人かき氷」は,アサヒビールが同社製品の販売促進のために使用するものであるので,単なるレシピ名称としてではなく,アサヒビールの製品であることを示す商標としても機能している。
(2)乙第3号証として,アサヒビールのウェブサイト内の「大人のひんやり,はじめました」というコーナーのコピーを提出する。このコーナーは,自宅でアルコール飲料を飲む際におすすめのつまみやレシピを紹介する「宅飲みで乾杯!」というコーナー内に置かれているものである。
アサヒビールの製造販売に係るリキュール「ボルスブルー」(爽やかブルーかき氷),酎ハイ「果実の瞬間 贅沢みかんテイスト」(みかんかき氷),梅酒「濃醇梅酒」(梅酒かき氷),サングリア「ヴィニャ・アルバリ・サングリア」(サングリアかき氷)のように,かき氷にリキュールなどのアルコ?ル飲料をかけるレシピの名称として登録商標「大人かき氷」を本審判請求前から継続して使用している。
(3)乙第4号証として,ニッカウヰスキーのウェブサイト内「ワンショットコラムNo.28ウイスキーやリキュールで「大人かき氷」。」というコーナーのコピーを提出する。このコーナーは,ウイスキーの楽しみ方を伝えるコラムを掲載している。
アサヒビールの販売するウイスキー「ジャックダニエルテネシーハニー」「アーリータイムズ ブラインドアーチャー」,リキュール「ボルス」(「ボルスストロベリー」「ボルスメロン」「ボルスブルー」)をかき氷にかけるレシピの名称として登録商標「大人かき氷」を審判請求前から継続して使用している。
(4)乙第5号証として,アサヒビールが行っている料飲店への営業活動資料「Otona Kakigori-『大人かき氷』のご提案-」を提出する。これは,アサヒビールの製造販売に係るリキュール「ボルス」又は「フォション ティーリキュール」をかき氷にかけるメニューの提案及びレシピの説明であり,登録商標「大人かき氷」を使用している。
具体的には,「Otona Kakigori」,「『大人かき氷』のご提案」,「スタンダード『大人かき氷』」,「プレミアム『大人かき氷』」のような態様で審判請求前から継続して登録商標を使用している。
(5)乙第6号証として,SNS「ツイッター」を利用した販売促進活動のプリントアウトを提出する。この中に,2016年8月3日,2017年1月16日,2016年7月25日,2016年8月18日のアサヒビールの投稿がある。これは,ツイッター上でアサヒビールの製造販売に係るリキュールや酎ハイをかき氷にかけるメニュー及びレシピが広まることにより,同リキュールや酎ハイの販売促進を図る活動であり,登録商標「大人かき氷」を使用している。
具体的には,アサヒビールからツイッター上で「#大人かき氷」を付した「大人かき氷」のメニューやレシピを紹介する投稿をすることにより,検索及び共有されやすくなり,「大人かき氷」の拡散が促進される。また,アサヒビールにとっては,ツイッターユーザーの投稿を収集してマーケティングに利用できるというメリットもある。
SNS上での「#」(ハッシュタグ)記号は,キーワードの先頭に付することにより投稿がタグ化され,同じキーワードでの投稿を瞬時に検索することができ,趣味・関心の似たユーザー同士で話題を共有することを可能とする。つまり,ツイッター上で,ユーザーが「#大人かき氷」で検索すると,「大人かき氷」についての投稿を直ぐに閲覧できるという訳である。
ここで,SNS上で,「#大人かき氷」のように「#」(ハッシュタグ)にキーワードとして商標を付けて投稿する行為は,検索などの便宜のためのものであって,一義的には商標的使用には当たらないとも考えられる。しかし,「インターネットにおいて,個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号,記号又は文字の組み合わせに対応する文字,番号,記号その他の符号又はこれらの結合」である「ドメイン名」(不正競争防止法2条9項)(平成16年4月20日大阪地裁平成14年(ワ)第13569号)や,プログラム上で自分の思い通りのキーワードを拾わせるためのタグである「メタタグ」についても,商標としての使用が認められている(平成17年12月8日 大阪地裁平成16年(ワ)第12032号)ように,インターネット上で識別機能を発揮し,顧客に訴求し,顧客を誘引するような標章の使用は商標としての使用に該当すると考えるべきである。「#」(ハッシュタグ)についても,アサヒビールが「#大人かき氷」を含む投稿をすることにより,「#大人かき氷」が拡散し,「#大人かき氷」での検索や投稿が増えることになり,「大人かき氷」が商標として使用されていると考えるべきである。
2 以上のように,本件商標「大人かき氷」は,アサヒビールの製造販売に係る「酎ハイ,リキュール」の販売促進のための商標として,継続して使用されている。
したがって,本件商標が,要証期間内に日本国内において,指定商品中,第33類「酎ハイ,洋酒(リキュール及びウイスキー)」について使用されていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は,酒類事業や飲料事業,食品事業,国際事業を展開し,アサヒビール,ニッカウヰスキーなどを子会社にもつ持株会社であって,グループ全体の経営戦略の策定,経理管理などを行っており,その子会社のアサヒビールは,酒類事業を行っている(乙1)。
(2)アサヒビールは,2016年6月21日付け自社のニュースリリースにおいて,商品「缶酎ハイ」の販売に係る広告を掲載し,当該広告においては,「『アサヒハイリキザ・スペシャル期間限定ブルーハワイサワー』?パッケージデザインで,アレンジレシピ『大人かき氷』をご提案?」の見出しの下,缶酎ハイの表面と裏面の写真を掲載するとともに,当該裏面の写真に「hiliki/TheSpecial/STRONG/ハイリキザ・スペシャル/ブルーハワイサワー8%/アルコール分」の文字,アサヒビールのロゴマーク,「チューハイ」の文字とかき氷の絵の右横に,赤色の突起状の図形内に「大人」と「かき氷」の文字を2段に白抜きで表示した(以下「本件使用商標」という。)。そして,当該商品の発売日は,2016年7月12日(火)である(乙2)。
2 上記1の認定事実によれば,以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
アサヒビールは,酒類事業を行いグループ全体の経営戦略の策定などを行う本件商標権者の子会社であるから,通常使用権の許諾契約がなくても,アサヒビールは本件商標権者から本件商標について黙示の使用許諾を受けているものと推認することができる。
したがって,アサヒビールは,本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)使用時期及び使用行為について
アサヒビールは,自社の2016年6月21日付けニュースリリースにおいて,「ハイリキザ・スペシャル」,「大人かき氷」等の文字が包装容器に付された缶酎ハイを同年7月12日から発売すると公表していることを踏まえると,2016年(平成28年)6月21日の公表後,遅くとも同年7月12日までには,本件商標を包装に付した商品「缶酎ハイ」が製造されていたことを容易に推認することができる。
そうすると,本件使用商標は,遅くとも2016年(平成28年)7月12日より前に商品「酎ハイ」に付されていたとみることができるものであって,その付する行為はアサヒビールが行ったものとみて差し支えないものといえる。
そして,当該2016年(平成28年)6月21日ないし同年7月12日の期間は,要証期間内といえる。
(3)使用商品について
通常使用権者であるアサヒビールは,商品「酎ハイ」の包装に本件使用商標を付したものであるところ,当該商品は,本件の審判の請求に係る商品に含まれるものである。
(4)本件商標と本件使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は,上記第1のとおり,「大人かき氷」の文字を表してなるところ,当該構成文字からは,「オトナカキゴオリ」の称呼を生じ,「大人向けのかき氷」ほどの観念を生じるものである。
他方,本件使用商標は,赤色の突起状の図形内に「大人」と「かき氷」の文字を2段に表してなるところ,これらの文字は,本件商標を構成する文字と同一の文字からなるものであり,これより生じる称呼及び観念も本件商標と同一といえるものであるから,本件商標と本件使用商標とは社会通念上同一の商標と認められる。
(5)小括
以上によれば,通常使用権者であるアサヒビールは,要証期間内である2016年(平成28年)6月21日ないし同年7月12日に,本件審判の請求に係る商品「酎ハイ」の包装に,本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用商標を付したものと認められる。
そして,通常使用権者による上記行為は,商標法第2条第3項第1号にいう「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は,ニュースリリース(乙2)における「酎ハイ,洋酒(リキュール及びウィスキー)」の出所表示としての商標は,「アサヒハイリキザ・スペシャル」であって,「大人のかき氷」は商品表示ではなく出所表示としての商標の使用とは認められない旨主張する。
しかしながら,商品又はその包装には複数の商標を付すことは一般的に行われているうえに,その中で,自他商品の識別標識としての機能を有し,出所表示機能を果たす商標は,必ずしも1つであるとは限らないことから,「ハイリキザ・スペシャル」(hiliki TheSpecial)の文字のほか,突起状の図形内に表示されて商標登録されている「大人かき氷」の文字も,商品の出所表示機能を果たすものであって,本件商標の使用にあたることは,上記2(5)のとおりである。
したがって,請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,本件商標の通常使用権者が,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「酎ハイ」について,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したというべきである。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により取り消すべきでではない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-04-27 
結審通知日 2020-05-20 
審決日 2020-06-02 
出願番号 商願2015-45336(T2015-45336) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (W3233)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蛭川 一治 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 平澤 芳行
大森 友子
登録日 2015-09-04 
登録番号 商標登録第5790016号(T5790016) 
商標の称呼 オトナカキゴーリ 
代理人 土生 真之 
代理人 きさらぎ国際特許業務法人 
代理人 中村 仁 

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