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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W182535
審判 全部申立て  登録を維持 W182535
審判 全部申立て  登録を維持 W182535
審判 全部申立て  登録を維持 W182535
審判 全部申立て  登録を維持 W182535
管理番号 1367181 
異議申立番号 異議2019-900094 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-22 
確定日 2020-08-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6108299号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6108299号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6108299号商標(以下「本件商標」という。)は、「CHOO SAINT」の欧文字を横書きしてなり、平成30年3月30日に登録出願、第18類、第25類及び第35類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年12月6日に登録査定され、同月21日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第1257825号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:CHOO
指定商品及び指定役務:第18類、第25類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務
国際商標登録出願日:2014年(平成26年)12月18日
設定登録日:平成28年11月4日
(2)登録第4442564号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:JIMMY CHOO(標準文字)
指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:平成12年5月12日
優先権主張:オーストラリア連邦 2000年(平成12年)2月21日
設定登録日:平成12年12月22日
(3)登録第4712674号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:JIMMY CHOO(標準文字)
指定商品:第18類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:平成14年3月29日
設定登録日:平成15年9月26日
(4)登録第5198961号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:JIMMY CHOO
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日:平成19年4月2日
設定登録日:平成21年1月23日
(5)国際登録第1113339号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:JIMMY CHOO
指定商品:第9類、第14類、第16類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日:2011年(平成23年)12月14日
設定登録日:平成25年6月14日
(6)国際登録第1202433号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:JIMMY CHOO
指定商品:第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日(事後指定):2015年(平成27年)1月23日
設定登録日:平成28年7月8日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第98号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、「CHOO SAINT」の文字を普通に用いられる書体をもって左横書きしてなるところ、「CHOO」部分と「SAINT」部分とは、間にスペースを挟むことから、視覚上分離して看取され易いものである。
そして、本件商標中の「CHOO」の文字は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして極めて高い著名性を有している引用商標1と同一の文字構成である一方で、「SAINT」の文字は、「聖人、聖徒、聖者」の意味を有する平易な英単語として広く一般的に使用されている単語であるから、「SAINT」の文字部分の出所識別標識としての機能は、「CHOO」の文字部分のそれと比べて低いといわざるを得ない。
したがって、総合的に勘案すれば、本件商標の構成においては、「CHOO」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるといえ、本件商標の要部であるといえる。
よって、本件商標からは、「チュウセイント」の他に、「チュウ」の称呼が生ずる。また、「CHOO」の文字は、本件商標に係る指定商品・役務の取引者、需要者に申立人のファッションブランド「JIMMY CHOO」の略称として一般的に認識されているものであるから、「CHOO」の文字から、申立人のファッションブランド「JIMMY CHOO」の観念が生ずる。
イ 他方、引用商標1は、「CHOO」の欧文字を横書きした構成からなるところ、その構成文字に相応して「チュウ」の称呼が生じ、申立人のファッションブランド「JIMMY CHOO」の観念が生ずる。
ウ また、本件商標は、「需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、原則としてその他人の登録商標と類似する。」旨の特許庁の商標審査基準に沿って考えると、履物等について需要者の間に広く認識されている登録商標「CHOO」(引用商標1)と他の文字を結合して構成するものであるため、商標法第4条第1項第11号に該当すると考えるべきである。
以上より、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念を共通にするため、互いに類似する。
そして、本件商標の指定商品・役務は、引用商標1の指定商品・役務と同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人ブランドの著名性
(ア)申立人のブランド「JIMMY CHOO」(以下「申立人ブランド」という。)は、平成8年(1996年)に設立され、エレガントなデザインと、抜群のフィット感や歩きやすさを兼ね備えたピンヒールが登場してからは、瞬く間に世界中のセレブリティ達がその虜となった。愛用者には、ミシェル・オバマ夫人、アンジェリーナ・ジョリー、ニコール・キッドマン等、そうそうたる人物が名を連ね、英国王室のキャサリン妃がシャーロット王女を出産後、「JIMMY CHOO」のヒールを履いてメディアの前に現れたことも話題となった。
申立人は、PR戦略にも長けており、アカデミー賞授賞式において、何人もの女優が「JIMMY CHOO」の靴を履いてレッドカーペットを歩くというPR効果により、世界中で知名度が広がり、人気が爆発することとなった。さらに、映画「プラダを着た悪魔」やドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」にも申立人ブランドが登場し、その人気は不動のものとなった。
申立人ブランドにおける定番ラインとしては、「CHOO 24:7」「CHOO.08°」などが人気ラインとして定着していった。現在、「JIMMY CHOO」は、メンズラインも始め、バッグや財布、サングラスや化粧品・香水などのアクセサリーや小物類にも商品展開し、ラグジュアリーブランドとして進化し続けている。大英帝国勲章や数多くのファッション賞を受賞し、さらなる高みを目指す「JIMMY CHOO」は、今後もより一層、そのブランド力が世界中で強固になっていくことは容易に推測できる(甲10)。
(イ)上記のような沿革から、申立人ブランドが日本においても非常に認知度が高いことは想像に難くないが、我が国における申立人のブランド力をより明確に示すために、平成29年7月に防護標章登録され日本国周知・著名商標として認定されているほどの周知性を有しているファッションブランド「クリスチャン・ルブタン」(甲11)と、申立人ブランドとを多角的に比較する。なお、「クリスチャン・ルブタン」は、申立人ブランドと同時期にフランスで設立され、価格帯も同水準である。
まず、Googleトレンドにおける検索回数で、申立人ブランド「ジミー・チュウ」は、著名商標「クリスチャン・ルブタン」よりも過去10年において遙か上である(甲12)。
さらに、最高品質の靴ブランドが集結する伊勢丹新宿店の婦人靴売場における「売れ筋シューズを徹底調査vol.1」とのインターネット記事においては、いずれのブランドも人気アイテムであるとのコメントがなされており、その紹介のされ方からも、申立人ブランドが、著名商標「クリスチャン・ルブタン」のブランドと双璧を成している事実がうかがえる。このことからも、申立人ブランドが、著名商標「クリスチャン・ルブタン」と少なくとも同レベル程度の著名性を有していることが分かる(甲13)。
(ウ)申立人は、我が国において、平成18年に表参道ヒルズに直営店「JIMMY CHOO Omotesando」をオープンし(甲9)、また、申立人ブランドに係る商品は我が国のファッション誌に多数掲載されている(甲14?甲32)。
さらに、申立人は、平成28年7月には、TBS系ドラマ「せいせいするほど、愛してる」に特別協力をし、ドラマの中で、主人公が「ティファニー」の広報担当を演じる中、「ジミーチュウ」の広報担当が登場している。この事実は、我が国において申立人ブランドが、著名なファッションブランドであるティファニーと対峙してドラマに登場させるほどの知名度があることを物語っている(甲33)。
イ 引用商標の著名性
上述のように、申立人ブランドは、世界的に著名なファッションブランドであり、我が国においても著名の域に達していることは明らかである。
したがって、申立人ブランドの名称である引用商標2ないし引用商標6の「JIMMY CHOO」商標が、その指定商品又は指定役務について、申立人の出所を表すものとして取引者、需要者の間で周知・著名であることは明確な事実といえる。
それに加え、引用商標1についても、その指定商品又は指定役務について、申立人の出所を表すものとして取引者、需要者の間で周知・著名に至っているものである。
「JIMMY CHOO」の名称は、もともとは設立者の氏名に由来するものであるが、「CHOO」の文字は、ファミリーネームとしては珍しく、さらに「チュウ」の語調も印象的で可愛らしいものであることから、その取引者、需要者にも浸透しやすく、申立人自身も「CHOO」の文字をあしらったシリーズの商品展開を拡大し続けている。「CHOO」の文字は、その語調に加え、申立人の商品戦略から、申立人ブランドを示す略称として取引者・需要者の間で定着することとなった。我が国においても大ヒットしたアメリカのドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」でも、単に靴が脱げたシーンにおいて、「I LOST MY CHOO(私のCHOOが脱げたわ)」の台詞が出るほどであり(甲34、甲35)、また、個人ブログにおいて、その台詞を引用し、申立人ブランドに係る商品をカスタマイズできるサービスについて「my CHOO」と表現している(甲36)ことからも、「CHOO」の語のみで申立人ブランドであることが一般に認識されていることが分かる。
申立人は、我が国において、女性用ハイヒール靴を「CHOO 24:7」というコレクション名称で伊勢丹新宿店から平成22年2月に発売し、その後、「CHOO 24:7」シリーズがバッグコレクションにも登場し、それらのことがインターネット記事で紹介される(甲37?甲42)など、「CHOO 24:7」シリーズは、5年が経過した後も、絶大な人気を誇っており、我が国において定番ラインとして売れ続けている(甲42)。
また、申立人は、平成26年6月には、新シューズ・コンセプトとして、「CHOO.08°」シリーズのブーツ、スニーカーを発売している。このことは、インターネットや雑誌がこぞって紹介している(甲43?甲57)。
さらに、平成30年4月には、サンダルストラップやスニーカー、バッグなどに「I WANT CHOO」の文字を大胆にあしらった商品を発表し、同年10月には「CHOO」の文字の新しいロゴを発表し、これらの商品がインターネット記事や雑誌で多数紹介されている(甲58?甲69)。
他にも、同年12月に、申立人は、我が国において、オリジナルシューズやバッグを作ることができるパーソナライズサービス「CHOO×YOU」をスタートさせている(甲70)。
以上のことから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人ブランド(JIMMY CHOO)が世界的にも我が国においても周知・著名であることはもちろんのこと、申立人ブランドの略称として「CHOO」の文字も周知・著名の域に至っていることは、明確な事実といえる。
ウ 商標の類似性
本件商標は、「CHOO SAINT」の文字からなり、「チュウセイント」の他に「チュウ」の称呼が生じ、「申立人のファッションブランド『JIMMY CHOO』」の観念が生ずる。
引用商標1は、「CHOO」の文字からなり、「チュウ」の称呼を生じ、「申立人のファッションブランド『JIMMY CHOO』」の観念が生ずる。
本件商標は、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする。」旨の商標審査基準に当てはまるものであり、引用商標1の所有者である申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるものである。
また、引用商標2ないし引用商標6は、「JIMMY CHOO」の欧文字を横書きした構成からなるところ、その構成文字に相応して「ジミーチュウ」の称呼を生ずるだけでなく、上述したように「JIMMY CHOO」の文字は、申立人ブランドに係る商品戦略や「CHOO」の文字自体が元々有する語調語感により、「CHOO」のみの文字に相応して「チュウ」の称呼を生ずるものであり、「申立人のファッションブランド『JIMMY CHOO』」の観念を当然に生ずるものである。
以上を踏まえ、本件商標と引用商標を対比すれば、引用商標1は、本件商標の要部である「CHOO」と同一であり、本件商標と外観、称呼、観念の全てが同一である、互いに類似する商標である。
また、引用商標2ないし引用商標6は、その外観こそ「JIMMY」の文字を有する点で本件商標の要部と異なるが、その称呼、観念は、本件商標の称呼及び観念と同一である。
したがって、本件商標と引用商標2ないし引用商標6とは、互いの称呼及び観念が共通し、その共通性は互いの商標の外観の相違を凌駕するものといえ、類似する商標といわざるを得ない。
エ 商品及び役務の共通性
本件商標に係る指定商品・指定役務は、引用商標の指定商品・指定役務と互いに類似する。
したがって、本件商標に係る指定商品又は指定役務と引用商標に係る指定商品又は指定役務は共通するものである。
オ 小括
上記を総合すると、本件商標をその指定商品又は指定役務に使用するときには、これに接する取引者、需要者は、引用商標に係る指定商品又は指定役務を想起・連想し、あたかも申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
申立人は、世界各国において、長年にわたり、引用商標をその指定商品及び指定役務に使用し続けることで、引用商標について申立人の業務に係る信用及び名声を着実に化体させてきた。申立人のこうした企業努力により、申立人ブランドは世界的に周知・著名の域に至っており、そのため、申立人は、第三者によるフリーライド、ダイリューションといった不正の目的をもってなされる商標の登録及び使用を積極的に排除してきており、引用商標に化体した業務上の信用及び名声を今後も維持していく必要がある。
ア 引用商標が世界的に周知であること
上記(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務及びこれらの関連商品について使用する商標として、我が国の需要者の間において広く認識されていた。
また、引用商標は、申立人商品のカタログ、紹介記事、広告、海外における異議決定など(甲71?甲91)から、少なくともイギリスをはじめとする欧州各国及び米国の需要者の間において広く認識されていた。
イ 商標権者の不正の目的
商標権者は、中国において、女性用サンダルを主力商品として女性用ハイヒール靴、バッグ、スニーカー、その他アクセサリー等を取り扱う中国企業である(甲92)。
一方、申立人ブランドは、平成28年8月に、日本を除くアジアの収益は22%増の27.1百万ポンド、日本の収益は18%増の22.2百万ポンドとなった旨報道されるなど、2010年代以降、アジア圏のマーケットを着実に広げている(甲93?甲97)。
また、我が国での申立人ブランドの直営店を管轄する「Jimmy Choo Tokyo株式会社」の売上と広告宣伝費は、設立当初の平成18年には売上高が3億円、広告宣伝費が3,900万円であったが、平成30年には売上高が79.6億円、広告宣伝費が3億円にまで膨らんでいる(甲98)。
そうすると、商標権者は、引用商標の著名性を十分認識していたことは明らかであって、引用商標がいずれも造語であることを踏まえると、引用商標に類似する本件商標を採択し商標登録を得ることは、引用商標の有する信用又は名声に便乗して不正の利益を得る、又は、申立人に損害を加えるなどの不正の目的をもって本件商標を出願したと考えるのが自然である。
実際に、「CHOO」の語を含んだ本件商標が商標権者に使用される場合には、引用商標の信用や名声が毀損されることは明白である。
ウ 小括
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人ブランド「JIMMY CHOO」は、1996年(平成8年)に設立されたこと、著名人が申立人ブランドの靴(ピンヒール)を愛用していること、申立人は我が国において、平成18年に表参道ヒルズに直営店「JIMMY CHOO Omotesando」をオープンしたこと、平成22年に「CHOO 24:7」とのコレクション名で女性用ハイヒール靴の発売を開始したこと、平成26年に「CHOO.08°」との新シューズ・コンセプトでブーツ、スニーカーなどの発売を開始したこと、平成30年4月に「I WANT CHOO」の文字をあしらったサンダルなどの発売を開始したこと、同年10月に「CHOO」の文字(ロゴ)をあしらったバッグ、靴などの販売を開始したこと、及び、それらのことや申立人ブランドに係る商品が現在までインターネット記事や雑誌で多数紹介されていることなどを認めることができる(甲8?甲10、甲37、甲43、甲58、甲61)。
しかしながら、我が国及び英国など外国における申立人ブランドに係る商品の売上高などの販売実績を確認することができる証左は見いだせない。
イ 上記アによれば、申立人ブランドに係る商品は、我が国において、平成18年頃から販売されていると推認でき、雑誌やインターネット記事で多数紹介されていることから、需要者の間である程度知られているといい得るとしても、我が国における販売実績を裏付ける証左は見いだせないことから、我が国の需要者の間で広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると、申立人ブランドに係る商品に使用されている引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、申立人ブランドに係る商品の外国における販売実績を裏付ける証左も見いだせないことから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、英国など外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
ウ 申立人は、引用商標1は「CHOO 24:7」などのように使用されている、「CHOO」の文字のロゴが商品にあしらわれている、引用商標2ないし引用商標6は「CHOO」と略称されている、及びフランス産業財産庁や欧州連合知的財産庁で著名性が認められているなどとして、引用商標1は著名である旨主張している。
しかしながら、「CHOO」の文字が「CHOO 24:7」などのように使用され、「CHOO」の文字のロゴが商品にあしらわれていることは認められるものの、引用商標2ないし引用商標6が、一般に「CHOO」と略称されていると認め得る証左は見いだせず、また、申立人ブランドに係る商品の我が国及び外国における販売実績を裏付ける証左も見いだせないから、かかる主張は採用できない。
さらに、申立人は、「Jimmy Choo Tokyo株式会社」の売上高及び広告宣伝費の金額を述べ、証拠(甲98)を提出しているが、かかる証拠は、容易に作成できる書面であることに加え、当該号証に記載された金額の根拠となる証左も見いだせないことから、客観性を有するものとはいい難く、直ちに、当該号証に記載された金額を採用することはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
(ア)本件商標は、上記1のとおり、「CHOO SAINT」の文字よりなるところ、その構成文字に相応して、「チュウセイント」の称呼を生じるものである。
そして、当該文字は特定の意味合いを有する語として知られているというような事情は見いだせないものであるから、本件商標は、特定の観念を生じないものである。
(イ)申立人は、本件商標は構成中にスペースを挟むことから「CHOO」と「SAINT」の文字部分が視覚上分離して看取され易い、「CHOO」の文字は申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして極めて高い著名性を有する引用商標1と同一の文字構成である、「SAINT」の文字は「聖人」等の意味を有する平易な英単語として広く一般的に使用されている単語であるから、「CHOO」の文字部分と比べて出所識別標識としての機能が低いなどとして、「CHOO」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって本件商標の要部である旨主張している。
しかしながら、本件商標は、構成中にスペースを有するものの、その構成文字は同書同大でまとまりよく一体的に表され、これから生じる「チュウセイント」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、上記(1)のとおり、「CHOO」の文字からなる引用商標1は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、他に本件商標の構成中「CHOO」の文字部分が取引者、需要者に対し商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めるに足りる事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、その構成中「CHOO」の文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討することは許されないというべきである。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
イ 引用商標
(ア)引用商標1
引用商標1は、上記2のとおり、「CHOO」の文字よりなるところ、その構成文字に相応して「チュウ」の称呼を生じるものである。
そして、当該文字は特定の意味合いを有する語として知られているというような事情は見いだせないものであることからすれば、引用商標1は、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2ないし引用商標6
引用商標2ないし引用商標6は、いずれも「JIMMY CHOO」の文字よりなるところ、その構成文字に相応して「ジミーチュウ」の称呼を生じるものである。
そして、上記(1)のとおり、「JIMMY CHOO」が、申立人ブランドとして、需要者の間である程度知られているといい得るとしても、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されているものと認めることはできないものであり、その他に当該文字が特定の意味合いを有する語として知られているというような事情も見いだせないものであることからすれば、引用商標2ないし引用商標6は、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1の類否について検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「CHOO SAINT」と引用商標1の構成文字「CHOO」の比較において、「SAINT」の文字の有無という差異を有するから、容易に区別し得るものである。
次に、本件商標から生じる「チュウセイント」の称呼と引用商標1から生じる「チュウ」の称呼とを比較すると、両者は後半部の「セイント」の音の有無という差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼した場合には、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較できないものであるとしても、外観、称呼において明らかな差異を有するものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(イ)本件商標と引用商標2ないし引用商標6の類否
本件商標と引用商標2ないし引用商標6の類否について検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「CHOO SAINT」と引用商標2ないし引用商標6の構成文字「JIMMY CHOO」とは、「SAINT」及び「JIMMY」の文字の有無という差異を有するから、容易に区別し得るものである。
次に、本件商標から生じる「チュウセイント」の称呼と引用商標2ないし引用商標6から生じる「ジミーチュウ」の称呼とを比較すると、両者は構成音において、明らかな差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼した場合には、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標2ないし引用商標6は、観念において比較できないものであるとしても、外観、称呼において明らかな差異を有するものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、いずれも申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、本件商標と引用商標は、上記(2)のとおり、非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標が使用されている商品又は役務が同一又は類似のものであり、その需要者を共通にするものであるとしても、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そして、引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国及び外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、本件商標と引用商標は、上記(2)のとおり、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号いずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
異議決定日 2020-01-31 
出願番号 商願2018-40514(T2018-40514) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W182535)
T 1 651・ 262- Y (W182535)
T 1 651・ 271- Y (W182535)
T 1 651・ 222- Y (W182535)
T 1 651・ 261- Y (W182535)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小島 玖美滝口 裕子 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2018-12-21 
登録番号 商標登録第6108299号(T6108299) 
権利者 广州勝通貿易有限公司
商標の称呼 チューセイント、チューセント、チョーセイント、チョーセント、チュー、チョー、セイント、セント 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 岩瀬 ひとみ 
代理人 大坂 尚輝 

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