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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y03
管理番号 1367143 
審判番号 取消2018-300397 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-06-12 
確定日 2020-10-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4704945号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4704945号商標(以下「本件商標」という。)は、「SKINIST」の文字を標準文字で表してなり、平成14年12月9日に登録出願、第3類「かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、同15年8月29日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成30年6月25日である(以下、同登録前3年以内の期間を「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第3類「化粧品,せっけん類」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
本件商標は、その指定商品中第3類「化粧品,せっけん類」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
1 本件商標の使用の事実
本件商標の権利者である被請求人は、「病院一般事務の受託、病院の経営の受託、化粧品の開発及び販売業務」等を主たる事業とし、惣角卓矢1名を取締役として、平成14年3月1日に設立(乙2)されたものであるところ、前出の惣角卓矢が平成13年に横浜駅東口のビルに開設、その後、平成18年に横浜駅西口のビルに開設し、院長を務める形成外科、皮膚科及び美容医療を行う「横浜西口スカイクリニック」(乙3)に対し、本件商標について通常使用権を許諾している。そして、当該通常使用権者「横浜西口スカイクリニック」は、本件商標が付された商品「せっけん」を、本件商標が登録された平成15年から現在に至るまでクリニック内で販売するものである。
(1)「横浜西口スカイクリニック(院長 惣角卓矢)」は、商標権者より「黙示の通常使用権」の許諾を受けているものである。
商標権者と「横浜西口スカイクリニック」の間には通常使用権許諾に関する契約書は存在しないが、両者は、共に「神奈川県横浜市西区南幸二丁目7番9号」に所在し、前者の取締役と後者の開設者、院長がいずれも「惣角卓矢」と同一の者であることから、後者が本件商標を使用することについて、両者の間には黙示的に了解があったものと理解でき、後者は本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)通常使用権者がクリニック内で販売する「せっけん」の包装箱(化粧箱)の表面と側面の3箇所に、本件商標「SKINIST」の文字及び商品の内容を示す「SOAP」の文字が表示されている。また、当該包装箱の裏面上方には商品の内容を示す「化粧石鹸」の文字が、裏面下方には、発売元として「横浜西口スカイクリニック」の名称と住所・電話番号が記載されている(乙4)。
そして、当該商品の販売方法はクリニック内における直販である。すなわち、本件商標を付した商品「せっけん(化粧石鹸)」(以下「使用商品」という。)(乙4)は、「横浜西口スカイクリニック」の診察室内のショーケースに、スキンケア商品の1つとして置かれていて(乙5)、診察の上、医師が患者の治療に有用と判断した場合には、使用商品について説明し、その結果患者が当該商品を購入する。
以上により、商品「せっけん(化粧石鹸)」について、本件商標が通常使用権者により使用されていることは明らかである。
(3)使用商品が、「横浜西口スカイクリニック」により販売されていた事実について
ア 使用商品を販売した者のカルテ(乙6?乙8)
「カルテ」の「処方・手術・処置等」の欄に、本件商標の表音をカタカナ表記した「スキニスト」、商品の内容を示す「ソープ」の文字、及び販売価格が明示されていることから、これらは、「横浜西口スカイクリニック」により、使用商品が診察日である平成30年1月ないし6月に販売された事実を客観的に裏付けるものである。
なお、これらのカルテは、必要最小限の情報以外の部分についてはマスキングしたが、「処方・販売された商品名及びその価格」「診察日(商品販売日)」、横浜西口スカイクリニックの院長である「担当医:惣角卓矢」の氏名、カルテの番号等も表示されており、当該カルテが真正なものであることに疑いはない。
通常使用権者が患者に対し発行した「請求書兼領収書」(乙9?乙11)
(ア)当該「請求書兼領収書」の原本は、診察日に発行され、請求金額の支払いと引き換えに、領収印欄にクリニックの領収印を押して患者に渡している。
(イ)上記各領収書が、電子カルテ(乙6?乙8)に対応したものであることは、両者に記載された「患者番号(患者No.)」と「診察日」が一致していることから明らかである。
(ウ)診察日は、審判請求の予告登録日前3年以内、すなわち要証期間内に発行されたものである。
(エ)領収書の金額に対応した項目欄には、「自費・薬剤」とのみ記載され、使用商品の記載はないが、医療機関で発行される領収書には、一定の区分が記載されるだけで、一般に処方した薬品名・販売した商品名までが記載されることはない。
しかしながら、対応する電子カルテの処方欄に記載の「項目・商品名・金額」と領収書に記載された「項目・金額」とは一致している。すなわち、乙第6号証と対応する乙第9号証を比較すると、乙第6号証の電子カルテの処方欄に記載の「自費/スキニストソープ 1944円」「自費/スキニストソープ 1944円」の二項目が、乙第9号証の領収書の「自費・薬剤/3,888円」の項目に該当しており、その費用も「1944円×2=3,888円」と一致している。同様に、乙第7号証及び乙第8号証の電子カルテのそれぞれの処方欄に記載の「自費/スキニストソープ 1944円」の一項目が、対応する乙第10号証及び乙第11号証のそれぞれの領収書の「自費・薬剤/1,944円」の項目に該当しており、その費用も「1,944円」と一致している。
したがって、自費で販売された薬剤(商品)が「スキニストソープ」であり、使用商品(乙4)であることに疑義の入る余地は全くない。
(4)本件商標は、「SKINIST」の欧文字を標準文字で表してなるところ(甲1)、使用商品には、本件商標と社会通念上同一と認識できる表示態様にて「SKINIST」の欧文字が記載されている。そして、通常使用権者は、使用商品を、クリニックの診療室内のショーケースに置き(乙5)、電子カルテ(乙6?乙8)に対応した領収書(乙9?乙11)にあるとおり、クリニックで診察を受けた患者に、使用商品を販売している。
通常使用権者が、本件商標を使用商品の包装に使用した商品をクリニック内で展示し、患者に譲渡する行為は、商標法第2条第3項第2号に該当する商標の使用行為に該当するものである。
2 むすび
以上詳述のとおり、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、通常使用権者により、取消に係る指定商品の一つである「せっけん類」に属する商品「せっけん(化粧石鹸)」について使用されていることは明らかである。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人提出の乙各号証によれば次のとおりである。
ア 商標権者は、「神奈川県横浜市西区南幸二丁目7番9号」所在の有限会社であって、「惣角卓矢」を唯一の取締役としている(乙1、乙2)。
イ 「横浜市西区南幸2-7-9 藤本ビル2F」所在の皮膚科、形成外科を診療科目とする「横浜西口スカイクリニック」では「スキンケア製品」を取り扱っており、院長は「惣角卓矢」である(乙3)。
ウ 「化粧石鹸」の包装箱(乙4)には「SKINIST」「SOAP」「スキニストソープ」「化粧石鹸」の文字とともに「発売元」として「横浜西口 スカイクリニック」「横浜市西区南幸2-7-9」の記載がある。
エ 「診療カルテ」とされるもの(乙6?乙8)は、いずれも氏名がマスキングされており、それらには「平成30/01/19」「No.005833」(乙6)、「平成30/04/18」「No.012204」(乙7)及び「平成30/06/05」「No.004849」(乙8)の記載があるほか、いずれにも「担当医:惣角 卓矢」の記載と、「処方・手術・処置等」の欄に「スキニストソープ 1944円」の記載(乙第6号証に限り、2つ記載されている。)がある。
オ 「請求書兼領収書」(乙9?乙11)は、いずれも氏名がマスキングされており、それらには「診察日 平成30年1月19日」「患者番号005833」(乙9)、「診察日 平成30年4月18日」「患者番号012204」(乙10)及び「診察日 平成30年6月5日」「患者番号004849」(乙11)の記載があるほか、いずれにも「横浜西口スカイクリニック」「神奈川県横浜市西区南幸2-7-9 藤本ビル2F」の記載と、「自費・薬剤」の欄に「1,944円」(乙第9号証に限り、「3,888円」)の記載がある。
(2)上記(1)ウないしオによれば、「化粧石鹸」の包装箱(乙4)に記載された「スキニストソープ」と、「診療カルテ」(乙6?乙8)の「処方・手術・処置等」の欄に記載された「スキニストソープ」とが一致することなどから、両者は同一のものと判断するのが相当である。
そして、乙第4号証の包装箱は、その記載内容、形態などから「化粧石鹸」の包装箱とみるのが自然であること、「診療カルテ」(乙6?乙8)と「請求書兼領収書」(乙9?乙11)のそれぞれの患者番号が一致し、処方された商品の費用が1つ1,944円、2つ3,888円と一致することを併せみれば、「横浜西口スカイクリニック」の院長である「惣角卓矢」は、平成30年1月19日、同年4月18日及び同年6月5日に、包装箱に「SKINIST」の文字(以下「使用商標」という。)が付された「化粧石鹸」(以下「本件使用商品」という。)を「スキニストソープ」として、「患者番号005833」に2つ、「患者番号012204」に1つ、「患者番号004849」に1つ処方したということができる。
2 判断
(1)使用者について
上記1(1)ア及びイによれば、商標権者の唯一の取締役と「横浜西口スカイクリニック」の院長は、両者の氏名が一致し、当該氏名「惣角卓矢」は珍しい氏名であること、更に商標権者の所在地と「横浜西口スカイクリニック」の所在地が一致すると認められることから、両者は同一人とみるのが相当である。
そうすると、「横浜西口スカイクリニック」の院長「惣角卓矢」は、商標権者から本件商標の使用について、黙示の通常使用権の許諾を受けているといえる。
したがって、横浜西口スカイクリニックは、本件商標の通常使用権者であると認めることができる。
(2)使用時期(処方の時期)について
「横浜西口スカイクリニック」の院長「惣角卓矢」が患者に処方した平成30年1月19日、同年4月18日及び同年6月5日は、いずれも要証期間内である。
(3)本件使用商品について
上記第2のとおり、本件審判の請求に係る指定商品は第3類「化粧品,せっけん類」であり、本件使用商品の「化粧石鹸」が当該指定商品に含まれていることは明らかである。
(4)使用商標について
使用商標は、上記1(2)のとおり「SKINIST」の文字からなるものであるから、上記第1のとおり「SKINIST」の文字からなる本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標である。
(5)使用行為(処方したこと)について
上記1(1)エのとおり、「横浜西口スカイクリニック」の院長が本件使用商品(スキニストソープ)を患者に処方したこと、また、上記1(1)オのとおり、かかる処方を受けた者が、診察日に「横浜西口スカイクリニック」において、本件使用商品(スキニストソープ)を購入したことを併せみれば、「横浜西口スカイクリニック」の院長「惣角卓矢」は、本件使用商品を処方したその日に患者に譲渡したと認められる。
(6)小括
上記(1)ないし(5)からすれば、通常使用権者は、要証期間に含まれる平成30年1月19日、同年4月18日及び同年6月5日に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「化粧石鹸」の包装に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを譲渡したと認められ、かかる行為は商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当するものと認められる。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、要証期間内に日本国内において通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「化粧石鹸」について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-04-27 
結審通知日 2020-05-11 
審決日 2020-05-25 
出願番号 商願2002-103916(T2002-103916) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y03)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 平澤 芳行
石塚 利恵
登録日 2003-08-29 
登録番号 商標登録第4704945号(T4704945) 
商標の称呼 スキニスト 
代理人 瀧野 文雄 
代理人 江成 文恵 
代理人 安達 友和 
代理人 藤田 朗子 
代理人 今井 貴子 

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