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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W162035
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W162035
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない W162035
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W162035
管理番号 1367111 
審判番号 無効2019-890043 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-08-02 
確定日 2020-09-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5982271号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5982271号商標(以下「本件商標」という。)は、「ベビーボックス」の片仮名を標準文字で表してなり、平成28年11月21日に登録出願、第16類「紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,文房具類,印刷物,絵画」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス,家具,ベビーベッド」及び第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,写真機械器具及び写真材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同29年9月8日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、以下のとおりであり、請求人の子会社である「Finnish Baby Box Oy(以下「フィニッシュベイビーボックス社」という。)」が、新生児用の衣類、寝具等をベビーベッドとして使用できる箱に詰め合わせた商品(以下「育児用商品パッケージ」という。)に使用し、需要者間において広く知られていると主張するものである。以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。
1 別掲のとおりの構成よりなり、2014年以降、フィニッシュベイビーボックス社が世界共通で育児用商品パッケージに使用している商標(以下「引用商標1」という。)
2 「フィニッシュベイビーボックス」の文字よりなり、フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る育児用商品パッケージの日本における商品の説明や宣伝において使用している商標(以下「引用商標2」という。)
3 「フィンランド・ベイビー・ボックス」の文字よりなり、フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る育児用商品パッケージの日本における商品の説明や宣伝において使用している商標(以下「引用商標3」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第96号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
ア 請求人について
請求人は、引用商標の使用者であるフィニッシュベイビーボックス社の親会社であり(甲3(抄訳:甲92))、フィニッシュベイビーボックス社は、2014年にフィンランドで設立された会社である。
(ア)「ベビーボックス」の語の意味について
「ベビーボックス」の構成中の「ベビー」については、英語の「baby」を直感するが、広辞苑においても「ベビー」は[baby]と表示され、「(1)赤ん坊、嬰児、(2)小形」の意と解説されている(甲4)。
英語の「baby」は日本語に音訳される場合は、「ベイビー」、「ベビー」、「ベビイ」のような表示が用いられるが、いずれも英語の「baby」を意味する互換性のある表示として通用している。
また、「ボックス」についても英語の「box」を直感し、これも広辞苑において[box]と表示され「箱」の意を第一に挙げている(甲5)。
これらの意味から、「ベビーボックス」の語は「赤ちゃんに関連する箱・箱状のもの」あるいは「小さな箱」を意味する語と理解される。
また、「ベビーボックス」の語は、赤ちゃん用品を詰め合わせた箱の他、赤ちゃんの使うもの、使ったものを収容しておく小型の箱(引き出し付きのものを含む)を称したり、新生児用の遺棄を防止するための預託用の箱、あるいはその制度を称する語としても使用されている。
(イ)本件における「ベビーボックス」の語の由来と会社設立の経緯について
「ベビーボックス」の語は、必ずしも一義的ではないが、本件に係る「ベビーボックス」はフィンランドで子育ての支援策として採用されている「育児パッケージ」と呼ばれる母親手当の一種に端を発する。
「育児パッケージ」は、新生児の育児に必要な衣類その他のものが箱に詰められたもので、「マタニティボックス」「マタニティパッケージ」のように表示されている。
マタニティボックスは、出産を控えた妊婦に対して用意される新生児の育児に必要な品物及びその関連商品を詰めた箱で、1938年にフィンランドで配布活動が始まった。1920年代にフィンランドで始まった「ネウボラ」という子育て支援制度の一環である(甲6)。
フィンランドでは、この箱は「アイティユスパッカウス」(フィンランド語で「妊婦パック」の意)と称され、当初は生活保護家庭に配布されていたが、1949年以降には、希望する全ての妊婦に無料配布されるようになった(甲7)。箱は、赤ちゃんのベビーベッドとして使用できる仕様で赤ちゃんを大人と別のベッドに寝かせることにより乳児の圧死事故が減ったと伝えられている(甲8)。
この制度は、2013年6月4日付けイギリスのBBCニュースマガジン(甲9)やREUTERSのインターネット記事で紹介された。REUTERSの記事は、2013年7月3日付けのもので、英国のウィリアム王子とキャサリン妃に対し、フィンランド政府から「A box of baby goods(育児用品を詰め合わせた箱)」が贈られたという内容で、この箱と同様の詰め合わせ箱が、2012年にスウェーデンのヴィクトリア王女にも送られたことも紹介している(甲10)。
このREUTERSの記事では「Finnish state sends baby box to British Prince William and Kate」という見出しを付している。
これらの記事を契機として「baby box」という語とその配布の制度は世界的に知られるようになり、世界各地から「baby box」購入の希望の声が高くなった。
しかし、上記の記事で「baby box」と称された育児パッケージは、フィンランド政府からフィンランドの妊婦だけに贈られるもので、個別には購入できないものであった。
そこで、フィンランドの育児経験のある3人のイクメンパパ(子育てする父親)がフィンランド流育児制度を紹介すると共に「育児パッケージ」の普及に役立てるようフィニッシュベイビーボックス社を2014年に立ち上げ、「育児パッケージ」を商品化して「Finnish Baby Box」と名付けてオンラインで販売を開始した。
この商品は、育児の支援を目的としていることから、フィンランドから各国へ送料無料で配送されている(甲11)。
また、各国での輸入に係る関税も購入者にキャッシュバックしている。
日本における販売に関連して、2010年から5年間駐日フィンランド大使館で報道・文化担当参事官として勤務していたミッコ・コイヴマー氏がフィニッシュベイビーボックス社に参画した。同氏はフィンランド大使館勤務中に「フィンランド流イクメンMIKKOの世界一しあわせな子育て」という著書(甲12)を日本で出版し、フィンランド流のワークライフや育児のあり方を紹介して「イクメン大使」として知られている。
2014年4月26日付けのクレディセゾンのウェブサイト「SAISON CHIENOWA」において、「『お母さんにやさしい国』世界一のフィンランドから学ぶ、日本の子育て問題」の見出しの下、フィンランドベイビーボックスが販売されていることを紹介しており(甲13)、同年10月9日付けの日経DUALにおいて、「フィンランド政府の出産祝い 衣類やオムツ全員に」の見出しの下、ミッコ・コイヴマー氏談話で育児制度を説明している(甲14)。
イ 引用商標及び引用商標を使用する商品ついて
(ア)フィニッシュベイビーボックス社は、2014年設立以来、育児用商品パッケージに引用商標1を付して販売している(育児用商品パッケージの基本的商品形態:甲15、甲15の2)。
引用商標1は、英文字「FINNISH」、「BABY」、「BOX」の3つの語からなり、「BABY」と「BOX」の語自体は、REUTERSの記事(甲16)において「育児用品を詰め合わせた箱」を「baby box」という名称で紹介していることから既存語と理解される。
しかしながら、引用商標1は、「baby box」に「FINNISH」の語を結合することにより、独自の「FINNISH BABY BOX」という語を形成している。
フィニッシュベイビーボックス社の商品販売より前に、「FINNISH BABY BOX」の名称で育児用品を詰め合わせた商品は販売されていない。
育児用商品パッケージ及び商標の具体的使用態様は、REUTERS 2015年5月7日付け記事動画キャプチャー(甲17)に示されるとおりである。
育児用商品パッケージの内容は仕向国の使用必要状況により調整されるが、育児用商品パッケージに使用される商標は、日本を始め、他の国においても、引用商標1と同一のものが使用されている(以下、引用商標1を付した育児用商品パッケージを「FINNISH BABY BOX商品」という。)。
(イ)引用商標2及び引用商標3は、「FINNISH BABY BOX商品」の日本における商品の説明や宣伝において、「FINNISH BABY BOX」の音字として片仮名で表されて、フィニッシュベイビーボックス社や日本の需要者の間で使用されているものである。字音の表現として表示されるため、英語の「baby」の部分は「ベイビー」、「ベビー」のいずれも用いられ、また、「Finnish」の部分は「フィニッシュ」あるいは「フィンランド」の表示も使用されている。また、「フィニッシュ・ベイビー・ボックス」のように語間に中黒(・)を入れて使用されている場合もあり、購入記録でも使用されている(甲80?甲83)。これらはいずれも引用商標1の「FINNISH BABY BOX」商標の日本語バージョンである。フィニッシュベイビーボックス社は「baby box」について「ベイビーボックス」と表示するが、日本の需要者は「ベビーボックス」の表示も使用している。また、ブログでの使用は、「Finnish Baby Box」の「フィニッシュ」を省略して「ベビーボックス」とのみ表示しているケースもある。いずれも、「FINNISH BABY BOX」商標を意図して使用されている。
ウ 事件の経緯について
フィニッシュベイビーボックス社は、「FINNISH BABY BOX商品」を2015年から日本において販売しているところ、平成30年(2018年)8月8日付けメールで本件商標の商標権者と名乗る日本人から商標権侵害の警告を2回受けた(甲18、甲19)。
同人とフィニッシュベイビーボックス社との関わりを確認するため、同人名義の商標登録出願について検索したところ、商願2016-044710号(甲20:以下「出願1」という。)、商願2016-131239号(甲21:本件商標)及び商願2016-133749号(甲22:以下「出願2」という。)の3件の出願が検出された。
エ 商標法第4条第1項第19号について
(ア)「FINNISH BABY BOX商品」の日本における周知性
a 売上額及び販売地域
「FINNISH BABY BOX商品」は、2014年に販売が開始されたが、日本、米国、オーストラリア、スイス、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、他の地域に輸出され、2015年から2017年における売上額は甲第23号証のとおりである。
2015年11月より前は国ごと又は月ごとの売上げ表を作成していないため、それ以降の数字となるが、これらは本件商標の登録出願日以前のものであり、本件商標の登録査定日を含むものである。
日本が主要国の中では一番売り上げており、2017年には約1億3,300万円売り上げた。
また、Google Analytics(甲25)を用いた分析によると、日本で2014年7月1日から2016年10月31日までの間にオーダー数1,132、収益570,827.75ユーロ(参考値:570.827.75×2015年ユーロ平均レート 121.83=69,543,944円)をあげている(甲26)。
b 広告宣伝
フィニッシュベイビーボックス社は、フェイスブックやインスタグラム等を通じて広告を行っている。2016年3月16日からフェイスブックにおいて日本向け広告を行っており、2016年8月1日から同年10月31日までの間、日本語のフィンランド・ベイビー・ボックスの広告680,631件を日本の需要者に広告した。
2016年1月1日から同年10月31日の間のフェイスブックを通じた広告費用は、約220万円である(甲27)。
フィニッシュベイビーボックス社は、広告手段として成功報酬型の広告システム(アフィリエイト)を扱うA8.net(以下「A8」という。)会員である。
これは、メディア(ブログやサイト)を持っている個人や企業が広告主(本件の場合、フィニッシュベイビーボックス社)の商品やサービスを自分が運営しているメディアで紹介し、そのメディアから商品の購入やサービスの利用がされると広告主から成果報酬を受け取るシステムである(甲28)。
c インターネット上の使用
近時、宣伝・広告の媒体がインターネットを介するようになり、販売の方法も、いわゆるネット販売が日常茶飯事となっている。情報の拡散量・スピードは店舗における対面販売とは比較にならない程相当なもので、需要者のブログ、ツイート等、商標の周知性に多大な影響を及ぼしている。
インターネット検索エンジン(Google)において「ベビーボックス」を検索すると、約81,200,000件ヒットし、大半が「FINNISH BABY BOX商品」に関するものと地方自治体や他の国によるフィンランドの育児パッケージに倣った「育児パッケージ配布」制度に関する記事である(2019年5月24日現在:甲29)。
請求人子会社による使用より前に本件商標が被請求人によって使用されていたことを裏付ける記事等は見当たらない。
本件商標の登録出願前から登録査定以降もフィニッシュベイビーボックス社のベビーボックスを紹介する記事がある(甲30?甲59)。
d フィニッシュベイビーボックス社の商品販売以降、少子化対策に悩む日本の地方公共団体もフィンランドを参考にした妊婦支援制度を採用し始めている。
育児パッケージを配布する制度を導入している地方自治体は複数あり、これらの自治体も本件商標の登録出願前から制度導入又は導入を検討しているものもあり(甲58?甲67)、総務省によるふるさと納税に関する現況調査結果からふるさと納税の活用例としても挙げられている(甲68)。
育児パッケージの日本における配布制度の採用は、いずれもミッコ・コイヴマー氏のフィンランド流の育児制度の紹介や「FINNISH BABY BOX商品」の存在に触発されたといって過言ではない。
(イ)諸外国における周知性
甲第69号証ないし甲第73号証などの記事にあるように、フィンランドの育児制度を紹介すると同時に請求人子会社が紹介されている。
これらの記事中において、請求人子会社の事業に言及されたり、請求人子会社の製品の写真が引用されていることがわかる。
以上の状況から、「FINNISH BABY BOX商品」は、本件商標の登録出願前から「FINNISH BABY BOX」商標を付した育児用商品を詰め合わせた商品として海外及び日本において需要者の間に広く知られるに至っており、特に、引用商標1は、フィニッシュベイビーボックス社の育児用商品を詰め合わせた商品を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標である。
(ウ)本件商標と引用商標との類似性について
本件商標は「ベビーボックス」の片仮名を横一連に書してなり、「ベビーボックス」の称呼を生じる。
引用商標1は、構成中の「BABY」の語について「ベイビー」あるいは「ベビー」、「ベビイ」等の音字が用いられるから、引用商標1は、全体としては「フィニッシュベイビーボックス」あるいは「フィニッシュベビーボックス」の称呼が生じる。一方、「FINNISH」の語は、「フィンランド」を意味する語で、産地を表す他、構成文字が三段に書されているため、「ベイビーボックス」あるいは「ベビーボックス」の称呼も生じる。
本件商標と引用商標1とは、「ベビーボックス」の称呼を共通にするから、類似する。
引用商標2及び引用商標3は、一連に表記されているが、地理的表示である「フィニッシュ」又は「フィンランド」を除外すると「ベイビーボックス」又は「ベビーボックス」と称呼され、本件商標と称呼を共通にする類似の商標である。
なお、警告人は、同氏の所有する商標「ベビーボックス」と、「FINNISH BABY BOX」あるいは「フィンランド・ベイビーボックス」は極めて類似すると述べている。
(エ)不正の目的について
a 本件商標権者による3件の出願について
これらは、いずれも2014年に発売され、日本でも2015年に販売開始された「FINNISH BABY BOX商品」の販売より後に出願されている。
出願1及び出願2は、商標法第3条第1項柱書により拒絶された。
出願1に対しては、NPO法人aLkuから、刊行物提出書が提出されている(甲74、甲75)。同法人は、山形県長井市の子育てをフィンランドの育児制度に倣って長井市と連携して2015年11月にベビーボックス事業を始め、この取り組みは2017年グッドデザイン賞を受賞している(甲76)。この「ベビーボックス事業」(甲77)がNPO法人の著名な事業に該当するかどうかは精査していないが、新聞記事記載内容からみても「FINNISH BABY BOX商品」を念頭においていることがうかがえる。
出願1に係る商標は、2015年4月にアカウントが登録された「マタニティボックス専門店(@babybox8)の2017年10月12日付け及び2017年10月11日付けのツイートで表示された画像に表示されている図形及びベビーボックスの文言と同一である(甲78)。このツイッターアカウントは、2017年4月1日より度々請求人子会社の製品をツイートしている。
また、2016年1月29日付けのマタニティボックス専門店のフェイスブックにも同一の図形と文字が表示されている(甲79)。
なお、このフェイスブックには三段に書された「FINNISH BABY BOX」の文字が付された「FINNISH BABY BOX商品」と同一の箱の画像が表示されている。
文面は「日本製マタニティボックス46点セット(デラックスタイプ)この日本製マタニティボックス(デラックスタイプ)には」と記載されているが、文面の「もっと見る」を見たところ、これと同一の箱の画像が検索された(甲79)。
また、出願2に係る商標は、刊行物を提出した法人とは別の特定非営利活動法人が当該出願より前から配布する「ウェルカムベビーボックス」を英語で表現した語に相当する(甲61)。
商願2016-131239号は、本件商標である。
b 本件商標権者と同一人とみられる人物からのフィニッシュベイビーボックス社への「FINNISH BABY BOX商品」の購入について、購入記録があった(甲80?甲83)。
c 2015年5月28日公開のクラウドファンディング
クラウドファンディングにおいて「新生児の子育てグッズを揃えた日本版マタニティボックスを制作!」というタイトルで育児グッズの購入資金を募集していた(甲84)。
このプロジェクトは、2015年6月22日に支援募集を締め切っており、募集文中のマタニティボックスの詳細として、「ベビーボックス」が表示され、「マタニティボックスの輸入・販売を行っています」と記載されている。フィンランドでマタニティボックスが妊婦に贈られていることも述べられているが、2015年5月当時、マタニティボックスに相当する、育児用商品をベビーベッド兼用の箱に詰め合わせた商品は、フィニッシュベイビーボックス社以外に存在するという情報は見当たらない。
募集文中の「日本版マタニティボックスを製作する」、「マタニティボックスの箱は特殊なため日本では作られていない」、「マタニティボックスの詳細」等の記述を総合解釈すると、フィニッシュベイビーボックス社の「FINNISH BABY BOX商品」を十分認識していたことがうかがい知れる。
d 警告人と請求人子会社の関係
警告人とフィニッシュベイビーボックスの購入者及び@babybox8さんとは同一人であることが十分推認される。
e 以上の状況から、被請求人は、引用商標1がフィニッシュベイビーボックス社の商品に使用されていることを本件商標の登録出願日より以前から認知していたことは明らかであり、A8(甲28)を通じて2016年にフィニッシュベイビーボックス社の日本におけるPublisher(広告者)として活動していたことが極めて濃厚である。
被請求人は、フィニッシュベイビーボックス社のA8を通じたマーケティングネットワークに参加し、同社の製品を広め、これらの製品を販売していた。
被請求人の製品販売サイト(甲86)の「サービス紹介」の「プレゼント用マタニティボックス」の右下の「詳しくはこちら」をクリックすると、フィンランド製マタニティボックスの購入欄が設けられている(審判請求時はページが存在しないと表示される。)。
フィンランド製マタニティボックスは、本件出願当時はフィニッシュベイビーボックス社しか販売していない。
そして、引用商標に類似する商標「ベビーボックス」を利用する何らかの意図をもって出願したことが推認できる。
この意図は、警告文中の「ライセンス契約を結ぶことも可能です」という文言(甲18、甲19)に顕在化しており、結果として、フィニッシュベイビーボックス社の使用を妨げようとしていることは明らかである。
「FINNISH BABY BOX商品」を購入し、また、同商品を販売の対象としていたことも明らかであるから、本件商標の登録は取引上の信義則に反するものである。
(オ)まとめ
以上を総合して判断すれば、本件商標は、請求人子会社の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている引用商標1と類似の商標であり、不正の目的をもって使用するものに該当する。
また、本件商標は、日本国内において需要者の間に広く認識されている引用商標2及び引用商標3と類似の商標であり、不正の目的を持って使用するものに該当する。
なお、上記の業務に係る商品は、育児用商品を詰め合わせた商品であるが、商標登録出願において指定商品の表示としての例示は見当たらない。
しかしながら、本商品は、育児の支援を目的とした商品の詰め合わせ商品で、詰め合わせ基本商品として新生児用衣類・おむつ・よだれかけ・ベッド兼用の箱・毛布・まくら等の必須商品が決まっているもので、実際に取引の対象とされ、世界的に販売されている商品であり、指定商品の表示として採用されているかどうかによって、商標法上その商品性を否定されるものではなく、取引者・需要者の間に広く認識された商標の保護を左右されるものではない。
それは、需要者の間に広く認識された商標を不正の目的による第三者の登録から保護するという規定の趣旨に合致するものであり、本号の適用にあたっては、周知となっている商品と出願商標の指定商品との関係は直接には問題とならない(甲87)。
被請求人が自身の販売する商品に「ベビーボックス」を使用する意図で出願したとしても、引用商標の存在を認識し、かつ、引用商標に類似する商標と認識した上で出願をしたことは明らかであるから、不正の目的を否定すべくもない。
オ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)本件商標は、第16類、第20類の商品及び第35類の小売又は卸売の業務を指定しており、請求人子会社の業務に係る商品は、ベビーベッドとして使用できる箱に育児用商品を詰め合わせた商品である。
その詰め合わせ商品の基本的商品の構成は、ベビーベッド兼用の段ボール製の箱、おむつ、新生児用衣類、まくら、クッション、マットレス、毛布等である(甲15)。
これらの構成商品と、本件商標の指定商品・役務とを比較してみると、共通項又は類似関係があり、用途や目的において関連性があるものである。
(イ)英語の「baby box」の語は、その使用され始めた経緯から、箱に育児用商品を詰め合わせた商品を表す語として使用されている場合があるとしても、片仮名で表記された「ベビーボックス」の語はそのような商品を表す語として一般的に理解されているというに足る状況とはいい難い。インターネット上で当該商品を表す語として使用されているケースでは、「ベビーボックス」とは・・・という説明書きを伴っていることからもうなずける。
(ウ)引用商標は、本件商標の登録出願時には、育児用品の需要者の間で広く知られ、「ベビーボックス」といえば、需要者の間では引用商標を想起する状況に至っていたことは明らかである。
また、被請求人のフェイスブックにおける「マタニティボックスの購入なら『ベビーボックス』」(甲79)に見られるとおり、引用商標1の付された箱を自己の販売広告に利用していた。需要者は、被請求人とフィニッシュベイビーボックス社とは営業上の関係があると誤信しても不思議はない。
本件商標の指定商品・役務と、引用商標1を使用する商品の構成商品とは関連性のあるものであり、本件商標と引用商標とは「ベビーボックス」という称呼を共通にすることから、育児商品の需要者は「ベビーボックス」といえば商標と同一名称であるフィニッシュベイビーボックス社の引用商標1を付された商品を想起し、本件商標が同商品と営業上の関係がある、あるいは、同一のグループ関係にあると誤信し、出所を混同するおそれは十分にある。
本件商標が何らかの理由で商標法第4条第1項第19号に該当しないとしても、本件商標は同第15号に該当する。
カ 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、請求人子会社の著名な略称を含む商標であるから、本号に該当する。
請求人子会社の正式な社名は、「フィニッシュベイビーボックスオーワイ(英語名 Finnish Baby Box Oy)」である。
日本語では「フィニッシュベイビーボックス株式会社(又はフィニッシュベイビーボックス社)」と表記されるが、略式の名称として、フィニッシュを省略して、「ベイビーボックス社」、あるいは、「ベイビーボックス」と称して使用している。
略称は、商業登記簿への届出も必要なく、各人が自由に選択するものであり、略称に相当するかどうかは、個別の案件により判断され、それが著名性を有する場合に本号に該当すると解され(甲89?甲91)、本件については、日本語では、「ベイビーボックス社」、「ベイビーボックス」が略称に該当する。
英語名称の株式会社を除外した部分「Finnish Baby Box」は、育児用商品パッケージの商標「FINNISH BABY BOX」と同一である。すなわち、会社の名称要部と販売商品の商標とは同一である。「Baby Box」の部分は、日本語で音訳表記する場合は、「ベイビーボックス」、「ベビーボックス」のように表記され、どちらも英語の「Baby Box」を表すものと認識される。
「Baby」の語の音字表記として「ベイビー」と「ベビー」とは互換性があり、同一の意味を有する。
本件商標「ベビーボックス」は、英語の「baby box」の音訳であることからすれば、「ベビー」と「ベイビー」とは同一の語として扱われる。
「Finnish Baby Box」の語は、商品の名称として需要者の間で広く知られ、また、会社設立の経緯から、「Finnish Baby Box社」の社名としても需要者の間で広く知られるに至っている。
我が国における製品の説明、宣伝・広告(ホームページ)においては「Finnish」の語を省略し「ベイビーボックス社」あるいは「ベイビーボックス」と称し、その略称はマスメディアにより発信されていることや「ベビーボックス」といえば「フィニッシュベイビーボックス社(甲40、甲42)」を想起されることを考慮すれば、著名な略称ということができる。
本件商標は、「フィニッシュベイビーボックス社」の著名な略称の「ベイビーボックス社」あるいは「ベイビーボックス」の別音訳である「ベビーボックス社」あるいは「ベビーボックス」の文字列そのままの構成であるから、本号でいう著名な略称を含むものに該当する。
キ 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、出願の経緯その他の事情を考慮すると、商標法第4条第1項第19号に該当しないと判断された場合であっても、一般に国際信義に反し、登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するもので到底容認することはできない。
フィンランドの育児支援の制度は、2013年6月4日付けイギリスのBBCニュースマガジン(甲9)やREUTERSのインターネット記事(甲10)を契機としてフィンランド流育児制度を採用する国が増加し、我が国でも育児用品の詰め合わせ商品を配布する制度を地方自治体でも採用するに至っている。
フィニッシュベイビーボックス社は、育児用品商品詰め合わせ商品の需要に応えて、そのような商品を製品化して、引用商標1を付して、「FINNISH BABY BOX商品」として多くの国に輸出した。引用商標1は海外及び日本で、引用商標2及び引用商標3は日本国内で、需要者の間で周知な商標に至っている。
「FINNISH BABY BOX商品」は、本件商標の登録出願日前から海外メディアでも紹介され(甲9、甲10、甲16)、商品の需要者ばかりでなく、一般公衆も認識する機会が提供されている。
このような状況において、被請求人が引用商標1及び引用商標3と極めて類似する本件商標を、「FINNISH BABY BOX商品」を構成する商品と密接な関連性を有する個別の商品や関連のある役務を指定して登録し、この登録を商標権侵害の根拠として侵害警告を行っている(甲18、甲19)。
警告書の文面中の「ライセンス契約を結ぶことも可能です」(甲18、甲19)という申出もしている点からも、知名度に便乗し不正な意図をもって商標権を取得していることは明らかである。
社会的要請に合致し、国際的に流通している商品に付される商標の使用に対し、商標権侵害の主張の根拠とされる本件登録を存続させることは私的利害関係の領域を超えて、国際商道徳に反し、国際的取引に影響を及ぼすため、国際的信義則に反するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)請求人について
被請求人は、請求人はフィニッシュベイビーボックス社と資本関係・人的関係が全く不明確であるから甲第3号証をもって請求人がフィニッシュべイビーボックス社の親会社であることを証明したとはいえないと主張するが、甲第3号証には、フィニッシュベイビーボックス社が請求人の補助会社と表示され、この補助会社はグループ会社の内の一つでグループ会社に補助的なサービスを提供する会社という説明は付してある(甲92)。
(2)フィニッシュベイビーボックス社の業務に係る商品と引用商標の周知性について
育児用商品を詰め合わせた商品は、新生児の誕生の準備として購入される商品で、一般の食品・生活雑貨等とは異なり、需要範囲の狭い商品であり、需要者の範囲も限定される。また、販売の方法もフィニッシュベイビーボックス社はインターネットによる販売のみである。
したがって、フィニッシュベイビーボックス社の「育児用品の詰め合わせ」を購入しようとする需要者は、インターネットによる申し込みのみである。
被請求人は、売上商品、及び広告の全てに引用商標が付されていたことの証左がないと主張するが、動画キャプチャー(甲17)で十分証左されており、これら以外の商品についてもインターネットを介した購入が普通に行われている。
需要者の間で広く知られているかどうかについては、単に、宣伝・広告費の多寡により判断するのではなく、商品の販売方法を考慮しなければならない。
購入を希望する商品に関する個人ブログの記事は購入に大きな影響を与える。本件商標登録出願日前のブログ、ツイートで商品・商標の知名度を感得できる。
被請求人は、請求人の売り上げは取るに足らない売り上げであると主張する(乙1)が、需要度の少ない「育児用品の詰め合わせ」商品が、そのベビー用品・関連サービスに含まれているかどうか不明な状態で対比の対象にはならない。市場規模の小さい商品と一般的規模の商品とを対比することは見当違いである。
諸外国における周知性についても、各国の新聞記事やその他のメディアに公表、発表されれば、それがたった一度でも世界的に情報が拡散されるのが世情である。ブロガーやツイッターは、情報にアンテナをはっている現実を無視できない。
被請求人の主張は、周知度の一般論としての基準で論じている。
(3)不正の目的について
被請求人は、甲第74号証ないし甲第79号証は本件商標とは無関係であると主張するが、本号証は、「商標登録原簿上の権利者」が警告人と同一人かどうか確認のためのものであり、あながち無関係ではない。
「マタニティボックス専門店」のフェイスブックの2016年1月29日付け画面(甲79)には、引用商標1が付されたフィニッシュベイビーボックス社の箱が表示され、「日本製マタニティボックス46点セット」と表示されている。何のためにフィニッシュベイビーボックス社の引用商標1が表示されているのか。引用商標を利用する意図が見え隠れしていると解されても当然である。
「FINNISH BABY BOX商品」は、新生児用衣類やハサミ、爪切り、体温計、赤ちゃん用ふとん等商品区分上、多区分にわたる商品を1つの箱に詰め合わせて1個の商品として販売される商品で、個々の商品に「FINNISH BABY BOX」という商標を付していない。
しかるところ、本件商標の指定商品には、このような詰め合わせ商品は指定されていない。商標権についての使用許諾は、登録商標を指定商品又は指定役務についてなされるもので、指定されていない商品について使用権の許諾はできない。
また、被請求人は、「登録日から1年近くも経過してから警告をしたのは、不正の目的など、最初からなかったことの表れである」と主張するが、登録から2か月以内は異議申立期間もあり、様子を見てから警告したと推察することも可能であって、これを不正の目的がなかったと主張するには無理がある。
このような点からも被請求人の不正の目的がないという主張は失当である。
商標法第4条第1項第7号は商標登録出願日や周知性に言及することなく、登録出願の経緯に社会的適法性を欠くものに適用され、また、先願主義を悪用した出願として認めることは商標法の予定する秩序に反するものにも適用されることからすれば、本件商標は同号に該当すると解すべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
1 請求人適格について
請求人は、引用商標の使用者であるフィニッシュベイビーボックス社の親会社であることの証拠として、甲第3号証を添付しているが、「フィンランド特許及び登録庁発行の商号登記」なるものの翻訳文の第1ページ目の下部は「以下略」とされていて、資本金等の部分について、日本語への翻訳がされておらず、第2ページ目の翻訳文も添付されていなかった。
無効審判の証拠として、外国語文献が提出されたが、翻訳文が添付されていない、あるいは証拠として引用した箇所に対して翻訳していない箇所があるものといえ、請求の理由に不備があるものとして、補正を命じられるべきものであって、請求人がこれに応答しないときは、決定をもって請求が却下されるべきものである。
また、甲第3号証のみでは、請求人とフィニッシュベイビーボックス社の資本関係・人的関係が全く不明であるから、これをもって、請求人が、引用商標の使用者であるフィニッシュベイビーボックス社の親会社であることを証明したということができない。
したがって、請求人は、本件商標登録を無効にすることについて、法律上の利害関係を有していない。
2 商標法第4条第1項第19号について
(1)日本における周知性
請求人は、2015年から2017年における売上額として、甲第23号証及び甲第24号証を提出しているが、この資料は、請求人自らが用意・作成した売上額の資料にすぎず、何らの客観性も担保されていない。
また、請求人は、2017年に、日本において、約1億3,300万円を売り上げたこと主張するが、株式会社矢野経済研究所のウェブサイトによれば、2017年における、国内のベビー用品・関連サービス市場は、約4兆19億円である(乙1)。
したがって、請求人の売り上げは、その市場全体でいえば、わずか約0.000033%、という、取るに足らない売り上げということになり、我が国において周知などということができない。
また、フェイスブックを通じた広告費用(甲27)の約220万円も、その市場規模に比べれば、雀の涙ほどである。
さらに、請求人は、2014年7月1日から2016年10月31日までの間に、日本において、約1,132件のオーダーと約6,950万円の収益をあげた旨を主張する(甲25、甲26)が、これらの数字は、約2年4か月間もの、長期の販売期間における数字であって、オーダー数、収益額、共に、日本において、周知といえる程のものではない。
百歩譲って、請求人の提出した売上額、販売額、広告費用等が全て真正なものであったとしても、これらの売上げた商品、及び、広告の全てに、引用商標が付されていたことの証左がない。
すなわち、請求人は、引用商標1の具体的使用態様として、甲第17号証を提出するが、前記売上額、販売額、広告費用と商標の使用態様の関連性は、全く不明である。
また、請求人は、インターネット上の使用例(甲30?甲59)を提出するが、その中には、本件商標の登録出願日前のものか否かが分からない「日付不明」のものや、情報の拡散力の極めて乏しい「個人ブログ」の使用例も、非常に多い。「個人ブログ」へのアクセス数は、ほぼないといっていいものも多数存在するため、このようなブログに掲載されたからといって、周知であるなどとはいえない。
このように、無効審判請求において、本件商標の無効審決に、ほぼ寄与しないといってもいい「日付不明」の記事や「個人ブログ」の記事を、証拠として提出せざるを得なかったという状況こそが、本件商標の登録出願日前における、請求人子会社の商標の使用実績の乏しさを物語っているといえ、これらのインターネット上の使用例において、実際に、引用商標が使用されているものは、数えるほどしかない。
加えて、請求人は、本件商標の登録出願日前に、日本において育児パッケージの配布制度の導入又はその導入が検討されている例(甲58?甲68)を挙げ、これらの証拠には「ベビーボックス」の文字や、「フィンランドを参考に」などの記載が散見される。
しかし、フィニッシュベイビーボックス社のものであると推察できそうなものは、わずかに、「FinnishiBabyBoxが有名です」との記載のみである(甲65)。
また、請求人によれば、フィンランド政府からフィンランドの妊婦に育児パッケージが贈られる制度は、2013年6月4日のイギリスのBBCニュースマガジンの記事により、「『baby box』という語とその配布制度は世界的に知られるようになった」というのであるから、その制度自体を、日本の地方自治体等が取り入れるのは、何ら不思議なことではない。クレディセゾンのウェブサイトで、ミッコ・コイヴマー氏がフィンランド・ベイビー・ボックスを紹介したり、フィニッシュベイビーボックス社が立ち上げられたりしたのは、その制度が世界的に知られた後の、2014年とのことである。
すなわち、請求人の示す甲第58号証ないし甲第68号証によっては、ミッコ・コイヴマー氏のフィンランド流の育児制度の紹介や「FINNISH BABY BOX商品」が販売されたことと、日本の地方自治体等が育児パッケージ制度を採用したこととの因果関係は、何ら明らかにされていない。つまり、「育児パッケージの日本における配布制度の採用は、いずれも前述ミッコ・コイヴマー氏のフィンランド流の育児制度の紹介や『FINNISH BABY BOX商品』の存在に触発されたといっても過言ではない」との請求人の主張には、全く根拠がない。
なお、請求人の示す甲第58号証ないし甲第68号証の中には「ウェルカムベビーボックス発送開始」(甲61)のように、同書・同大かつ一連に、「ウェルカムベビーボックス」と、まとまりよく書されているにも関わらず、「ベビーボックス」の文字のみを、請求人の都合のいいように、無理やり抽出したような証拠も含まれており、その立証方法は、極めて乱暴であるといわざるを得ない。
以上のとおり、請求人の提出した証拠は、引用商標が、我が国の取引者、需要者の間に広く知られていたことを何ら裏付けるものではない。
その他、引用商標が、フィニッシュベイビーボックス社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において、周知性を獲得していたと認めるに足りる証拠はない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできない。
(2)諸外国における周知性
請求人は、甲第69号証ないし甲第73号証をもって、引用商標が、本件商標の登録出願日前から、外国の需要者の間に広く知られていた旨を主張するが、一部に部分抄訳があるものもあるが、日本語の翻訳文が提出されていない、不適切な証拠である。
また、記事中では、確かに「FINNISH BABY BOX」等の文字が散見されるが、これは引用商標と同一ではない。引用商標1を含め、引用商標と同一の商標が使用されている証拠は、1件も確認できなかった。
さらに、ワシントン・ポスト(甲69)はアメリカ合衆国の日刊紙であり、BBC(甲70)は、イギリスのラジオ・テレビを一括運営する公共放送局であるが、請求人が提出した証拠は国ごとにまとめられておらず、請求人が主張する、周知性を獲得した「外国」が、一体どこなのかが全くもって不明である。
また、各国の新聞記事やウェブサイト等のメディアで、たった一度紹介されたことがあるからといって、その国で周知性を獲得したことの証明には全くならない。
各国ごとの市場規模や、フィニッシュベイビーボックス社の市場におけるシェアが不明だからである。
したがって、甲第69号証ないし甲第73号証をもって、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、フィニッシュベイビーボックス社の業務に係る商品を表示するものとして、外国の取引者、需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできない。
(3)本件商標と引用商標との類似性
本件商標と引用商標は、それぞれ類似の商標である。
(4)不正の目的
請求人が提出した甲第74号証ないし甲第79号証は、本件商標とは別の出願に関するものであり、本件商標とは無関係である。
請求人は、被請求人が、単に、フィニッシュベイビーボックス社の商品を購入したこと、及び、本件商標の登録出願日前から、引用商標1がフィニッシュベイビーボックス社の商品に使用されていることを認知していたことのみをもって、「不正の目的を否定すべくもない」などと述べているが、資本主義社会において、同種の商品を販売する他社の商品を購入・調査することは、マーケティング活動において、ごく一般的に行われていることである。
他社製品を購入したこと、及び、その他社製品に使用されている商標を知っていたことのみをもって、不正の目的があると判断されてしまったら、世界中の企業は、マーケティング活動ができないこととなってしまい、不合理極まりない。
また、そもそも、商標は創作物ではなく、選択物であるから、商標それ自体は保護価値のないものである。すなわち、商標権は、商標の使用を通じて、業務上の信用が商標に化体した場合に、その信用を保護するものであるから、商標が相当程度周知でなければ、保護に価する財産権的価値は生じない。
そして、引用商標は、我が国及び外国において周知とはいえないのであるから、そもそも保護価値がないものである。
さらに、被請求人が、請求人の使用する引用商標と同一の商標を出願・登録したのならまだしも、本件商標は、あくまで被請求人が、独自に採択した商標なのであるから、不正の目的があるということはできない。
また、我が国では先願主義を採用しているのであるから、他人が同一又は類似の商標を出願していない場合には、早急に出願する必要があることはいうまでもない。
自己が使用していた商標を、その商標に化体した業務上の信用を保護するため、きちんと商標登録出願し、特許庁での審査を経て、登録となった本件商標を無効にする一方で、現在に至るまで、引用商標を、出願すらしていなかった、怠惰な請求人の引用商標の無断使用を今後も認めることとなれば、極めて不公平なものといえる。
そして、請求人には確証がないようであるが、本件商標の商標登録原簿上の権利者と、平成30年(2018年)8月8日付けEメールでの警告人は同一人(被請求人)である。
また、請求人は、被請求人が、A8なる成功報酬型の広告システム(アフィリエイト)を通じて、2016年にフィニッシュベイビーボックス社の日本における広告者として活動していた旨、述べているが、そのような事実はなく、請求人が示した証拠にも、これを裏付けるものはない。
請求人が提出した甲第86号証は、そのフッター部分の表示にあるように、2019年5月24日に印刷されたものであって、本件商標出願日(2016年11月21日)より前に「フィンランド製マタニティボックス」の表示があったことを証明するものではない。
加えて、請求人は、「ライセンス契約を結ぶことも可能です」という部分に下線を引いて、被請求人が、引用商標に類似する本件商標を利用する何らかの意図をもって出願したことが推認できる旨、及び、結果としてフィニッシュベイビーボックス社の使用を妨げようとしている旨、主張するが、商標権者からのライセンス契約の申し出は、ごく普通に行われていることである。
ライセンス契約を申し出ているのだから、請求人の主張とは逆に、むしろ、ライセンス契約を通じて、請求人にも、本件商標に類似する引用商標を積極的に使用してもらうよう促すものであるといえる。
また、被請求人が、本件商標の登録出願日前から引用商標を認知し、本件商標登録に、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的等の不正の目的があったというのであれば、本件商標の設定登録日である2017年9月22日の直後に、警告及びライセンス契約の申し出をするというのが自然である。登録日から1年近くも経過した、平成30年(2018年)8月8日に、被請求人が請求人に警告をしたのは、そのような不正の目的など、最初からなかったことの表れである。
被請求人は、本件商標が登録され、登録公報によって、その登録内容が広く一般に公知となったにも関わらず、請求人が、被請求人の登録商標を認識しつつ、類似商標(引用商標)を使用し続けていたことから、やむを得ず、警告して使用中止を求めたにすぎない。
(5)まとめ
以上のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の取引者、需要者の間で広く認識され、周知になっていたということはできない。そして、被請求人が本件商標を、不正の目的をもつて使用しているというべき証拠及び事情は認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
本件商標に係る指定商品又は指定役務と、引用商標に係る商品とが互いに関連性を有するものであり、本件商標と引用商標とが類似するものであるとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で広く認識され周知になっていたということはできない。
そうすると、本件商標をその指定商品又は指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を想起するとは到底いえず、当該商品又は役務が、請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第8号について
問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起、連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。
そうすると、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号)。
請求人は、本件商標は、「フィニッシュベイビーボックス社」の著名な略称の「ベイビーボックス社」あるいは「ベイビーボックス」の別音訳である「ベビーボックス社」あるいは「ベビーボックス」の文字列そのままの構成であり、「『ベビーボックス』といえば、フィニッシュベイビーボックス社を想起される」と述べ、本件商標が、商標法第4条第1項第8号にいう、著名な略称を含むものに該当する旨主張する一方で、「『ベビーボックス』の語の意味について」と冠し、「『ベビーボックス』の語は、赤ちゃん用品を詰め合わせた箱の他、赤ちゃんの使うもの、使ったものを収容しておく小型の箱(引き出し付きのものを含む)を称したり、あるいは新生児用の遺棄を防止するための預託用の箱あるいはその制度を称する語としても使用されている」、「『ベビーボックス』の語は、上記で述べたとおり必ずしも一義的でない」、「本件に係る『ベビーボックス』はフィンランドで子育ての支援策として採用されている『育児パッケージ』と呼ばれる母親手当の一種に端を発する」などと、述べている。
実際に「ベビーボックス」が多義的であることからすれば、少なくとも、本件商標「ベビーボックス」が、「フィニッシュベイビーボックス社」の略称として、客観的に把握され、同社を想起・連想させるものであるとはいえないことは明らかである。
また、請求人の提出に係る証拠によっては、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で広く認識され周知になっていたということはできないものであるから、当然に、請求人を指し示すものとして一般に受け入れられている「著名な略称」ということもできない。
そもそも、我が国において、請求人子会社の正式名称である「Finnish Baby Box Oy」中の「Oy」の文字部分について、フィンランド語の「株式会社」であると認識することができる需要者、取引者は、非常に少数であると考えられる。
したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標とはいえず、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号について
請求人は、引用商標が、本件商標の登録出願時において、請求人の商標として周知であったことを前提として、本件商標登録について、被請求人がその知名度に便乗し、不正な意図をもって、商標権を取得したものであるから、本件商標登録は、国際信義に反し、公序良俗違反である旨を主張する。
しかし、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で広く認識され周知になっていたということはできないのであるから、被請求人が便乗する知名度など存在せず、当然に不正な意図などもないのであるから、この主張は、その前提を欠くものである。
加えて、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成のものとはいえず、これをその指定商品又は指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
また、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものともいえず、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもなく、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような特別の事情があるともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

第5 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
本件審判の請求に関し、当事者間において利害関係の有無につき争いがあることから、まず、この点について判断する。
請求人は、引用商標の使用者であるフィニッシュベイビーボックス社を「APUTOIMINIMI(抄訳:補助会社)」(甲92)とするフィンランドの法人と認められるところ、フィニッシュベイビーボックス社は、本件商標権者(被請求人)から、本件商標権に基づく商標権侵害の警告を受けているものである。
そうすると、フィニッシュベイビーボックス社を補助会社とする請求人は、本件商標の存在により何らかの不利益を被る立場にあるということができるから、請求人は、本件審判の請求をすることについて法律上の利益を有するものといわなければならない。
したがって、本件審判の請求は、その請求を不適法なものとして却下することはできない。
2 引用商標の周知著名性について
(1)請求人提出の証拠及び請求人の主張の趣旨によれば、以下のとおりである。
ア フィンランド政府の子育て支援策としての育児パッケージについて
「育児パッケージ」は、出産を控えた妊婦に対して用意される新生児の育児に必要な品物及びその関連商品を詰めた箱であって、1938年にフィンランドで配布活動が始まったものであり、1920年代にフィンランドで始まった「ネウボラ」という子育て支援制度の一環である。当初は生活保護家庭に配布されていたが、1949年以降には希望する全ての妊婦に無料配布されるようになった(甲6、甲13、甲14)。
請求人は、2013年6月4日付けイギリスのBBCニュースマガジン(甲9)やREUTERSのインターネット記事(甲10)を契機としてフィンランド流育児制度を採用する国が増加し、我が国でも育児用品の詰め合わせ商品を配布する制度を地方自治体でも採用するに至っている旨主張している。
これらの記事が契機となったかどうかは定かではないものの、フィンランド以外の国でも当該制度が知られるようになり、我が国においても、地方自治体等が、当該育児パッケージを参考とした、同様の育児パッケージの配布制度の導入又は導入の検討を行っている(甲58?甲68)ことがうかがえる。
イ 「ベビーボックス」の語の由来とフィニッシュベイビーボックス社の設立について
「ベビーボックス」の語は、赤ちゃん用品を詰め合わせた箱の他、赤ちゃんの使うもの、使ったものを収容しておく小型の箱(引き出し付きのものを含む)を称したり、あるいは新生児用の遺棄を防止するための預託用の箱あるいはその制度を称する語としても使用されていて、必ずしも一義的ではないが、請求人は、本件に係る「ベビーボックス」は、上記アの「育児パッケージ」と呼ばれる母親手当の一種に端を発すると主張している。
さらに、請求人は、「Finnish state sends baby box to British Prince William and Kate」という見出しの下、イギリス王室にフィンランド政府から「A box of baby goods(育児用品を詰め合わせた箱)」が贈られたという内容の記事(甲10)等を契機として、「babybox」という語とその配布の制度は世界的に知られるようになり、世界各地から「babybox」購入の希望の声が高くなったと主張しているが、当該記事の翻訳文は提出されていない。
「babybox」と称された育児パッケージは、フィンランド政府からフィンランドの妊婦だけに贈られるもので、個別には購入できないものであったことから、フィンランドの育児経験のある3人の父親がフィンランド流育児制度を紹介すると共に「育児パッケージ」の普及に役立てるよう、2014年に、フィニッシュベイビーボックス社を立ち上げ、「育児パッケージ」を商品化して「Finnish Baby Box」と名付けてオンラインで販売を開始した(甲11、甲13)。
ウ 引用商標の周知性について
(ア)「FINNISH BABY BOX商品」における商標の使用態様について
フィニッシュベイビーボックス社は、2014年設立以来、育児用商品パッケージに引用商標1を付して販売しており、その基本的商品形態は甲第15号証及び甲第15号証の2に示すとおりであって、育児用商品パッケージ及び商標の具体的使用態様は、REUTERSの2015年5月7日付け記事動画キャプチャー(甲17)に示されるとおりである旨請求人は主張している。
これらの証拠においては、ベビーベッドとしても使用可能な箱に新生児用の衣類、おむつ、よだれかけ、お風呂・衛生用品、ふとん他の寝具等が詰められ、箱の上蓋の右下には、黒塗りの四角形に、「FINNISH」、「BABY」及び「BOX」の文字が三段に右揃えに表示されたラベルが付されていることが確認できる。
なお、引用商標1は、黒塗りの四角形に、「FINNISH」、「BABY」及び「BOX」の文字が白抜きで三段に左揃えに表示されているものであるから、当該ラベルとは、右揃えと左揃えの差異を有するものの、構成文字の書体はほぼ同一である。
しかしながら、2014年の販売開始以降、本件商標の登録出願時(平成28年(2016年)11月21日)及び登録査定時(平成29年(2017年)9月8日)においても、同様の商品形態で同一の商標を使用していたことを客観的に把握できる証拠は見いだせない。
(イ)日本における周知性について
請求人は、「FINNISH BABY BOX商品」は、2014年の販売開始以来、日本、米国、オーストラリア、スイス、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、他の地域に輸出され、2015年から2017年における売上額を記載した表(甲23)を示している。
しかしながら、この表は請求人代理人が作成したものであり、その売上額を客観的に裏付ける資料は提出されていない。
請求人は、2017年に、日本において、約1億3,300万円を売り上げた旨主張しているが、その売上額を客観的に裏付ける資料は提出されていない。
また、請求人は、2014年7月1日から2016年10月31日までの間に、日本において、約1,132件のオーダーと約6,950万円の収益をあげたとしている(甲25、甲26)。
さらに、請求人は、フィニッシュベイビーボックス社の2016年1月1日から同年10月31日までのフェイスブックを通じた広告費用は、約220万円であると主張し(甲27)、広告手段として、成功報酬型の広告システムを扱うA8会員であると主張している。
しかしながら、フェイスブックを通じた広告の全容は把握することができず、A8を通じた商品購入がどれくらいあったのかについての主張立証はない。
請求人は、インターネットにおける情報の拡散量・スピードは、店舗における対面販売とは比較にならない程相当であり、需要者のブログ、ツイート等は、商標の周知性に多大な影響を及ぼしていると主張し、それらの記事を挙げている(甲30?甲35、甲43?甲51、甲53?甲55、甲93)。
しかしながら、これらのブログ、ツイートをどれくらいの者が閲覧したのかは不明である。
(ウ)諸外国における周知性について
請求人は、外国における記事(甲69?甲73、甲94?甲96)を挙げ、これらの記事において、フィンランドの育児制度を紹介すると同時にフィニッシュべイビーボックス社が紹介され、「FINNISH BABY BOX商品」の写真が引用されていると主張している。
しかしながら、これらの記事は、異なる国における、合わせて5件の掲載記事であって、掲載内容の全容も明らかでない。
(2)上記(1)によれば、フィニッシュベイビーボックス社は、2014年設立以来、フィンランド政府の子育て支援策としての育児パッケージと同様の育児用商品パッケージを商品化して、フィンランド以外の国にオンライン販売をしているものの、当該商品に引用商標1又は「FINNISH BABY BOX」の文字を継続的に付していたことを客観的に把握することができない。
また、客観的な売上額も把握できないことに加え、2017年における、国内のベビー用品・関連サービス市場は、約4兆19億円である(乙1)ことからすると、その市場全体からみて、請求人の主張する売上高はさほど高いものということはできず、請求人の主張する2014年7月1日から2016年10月31日までの間の日本におけるオーダー数と収益についても、約2年4か月の販売期間における数値であることからすると、さほど高いものとはいい難い。
さらに、宣伝広告についても、請求人の主張するフェイスブックにおける日本向けの広告は、その広告内容の全容が不明であって、約220万円とする広告費用も、その市場規模からみて、高いものとはいい難い上、A8を通じた商品購入がどれくらいあったのかについての主張立証はなく、需要者のブログ、ツイートの閲覧数も不明であって、その宣伝広告の規模や効果を客観的に確認することができる資料は提出されていないから、宣伝広告の観点から、引用商標の周知著名性の程度を推し量ることはできない。
加えて、外国における記事(甲69?甲73、甲94?甲96)は、異なる国における、合わせて5件の掲載のみであって、その掲載内容の全容も明らかでないことから、これらの記事によって、引用商標が外国において周知著名であるということはできない。
そうすると、請求人が提出した証拠をもってしては、引用商標1も、その日本語表記として使用されていると主張する引用商標2及び引用商標3のいずれについても、フィニッシュベイビーボックス社の商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、外国及び我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
3 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標
本件商標は、「ベビーボックス」の片仮名よりなるものであるから、その構成文字に相応して「ベビーボックス」の称呼を生じるものであり、「赤ちゃんに関連する箱・箱状のもの」あるいは「小さな箱」程の観念を生じるものである。
(2)引用商標1
引用商標1は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成文字に相応して「フィニッシュベビーボックス」の称呼が生じるものである。
そして、「FINNISH BABY BOX」の語全体としては、辞書等に載録のないものであって、上記2のとおり、引用商標1の周知著名性は認められないものの、「FINNISH」が「フィンランドの」の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典第3版」大修館書店発行)であることからすれば、引用商標1からは「フィンランドの赤ちゃんに関連する箱・箱状のもの」あるいは「フィンランドの小さな箱」程の観念が生じ得るものである。
なお、請求人は、「FINNISH」の語がフィンランドを意味する語であって、産地を表すものであり、構成文字が三段に書されているから、引用商標1からは、「ベビーボックス」又は「ベイビーボックス」の称呼も生じる旨主張している。
しかしながら、「FINNISH」の語がフィンランドを意味する語であるとしても、当該語が、我が国において、広く知られているものとはいい難い上、同じ大きさ、同じ書体で三段にまとまりよく配置された引用商標1の文字構成からして、「FINNISH」の文字が捨象され、「BABY BOX」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものということもできない。
また、請求人も、引用商標1の構成中、「BABY」と「BOX」の語自体は、REUTERSの記事(甲16)において「育児用品を詰め合わせた箱」を「baby box」という名称で紹介していることから既存語と理解されるのに対し、「FINNISH」の語がフィンランドを意味する語とはいえ、「baby box」に「FINNISH」の語を結合することにより独自の「FINNISH BABY BOX」という語を形成している旨主張しているところである。
以上を考慮すると、引用商標1は、その構成全体をもって認識され、把握されるというのが相当であるから、引用商標1から「ベビーボックス」又は「ベイビーボックス」の称呼も生じるという請求人の主張は採用できない。
(3)引用商標2
引用商標2は、「フィニッシュベイビーボックス」の片仮名からなるところ、その構成文字に相応して「フィニッシュベイビーボックス」の称呼が生じるものである。
そして、当該語は、辞書等に載録されている語でもなく、上記2のとおり、引用商標2の周知著名性は認められないことからすれば、引用商標2は、特定の観念を生じることのない一種の造語と認識されるというのが相当である。
なお、請求人は、「フィニッシュ」の語が地理的表示であるから除外され、引用商標2からは、「ベイビーボックス」又は「ベビーボックス」の称呼も生じる旨主張している。
しかしながら、片仮名からなる「フィニッシュ」の語は、フィンランドを意味する語として理解されるというよりは、むしろ、「おわり。結末。仕上げ。」の意味を有する語(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店発行)として親しまれているものというべきであり、「フィニッシュベイビーボックス」の片仮名を一連に表した引用商標2の文字構成からして、「フィニッシュ」の文字が捨象され、「ベイビーボックス」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものということもできない。
そうすると、引用商標2は、その構成全体をもって認識され、把握されるというのが相当であるから、引用商標2から「ベイビーボックス」の称呼、ましてや「ベビーボックス」の称呼も生じるという請求人の主張は採用できない。
(4)引用商標3
引用商標3は、「フィンランド・ベイビー・ボックス」の片仮名からなるところ、その構成文字に相応して「フィンランドベイビーボックス」の称呼が生じるものである。
そして、当該語は、辞書等に載録されている語でもなく、上記2のとおり、引用商標3の周知著名性は認められないものの、引用商標3からは「フィンランドの赤ちゃんに関連する箱・箱状のもの」あるいは「フィンランドの小さな箱」程の観念が生じ得るものである。
なお、請求人は、「フィンランド」の語が地理的表示であるから除外され、引用商標3からは、「ベイビーボックス」又は「ベビーボックス」の称呼も生じる旨主張している。
しかしながら、同じ大きさ、同じ書体で、「フィンランド」、「ベイビー」及び「ボックス」の語を中黒(・)を介してまとまりよく一連に配置した引用商標3の文字構成や構成全体として生じ得る「フィンランドの赤ちゃんに関連する箱・箱状のもの」あるいは「フィンランドの小さな箱」程の観念を考慮するに、引用商標3から、「フィンランド」の文字が捨象され、「ベイビーボックス」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものとはいい難い。
そうすると、引用商標3は、その構成全体をもって認識され、把握されるというのが相当であるから、引用商標3から「ベイビーボックス」の称呼、ましてや「ベビーボックス」の称呼も生じるという請求人の主張は採用できない。
(5)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標を比較するに、両者の外観は、それぞれ上記(1)ないし(4)のとおりであるから、外観においては明らかに異なるものである。
そして、本件商標から生ずる「ベビーボックス」の称呼と引用商標から生ずる「フィニッシュベイビーボックス」又は「フィンランドベイビーボックス」の称呼とは、「フィニッシュ」又は「フィンランド」の音の有無の差異等から明瞭に聴別できるものである。
また、観念については、本件商標からは、「赤ちゃんに関連する箱・箱状のもの」あるいは「小さな箱」程の観念を生じるものであるのに対し、引用商標1及び引用商標2からは、特定の観念は生じないものであり、引用商標3からは、「フィンランドの赤ちゃんに関連する箱・箱状のもの」あるいは「フィンランドの小さな箱」程の観念が生じ得るものであるから、本件商標と引用商標とは観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
引用商標は、上記2のとおり、フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、本件商標と引用商標とは、上記3のとおり、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号所定の他の要件を判断するまでもなく、同号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、上記2のとおり、フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
本件商標と引用商標とは、上記3のとおり、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、類似性の程度は高いとはいえない。
(3)商品・役務の関連性について
フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る商品は、ベビーベッドとして使用できる箱におむつ、新生児用衣類、まくら、クッション、マットレス、毛布等を詰め合わせた商品であり、その構成商品は、本件商標の指定商品・指定役務中の「まくら,マットレス,ベビーベッド」等の商品及び「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等の役務と関連性が高いものである。
(4)独創性の程度について
引用商標1は、「BABY」及び「BOX」という平易な英語に「フィンランドの」の意味を有する「FINNISH」の語を冠したものであるから、独創性の程度は高いものとはいえない。
また、引用商標2は、引用商標1の読みを片仮名表記したものであり、引用商標3は、「フィンランド」の国名、「BABY」及び「BOX」の語の読みをそれぞれ片仮名表記し、各語の間に中黒(・)を配したにすぎないものであるから、いずれも独創性の程度が高いとはいい難い。
(5)多角経営の可能性について
請求人の主張によれば、フィニッシュベイビーボックス社は、育児用商品パッケージのインターネット販売のみを行っているものであり、本件商標の指定商品・指定役務の全分野に及ぶような多角経営の可能性をうかがわせるような事情は見いだせない。
(6)小括
上記(1)ないし(5)によれば、フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る商品と本件商標の指定商品・指定役務の一部に関連性があるとしても、引用商標は、フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、本件商標と引用商標との類似性の程度は高いとはいえず、引用商標の独創性の程度も高いとはいえないことに加え、フィニッシュベイビーボックス社の本件商標の指定商品・指定役務の全分野に及ぶような多角経営の可能性をうかがわせるような事情は見いだせないことからすれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品・指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品・役務が他人(フィニッシュベイビーボックス社)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかのように、その商品・役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人は、本件商標は、フィニッシュベイビーボックス社の著名な略称を含む商標である旨主張しているが、請求人の提出に係る甲各号証をみても、フィニッシュベイビーボックス社の周知著名性は認められない。また、フィニッシュベイビーボックス社が「ベビーボックス」と略称されているともいい難い上、当該略称が著名であることを認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、本件商標は、他人の著名な略称を含むものとはいえないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
7 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号の趣旨
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないとしているところ、同号は、商標自体の性質に着目したものとなっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については、同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。
また、同号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。
そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっても、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(平成22(行ケ)第10032号参照)。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人は、出願の経緯その他の事情を考慮すると、本件登録は一般に国際信義に反し、登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するもので到底容認することはできないとして、需要者間に周知な引用商標と類似する本件商標を引用商標に係る商品と関連性を有する商品・役務を指定して登録を受け、当該商標権を根拠として商標権侵害の警告を行い、「ライセンス契約も可能である」との申し出をしていることは、引用商標の知名度に便乗した不正な意図を有するものである旨主張している。
しかしながら、前述のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、フィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る商品を表すものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されているということはできないものであり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、請求人の主張は、その前提において採用することができない。
また、「FINNISH BABY BOX商品」の販売は、フィンランド政府が行う施策ではなく、公的な性質を有するものでもないことからしても、本件商標の登録は、国際信義に反するものということはできない。
さらに、商標権侵害の警告やライセンス契約の申し出は、通常、商標権者による正当な行為と認め得るものであって、そのことが直ちに不正の目的に当たるということはできない。
その他、本件商標は、その構成文字からして、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、他の法律によってその使用が制限又は禁止されているものでもない。
しかも、請求人又はフィニッシュベイビーボックス社は、引用商標の使用開始に当たって、その商標を自ら登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら登録出願しなかった責めを被請求人に求めるべき具体的な事情を見いだすこともできない。
そうすると、本件商標について、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるということはできないし、そのような場合には、あくまでも、当事者間の私的な問題として解決すべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
してみれば、たとえ、被請求人が引用商標を知っていたとしても、本件商標の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような事情があったとまでは認めることはできないから、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」がある商標に該当するということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
8 請求人の主張について
(1)請求人は、フィニッシュベイビーボックス社の「育児用品の詰め合わせ」を購入しようとする需要者は、インターネットによる申し込みのみであり、周知著名性の判断には、その販売方法が考慮されるべきであると主張すると共に、需要度の少ない「育児用品の詰め合わせ」商品と一般的規模の商品を対比することは見当違いである旨主張している。
しかしながら、「育児用品の詰め合わせ」という形態をとる商品であっても、育児に必要な衣類や寝具等の個々の商品と、その需要者層が異なるわけではなく、かつ、その需要者は、子を持つ親のみならず、出産祝いとして、商品を選択する者も含まれるものであり、かかる需要者は、インターネットを介した取引のみを行っているわけではない。
(2)請求人は、個人ブログ等の記事の影響は大きく、各国のメディアに公表、発表されれば、それがたった一度でも世界的に情報が拡散される旨主張している。
しかしながら、情報の広がり方は、その記事内容や当該メディアの規模等によって異なるものというべきであって、本件については、前述のとおり、請求人の提出に係る甲各号証からは、引用商標がフィニッシュベイビーボックス社の取扱いに係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
(3)したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
9 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲 【別掲】
引用商標1



審理終結日 2020-04-06 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-05-21 
出願番号 商願2016-131239(T2016-131239) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (W162035)
T 1 11・ 22- Y (W162035)
T 1 11・ 23- Y (W162035)
T 1 11・ 222- Y (W162035)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2017-09-22 
登録番号 商標登録第5982271号(T5982271) 
商標の称呼 ベビーボックス、ベビー、ボックス 
代理人 杉本 ゆみ子 
代理人 荒川 卓哉 
代理人 杉本 有香 

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