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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
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審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1364232 
異議申立番号 異議2019-900226 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-19 
確定日 2020-07-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6146418号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6146418号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6146418号商標(以下「本件商標」という。)は,「いいべさーホワイトライスパワー」の文字を標準文字で表してなり,平成30年10月1日に登録出願,第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品として,令和元年5月8日に登録査定され,同月24日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2449748号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 ライスパワー
指定商品 第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成2年4月24日
設定登録日 平成4年8月31日
書換登録日 平成15年11月5日
(2)登録第5055111号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 RICE POWER(標準文字)
指定商品及び指定役務 第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」並びに第1類,第5類,第29類,第30類,第32類,第33類,第35類,第40類ないし第42類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成18年4月28日
設定登録日 平成19年6月15日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第671号証(枝番号を含む。ただし甲第491号は欠番。)を提出した。
なお,甲第4号証の7ないし甲第4号証の15,甲第503号証ないし甲第520号証,甲第628号証ないし甲第671号証は,登録異議申立書について補正できる期間経過後に提出されたものである。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人による使用許諾
申立人は,引用商標の商標権者であり(甲2,甲3),勇心酒造株式会社,株式会社コーセー,株式会社第一三共ヘルスケア,株式会社アイム,救心製薬株式会社及び全国農業協同組合連合会(以下,それらをまとめて,又はそれぞれを「引用使用者」ということがある。)のそれぞれに対し,引用商標に係る指定商品中の「化粧品」及び「せっけん類」について,引用商標の使用を許諾しており,この使用許諾は現在も有効に存続している(甲4の1?6)。
イ 引用使用者による商標の使用
(ア)勇心酒造株式会社について
勇心酒造株式会社(以下「勇心酒造」ということがある。)は,1974年(昭和49年)から米の総合利用研究を開始し,米由来の素材を開発し,その素材に「ライスパワーエキス」と命名した(甲501)。ライスパワーエキスは,お米や微生物を含む自然の要素を巧妙・複雑に組み合わせる醸造発酵技術により生み出され,その組み合わせにより,効能・効果が互いに異なる複数種類のライスパワーエキスが開発されている。勇心酒造のA氏は,1994年(平成6年)にライスパワーNo.11のエキス(以下「No.11エキス」という。)がアトピー性皮膚炎の発症予防に有効であることを証明し,1995年(平成7年)にNo.11エキスを「乾燥肌,かさかさ肌をもとにするアトピー性皮膚炎の発症予防剤」として厚生労働省に申請した(甲499 ほか)。その結果,2001年(平成13年)にNo.11エキスが「皮膚水分保持能の改善」という医薬部外品の新規有効成分として厚生労働省から認可を受けた(甲499)。勇心酒造は,2002年(平成14年)にNo.11エキスを配合した「アトピスマイル(ATOPI SMILE)」(甲9 ほか)の発売を高松記者クラブで発表し,多くのマスコミと新聞社がその発売をテレビや新聞で取り扱った(甲500)。そして,翌年の2003年(平成15年)以降に,勇心酒造はライスパワーエキスを化粧品会社や製薬会社など複数の企業に供給するとともに(甲204 ほか),No.11エキスを配合した「ライース リペア(RAIZ repair)」の製造・販売を開始した(甲217 ほか)。特に,2018年(平成30年)に販売を開始した「ライース クリアセラムNo.6」には,ライスパワーNo.6のエキスが配合されており,このライスパワーNo.6は,2015年(平成27年)に厚生労働省から「皮脂分泌の抑制」という新規有効成分として認可された米由来の素材である(甲499 ほか)。
(イ)勇心酉造による使用
勇心酒造は,1997年(平成9年)頃から現在に至るまで,引用商標に係る指定商品中(以下「引用指定商品中」という。)の「化粧品」及び「せっけん類」について,引用商標と同一又は同一性を損なわないものと認められる商標(以下「引用使用商標」という。)を使用している(甲5?甲83 ほか)。
(ウ)株式会社コーセーによる使用
株式会社コーセーは,2005年(平成17年)頃から現在に至るまで,引用指定商品中の「化粧品」及び「せっけん類」について,引用使用商標を使用している(甲84?甲109 ほか)。
(エ)株式会社第一三共ヘルスケアによる使用
株式会社第一三共ヘルスケアは,2006年(平成18年)頃から現在に至るまで,引用指定商品中の「化粧品」について,引用使用商標を使用している(甲110 ほか)。
(オ)株式会社アイムによる使用
株式会社アイムは,2000年(平成12年)頃から現在に至るまで,引用指定商品中の「化粧品」及び「せっけん類」について,引用使用商標を使用している(甲112?甲160 ほか)。
(カ)救心製薬株式会社による使用
救心製薬株式会社は,2000年(平成12年)頃から現在に至るまで,引用指定商品中の「化粧品」について,引用使用商標を使用している(甲161 ほか)。
(キ)全国農業協同組合連合会による使用
全国農業協同組合連合会は,2003年(平成15年)頃から現在に至るまで,引用指定商品中の「せっけん類」について,引用使用商標を使用している(甲166 ほか)。
(ク)小括
このように,引用使用者は,引用使用商標を「化粧品」及び「せっけん類」のいずれかの商品(以下「引用使用商品」という。)にそれぞれ使用している(甲168?甲502,甲534?甲608)。なお,以下,引用使用商標のうち,「ライスパワー」の片仮名を書してなるものを「引用使用商標1」といい,「RICEPOWER」の欧文字を書してなるものを「引用使用商標2」という。
ウ 引用使用商標の周知・著名性
(ア)テレビによる紹介
2007年(平成19年)から2016年(平成28年)の間に,複数のテレビ番組・テレビCMにおいて,勇心酒造の開発したライスパワーのエキス,ライスパワーのエキスを配合した化粧品及びせっけん類に係る商品が紹介されている(甲168?甲184 ほか)。
(イ)新聞・雑誌・書籍による紹介
2002年(平成14年)から2019年(令和元年)の間に,複数の新聞・雑誌等において,No.11エキスが厚生労働省から医薬部外品の承認を受けたことやライスパワーのエキスに関する機能,ライスパワーのエキスを配合した化粧品及びせっけん類に係る商品等が紹介されている(甲185?甲502,甲534?甲608 ほか)。
(ウ)インターネットによる紹介及び情報
2019年(令和元年)9月現在,勇心酒造,株式会社コーセー及び株式会社アイムの運営するウェブサイトやTwitter等のSNS等において,ライスパワーのエキスに関する機能,同エキスを配合した化粧品及びせっけん類に係る商品等が紹介されている(甲625)。
(エ)学術発表・受賞歴等
1993年(平成5年)から2019年(平成31年)の間に,複数の学術発表等において,ライスパワーのエキスに関する機能等が紹介され(甲521?甲529),また,勇心酒造又は同社のA氏が複数の賞を受賞したことが紹介等されている(甲530?甲533)。
(オ)勇心酒造による引用使用商標の使用地域
令和元年9月現在において,引用使用商標を付した勇心酒造の化粧品及びせっけん類(以下「勇心商品」という。)を取り扱う店舗は,北海道から九州地方まで,少なくとも全国に196店舗存在する(甲609)。また,勇心商品は,勇心酒造の運営するウェブサイトでも販売されている(甲625)。
(カ)勇心酒造による商品の販売数
勇心商品の累計売上個数は,1997年(平成9年)7月から2018年(平成30年)4月までの間に約753万個である(甲610)。また,1997年(平成9年)から2019年(平成31年)4月までの間に,勇心酒造は,ライスパワーのエキスを配合した化粧品及びせっけん類を約3545万個製造し引用使用者に卸している(甲611)。つまり,1997年(平成9年)から2019年(平成31年)4月までの間に,引用使用商標を付した引用使用商品の売上総数は,約4298万個となる。
(キ)小括
以上によれば,引用使用商標の付された引用使用商品は化粧品及びせっけん類を取り扱う分野において広く知られた商品である。また,新聞,雑誌及びテレビCM等による引用使用商品の紹介や引用使用商品に関する上記の宣伝広告を示す証拠において,多数のものに引用使用商標が表示されている。
これらを総合的に勘案すれば,引用使用商標は,引用使用者が製造・販売等した化粧品やせっけん類の名称として広く知られている商標であるといえ,本件商標の出願前から引用使用者が化粧品及びせっけん類について使用し,日本において広く知られるに至っている商標であるといえる。
このため,引用使用商標は,日本において著名商標である事実は疑いようがなく,本件商標の登録査定時においても継続してその著名性を維持しているものといえる。
エ 本件商標について
本件商標は,「いいべさーホワイトライスパワー」の文字を横書きしてなるものであり,引用使用商標1の文字をその構成中にそっくりそのまま含んでいる。これに対し,引用使用商標1は,辞書等に表示されていない造語であり,「化粧品」及び「せっけん類」について需要者の間に広く認識された商標である。このように,本件商標は,化粧品及びせっけん類について,需要者の間に広く認識された引用使用商標と他の文字又は図形等が結合した商標であり,また,その引用使用商標の部分が既成の語の一部となっていないことも明らかである(甲620)。したがって,本件商標は,引用使用商標1と類似する。
なお,本件商標は,視覚上,平仮名で表された「いいべさー」と片仮名で表された「ホワイトライスパワー」とを結合したものと看取され得るものであること,本件商標の称呼は,15字15音と極めて冗長であり,よどみなく一連に称呼できないこと,本件商標中の「ホワイト」の部分は,本件商標の指定商品(化粧品,せっけん類。以下「本件指定商品」という。)との関係において商品の色彩や肌の美白効果を表示する語として認識され,出所識別標識としての機能を果たすものではないこと(甲621?甲624),本件商標権者自らも,「いいべさー」と「ホワイトライスパワー」とを分離して二段に表示していること(甲627)等から,本件商標を常に一体としてみるべき理由はなく,平仮名で表された「いいべさー」と片仮名で表された「ホワイトライスパワー」がそれぞれに分離され,考察されるとみるのが自然である。そうだとすると,本件商標から分離され,考察される「ホワイトライスパワー」の部分が,引用使用商標と類似することから,本件商標と引用使用商標とが全体として類似することは明らかである。
オ 本件指定商品と引用使用商品との類否
本件指定商品の「化粧品」及び「せっけん類」は,引用使用商品の「化粧品」及び「せっけん類」と同一の商品である。したがって,本件指定商品と引用使用商品とは同一又は類似する商品である。
カ 結論
本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって,その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものであるため,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標1とを比較して観察すると,本件商標は,その指定商品について需要者の間に広く認識された引用商標1と,他の文字である「いいべさー」及び「ホワイト」とを結合した商標である(甲620)。また,本件商標中の「ライスパワー」の部分が既成の語の一部となっていない(甲620)。したがって,本件商標と引用商標1とは類似する。
本件商標と引用商標2とを比較して観察すると,上記で述べたように本件商標と引用商標1が類似することから,引用商標1と称呼を同じくする引用商標2とも類似すると判断するのが合理的である。したがって,本件商標と引用商標2とは類似する。
イ 本件指定商品と引用商標に係る指定商品との類否
本件指定商品の第3類「化粧品,せっけん類」は,引用商標に係る指定商品の第3類「化粧品」「せっけん類」と同一の商品である。したがって,本件指定商品と引用商標に係る指定商品とは同一又は類似する商品である。
ウ 結論
本件商標は,引用商標と類似のものであり,また,その指定商品も同一又は類似のものである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 出所の混同
本件商標と引用使用商標及び引用商標(以下,後者をあわせて「引用商標等」という。)を比較して観察すると,本件商標と引用商標等とは類似すること,引用商標等は化粧品を取り扱う業者や化粧品に興味のある需要者(特に女性層)には引用使用者の化粧品を表示するものとして著名でかつ独創的な商標であること,本件指定商品「化粧品,せっけん類」は引用使用者の使用する商品と密接な関連性を有しており,両商品の需要者は共通する。このため,本件商標と引用商標等との類似性の程度,引用商標等の周知・著名性の程度,本件商標の指定商品の分野における需要者の取引の実情等を総合的に考察すれば,本件商標がその指定商品に使用された場合には,それがあたかも周知・著名商標である引用商標等に係る引用使用者の製造・販売する「化粧品」及び「せっけん類」であるかのごとく誤認され,あるいは,組織上,経済上又は営業上の何らかの関連性を想起させ,あたかも引用使用者のグループ会社か,あるいは許諾を受けた者に係る商品であるかのごとく誤認させ,商品又は営業上の出所混同を生じるおそれは極めて高いといえるものである。
イ 結論
本件商標は,他人(引用使用者)の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標である。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
不正の目的
引用使用商標1及び引用商標1は,引用使用者の業務に係る商品「化粧品及びせっけん類」を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている。本件商標は,著名である引用使用商標1及び引用商標1のいずれかと他の文字及び図形を結合したものであるため,本件商標は引用使用商標1及び引用商標1のいずれとも類似するものである。なお,本件商標において引用使用商標1及び引用商標1のいずれかが既成語の一部となっていることはない。
そして,本件商標権者の代表者等は,ライスパワーのエキスを使った化粧品の開発を所望し,本件商標の出願前に「ライスパワー」の取引について勇心酒造を訪問している(甲612)が,この取引は不調に終わっている。これに鑑みると,前記代表者は,引用使用者の周知・著名商標であるライスパワーを認識していたことは明白であり,引用商標等の周知性及び顧客吸引力に便乗,いわゆるフリーライドして,不当な利益を得ようとの目的をもって登録出願したことは自明である。よって,本件商標は不正の目的をもって使用するために出願されたものである。
イ 結論
本件商標は,他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするために出願されたものである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次のとおりである。
(ア)申立人は,平成4年8月頃から,勇心酒造株式会社,株式会社コーセー,株式会社第一三共ヘルスケア,株式会社アイム,救心製薬株式会社及び全国農業協同組合連合会(引用使用者)に登録商標「ライスパワー」及び「RICE POWER」を「化粧品」「せっけん類」について使用することを許諾していたことがうかがえる(甲4の1?6)。
(イ)「ライスパワー」及び「RICE POWER」の語は遅くとも1988年(昭和63年)頃から,勇心酒造などが,米由来の素材(成分)を表すものとして用いていたことがうかがえる(甲498 ほか)。
(ウ)引用使用者は,平成14年2月頃から現在まで,米から抽出した成分「ライスパワーエキス(No.11など)」を配合したクリーム,化粧水などの化粧品,及び石けん,ボディソープなどのせっけん類を販売等している(甲185,甲192 ほか)。
(エ)引用使用者が販売等している化粧品,せっけん類の包装には,「ライスパワー」及び「RICE POWER」の文字が,縦長四角形内に白抜きで上部に「米」の文字をデザイン化したような図と下部に「RICE」と「POWER」の文字を2段に表した態様や「RICE POWER No11」,「ライスパワー[R]No.11」(異議決定注:「[R]」は「○」の中に「R」の記号。以下同じ。),「Rice Power」,「ライスパワー[R]エキスNo.1配合」,「RICE POWER No.11」,「ライスパワー[TM]配合」(異議決定注:「[TM]」は小さな文字で表された記号。),「ライスパワー[R]」などのような態様で表示されている(甲5,甲6,甲13,甲18,甲81,甲84,甲166 ほか)。
しかしながら,「ライスパワー」の表示は,ごく一部に顕著に表されているものが見受けられる(甲81,甲166 ほか)ものの,ほとんどがそれぞれの商品の商標とは別に表され,商品の成分を表示したものと認識される態様で表されているものである。
(オ)引用使用者が販売等している化粧品,せっけん類を紹介等する新聞,雑誌等の記事及び同商品の広告は,2002年(平成14年)から現在まで多数掲載され,それらには「ライスパワー No.11」「ライスパワーエキス」「ライスパワー」などの語が用いられている(甲185,甲194,甲195 ほか)ものの,それらの語は商品の成分の説明として用いられているものである。
(カ)申立人は,勇心酒造が販売した医薬部外品,化粧品などの売上本数リスト(甲610)及び勇心酒造が製造し出荷した医薬部外品,化粧品などの出荷本数リスト(甲611)を提出しているが,それらは容易に作成できるリストであり,それらのリストによっては,「ライスパワー」「RICE POWER」の文字からなる引用商標及び引用商標と同一性を損なわない商標(引用商標等)が使用された商品の売上,出荷本数であることが確認できない。
また,勇心酒造以外の引用使用者による引用商標等が使用された商品の販売数,販売数量など販売実績を示す証左は見いだせない。
(キ)申立人が引用商標等を使用している証拠は提出されていない。
イ 上記アのとおり,引用使用者は,米由来の成分「ライスパワー(RICE POWER)」が配合された化粧品やせっけん類を平成14年頃から現在まで販売等していることは認められるものの,引用商標等を使用した商品の販売数,販売数量など販売実績を示す証左は見いだせないから,引用商標等は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,いずれも引用使用者の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできず,また申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとも認めることもできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標は,上記1のとおり,「いいべさーホワイトライスパワー」の文字を標準文字で表してなるところ,当該文字が「いいべさー」の平仮名と「ホワイトライスパワー」の片仮名を結合したものであるとしても,同書,同大,同間隔でまとまりよく表わされているものであり,当該文字から生ずる「イイベサーホワイトライスパワー」の称呼も,よどみなく一連に称呼できるものである。
そうすると,本件商標は,「イイベサーホワイトライスパワー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1及び引用商標2は,「ライスパワー」及び「RICE POWER」の文字からなり,いずれもそれらの文字に相応した「ライスパワー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
ウ そこで,本件商標と引用商標1を比較すると,両者は,上記ア及びイのとおりの外観であって,「いいべさーホワイト」の文字の有無により構成態様が明らかに異なり,また,称呼においても「イイベサーホワイト」の音の有無により語調語感が明らかに異なるものである。そして,観念は,比較できないものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
また,本件商標と引用商標1は,非類似の商標であるから,引用商標1を欧文字で表したと認められる引用商標2と本件商標も非類似であること明らかである。
なお,申立人は,本件商標は需要者の間に広く認識された引用商標1と他の文字「いいべさー」及び「ホワイト」とを結合した商標である,本件商標中の「ライスパワー」の部分は既成の語の一部となっていないなどとして,本件商標は引用商標1と類似し,また,引用商標1と称呼を同じくする引用商標2とも類似する旨主張している。
確かに上記アのとおり,本件商標は,「いいべさーホワイトライスパワー」の文字を標準文字で表してなるものであって,その構成文字種が異なることなどから,「いいべさー」と「ホワイトライスパワー」の文字を結合したものと認識され得るといえるとしても,同書,同大,同間隔で一体に表されているものであって,かつ,本件商標のかかる態様において,本件商標の構成中「ライスパワー」の文字部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべき事情は見いだせない。さらに,上記(1)のとおり引用商標は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,引用使用者及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められない。
そうすると,本件商標は,「ライスパワー」と他の文字とを結合したものということはできない。
したがって,申立人のかかる主張はその前提において理由がない。
その他,両商標が類似するというべき事情も見いだせない。
エ 以上のとおり,本件商標と引用商標は非類似の商標であるから,両商標の指定商品が同一であるとしても,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
ア 上記(1)のとおり引用商標等は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,引用使用者及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
イ また,引用商標等は,いずれも「ライスパワー」及び「RICE POWER」の文字からなるものといえるから,上記(2)と同様の理由により,本件商標と引用商標等は相紛れるおそれのない非類似の商標ということができる。
なお,申立人は,本件商標は需要者の間に広く認識されている「ライスパワー」をそのまま含んでいる,本件商標は構成する文字種が異なる,本件商標の称呼は冗長である,「ホワイト」は本件指定商品との関係において商品の出所識別標識としての機能を果たすものではないなどとして,本件商標は「ホワイトライスパワー」の部分が分離され,当該部分と引用商標等は類似する旨主張している。
しかしながら,上記(2)と同様の理由で本件商標と引用商標等とは非類似の商標と判断するのが相当である。
したがって,申立人のかかる主張は採用できない。
ウ 上記のとおり,引用商標等は引用使用者及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,本件商標と引用商標等は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標であるから,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(引用使用者及び申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり,引用商標等は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,引用使用者及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,本件商標と引用商標等は非類似の商標である。
さらに,本件商標は,引用商標等の名声,信用等にただ乗りするなど不正の目的をもって使用するものと認めることはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲
異議決定日 2020-06-29 
出願番号 商願2018-123277(T2018-123277) 
審決分類 T 1 651・ 253- Y (W03)
T 1 651・ 223- Y (W03)
T 1 651・ 222- Y (W03)
T 1 651・ 251- Y (W03)
T 1 651・ 255- Y (W03)
T 1 651・ 261- Y (W03)
T 1 651・ 262- Y (W03)
T 1 651・ 271- Y (W03)
T 1 651・ 252- Y (W03)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡辺 悦子 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
平澤 芳行
登録日 2019-05-24 
登録番号 商標登録第6146418号(T6146418) 
権利者 株式会社天美
商標の称呼 イイベサーホワイトライスパワー、イイベサーホワイトライス、イイベサー、イーベサー、ホワイトライスパワー、ホワイトライス、ライスパワー、ライス、パワー 
代理人 山村 大介 
代理人 伊藤 温 
代理人 津国 肇 

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