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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W30
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない W30
審判 全部無効 外観類似 無効としない W30
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W30
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W30
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W30
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W30
管理番号 1364191 
審判番号 無効2018-890017 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2020-07-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第5901554号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5901554号商標(以下「本件商標」という。)は、「エメラルド」及び「EMERALD」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成27年3月9日に登録出願、第30類「代用コーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶飲料,その他の茶,氷」を指定商品として、同28年10月17日に登録査定、同年12月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標及び請求人の使用に係る商標
本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、以下に掲げるとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第1795139号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「COLOMBIA」及び「EMERALD MOUNTAIN COFFEE」の文字を上下二段に横書きしてなるもの。
登録出願日:昭和46年12月10日
設定登録日:昭和60年7月29日
書換登録日:平成19年3月14日
指定商品 :第30類 「コロンビア産のコーヒー」及び第32類「コロンビア産のコーヒーシロップ」
2 登録第3135574号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:EMERALD MOUNTAIN
登録出願日:平成4年9月30日
設定登録日:平成8年3月29日
指定役務 :「飲食物の提供」を含む第42類に属する商標登録原簿記載の役務
3 登録第4473885号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:EMERALD MOUNTAIN(標準文字)
登録出願日:平成12年1月25日
設定登録日:平成13年5月11日
指定商品 :第30類「焙煎したコーヒー豆,コーヒー豆をひいて液体状にしたものを濃縮して凍らせたコーヒー,その他のコーヒー及びココア,コーヒー豆,コーヒーゼリー,その他の菓子及びパン,コーヒーゼリーのもと,コーヒーを使用した即席菓子のもと,コーヒーシュガー」及び第32類「コーヒーシロップ,その他の清涼飲料,果実飲料,コーヒー入り乳清飲料」
4 登録第5302830号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成21年7月7日
設定登録日:平成22年2月19日
指定商品 :第30類「代用コーヒー,焙煎して挽いたコーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー,コーヒー豆,コーヒーを使用してなるペストリー,コーヒーを使用してなるその他の菓子及びパン,コーヒーを使用してなる穀物調整品,コーヒーを使用してなるその他の穀物の加工品,コーヒー香味料(精油のものを除く。)」
5 登録第5309924号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:エメラルドマウンテン(標準文字)
登録出願日:平成21年8月3日
設定登録日:平成22年3月19日
指定商品 :第30類「代用コーヒー,焙煎して挽いたコーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー,コーヒー豆,コーヒーを使用してなるペストリー,コーヒーを使用してなるその他の菓子及びパン,コーヒーを使用してなる穀物調整品,コーヒーを使用してなるその他の穀物の加工品,コーヒー香味料(精油のものを除く。)」
6 登録第5422581号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:EMERALD MOUNTAIN(標準文字)
登録出願日:平成23年1月19日
設定登録日:平成23年7月1日
指定商品 :第29類「コーヒー入りの乳飲料」
なお、上記、引用商標1ないし引用商標6をまとめて「引用商標」という場合がある。
7 請求人の使用に係る商標
請求人の使用に係る商標は、請求人が、「コロンビア共和国(以下「コロンビア」という。)産のコーヒー豆」及び「コロンビア産のコーヒー」に使用する商標であって、「EMERALD MOUNTAIN」の欧文字を横書きしてなる商標及び「エメラルドマウンテン」の片仮名を横書きしてなる商標(以下、これらをまとめて「使用商標」という場合がある。)である。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第37号証(枝番号を含む。なお、甲第28号証及び甲第31号証は、複数の証拠をまとめたもので、それぞれの証拠を数字を丸で囲んだ表記にしているところ、これらは、例えば「甲第28号証(1)」「(甲28(1))」と表記する。)を提出した。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。
1 本件審判の請求の利益について
請求人は、平成28年12月22日に第30類「代用コーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,コーヒー豆」を指定商品として、「EMERALD」の文字を標準文字で表したものについて商標登録出願を行ったところ(商願2016-143977)、当該出願に対して本件商標を引例とする拒絶理由通知が発せられた。よって、請求人は、本件審判請求を行うことにつき利害関係を有する。
2 請求人について
請求人であるフェデラシオン・ナショナル・デ・カフェテロス・デ・コロンビア(Federacion Nacional de Cafeteros de Colombia、略称「FNC」)は、コロンビアの56万世帯以上のコーヒー農家(生産者)を代表する組織として、生産者自らの手によって1927年に設立されたNGOのコーヒー輸出団体であり、その東京事務所は、1962年に設立された(甲8?甲12、甲15、甲21)。
請求人は、世界第3位のコーヒー生産国であるコロンビアの農家が生産するコーヒーの買取り保証、品質基準の認定を行い、請求人を通じて、外国を含めたコーヒー市場に供給することでコロンビア産コーヒーの品質維持・向上に役立っている(甲9、甲11、甲12)。
3 請求人と被請求人との関係について
請求人は引用商標1の使用を被請求人に許諾しており(甲16)、被請求人は、1994年に日本国内の子会社の日本コカ・コーラ株式会社を通じて、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)を使用した缶コーヒーを発売し、現在に至っている(甲17)。
しかし、被請求人は、請求人に全く無断で、「EMERALD/エメラルド」の文字からなる商標を平成23年10月に登録出願し、平成24年3月に商標登録(登録第5479186号)を得ている(甲18)。
そして、被請求人は、登録第5479186号に係る商標を使用しておらず、請求人が不使用取消審判の請求を検討していることを察知するや否や、登録の取消を免れがたいとするため(実際に、登録第5479186号に対する不使用取消審判においては、被請求人は答弁書を提出することなく、登録取消の審決が確定している。)、実質的に同一といえる本件商標の出願、登録を行い、実質的な「EMERALD/エメラルド」の権利の延命を図ったもので、被請求人の「EMERALD/エメラルド」の商標をめぐる出願、登録に係る行動は、請求人のこれまでの信頼を著しく裏切るものであり、両者の信頼関係を著しく損なう状況となっている。
4 引用商標及び使用商標の周知・著名性について
請求人は高品質コロンビア産コーヒーの宣伝販売を目的として、1970年の大阪万国博覧会の期間中に、日本で初めて「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)コーヒーの販売を開始し(甲8、甲11)、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)は、請求人による独自の厳しい品質基準のもと、コロンビア産コーヒー全生産量の中でも厳選されたわずか3%未満の高級豆だけがその名を冠することを許される高品質コーヒーを指称するものとして、数多くの新聞、書籍、事典、ウェブサイトで紹介され続けている(甲10、甲19?甲31)。
また、日本全国各地の623件もの店舗において、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)が販売されている(甲32)。
加えて、請求人にあっては、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)を我が国において広めるべく、積極的な販売促進活動を展開している(甲8、甲11、甲29の79)。
このような積極的な販売促進活動や請求人による品質の維持管理活動の甲斐あって、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)は、請求人を通じて日本を始めとする世界各国に供給されているコーヒー豆やコーヒーに使用され、我が国においては高級コロンビア産コーヒーとして広く認知されるに至っており、引用商標及び使用商標は、コロンビア産の高品質コーヒー・コーヒー豆を指称する商標として、我が国において周知・著名な地位を獲得している。
5 本件商標と引用商標及び使用商標との類似性・混同可能性について
引用商標及び使用商標中の「MOUNTAIN」及び「マウンテン」の文字は、コーヒーの栽培には火山質土壌が適しており、火山帯、とりわけ高山の一帯に農園が多く(甲25)、コーヒー豆の銘柄には、「ブルーマウンテン」、「ハイマウンテン」、「クリスタルマウンテン」、「コーラルマウンテン」、「カリビアンマウンテン」等、「マウンテン」の文字を含む名称が多数存在している(甲25)ことから、「コーヒー豆」との関係において、識別力がないか極めて弱い。
一方、引用商標及び使用商標中の「EMERALD」又は「エメラルド」の文字は、請求人の所在国であるコロンビアが最高級エメラルドの産出国として世界第一位を誇っている事実に由来し(甲10、甲25、甲26)、コーヒーの種々の銘柄に「EMERALD」又は「エメラルド」の文字を含むものが存在しないことからすると、引用商標及び使用商標にあっては、「EMERALD」又は「エメラルド」の文字が、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
このことは、請求人が商標「コロンビアのエメラルド」に対して申し立てた異議事件(異議2015-900066)の異議決定において、「使用商標は、『EMERALD MOUNTAIN』及び『エメラルドマウンテン』の文字からなるものであるところ、・・・、『コロンビア産のコーヒー豆及びコーヒー』を表示するものとして、周知・著名といえるものであるから、取引者、需要者をして、請求人の業務に係る『コロンビア産のコーヒー豆及びコーヒーのブランドであるエメラルドマウンテンというコーヒー』と認識されるものである。そして、産地が山合いの高地であって、それが『MOUNTAIN』(マウンテン)に通じるものであるから、看者に強い印象を与えるのは、『EMERALD MOUNTAIN』の中でも、『EMERALD』の部分といえる。」との判断がなされていることからも、裏付けられる(甲33)。
加えて、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が実際に使用されるにあたっては、スペースやデザインの都合上、一連での表記が困難な場合も多々あることから、「EMERALD」を上段に、「MOUNTAIN」を下段に配し、上下二段で表記されることが多いという取引の実情がある(甲10、甲24)。
そうすると、本件商標と引用商標及び使用商標とは、「エメラルド」の称呼及び「(宝石の)エメラルド」の観念を共通にする類似する商標といえる。
また、本件商標の指定商品「代用コーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶飲料,その他の茶,氷」と引用商標の指定商品及び使用商標に係る商品「コーヒー,コーヒー豆」とは、販売場所、提供場所、需要者等を共通にする類似性が極めて高い商品である。
以上のとおりであるから、本件商標は、引用商標及び使用商標との関係で、混同を生じさせるおそれがあるといえる。
6 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と引用商標及び使用商標とは、「エメラルド」の称呼及び「(宝石の)エメラルド」の観念を共通にする類似の商標である。しかも、本件商標の指定商品「代用コーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶飲料,その他の茶,氷」と引用商標の指定商品及び使用商標に係る商品「コーヒー,コーヒー豆」とは、販売場所、提供場所、需要者等を共通にする類似性が極めて高い商品である。そして、本件商標に係る商標登録出願の日前に、これらの引用商標の商標登録出願は行われているから、本件商標はこれと類似する先願に係る他人の登録商標が存在するにもかかわらず登録されたといえる。
したがって、本件商標は、引用商標1及び引用商標3ないし5との関係において、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効にされるべきである。
7 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
引用商標及び使用商標は、請求人の業務に係る商品「コーヒー,コーヒー豆」を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものであり、しかも、本件商標は、上記5のとおり、引用商標及び使用商標と類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品及び使用商標に係る商品と極めて類似性が高いものである。
してみれば、本件商標がその指定商品に使用されたときには、取引者・需要者をして、あたかも請求人の業務に係る商品であるかの如く、または請求人と経済的・組織的に何らかの関連を有するものの提供に係る商品であるかの如く、その出所について誤認混同を招くおそれがあること明らかである。
したがって、本件商標は、引用商標及び使用商標との関係において、商標法第4条第1項第10号、さらに、仮に同項第10号や同項第11号に該当しない場合には同項第15号に該当するものであるから、これらの規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効にされるべきである。
8 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記4及び5で述べたとおり、使用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に我が国の需要者に広く認識されており、かつ、本件商標は、引用商標及び使用商標と類似する商標である。
一方、上記3で述べたとおり、被請求人は、請求人から引用商標1の使用を許諾されており(甲16)、当該許諾に基づき、被請求人子会社の日本コカ・コーラ株式会社が、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)を使用した缶コーヒーを製造・販売している(甲17)。すなわち、被請求人は、請求人の引用商標1の恩恵を受けている立場にあり、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の存在はもちろんのこと、周知著名な引用商標及び使用商標を当然に認識していた。にもかかわらず、請求人に一切の断りなく、被請求人は、引用商標及び使用商標と出所の混同が生じる本件商標を採択、出願し、登録を受けたのである。
しかも、被請求人は、自らは使用していないにもかかわらず、本件商標とは上段と下段の文字を入れ替えただけの商標「EMERALD/エメラルド」に係る登録(第5479186号)に対する不使用取消審判の請求の動きを察知したとたんに本件商標を出願し、登録を受けている。このことは、被請求人は、本件商標についても出願当初から使用する意図はなく、不使用に基づく商標登録の取消(商標法第50条)を免れることだけを目的として、本件商標を出願したことを物語るに他ならない。
以上の本件商標の登録出願の経緯等を総合して判断すれば、結局のところ、被請求人は、請求人が引用商標の使用を許諾してきた信頼関係を裏切り、引用商標及び使用商標に蓄積された名声、信用、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し、これらを希釈化(ダイリューション)させる等の不正の目的をもって、本件商標を出願し、登録を受けたとしか考えられない。
よって、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効にされるべきである。
9 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たる商標とは、平成17年(行ケ)第10349号審決取消請求事件で判示されたとおり、下記AないしEに該当する場合をいう。
A その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合
B 当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合
C 他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合
D 特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合
E 当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合
そこで、上記AないしEを踏まえて、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するかを以下に検討する。
まず、上記8でも述べたとおり、被請求人の本件商標の出願、登録は、不正目的によるものであること明らかであるから、上記のうちのEの商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当することは明らかである。
加えて、本件商標は、上記のうちのDの国際信義に反する場合にも該当するものであるから、以下、詳述する。
上記2でも述べたとおり、請求人は、コロンビアの56万世帯以上のコーヒー農家(生産者)を代表する農業関連NGOであり、コロンビア産コーヒーの品質向上や安定供給を図るだけでなく、加盟生産者が収穫したコーヒーの全量を買取り、その3%未満のみしか「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)と認定されない厳しい品質基準を設けることによりコロンビア産コーヒーの差別化・ブランドを図り、小規模コーヒー農家の多いコロンビアにおいて、コーヒーの買取り保証をする等、コーヒー生産者の利益保護にも積極的に取り組んでいる(甲8?甲12)。
また、請求人は、コーヒー豆の品質向上と環境保全を研究する「セニカフェ」という国立コーヒー研究センターを運営し、バイオテクノロジーを駆使した丈夫で品質の良い苗木の遺伝子等の研究を行うほか、コーヒー生産者の収入最適化のため、コーヒーの木植え替え事業も行っている(甲9、甲12)。このような請求人の活動は、政府閣僚とコーヒー生産者の代表で構成される国家コーヒー委員会によって支援されており(甲12)、サントス現大統領政権と請求人との間では「コーヒー繁栄のための協定」が締結され、請求人の研究や商品化等の活動に対し、コロンビア政府の援助がなされている(甲12)。更に、コロンビアにおいて、コーヒーは全国32県のうち20県にわたる588以上の地方自治体(コロンビア全体の約50%)で生産され、56万世帯以上のコーヒー生産者と約300万人のコロンビア国民が直接又は間接的に日々の収入をコーヒー産業から得ていること、コーヒー産業が農業関連GDP(国内総生産)の17%を、農業分野の就労の33%(約80万7千人)を占めていることに鑑みると(甲9、甲11)、コーヒー産業はコロンビア経済の要となる基幹産業であり、コロンビア国民の生活を支えているといっても過言ではない。なお、コロンビアのコーヒー産地の文化的景観は、2011年にユネスコの世界遺産に登録され、登録された地域がコロンビアの観光名所となっている点からも(甲9、甲35?甲37)、コーヒー産業がコロンビア経済の屋台骨を支える産業であることが容易に理解できる。
そして、今や日本は請求人にとって最もコーヒー販売量が多い国であり、米国に次ぐ第2位のマーケットであるという事実(甲8、甲12)は、我が国とコロンビアの良好な関係構築にコロンビア産コーヒーが重要な役割を果たしていることを如実に物語っている。
このような状況において、請求人の東京事務局長S氏が本件商標の存在を非常に憂慮し(甲11)、現駐日コロンビア大使のG氏が本件商標の無効を求める本件審判請求を支持していることは(甲12)、コロンビア産コーヒーの代名詞である「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)を同国政府がことのほか重視し、コロンビア経済を支える基盤と認識していることを示すに他ならない。
そして、本件商標の指定商品は、「代用コーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶飲料,その他の茶,氷」であり、コロンビア産の高品質のコーヒーに限定されているわけでもなければ、コーヒーにさえ限定されていないのであるから、本件商標が請求人と関係のない者によって、その指定商品に使用された場合、本件商標が引用商標及び使用商標と類似し、混同可能性が極めて高いことを踏まえると、請求人、コロンビア政府、さらには、コロンビアのコーヒー生産者が長年にわたって努力してきた品質管理に裏打ちされた高品質コーヒーとしての評価、信頼が大きな打撃を受けることは明らかである。
そうすると、コロンビア政府又は請求人と関係ない者にコロンビア産以外も含めたコーヒー等の商品について本件商標の登録を認めることは、請求人、コロンビア政府、さらには、コロンビアのコーヒー生産者の長年の努力を無にするおそれがあるものであり、我が国とコロンビア両国が長年にわたり築いてきた良好な関係に影響を及ぼしかねず、両国の公益に反し、国際信義に反するといわざるを得ない。
以上のとおり、本件商標は、商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであり、しかも、コロンビアと我が国の国際信義にも反するものであるから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであり、その登録は無効にされるべきである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、審判事件答弁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第42号証を提出した。
1 請求人は、本件商標が引用商標及び使用商標と「エメラルド」の称呼及び「(宝石の)エメラルド」の観念を共通にする点において類似すると主張し、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号、同項第19号、さらに同項第7号に該当すると述べている。しかし、以下に述べるとおり、本件商標は引用商標及び使用商標に類似するものではない。
2 本件商標と引用商標及び使用商標との類似性について
(1)本件商標
本件商標は、片仮名「エメラルド」と欧文字「EMERALD」とを上下二段に書してなるものであり、これらは互いに英語表記とその読み仮名の関係であることは明らかである。
そして、本件商標を構成する「エメラルド」「EMERALD」の文字は、多くの事典、辞典類において宝石の一つとしての記載はあるものの、「エメラルドマウンテン」又は「emerald mountain」の略語であるかのような記載をしたものは一切発見されなかった(乙1?乙5)。
そうとすれば、本件商標は「宝石の一種であるエメラルド(又は翠玉)」の観念のみが生じるものとして認識されることが明らかである。またこれより「エメラルド」の称呼のみが生ずる。
(2)引用商標及び使用商標
引用商標及び使用商標は、「COLOMBIA」と「EMERALD MOUNTAIN」を上下二段に書したもの(引用商標1)、「EMERALD MOUNTAIN」と1行に表したもの(引用商標2、引用商標3、引用商標6及び使用商標)、「EMERALD」と「MOUNTAIN」を上下二段に書し輪郭図形内に配置したもの(引用商標4)、「エメラルドマウンテン」と片仮名で一連に書したもの(引用商標5)である。これらは上下二段に書き分けたものも含めて、いずれも「EMERALD」と「MOUNTAIN」の2語を結合し、または片仮名「エメラルドマウンテン」と一連にまとまりよく表すことによって、全体で「エメラルドマウンテン」の称呼のみを生ずるものというほかない。
そして、前記辞典類(乙1、乙2)において、「mountain」及び「マウンテン」の語については「山、山脈、山岳」と説明されている。すなわち引用商標及び使用商標は「宝石のエメラルドを産出する山」、「エメラルドでできた山」あるいは「エメラルドのように美しい山」といった観念を想起させるものというべきである。
そして、これらを「エメラルド」のように略称するといった事情は何ら存在しない。
(3)本件商標と引用商標及び使用商標との類似性について
以上のとおり、本件商標より「エメラルド」の称呼のみが生ずるものであり、「宝石の一種であるエメラルド(又は翠玉)」の観念が生じるものとして認識されるのに対して、引用商標及び使用商標からは、「エメラルドマウンテン」の称呼のみを生じ、また「宝石のエメラルドを産出する山」等の意味合いを想起させるであり、称呼においても到底紛らわしいといえるものではなく、観念等においても、「宝石」と「山」の差異があり、混同を生ずるような性質の共通点はないというべきである。
よって、本件商標と引用商標及び使用商標は類似するものではなく、また混同を生ずるような共通性があるともいえない。
なお、指定商品中に「コーヒー」又は「コーヒー豆」と同一又は類似の商品を含みながら、本件商標と引用商標及び使用商標の関係と同様の類型、すなわち「○○」と「○○マウンテン」を非類似と認定した上で、異なる主体に対して登録されている併存例が多数存在している(乙6?乙42)。
(4)結論
請求人は引用商標及び使用商標の著名性などに言及するも、その主張するところは結局本件商標がそれらに類似することを前提とするものであるから、その前提において誤っているというほかない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)コロンビア及び請求人について
ア 請求人の東京事務局が作成した「ありがとう50周年」の表題の記念誌(2012年9月27日初版第1刷発行)には、「1927年に設立されたコロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)は民主的で活動的な組織として、世界で有数の規模を誇る農業関連NGOであり、コーヒー輸出団体でもあります。」の記載があり、また、同人のウェブサイトにも同様の記載がある(甲8、甲9)。
イ 成美堂出版が発行し、「C」の文字を丸で囲んだ著作権マーク(以下「(C)」と表記する。)とともに「SEIBIDO SHUPPAN 2010 Printed in japan」と奥付に記載のある「美味しい珈琲BOOK」には、「コーヒー生産地ガイド」として、「Colombia コロンビア」の見出しのもと、「生産量は世界第三位小規模農園がつくる良質なコーヒー」及び「ブラジル、ベトナムに次いで世界第三位の生産量を誇るコロンビア。...コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC)がコーヒーの生産や流通を管理し、品質や生産環境の向上に努めていて、スペシャリティコーヒーへの取り組みも積極的に行われています。」の記載がある(甲19)。
ウ 「珈琲の教科書」(新星出版社 2010年4月25日 初版発行)には、「コーヒーの産地」として、「世界第3位の生産量は高地の小規模農家が担う コロンビア」の見出しのもと、「コロンビアはブラジル、ベトナムに次いで世界で3番目にコーヒーの生産量の多い国で...コーヒーはコロンビアにおける重要な産業である。」の記載がある(甲20)。
エ 「カラーブックス コーヒー事典」(保育社 平成6年12月31日 発行)には、「FNC」の項に「Federacion Nacional de Cafeteros de Colombia(S)の略。コロンビア国立コーヒー生産者連合。...コロンビア・コーヒーに関する生産、研究、価格と市場確保、生産者保護などを目的とする半官半民の機関」の記載がある(甲21)。
オ 「珈琲の大事典」(成美堂出版 2011年9月20日発行)には、「コロンビア」の見出しのもと、「FNCが管理する高品質のコーヒー...ブラジル、ベトナムに次ぐ、世界第3位の生産量を誇っています。コロンビアのコーヒー生産を支えるのがコロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC)です。コーヒーの生産から流通までを管理し、スペシャリティコーヒーへの取り組みも積極的に行っています。」の記載がある(甲22)。
カ 成美堂出版が発行し、「(C)SEIBIDO SHUPPAN 2013 Printed in japan」と奥付に記載のある「美味しい珈琲バイブル」には、「コーヒー生産地ガイド」として、「Colombia コロンビア」の見出しのもと、「生産量は世界第三位小規模農園がつくる良質なコーヒー」及び「世界第三位の生産量を誇り、アラビカ種の栽培では世界第二位です。コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC)がコーヒーの生産や流通を管理し、品質や生産環境の向上に努めていて、スペシャリティコーヒーへの取り組みも積極的に行われています。」の記載がある(甲23)。
キ 日本文芸社が発行し、「(C)NIHON BUNGEISHA 2010」と奥付に記載のある「知れば知るほどおいしく飲めるコーヒー事典」には、「コロンビア Colombia」の見出しのもと、「コロンビアは、ブラジル、ベトナムに次いで世界3位のコーヒー生産国として知られています」の記載がある(甲24)。
ク 小括
上記アないしキによれば、コロンビアは、世界第3位の生産量を誇るコーヒー豆の生産地であり、請求人は、1927年にコーヒー生産者を代表する組織として設立された、コロンビアにおいて、コーヒー豆の生産や流通を管理し、品質や生産環境の向上に努めている農業関連の非政府組織(NGO)であるということができる。
(2)商品「コロンビア産コーヒー豆」及び「コロンビア産のコーヒー」についての「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」の周知・著名性について
ア 請求人の東京事務局が作成した「ありがとう50周年」の表題の記念誌の内容は、以下のとおりである。
(ア)「1970’s コロンビアが初めて万博博覧会に参加しエメラルドマウンテンを紹介。」の見出しのもと、「1970年にはFNCの支援と働きかけにより、コロンビアは初めて大阪で開催された万国博覧会に参加しました。万博の期間中にFNCはエメラルドマウンテンコーヒーの販売を始めました。」の記載がある。
(イ)「プレミアムエメラルドマウンテンコーヒーのキャンペーン開始。」の見出しのもと、「1989年の夏、FNC東京事務局は美家古食品株式会社(現キャピタル株式会社)の協力によって、プレミアムエメラルドマウンテンコーヒー(Premium Emerald Mountain coffee)を発売しました。...エメラルドマウンテンは高品質なコロンビアコーヒーとして急速に認識されるようになりました。」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている。
(ウ)「1990年代のコロンビアコーヒー製品」の見出しのもと、「キャピタル株式会社」として「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている。
(エ)「1994年 GEORGIA エメラルドマウンテンブレンド登場。」の見出しのもと、「プレミアムローストコーヒーとしてのエメラルドマウンテンの商品化の成功後、1994年に日本コカ・コーラ株式会社と三菱商事株式会社の協力のもと、『GEORGIAエメラルドマウンテンブレンド』缶コーヒーが発売されました。本商品の主要な原料としてFNCのエメラルドマウンテンが使用されており、FNCはライセンス契約を通して同商標の利用を許可しています。」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN BLEND」の文字が表示されたコーヒー飲料の写真が掲載されている(甲8)。
イ 日本文芸社が発行し、「(C)NIHON BUNGEISHA 2010」と奥付に記載のある「知れば知るほどおいしく飲めるコーヒー事典」には、「コロンビア Colombia」の見出しのもと、「標高約1600メートルで栽培され、アンデスの清水で精製されたのち、カップテイスティングによって厳選されたエメラルドマウンテンは、最高品質とされています。」の記載がある。
また、「キャピタルコーヒー」の見出しのもと、「エメラルドマウンテンコーヒー 1989年にキャピタルが日本で初めて輸入を開始したコロンビア産高品質豆エメラルドマウンテン。ブランド名を同国が誇る宝石にちなんだこの豆は、総生産量の1%しか認定されない希少品です。」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている(甲24)。
ウ 「この一冊ですべてがわかる珈琲事典」(新星出版社 2009年4月15日 発行)には、「エメラルドマウンテン/Emerald Mountain」の見出しのもと、「平均的なクォリティの高さで知られるコロンビアのコーヒーの中でも、厳選された豆のみを使用したプレミアムコーヒー。標高約1600mのアンデス高地で栽培され、実は一粒ずつ手摘みされる。...等級ごとに分けた豆をさらに厳選を重ね、選りすぐりの豆だけを特別に加工し、幾度ものカップテストで認められたものだけが、コロンビア名産の宝石にちなんだエメラルドマウンテンの名を冠される。出荷も特別な麻袋に収められ、リーファーコンテナで輸出される。」の記載がある(甲25)。
エ 「珈琲の事典」(成美堂出版 発行 1995年12月20日)には、「ART COFFEE アートコーヒー」の項に、「エメラルドマウンテンブレンド」の見出しのもと、「コロンビア生産者連合会公認豆使用」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている。
また、「HAMAYA ハマヤ」の項に、「エメラルドマウンテンピュアテイスト」の見出しのもと、「コロンビア国立コーヒー生産者連合会お墨付き」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている(甲28(3))。
オ 新聞記事情報
(ア)「[選ぶなら]プレミアム・コーヒー 希少価値で値が決まる」の見出しのもと、「日本ほどたくさん高級銘柄のコーヒー(プレミアム・コーヒー)が飲まれている国はないようだ。...『コロンビア』でも、高級種に『エメラルドマウンテン』『クリストバル』という名を付け、日本向けだけに輸出している。」の記載がある(読売新聞/1991年10月31日)(甲28(9))。
(イ)「国際食品・飲料展見のどころ コロンビア=トロピカルフルーツのジュースも」の見出しのもと、「コロンビアは、日本へのコーヒー輸出ではブラジルに次ぐ輸出国。...コーヒー生豆輸出国として知られており、日本へのコーヒー輸出はブラジルに次ぐ輸出国で、エメラルドマウンテン・ブランドは消費者にも浸透している。」の記載がある(日本食糧新聞/1997年3月7日)(甲29の68)。
(ウ)「コロンビア国立コーヒー生産者連合会、07年対日輸出180万袋へ」の見出しのもと、「コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC、東京事務局=東京都品川区)のガブリエル・シルバCEOはコロンビアコーヒーの普及・啓蒙活動として来日し、7日に東京・帝国ホテルで『将来性の高い日本市場に向けて販促費300万ドルを費やし、輸出量180万袋を目指す』と業界に関係強化を要望した。...今年度は日本市場だけのプロモーション予算300万ドルを計画し、エメラルドマウンテンブランドなどコロンビアコーヒーの認知向上に努める。」の記載がある(日本食糧新聞/2006年4月17日)(甲29の41)。
(エ)「コーヒー・紅茶・クリーム・ココア特集:コロンビア国立コーヒー生産者連合会」の見出しのもと、「外食産業コーヒー市場からの流れで、家庭用コーヒー市場にも『産地』ブランドコーヒーが人気となっている。『エメラルドマウンテン』ブランドを日本で展開しているコロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC、東京事務局=東京都品川区)は今年度、日本市場だけのプロモーション予算300万ドルを計画し、『エメラルドマウンテンコーヒー』に加え、コロンビアコーヒーの認知向上に努めている。ルイス・ゴメス東京事務局長によると、今年度は『エメラルドマウンテンコーヒーの年』と位置付け、積極的な活動を行っている。3月に開催されたフーデックスへの出展を皮切りに、帝国ホテルでの販促策、日本スペシャルティコーヒー協会主催の展示会へ参加してきた。」の記載がある(日本食糧新聞/2006年9月1日)(甲29の37)。
(オ)「コロンビア国立コーヒー生産者連合、16日から『バカップ展』開催」の見出しのもと、「コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC、東京事務局=東京都品川区)は3月16日から4月1日の間、FNC創立80周年・東京事務局設立45周年を記念して『バカップ展』(VA Cap展)を開催する。カフェ全16店舗で、エメラルドマウンテン(EM)を注文した消費者にオリジナルグッズをプレゼントする。イベントを通じて、100%コロンビア産コーヒーの中でも最高品質のEMを訴求していく。」の記載がある(日本食糧新聞/2007年3月5日)(甲29の28)。
(カ)「コーヒー・紅茶・クリーム特集:コーヒー各社の動向=アートコーヒー」の見出しのもと、「●FNC東京事務局50周年に連動しキャンペーン アートコーヒーは、徹底した鮮度管理によるカップクオリティーを追求した“こだわり”のコーヒー製品を提供することで、競合とは違った家庭用での独自路線を歩んでいる。...同社が展開する今秋冬の施策として目玉なのが、コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)東京事務局設立50周年記念『コロンビアコーヒーフェア・Wプレゼントキャンペーン』だ。これは、FNC東京事務局の設立50周年を記念して実施する。同社が良質のコロンビアコーヒーの中からFNCによって認定されたコーヒー『エメラルドマウンテン』など、コロンビア産コーヒーを取り扱ってきた歴史があることから実現した。」の記載がある(日本食糧新聞/2012年9月3日)(甲29の14)。
(キ)「(らんきんぐ)まずは一杯のコーヒー」の見出しのもと、朝日新聞一部の会員に「味わいたいコーヒーの銘柄」をアンケートした結果(回答数2,211名)、「エメラルドマウンテン」は、「ブルーマウンテンNo.1」、「キリマンジャロAA」に続き、第3位として記載されている(朝日新聞/2012年9月30日)(甲29の13)。
カ インターネット情報
(ア)「土居珈琲」のウェブサイトにおいて、2015年4月17日に「セット名称 コロンビア エメラルドマウンテン」についての感想が掲載されている「コロンビア エメラルドマウンテン(小さな農園ロット)の商品ページにおいて、「特別プロジェクトによって生み出された銘柄」の表題のもと「かつてコロンビア産の銘柄は、大量生産を目的に考えられていました。コロンビア政府は、この現状を打破するべく、コロンビアでの品質の高い銘柄を作ることに力を注ぐプロジェクトを打ち立てました。そのプロジェクトのもと誕生したのが、この『エメラルドマウンテン』です。」の記載がある(甲31(10))。
(イ)「おいしいコーヒー豆販売専門店 焙煎工房マルイ」のウェブサイトにおいて、2015年5月23日の日付とともに「コロンビアコーヒーの宝石、エメラルドマウンテン」の表題のもと「コロンビアで生産されるコーヒー豆のうち、FNCの厳しい品質基準を経た3%未満の高級豆だけが『エメラルドマウンテン』として認定されます。」の記載がある(甲31(29))。
キ 上記アないしカによれば、「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」は、コロンビアの高地で栽培され、厳選された最高品質のコーヒー豆に使用されている商標であり、コロンビアの名産品である宝石の「エメラルド」に由来するものである。
そして、「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」を付したコーヒー豆、及びこれを原料とするコーヒーは、我が国において、1970年に大阪で開催された万国博覧会で初めて販売され、その後、1989年に輸入が開始され、請求人の東京事務局によるプロモーション活動等によって広く知られるようになり、遅くとも、本件商標の登録出願時には、我が国において、周知・著名といえるに至っており、その周知性は、登録査定時にも継続していたものといえる。
(3)小括
上記(1)及び(2)によると、コロンビアは、世界的なコーヒー豆の生産地として広く知られているところ、「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」の表示は、請求人の生産するコロンビア産コーヒー豆の中でも最高級のコーヒー豆を表示するものとして、本件商標の登録出願の時には既に、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたというのが相当であり、かつ、その周知・著名性は、本件商標の登録査定日においても継続していたものといえる。
また、「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」の周知性は、「コロンビア産のコーヒー豆」にとどまらず、「コーヒー」の一般消費者をも含む取引者、需要者にも及んでいるといえる。
しかしながら、「EMERALD」又は「エメラルド」の文字が単独で使用されている事実、及び「EMERALD MOUNTAIN」「エメラルドマウンテン」が、単に「EMERALD」又は「エメラルド」と略称されて使用されている事実は、請求人が提出した全証拠によっては認めることができない。
そうすると、「EMERALD」又は「エメラルド」の文字は、請求人のコーヒー豆を表示するものとして我が国の取引者・需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標及び使用商標との類似性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「エメラルド」及び「EMERALD」の文字を上下二段に横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「エメラルド」の称呼を生じ、「(宝石ないし鉱石としての)エメラルド」及び「エメラルド色」の観念を生じるものといえる。
(2)引用商標
ア 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「COLOMBIA」と「EMERALD MOUNTAIN COFFEE」の文字を上下二段に横書きしてなり、その指定商品である「コロンビア産のコーヒー及びコーヒーシロップ」との関係から、上段の「COLOMBIA」の文字部分は商品の産地を、下段の「COFFEE」の文字部分は商品の名称などを、それぞれ表すものであり、いずれの文字部分も自他商品の識別機能を有しないものといえる。
一方、引用商標1の構成中、「EMERALD MOUNTAIN」の文字は、上記1で認定のとおり、請求人のコーヒー豆を表示するものとして我が国の取引者・需要者の間に広く認識されているものであるから、強い自他商品の識別機能を有するものといえる。
しかしながら、引用商標1の構成中の「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分において、上記1のとおり、「EMERALD」の文字が請求人のコーヒー豆を表示するものとして我が国の取引者・需要者の間に広く認識されているものとは認められないし、他に、「EMERALD」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる実情は見いだせない。
そうすると、引用商標1は、これに接する取引者・需要者をして、その構成中の「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分全体をもって、請求人のコーヒー豆を表示するものと認識させるというのが相当である。
してみれば、引用商標1は、その構成中「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分を分離抽出し得るとしても、「EMERALD」の文字部分を分離抽出して他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されないものというべきである。
したがって、引用商標1は、「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分から、「エメラルドマウンテン」の称呼を生じ、「(請求人のブランドとしての)エメラルドマウンテン」の観念を生じるものということができるが、単に「エメラルド」の称呼及び「(宝石ないし鉱石としての)エメラルド」「エメラルド色」の観念は生じないものといわなければならない。
イ 引用商標2、引用商標3及び引用商標6は、上記第2の2、3及び6のとおり、「EMERALD MOUNTAIN」の文字からなるものであり、該文字は上記アで認定した引用商標1における「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分と同様の理由により、「エメラルドマウンテン」の一連の称呼のみを生じ、「(請求人のブランドとしての)エメラルドマウンテン」の観念を生じるものということができるが、単に「エメラルド」の称呼及び「(宝石ないし鉱石としての)エメラルド」「エメラルド色」の観念は生じないものといわなければならない。
ウ 引用商標4は、別掲のとおり、緑色を施した横長八角形内に、該図形の輪郭内に沿って白抜きの輪郭(一部は輪郭を形成していない。)を配し、該白抜きの輪郭内に、「EMERALD」と「MOUNTAIN」の文字を白抜きで二段に表した構成からなり、「EMERALD」と「MOUNTAIN」の文字が、同書同大でまとまりよく一体に書されていることから、上記アで認定した引用商標1における「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分と同様の理由により、「エメラルドマウンテン」の一連の称呼のみを生じ、「(請求人のブランドとしての)エメラルドマウンテン」の観念を生じるものということができるが、単に「エメラルド」の称呼及び「(宝石ないし鉱石としての)エメラルド」「エメラルド色」の観念は生じないものといわなければならない。
エ 引用商標5は、上記第2の5のとおり、「エメラルドマウンテン」の文字からなるものであり、英語の「EMERALD MOUNTAIN」の読みを片仮名で表記したものといえるところ、該文字は上記アで認定した引用商標1における「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分と同様の理由により、「エメラルドマウンテン」の一連の称呼のみを生じ、「(請求人のブランドとしての)エメラルドマウンテン」の観念を生じるものということができるが、単に「エメラルド」の称呼及び「(宝石ないし鉱石としての)エメラルド」「エメラルド色」の観念は生じないものといわなければならない。
(3)使用商標
使用商標は、上記第2の7のとおり、「EMERALD MOUNTAIN」の欧文字を横書きしてなるもの及び「エメラルドマウンテン」の片仮名を横書きしてなるものであるところ、上記ア及びエで認定した引用商標1における「EMERALD MOUNTAIN」の文字部分及び引用商標5と同様の理由により、「エメラルドマウンテン」の一連の称呼のみを生じ、「(請求人のブランドとしての)エメラルドマウンテン」の観念を生じるものということができるが、単に「エメラルド」の称呼及び「(宝石ないし鉱石としての)エメラルド」「エメラルド色」の観念は生じないものといわなければならない。
(4)引用商標及び使用商標から「EMERALD」「エメラルド」を要部として抽出することの妥当性
請求人は、コーヒーの銘柄には、「ブルーマウンテン」「クリスタルマウンテン」、「コーラルマウンテン」、「カリビアンマウンテン」等、「マウンテン」の文字を含む名称が多数存在している実情があると主張し、甲第25号証を提出するとともに、被請求人提出に係る乙第7号証ないし乙第9号証、乙第11号証、乙第13号証、乙第15号証、乙第17号証、乙第25号証、乙第27号証、乙第31号証、乙第34号証、乙第37号証、乙第39号証及び乙第42号証を引用し、第30類の「コーヒー豆」や「コーヒー」を指定商品とする商標「〇〇〇MOUNTAIN」又は「〇〇〇マウンテン」が多数存在することから、引用商標中の「MOUNTAIN」又は「マウンテン」の文字部分は、コーヒー豆等コーヒーの商標には多数使用され、識別力が弱いものであり、過去の異議事件も引用して、引用商標及び使用商標から「EMERALD」「エメラルド」を要部として抽出し、共に「(宝石の)エメラルド」の観念及び「エメラルド」の称呼が生じる旨主張している。
しかしながら、これら証拠に記載された、例えば「Blue Mountain」「Crystal Mountain」「Coral Mountain」「Caribbean Mountain」などの表示が、単に「Blue」「Crystal」「Coral」「Caribbean」などと略称されて使用されている事実を裏付ける証拠はない。
そして、「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」の文字が上記1(2)で認定のとおり、請求人のコーヒー豆を表示するものとして我が国の取引者・需要者の間に広く認識されているものであるとしても、「EMERALD」及び「エメラルド」の文字が、請求人のコーヒー豆を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないし、他に「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」の文字において、「MOUNTAIN」及び「マウンテン」の文字を捨象し、「EMERALD」及び「エメラルド」の文字が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというべき事情も見いだせない。
また、請求人が引用する異議事件についても、登録異議申立ての対象となる登録商標の構成文字及びその指定商品が異なり、本件とは事案を異にするものである。
したがって、引用商標及び使用商標から「EMERALD」「エメラルド」を要部として抽出することはできず、上記請求人の主張は採用することができない。
(5)本件商標と引用商標及び使用商標との対比
本件商標と引用商標及び使用商標は、上記(1)、(2)アないしエ及び(3)のとおりの構成からなるものであるから、外観上明確に区別し得る差異を有するものである。
また、本件商標から生じる「エメラルド」の称呼と引用商標から生じる「エメラルドマウンテン」の称呼は、「マウンテン」の音の有無の差異を有するものであるから、該差異音が両称呼全体に及ぼす影響は大きく、両者を一連に称呼しても互いに紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標から生じる「(宝石ないし鉱石としての)エメラルド」「エメラルド色」の観念と引用商標から生じる「(請求人のブランドとしての)エメラルドマウンテン」の観念とは、明らかに相違するものである。
したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
3 商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
上記1で認定のとおり、「EMERALD MOUNTAIN」「エメラルドマウンテン」は、請求人のコーヒー豆を表示するものとして、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
しかしながら、本件商標と引用商標及び使用商標とは、上記2で認定したとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって、その類似性の程度は低い。
また、引用商標及び使用商標を構成する「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」の文字は、いずれも親しまれた「EMERALD」「エメラルド」と「MOUNTAIN」「マウンテン」の語を結合してなると理解されるものであり、その構成中の「EMERALD」「エメラルド」の文字部分の独創性は低いものといわざるを得ず、当該文字部分に看者が着目するともいえないものである。
そうすると、本件商標に接する取引者・需要者が、引用商標及び使用商標を直ちに想起又は連想するものとみることはできない。してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれのない商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と引用商標1及び引用商標3ないし引用商標5とは、本件商標の指定商品中の商品と、引用商標1及び引用商標3ないし引用商標5の指定商品中の商品とが同一又は類似するものであるとしても、上記2のとおり、両者は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標が、引用商標及び使用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であることは、上記2認定のとおりである。
なお、請求人は、被請求人が請求人から引用商標1の使用を許諾されており(甲16)、当該許諾に基づき、被請求人子会社の日本コカ・コーラ株式会社が、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)を使用した缶コーヒーを製造・販売しており(甲17)、請求人の引用商標1の恩恵を受けている立場にあるにもかかわらず、請求人に一切の断りなく、被請求人は、引用商標及び使用商標と出所の混同が生じる本件商標とは上段と下段の文字を入れ替えただけの商標「EMERALD/エメラルド」に係る登録(商標登録第5479186号)を受け、これに対する不使用取消審判の請求の動きを察知したとたんに本件商標を採択、出願し、登録を受けたものであって、被請求人は、請求人が引用商標の使用を許諾してきた信頼関係を裏切り、引用商標及び使用商標に蓄積された名声、信用、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し、これらを希釈化(ダイリューション)させる等の不正の目的をもって、本件商標を出願し、登録を受けたと主張する。
しかしながら、本件商標を出願した事実のみをもって、不正の目的が存在するということはできず、そのほかに請求人が提出した証拠によっては、被請求人が請求人に係る引用商標及び使用商標の名声と信用にフリーライドする意図など、不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「エメラルド」及び「EMERALD」の文字よりなり、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字ではなく、その商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものということはできない。
また、本件商標の本件指定商品についての使用は、他の法律によって禁止されているものでもない。
そして、上記5のとおり、不正の目的をもって本件商標の出願、登録を受けた事実を裏付ける客観的、具体的な事実は認められない。
なお、請求人は、コロンビア政府又は請求人と関係ない者にコロンビア産以外も含めたコーヒー等の商品について引用商標及び使用商標と類似し、混同可能性が極めて高い本件商標の登録を認めることは、請求人、コロンビア政府、さらには、コロンビアのコーヒー生産者の長年の努力を無にするおそれがあるものであり、我が国とコロンビア両国が長年に渡り築いてきた良好な関係に影響を及ぼしかねず、両国の公益に反し、国際信義に反するといわざるを得ないと主張する。
しかしながら、本件商標は、上記2及び3のとおり、引用商標及び使用商標とは非類似であって、請求人の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれのない商標であることからすれば、国際信義に反するものでもなく、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものともいえないことから、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
引用商標4(登録第5302830号商標)(色彩については、原本参照のこと。)

別掲
審理終結日 2020-01-23 
結審通知日 2020-01-27 
審決日 2020-02-25 
出願番号 商願2015-21035(T2015-21035) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (W30)
T 1 11・ 222- Y (W30)
T 1 11・ 271- Y (W30)
T 1 11・ 263- Y (W30)
T 1 11・ 25- Y (W30)
T 1 11・ 261- Y (W30)
T 1 11・ 262- Y (W30)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 大森 友子 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 中束 としえ
金子 尚人
登録日 2016-12-02 
登録番号 商標登録第5901554号(T5901554) 
商標の称呼 エメラルド 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 
代理人 林 栄二 
代理人 篠田 貴子 
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