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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z24
管理番号 1364120 
審判番号 取消2017-300651 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-08-30 
確定日 2020-06-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4458712号の1の1商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4458712号の1の1商標の指定商品及び指定役務中,第24類「布製身の回り品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4458712号の1の1商標(以下「本件商標」という。)は,「響」の文字を標準文字で表してなり,平成11年4月28日に登録出願,同13年3月9日に設定登録された商標登録第4458712号について,同26年5月21日及び同29年2月27日に分割移転がされた結果,第24類「布製身の回り品」を含む第1類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものであり,その後,商標登録の取消し審判により,指定商品及び指定役務中,第28類「釣り具」及び第31類「釣り用餌」について取り消すべき旨の審決がされ,令和2年4月3日にその確定審決の登録がされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成29年9月12日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第24類「布製身の回り品」について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても,使用されていないものであるから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は,数々の証拠を提出するとともに,これをもとに本件商標の使用の事実を答弁書にて主張しているが,その対象となる商品は,商標法上の商品であるとの証拠がなく,したがって,その主張は認められない。
すなわち,被請求人の商品に使用していると主張する「タオル」(乙3 以下「使用品1」という場合がある。),「風呂敷」(乙7 以下「使用品2」という場合がある。)は,ノベルティ(novelty)(実際に役立つ物品に自己の販売する製品等(主製品)の商標や社名を付して顧客に配布する広告手法)にすぎない。
したがって,上記使用品1,使用品2は,ともに商標法上の商品には該当せず,本件商標を使用しているとはいえない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用の事実(サントリー酒類株式会社による使用について)
本件商標の通常使用権者であるサントリー酒類株式会社(以下「サントリー酒類社」という。)は,本件審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)に,我が国において,その請求に係る指定商品中「タオル」について本件商標を使用している。
ア 商標の使用者
本件商標の使用者であるサントリー酒類社は,本件商標の商標権者(被請求人)の完全子会社であり,商標権者は,サントリー酒類社に対し,本件商標の使用を黙示で許諾し,使用を継続させていたものである(乙2)。
イ 使用に係る商標及び商品
乙第3号証は,本件商標を付した使用品1の写真である。使用品1は,サントリー酒類社が,商標権者の子会社に製造を委託し,飲食店に譲渡したものである。
ウ 商標の使用
使用品1の発注・製造・譲渡については複数の会社が関係しており,以下その経緯について説明する。
(ア)サントリー酒類社は,平成26年7月29日に,商標権者の完全子会社であるサントリーマーケティング&コマース株式会社(以下「サントリーマーケティング&コマース社」という。)を通じ,株式会社大文字(以下「大文字社」という。)に,使用品1を発注した(乙4)。
(イ)この発注を受け,大文字社は,使用品1を製造し,サントリーマーケティング&コマース社に納品した。
(ウ)納品を受けたサントリーマーケティング&コマース社は,平成26年9月19日に,サントリー酒類社からの指示に基づき,使用品1を飲食店である「G」に納品した。
(エ)納品完了後,サントリーマーケティング&コマース社は,平成26年9月30日に,使用品1に関する請求書をサントリー酒類社宛に発行した(乙5)。
(オ)乙第6号証はサントリーマーケティング&コマース社の担当者による証明書で,乙第4号証及び乙第5号証が真正なものであることを証言している。
(カ)通常使用権者であるサントリー酒類社の指示を受けたサントリーマーケティング&コマース社が,商標「響」が付された使用品1をGに納品した行為が,商標法における「譲渡」,すなわち,商標法第2条第3項第2号における「使用」に該当するのは明らかである。
エ 使用時期
平成26年9月19日に,サントリー酒類社の指示を受けたサントリーマーケティング&コマース社が,商標「響」が付された使用品1を,Gに納品(譲渡)しており,当該使用行為が要証期間(平成26年9月12日ないし同29年9月11日)の使用であることは明らかである。
(2)本件商標の使用の事実(Beam Suntory,Inc.による使用について)
本件商標の通常使用権者であるBeam Suntory,Inc.(以下「Beam社」という。)は,要証期間に,我が国において,その請求に係る指定商品中「風呂敷」について本件商標を使用している。
ア 商標の使用者
本件商標の使用者であるBeam社(所在地:アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ)は,本件商標の商標権者(被請求人)の完全子会社であり,商標権者は,同社に対し,本件商標の使用を黙示で許諾し,使用を継続させていたものである(乙2)。
イ 使用に係る商標及び商品
乙第7号証は,本件商標を付した使用品2の写真である。使用品2は,Beam社が,米国での譲渡を目的として,日本において,日本の広告会社に製造を委託したものである。
ウ 商標の使用
使用品2の発注・製造においては複数の会社が関係しており,以下その経緯について説明する。
(ア)Beam社は,平成29年2月16日に,取引先であるInnerWorkings,Inc.(所在地:アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ,以下「InnerWorkings」という。)を通じ,Hakuhodo USA Inc.(所在地:アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ,以下「Hakuhodo USA」という。)に,使用品2の製造を依頼した。
(イ)この依頼を受け,Hakuhodo USAは,兄弟会社である株式会社博報堂プロダクツ(以下「博報堂プロダクツ」という。)に,使用品2の製造を委託した。
(ウ)この委託を受け,博報堂プロダクツは,平成29年6月1日に,使用品2の製作を,風呂敷の製造・卸である山田繊維株式会社(以下「山田繊維社」という。)に再委託した(乙8)。
(エ)使用品2の製作に要する費用が確定したため,InnerWorkingsは,平成29年6月29日に,使用品2に関する正式なPurchase Order(発注書)をHakuhodo USAに送った(乙9)。
(オ)山田繊維社から使用品2の納品を受けた博報堂プロダクツは,平成29年8月4日,検針・検品作業業者である株式会社KENS(以下「KENS」という。)を通じ,使用品2を,InnerWorkingsが手配した貨物便に,発送のための受け渡しをした(乙10,乙11)。
(カ)使用品2がInnerWorkingsを通じてBeam社に納品されたことを受け,博報堂プロダクツは,平成29年8月31日にHakuhodo USA宛の請求書を発行した(乙12)。
(キ)乙第13号証は,博報堂プロダクツの担当者による証明書で,使用品2の発注の経緯,乙第8号証及び乙第10号証ないし乙第12号証が,真正なものであることを証言している。
(ク)通常使用権者であるBeam社から依頼を受けた山田繊維社が使用品2に商標「響」を付する行為が,商標法における「標章を付する行為」,すなわち,商標法第2条第3項第1号における「使用」に該当するのは明らかである。
エ 使用時期
当該使用行為は,平成29年2月16日にBeam社からHakuhodo USAへの製造依頼がなされ,山田繊維社による使用品2の製造を経て,同年8月31日に博報堂プロダクツからInnerWorkingsへの納品がなされており,要証期間(平成26年9月12日ないし同29年9月11日)の使用であることは明らかである。

第4 当審における審尋
当審より被請求人に対し,令和元年11月7日付けで,合議体の暫定的見解を示し,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間に,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件審判請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標を使用していることを被請求人が証明しているものとはいえない旨の審尋を通知し,期間を指定して,これに対する回答を求めた。

第5 審尋に対する被請求人の回答
被請求人から,上記審尋に対する回答はない。

第6 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)使用品1の写真(乙3)には,商品の右下に「響」の文字が表示されている。当該写真の撮影日や撮影者は不明である。
(2)2014年(平成26年)7月28日から同月29日にかけて,サントリー酒類社の担当者K氏とサントリーマーケティング&コマース社の担当者O氏との間で交わされた「【ツール提案書送付】BK業態CP向け」という見出しの電子メール(乙4)において,2014年(平成26年)7月28日午前10時13分付けのO氏のメールには「BKCP用ツール提案書をお送りします。」の記載及び「景品のご提案.ppt」というファイルが添付されている。
(3)サントリーマーケティング&コマース社からサントリー酒類社の担当者K氏に宛てた,2014年(平成26年)9月30日付けの請求書(乙5)には,「近畿CP景品:響タオル費用」の見出しが記載され,続葉頁には「名称」として「景品製作費」,「概要」として「響タオル」の記載がある。
(4)平成30年3月27日付けのサントリーマーケティング&コマース社の担当者O氏の証明書(乙6)において,使用品1は,「サントリー酒類社から平成26年7月29日付けで受けた指示に基づき,大文字社に当該タオルの製造を委託し,同社から当該タオルの納品を受け,サントリー酒類社の指示により,同年9月19日付けで飲食店Gに納品したものである」,「添付資料1(乙4)」及び「添付資料2(乙5)」等が事実に相違ないことを証明する旨の陳述がされている。
(5)使用品2の写真(乙7)には,商品の左下に「響」の文字が表示されている。当該写真の撮影日や撮影者は不明である。
(6)博報堂プロダクツから山田繊維社に宛てた2017年(平成29年)6月1日付けの発注書(乙8)には,「納期」として「2017年08月02日」,「広告主名」として「Beam Suntory In」,「納品場所」として「KENS」及び「発注件名」として「HOS FUROSHIKI 製作」の記載がある。
(7)InnerWorkingsからHakuhodo USAに宛てた2017年(平成29年)6月29日付けの2通のPurchase Order(注文書)(乙9)には,それぞれ「Item Details(アイテム明細)」の項に,「Item Name(アイテムの名称)」として「TKI 17 H2 Holiday House of Suntory Furoshiki」,「Substrate Color(色)」として「white,black,and gray(白,黒,及びグレー)」の記載がある。
(8)「packing and delivery information(07.07.2017)(包装・出荷情報(07.07.2017))」の見出しの書証(乙10)には,「TKI 17 H2 Holiday of Suntory Furoshiki」について「Shiping Ready Date(出荷準備完了日)」として「04.08.2017」の記載がある。
(9)InnerWorkings作成の「COMMERCIAL INVOICE(商業送り状)」(乙11)には,「SHIPPER(出荷人)」として「KENS Inc.」,「CONSIGNEE(荷受人)」として「Champion Logistics Group/Care of Beam-Suntory(Champion Logistics Group/Beam-Suntory方)」,「Shipment ready date:8/31/2017(出荷準備完了日:2017年8月31日)」,「ITEM DESCRIPTION(品名の詳細)」として「TKZ 17H2 Holiday House of Suntory Furoshiki」及び「Date:9/27/2017」の記載がある。
(10)博報堂プロダクツからHakuhodo USA Inc.に宛てた「INVOICE(請求書)」(乙12)には,「Date:31.08.2017」,「House of Suntory Furoshiki2017 1200 pieces」,「Description(明細)」として「Furoshiki production(風呂敷製作)」の記載がある。
(11)平成30年3月27日付けの博報堂プロダクツ社の担当者S氏の証明書(乙13)には,使用品2は,「平成29年2月16日にBeam社及びその提携会社であるInnerWorkingsから製造の依頼を受けたHakuhodo USAが当社にその製造を委託したものである」,「当社は,同年6月1日に,当該風呂敷の製造を山田繊維社に再委託し,同年7月31日に,同社から納品を受けたこと,並びに添付資料1(乙8)は同年6月1日に当社の担当者が山田繊維社に宛てた発注書である」,「当社は,同年8月4日に,当該風呂敷を,検針・検品作業業者であるKENSを通じてInnerWorkingsが手配する貨物便に発送のための受け渡しを行った。添付資料2(乙10)及び添付資料3(乙11)は当該発送に関する発送情報である。」「当社は,同年8月31日に,当該風呂敷に関するINVOICE(請求書)(添付資料4(乙12))を,Hakuhodo USA宛てに送付したこと」等が事実に相違ないことを証明する旨の陳述がされている。
2 判断
(1)使用者について
被請求人は,サントリー酒類社及びBeam社は,本件商標の商標権者(被請求人)の完全子会社であり,商標権者は両社に対し本件商標の使用を黙示で許諾し,使用を継続させていたと主張している。
この主張について,請求人との間に争いはないことから,本件商標の商標権者とサントリー酒類社及びBeam社との間で黙示の使用許諾があったものとみて,上記主張のとおり,サントリー酒類社及びBeam社を本件商標に係る通常使用権者と認めて差し支えないものである。
(2)使用品1について
使用品1の発注としている「【ツール提案書送付】BK業態CP向け」という見出しの電子メール(乙4)において,2014年(平成26年)7月28日午前10時13分付けのメールに「景品のご提案.ppt」という名称の添付ファイルが送付されていること,使用品1の請求書(乙5)において,「近畿CP景品:響タオル費用」の見出しの下,「景品製作費」の名称で「響タオル」の代金が請求されていること,及び被請求人が主張する使用品1の納品先Gは飲食店であって,商品「タオル」等の販売店でなく,しかも,サントリー酒類社からGに対する請求書又はGからの商品の注文書等の提出がないことからすると,使用品1は,サントリー酒類社の取り扱う酒類の景品として,顧客の飲食店に無償配布されることを目的とした物品であると推認できる。
そうすると,使用品1は,これに接する需要者をして本件商標が商品「タオル」の出所を認識するものでなく,また,宣伝用のサービス品として無償配布されるものであるから,一般市場で流通に供されることを目的とした有体物ということはできない。
したがって,使用品1は商標法上の商品とはいえず,サントリー酒類社が,サントリーマーケティング&コマース社を介して,使用品1を製作し,飲食店Gに使用品1を納品したとしても,サントリー酒類社が,商品に本件商標を付し,商品に商標を付したものを譲渡又は引き渡したということはできない。
(3)使用品2について
使用品2の写真(乙7)に示されている商品と,発注書等の取引書類(乙8?乙12)における「Furoshiki(風呂敷)」との関係については,博報堂プロダクツ社員の証明書(乙13)における陳述のみで,例えば製作時の仕様書等,使用品2と当該取引書類に示されている物品が同一のものであるという客観的な証拠は提出されていない。
そして,当該写真に示された商品には,赤,緑等の色彩が付されているのに対し,注文書(乙9)には「Substrate Color(色)」として「white,black,and gray(白,黒,及びグレー)」とあり,当該写真に示されている商品と当該取引書類との関係が不明である。
また,当該写真に示されている使用品2が,商品として市場で流通していることを立証する証拠は提出されていないことから,商標法上の商品であるのかが不明である。
したがって,Beam社が,山田繊維社に製造を委託し,使用品2が製造されたとしても,山田繊維社又はBeam社が,商品に本件商標を付したということはできない。
3 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したものということはできない。
また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標の使用をしていないことについて,正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品及び指定役務中の「結論掲記の指定商品」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-03-30 
結審通知日 2020-04-02 
審決日 2020-04-20 
出願番号 商願平11-38675 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z24)
最終処分 成立  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
薩摩 純一
登録日 2001-03-09 
登録番号 商標登録第4458712号の1の1(T4458712-1-1) 
商標の称呼 ヒビキ、キョー 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 
代理人 片山 礼介 
代理人 三原 靖雄 
代理人 信末 孝之 
代理人 青木 博通 

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