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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W4144
管理番号 1363324 
異議申立番号 異議2018-900330 
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-14 
確定日 2020-06-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第6073659号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6073659号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6073659号商標(以下「本件商標」という。)は、「LASH BOTOX」の欧文字と「ラッシュボトックス」の片仮名を二段に併記してなり、平成29年2月28日に登録出願、第41類「まつげ美容に関する知識及び技術の教授・資格検定の実施・資格の認定並びに資格の付与,その他の美容に関する知識及び技術の教授・資格検定の実施・資格認定並びに資格の付与,まつげ美容に関するセミナーの運営または開催,その他の美容に関するセミナーの運営または開催」及び第44類「エクステンション用人工まつ毛を用いた施術に関する美容,つけまつ毛を用いた施術に関する美容,その他の美容,理容,まつげ美容に関する情報の提供,その他の美容・理容に関する情報の提供」を指定役務として、同30年7月13日に登録査定、同年8月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する標章は次のとおりであり、これらをまとめて「引用商標」という。
1 登録第4049836号商標の防護標章登録第1号標章(以下「引用商標1」という。)は、「ボトックス」の片仮名を横書きしてなり、平成19年3月8日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類」、第10類「医療用機械器具,業務用美容マッサージ器」、第41類「医療・美容に関する知識の教授,医療・美容に関するセミナーの企画・運営又は開催」及び第44類「美容,理容,マッサージ,エステティック美容,医業,医療情報の提供,栄養の指導,美容に関する助言・指導・情報の提供,エステティックサロンに関する情報の提供,美容外科に関する医療情報の提供,美容に関する相談」を指定商品及び指定役務として、同24年2月10日に設定登録されたものである。
2 登録第5065393号商標の防護標章登録第1号標章(以下「引用商標2」という。)は、「BOTOX」の欧文字を標準文字で表してなり、平成19年3月8日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類」、第10類「医療用機械器具,業務用美容マッサージ器」、第41類「医療・美容に関する知識の教授,医療・美容に関するセミナーの企画・運営又は開催」及び第44類「美容,理容,マッサージ,エステティック美容,医業,医療情報の提供,栄養の指導,美容に関する助言・指導・情報の提供,エステティックサロンに関する情報の提供,美容外科に関する医療情報の提供,美容に関する相談」を指定商品及び指定役務として、同24年2月10日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録を取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
1 理由の要点
(1)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、申立人の商標として、特に美容の分野において、我が国はもとより世界中で広く知悉されている。
本件商標からは「ラッシュボトックス」又は「ボトックス」の称呼が生じるから、申立人の著名な引用商標と類似する。
本件商標は、引用商標が著名な美容に関する役務を指定役務とするものであるから、本件商標がその指定役務に使用された場合、当該役務は申立人又はその関連会社によって提供されている役務であるかのごとく認識されることとなり、役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、公正な取引秩序を害し、不正な目的をもって使用されるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 具体的理由
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、1989年、眼瞼の痙攣等の顔面痙攣症状を治療するための画期的な商品を開発し、アメリカ合衆国において承認を得た。
この商品は、ボツリヌス毒素を有効成分とする薬剤であり、直接注射して患部に投与するという方法で使用され、筋肉を弛緩することによって患部の痙攣状態を解くという効果をもたらすものであった。
そして、当該商品は、その有効成分の特異性もさることながら、何よりもその絶大な効果によって瞬く間に医療関係者の間に知れ渡った。当該商品名として申立人が創作し採用したのが商標「BOTOX」であって、申立人による全くの造語であり、いかなる辞書等にも掲載されていない語である。
「BOTOX」は、1989年にアメリカ合衆国で承認されて以来、世界各国で続々と承認されていき、1995年1月末迄に37か国で、2003年までに70か国以上で承認されるに至り、さらに現在では85か国の国で承認されている。
「BOTOX」はその絶大な効果により、発売開始と同時に大ヒット商品となり、申立人の代表ブランドの一つとして位置付けられるようになった。
我が国においては、「BOTOX」は、1995年2月に当時の厚生省により承認され、1997年4月15日から市場において販売が開始された。
さらに、「BOTOX」は、本来の治療に用いられるだけでなく、筋弛緩作用の応用により、しわやたるみの除去などの美容整形にも適応することが判明した結果、一般の美容整形目的でも使用されるようになり、美容整形ブームとも相まって、一種の社会現象を巻き起こすまでに至り、それによって一層広く一般に、とりわけ女性に知悉された存在となった。
申立人の商標「BOTOX」「ボトックス」は、今日においては日本又は外国において、美容業界ばかりでなく、広く一般にも著名な商標であるということは疑いない。
なお、申立人は、日本において、直接的に美容目的の「BOTOX」「ボトックス」商品を製造・販売してはいないが、申立人がそのような商品を日本国内で直接的に製造・販売しなくとも、そのすぐれた商品の品質と効果から、申立人が提供する美容目的の商品と商標「BOTOX」「ボトックス」の情報は日本国内にも多く流入し、また、個人輸入等を通じて海外から申立人の美容目的の商品「BOTOX」「ボトックス」が日本国内に入り、実際にそれを入手し、使用する需要者も現れているのが事実である。
申立人が提供する美容目的の商品「BOTOX」「ボトックス」は、しわ・たるみの除去を目的としており、かかる商品に興味を示す需要者は、しわ・たるみの除去・改善などといった主に顔に関する美容に興味をもつ者であり、その需要者層は年配の女性に限らず、若い女性も含む、美顔や美容全般に興味を有する者というべきである。
また、しわ・たるみ対策やしわ・たるみ改善や美容を目的とした多種類の化粧品、食品が市場に出回っており、さらに、これに関係した様々な役務が提供されていることは周知の事実であり、申立人自身も、他社との共同開発により、薬用化粧品、シワ専用の美容液も販売している。
このように、申立人は、実際に化粧品を開発・販売している。また、当該化粧品の商品紹介の欄には「ボトックスのメーカーである大手製薬会社アラガン社と」、「あのボトックスで有名なアラガン社と」、といったコメントが記載されていることからも、化粧品、美容、医療に関係した商品や役務の分野においても申立人の商標「BOTOX」「ボトックス」が著名であることは明らかである。
しかも、「BOTOX」「ボトックス」は完全な造語であり、申立人の製造・販売に係る商品を指称する以外に使用されることのない語であるから、これが商品や役務に使用された場合、「BOTOX」「ボトックス」は極めて強い指標力で申立人との関連を表示する。
したがって、ある商品に「BOTOX」「ボトックス」の語が使用されている場合、現実の商品の流通・取引や役務の提供の場で需要者、取引者あるいは役務の受益者として当該「BOTOX」「ボトックス」の語に接する者は誰でも、それを申立人の商標であると認識するのであり、それ以外の認識を生じる余地はない。
本件商標中、「LASH」「ラッシュ」は、美容の分野では「まつげ」の意味で一般的に知られ、使用されている言葉であり、本件商標の指定役務は、「美容、特にまつげの美容」に関するものであるから、本件商標中自他役務識別力を有する部分は「BOTOX」「ボトックス」にあることは明らかである。
よって、本件商標は、申立人の著名商標「BOTOX」「ボトックス」と類似する商標であることは疑いない。
以上より、本件商標がその指定役務について使用された場合には、当該役務は、申立人の業務に係る役務であるかのごとく認識され、あるいは、申立人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく誤認され、その出所について混同を生じるおそれのあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、申立人の製造・販売に係る商品を表示するものとして、我が国において一般の需要者・取引者の間に広く認識されている著名商標であり、申立人の提供する商品に係る絶大な信用が化体した重要な財産である。
本件商標は、引用商標と明らかに類似する商標であり、しかも、引用商標が著名な分野である「美容に関する役務」を指定役務とするにもかかわらず、申立人の同意を得ることなく無断で登録されたものである。
これは明らかに引用商標が有する著名性を不当に利用しようとするものであり、その商標の構成それ自体に商標権者の不当な意図が明確に現れている。
本件商標の構成及び本件商標の使用に係る役務にかんがみれば、商標権者が著名商標「BOTOX」「ボトックス」の名声、信用、顧客誘因力に乗じて不当な利益を得るという、極めて悪質な意図を有して本件商標を出願し、登録を得て使用していることは間違いない。
したがって、本件商標は、我が国における公正な商取引秩序を害し、信義則に反するものであるから、上記商標に化体した申立人の信用・名声・顧客誘因力等に内在する計り知れない価値を毀損するおそれのあることは、疑う余地がない。
かかる目的を持った本件商標について、その登録・使用を認めることは、著名商標についてのいわゆる“ただ乗り”行為を是認することとなり、商標法及び産業財産権法上の秩序を乱すという問題のみならず、社会経済上の一般的秩序を乱すものであるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を令和元年10月18日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

第5 商標権者の意見
上記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の提出した証拠、その主張及び職権調査によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、1948年に、「スミスクライン ベックマン社」の子会社として設立された医療用医薬品メーカーであり、1989年に、「スミスクライン ベックマン社」が「ビーチャムグループ」と合併して世界最大級の製薬グループ「スミスクライン ビーチャム ピーエルシー」が設立された際に、株式分配により親会社から分離独立した。
申立人は、「スミスクライン ベックマン社」の子会社当時から、神経や筋肉の障害治療用の薬品や眼科用薬品、眼鏡レンズ等に特化した事業を世界的規模で展開した。
申立人の製品は100か国以上で販売され、33か国に子会社や関連会社をおき、研究施設を4か所に設け、世界中の顧客に商品を提供している。
申立人が現在製造・販売している商品は、神経や筋肉の障害の治療用薬品をはじめとした医療用薬品全般に及んでいる。
イ 我が国においては、1973年に参天製薬を通じて眼科用薬品及びコンタクトレンズ用品の販売を開始し、1976年に参天製薬との合弁企業である「参天アラガン株式会社」を設立するに至った。
1985年には、新たに「株式会社ハンフリー インスツルメンツ エス・ケー・ビー」を設立し、1992年には、その社名を「アラガン株式会社」に変更した。
1996年には、「アラガン株式会社」が「参天アラガン株式会社」を統合して新たな「アラガン株式会社」となり、その業務の効率化を図ると共に一層の事業拡大を図った。
ウ 1989年、申立人は、眼瞼の痙攣等の顔面痙攣症状を治療するための画期的な商品を開発し、アメリカ合衆国において承認を得た。
この商品は、ボツリヌス毒素を有効成分とする薬剤であり、直接注射して患部に投与するという使用法で、筋肉を弛緩することによって患部の痙攣状態を解くという効果をもたらすものであり、「BOTOX」はその商品名である。
「BOTOX」は、アメリカ合衆国で承認されて以来、世界各国で続々と承認されていき、1995年1月末迄に37か国で、2003年までに70か国以上で承認されるに至り、さらに現在では85か国の国で承認されている。
エ 申立人の主張によれば、「BOTOX」は、申立人の代表ブランドの一つであり、日本国内における売上高は、1997年が1億5,800万円、2005年には、46億4,500万円、2018年が42億6,600万円とされる。
オ 「BOTOX」は、本来の眼瞼や顔面の痙攣、痙性斜頸等の治療に用いられるだけでなく、筋弛緩作用の応用により、しわやたるみの除去などの美容整形にも適応することが判明した結果、一般の美容整形目的でも使用されるようになった。
カ 日本国内では、1999年に、美容雑誌「VoCE」(講談社)が申立人の商品「BOTOX」について特集したとされ、その後も、新聞・雑誌、インターネット等において、以下のように、申立人の商品「BOTOX(ボトックス)」が取り上げられている。
(ア)「カナダ医薬バリアント、米アラガンへ買収提案、4兆6000億円 M&A大規模に。」の見出しの下、「アラガンはしわ取りの医薬品『ボトックス』を主力製品とする。」との記事がある(2014年4月23日 日本経済新聞:甲15(新聞19))。
(イ)「二重あご治療薬開発の米社、米アラガンが買収、2600億円。」の見出しの下、「しわ取り薬『ボトックス』を手掛ける米医薬品大手のアラガンは17日、二重あごの治療薬を開発した米カイセラ・バイオファーマシューティカルズを総額21億ドル(約2600億円)で買収すると発表した。・・・アラガンは主力商品のボトックスの販売先である美容医療機関にカイベラの提供を広げることで売り上げ拡大を目指す。」との記事がある(2015年6月22日 日経産業新聞:甲15(新聞27))。
(ウ)「米ファイザー19兆円買収 製薬世界最大手に」の見出しの下、「アラガンは美容医療や眼科に強く、しわ取り薬『ボトックス』で知られる。」との記事がある(2015年11月24日 読売新聞:甲15(新聞33))。
(エ)「ファイザー、買収断念、同業アラガンと巨額合意一転、米の節税規制強化で。」の見出しの下、「ファイザーとアラガンが合併で合意したのは昨年11月。ファイザーはしわとりのヒット薬『ボトックス』やドライアイの治療薬に強いアラガンを取り込み、世界最大級の製薬企業をめざした。」との記事がある(2016年4月7日 日本経済新聞:甲15(新聞43))。
(オ)「徳島大とライセンス契約 塩野義ボツリヌス療法で」の見出しの下、「ボツリヌス菌が出す毒素を利用する医薬品としては、米アラガンの『ボトックス』が知られている。・・・『ボトックスの年間売上高は2000億円とされる。・・・』」との記事がある(2016年11月28日 日経産業新聞:甲15(新聞46))。
(カ)「武田『研究に年4000億円』」の見出しの下、記事中の「世界の製薬大手の売上高順位」の表((出所)英調査会社エバリュエート/(注)医療用医薬品の売上高(2017年)を集計。)において、「順位」17の「社名」に「アラガン」、「特徴」の項に「美容と眼科が主力。しわとり薬『ボトックス』が有名。」、「売上高(兆円)」の項に「1.7」の記載がある(2018年12月6日 日経産業新聞:甲15(新聞56))。
(キ)「アクタビス、米アラガンを約7・7兆円で買収、製薬トップ10入り」の見出しの下、「アラガンの主力分野は眼科、皮膚科、美容外科などの医薬品や医療機器。眼科領域の製品が約半分、皮膚、中枢神経系、美容分野などで広く使用されている『ボトックス』が約3割を占める。アクタビスは手薄だったこれらの領域を強化する。」との記事がある(2014年11月19日 化学工業日報)。
(ク)「アラガン・エーザイ、国内開発が活発化、ボツリヌス毒素製剤」の見出しの下、「ボツリヌス毒素製剤の国内開発が活発化している。アラガンは眉間のシワとり適応でフェーズ3、試験を今春から開始し、生活改善薬として医療用医薬品での承認取得を狙う。承認されれば美容を目的とした初めての医療用医薬品となる。エーザイは昨年末に痙性斜頸適応でフェーズ2、に入り、さらなる適応拡大を視野に入れている。アラガンはA型ボツリヌス毒素製剤『ボトックス』のシワとり適応について、二十-六十五歳の男女三百-四百人を対象に国内でフェーズ3、を実施する。来年後半には試験結果を出して承認申請を行う計画。欧米ではすでに同適応が承認され、同剤の世界売上高の四割は美容用となっている。日本国内でも美容用途での輸入量が急増し、市場拡大が見込まれるなか、国内承認を得てプロモーションを行う決断を下した。保険適用の可能性はみていない。ボトックスは痙性斜頸、片側顔面痙攣、眼瞼痙攣の各適応が国内で承認されており、これら適応による国内年間売上高は約三十億円。世界ではボツリヌス毒素製剤のシェア九割(数量ベース)を占め、二〇〇四年売上高は六億六千万-七億ドルを見込んでいる。」との記事がある(2004年3月11日 化学工業日報)。
(ケ)「アラガン、医療用シワ取り薬、日本投入。」の見出しの下、「米系製薬会社のアラガン(東京・港、・・・社長)は二〇〇四-二〇〇五年をめどに、日本市場に医療用のシワ取り薬を投入する。承認されればシワ取りの効能を持つ医薬品としては日本で初めてとなる。日本では比較的シワに悩む人は少ないとされるが、女性の社会進出に伴って需要は拡大すると見ている。医療機関向けの営業を受け持つMR(医薬情報担当者)も二〇〇五年までに三倍に増やし、年間売上高百億円規模の製品に育てる。『ボトックス』(製品名)は眉間(みけん)のシワに有効といわれ、同社は安全な投薬法を調べる第二相臨床試験(フェーズ2)を始めた。今後、目じりのシワなど適応場所を順次拡大する計画。シワの部分に注射することで筋肉の緊張をほぐしてシワを伸ばすという。ボトックスは筋弛緩(しかん)作用のあるA型ボツリヌス毒素を製剤化したもので、日本ではまぶたのけいれんや、首がねじれるなどの症状を起こす痙性斜頸(けいせいしゃけい)の治療薬として既に承認されている。シワ取り薬としてはカナダ、ブラジルなど五カ国で既に承認されているほか、米国とフランスでも今年中に承認される見通し。」との記事がある(2001年8月16日 日本経済新聞)。
(コ)「25ans 2013年2月号」(2012年12月26日 株式会社ハースト婦人画報社発行)の341頁に、「ヒアルロン酸&ボトックス注射(「ボトックス」の語の後には、○で囲まれた「R」の文字が付されている。以下同じ。)/ヒアルロン酸&ボトックスと言えば、プチ整形の代表選手。・・・表情筋の過剰な動きを和らげてシワの原因そのものを断つのが、「ボトックス」の特徴です。/※「ボトックス」は米国Allergan Inc.の登録商標です。」との記載がある(甲16(雑誌1))。
(サ)「25ans 2013年6月号」(2013年4月27日 株式会社ハースト婦人画報社発行)の309頁に、「ボトックス注射&ヒアルロン酸注射(「ボトックス」の語の後には、○で囲まれた「R」の文字が付されている。以下同じ。)/・・・ボトックスはボツリヌス菌から抽出されるたんぱく質の一種で、筋肉の動きを和らげる働きがあります。・・・※「ボトックス」は米国Allergan Inc.の登録商標です。」との記載がある(甲16(雑誌3))。
(シ)上記(コ)及び(サ)のほかにも、「25ans」において、「ボトックス」の紹介記事とともに「※「ボトックス」は米国Allergan Inc.の登録商標です。」との記載がある(甲16(雑誌6、雑誌14、雑誌18、雑誌21、雑誌24、雑誌28、雑誌35))。
(ス)「Secret Shopping! 韓国美容整形スタイルブック」(2015年2月25日 株式会社クオン発行)の92頁には、「ボトックス」の項に、「BOTOX」の文字が付された商品パッケージの写真とともに、「ボトックスとはボツリヌス菌のバクテリアから抽出した毒素を商品化したもので、筋肉の動きを麻痺させて抑制する効果がある。」との記載があり、142頁の表には、「整形箇所」の項に「ボトックス(アラガン社正規品)」の記載がある(甲16(雑誌32))。
(セ)「美ST 2015年5月号」(2015年5月17日 光文社発行)の222頁には、「まず第一に、アラガン社のボトックスかどうか、品質の安全性の確認を。」との記載がある(甲16(雑誌38))。
(ソ)「美ST 2015年9月号」(2015年7月17日 光文社発行)の200頁には、「ボトックスはもちろんアラガン社。」との記載がある(甲16(雑誌39))。
(タ)「“すぐに使える”ボツリヌス美容医療ハンドブック」(2016年1月20日 株式会社コスモの木発行)の11頁には、「本邦では、1996年、米国アラガン社のA型ボツリヌス毒素製剤ボトックス(「ボトックス」の語の後には、○で囲まれた「R」の文字が付されている。)注100が眼瞼痙攣に有効として輸入承認され、保険適応下でボツリヌス治療が可能となった。また、本剤を美容目的以外で供給してきた米国アラガン社の依頼により、本邦でも2001年から表情皺の治療に関する臨床試験がスタートした。」との記載がある(甲16(雑誌45))。
(チ)「日経ビジネス 2016.07.11 No.1849」(2016年7月11日 日経BP社発行)の28頁には、「BOTOX」の文字が付された商品パッケージの写真とともに「製薬大手アラガンのしわ取り薬『ボトックス』。美容整形市場を一変させた。」との記載があり、「欲望が生んだ美の巨人アラガン」の見出しの下、「美容整形は『女性のもの』というイメージが強いが、米国では男性にも広がりつつある。しわ取り薬『ボトックス』で名高い製薬大手アラガンは、美容医療の巨人として市場に君臨。」との記載がある(甲16(雑誌54))。
(ツ)「湘南美容クリニック」のウェブサイトにおいて、「国内唯一の厚生労働省承認/より高品質なしわ取り治療/ボトックス(アラガン)の記載とともに、「ボトックス(アラガン)の特徴」として「世界的なシェア/ボトックスは以前から、眼科、神経内科の領域で治療に用いられてきました。美容皮膚科での使用も10年以上の歴史があります。また、世界で1千万人以上の方がボトックス治療を受けており、世界で95%以上の市場シェアと2000万を超える症例があります。」との記載がある(https://www.sbc-skincare.com/contents/botox.html)。
(テ)「神田美容外科形成外科医院」のウェブサイトにおいて、「■ボトックスとは?」の見出しの下、「・日本ではアラガン社のA型ボツリヌス毒素製剤(商品名ボトックス)が注射剤として1996年に眼瞼痙攣、2000年に片側顔面麻痺、2001年に痙性斜頸の適応で厚生労働省から承認され、2009年には眉間の表情シワの適応で、アラガン社のボトックスビスタが厚生労働省から承認を受けました。/・ボトックスは保険適応の疾患のほかシワ治療、痩身効果、制汗効果など幅広い治療で用いられている安全な治療法です。」との記載がある(https://www.kandabiyou.net/sinryou/shiwa/post-19.html)。
(ト)「TCB美容外科・美容皮膚科」のウェブサイトにおいて、「ボトックスとは?」の見出しの下、「『ボトックス』とは、ボツリヌス菌の毒素(ボツリヌストキシン)を医薬品として生成したブランド名です。米国のアラガン社から『ボトックス』の名称で販売され、成分がボツリヌス菌の毒素(ボツリヌストキシン)ということになります。(ボトックスとボツリヌストキシンとの違いは、ブランド名か成分名かの違いです。)顔の表情筋に作用させることでシワをなくしたり、筋肉の目立つ部分(エラやふくらはぎ)に注射することでボリュームダウンさせたり、肩こりの改善や発汗を抑えることで脇汗にも効果があります。」との記載がある(https://aoki-tsuyoshi.com/opinfo/botox)。
(ナ)「医療法人社団天祐会 皮膚形成外科グループ」のウェブサイトにおいて、「ボトックスとは」の見出しの下、「ボトックスは、ボツリヌス菌から抽出されたタンパク質の一種で、アセチルコリン分泌阻害のために一過性の筋肉麻痺を生じさせます。その為、以前から、眼科、神経内科の領域で、眼瞼・顔面麻痺などの治療に用いられてきました。アメリカでは、アラガン社が製造したボツリヌストキシン『ボトックス』(商品名)が眉間のシワ治療薬としてFDA(米国食品医薬品局)で認可され、その安全性・効果性を確立しています。欧米では、シワに対する美容外科・美容皮膚科での使用で少なくとも10年以上の歴史があり、『ボトックス注射』として日本でも知られています。」との記載がある(http://www.tenyu-kai.jp/cosmetic/t3.html)。
(ニ)「共立美容外科 宇都宮院」のウェブサイトにおいて、「ボトックスとは」の見出しの下、「ボトックスとはボツリヌス菌という細菌のA型毒素から製造したアラガン社の薬品名です。(毒素にはA?G型までありますが、臨床的に有効なものは主にA型です)一般名は『ボツリヌス菌A型毒素製剤』です。ボツリヌス菌は食中毒を起こす嫌気性細菌として有名です。食中毒を起こす細菌というと危険なイメージがありますが、ボトックスはその毒素から作った安全な『ワクチン』です。」との記載がある(https://kyoritsu-u.com/menu/antiageing/botox.html)。
(ヌ)「東京中央美容外科【TCB江坂院】」のウェブサイトにおいて、「ボトックス注射」の見出しの下、「ボトックスとは、アラガン社製の薬剤名で、その成分はボツリヌストキシンです。目や顔面のけいれんなど神経疾患の治療薬として開発され、厚労省も認可している安全性の高い薬剤です。それが応用されて、現在の美容医療にとっては欠かせないものとなりました。美容領域では、顔の表情変化によるシワ取りから、過度に発達した筋肉の縮小や多汗症治療に用いられています。」との記載がある(https://tcb-esaka.com/opinfo/botox)。
(ネ)「グリーンウッドスキンクリニック立川」のウェブサイトにおいて、「ボトックスとは何か?」の見出しの下、「ボツリヌス菌というバイ菌が作り出す毒素を治療目的で生成した製品(薬剤)のことで、米国アラガン社の商品名です。顔面のけいれんや表情じわの治療などに使用される注射薬です。物質としてはBTXA(ボツリヌストキシンタイプA)といいます。BTXA製剤は世界各国で何種類か販売されていますが、ボトックスというのはアラガン社の製品だけです。しかしながらボトックスはBTXAの代表であるため実際にはアラガン社の製品でないにもかかわらずボトックスという名称を使用している施設が多いようです。」との記載がある(http://www.g-woodclinic.com/care/botox.html)。
(ノ)「SUEクリニック銀座」のウェブサイトにおいて、「ボトックス」の見出しの下、「ボトックス(ボツリヌス毒素)は、ボツリヌス菌が産生する毒素で筋肉の働きを抑える作用があります。この作用が、『表情ジワ』のような筋肉によって起こるしわを目立たなくさせることがわかってから、美容界においても広く利用されるようになりました。眉間や額、目じりなどのシワのまわりにボトックスを注入することでしわを取り除いたり、浅くしたりすることができます。」、「ボトックス治療と言われると今や皆さんピンと来ると思いますが、実は『ボトックス』アラガン社の商標登録商品で他メーカーが『ボトックス』という名前を使用することができません。他社の製品は正しくはボツリヌストキシン製剤と言われます。」との記載がある(https://sue-clinic.com/shinryo/botox/)。
(ハ)「医療法人 恵聖会クリニック」のウェブサイトにおいて、「ボトックス注入とは」の見出しの下、「『ボトックス』とは、ボツリヌス毒素から抽出した毒性のない製剤で、筋肉の動きを弱めることで、表情じわを解消したり、フェイスラインを改善することができます。当院では、FDA(米食品医薬品局)・日本厚生労働省より承認で認可された、米国アラガン社のボトックスを使用しています。」との記載がある(https://www.keisei-cs.com/medical-treatment/botox.html)。
(2)以上からすれば、申立人は、1948年に設立された医療用医薬品メーカーであり、1989年に、眼瞼の痙攣等の顔面痙攣症状の治療のため、ボツリヌス毒素を有効成分とし、直接注射して患部に投与するという使用法で、筋肉を弛緩することによって患部の痙攣状態を解くという効果をもたらす注射剤を開発し、「BOTOX」を商標として採択したものである。
そして、当該商品は、眼瞼や顔面痙攣等の治療用としてのみでなく、筋弛緩作用の応用によりシワを消すなどの用途をもっても美容目的でも使用されるようになり、我が国においても、美容整形外科等の医療機関が、プチ整形などと称して当該商品を使用した施術を行っていること、そして、新聞、雑誌及びインターネットにおいて、その施術の方法、効果・効能等が、「BOTOX」又は「ボトックス」の文字よりなる引用商標とともに、多く報道されている事実が認められる。
そうすると、引用商標は、美容整形を行う医療機関や当該施術を希望する女性はもちろんのこと、女性層を中心に、美容関連分野において、広く知られた存在となっているとみて差し支えないものということができる。
したがって、引用商標は、申立人がボツリヌス毒素を有効成分とする眼瞼や顔面痙攣等の医療用ないし美容外科用医薬品に使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものということができる。
2 本件商標と引用商標の類似性の程度について
引用商標は、前記第2のとおりの構成よりなるところ、その構成文字に相応して、「ボトックス」の称呼が生ずるものであり、「(申立人に係る)薬剤のブランドとしてのボトックス」という観念を生じるものである。
一方、本件商標は、前記第1のとおり、「LASH BOTOX」及び「ラッシュボトックス」の文字を二段に併記してなるところ、構成中の「LASH」及び「ラッシュ」の文字は、「まつげ」を意味する語(甲4)であり、その指定役務との関係からして、自他役務識別標識として機能するものとはいい難いものである。
そして、本件商標構成中の「BOTOX」及び「ボトックス」の文字部分は、その指定役務に関連する美容分野において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の登録出願時はもとより、登録査定時においても、既に、我が国において、広く認識されている「BOTOX」及び「ボトックス」と、その称呼及び構成文字を同じくするものであることからすれば、当該文字部分が強く印象付けられるものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成中に、引用商標と同じ「BOTOX」及び「ボトックス」の文字を有してなることから、本件商標と引用商標の類似性の程度は高いものというべきである。
3 引用商標の独創性の程度について
引用商標は、「BOTOX」又は「ボトックス」の文字からなるところ、当該文字は、辞書等に掲載のないものであって、我が国において親しまれた既成語ではないから、独創性の程度は高いといえる。
4 本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標は、前記第1のとおり、美容に関する分野の役務を指定役務とするものであり、申立人の業務に係る商品は、美容目的で使用されることも多い薬剤であって、美容外科等の施術において使用されているものであるから、本件商標の指定役務との関係において、それらの用途及び目的における関連性の程度が極めて高く、商品及び役務の需要者を共通にするものである。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
以上のとおり、引用商標は、我が国において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認められ、その独創性の程度は高く、申立人の業務に係る商品と本件商標の指定役務は、関連性が高く、需要者を共通にするものである。
そして、本件商標は、引用商標と高い類似性を有するものである。
そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者、取引者は、引用商標を連想又は想起し、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
異議決定日 2020-01-23 
出願番号 商願2017-33311(T2017-33311) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W4144)
最終処分 取消  
前審関与審査官 旦 克昌藤平 良二 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2018-08-24 
登録番号 商標登録第6073659号(T6073659) 
権利者 北澤 雅一
商標の称呼 ラッシュボトックス、ラッシュ、ボトックス 
代理人 中村 稔 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 藤倉 大作 

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