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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
管理番号 1362568 
異議申立番号 異議2019-900178 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-21 
確定日 2020-04-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第6133377号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6133377号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6133377号商標(以下「本件商標」という。)は,「UNI JAPAN」の欧文字を書してなり,平成30年5月25日に登録出願,第42類「オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),コンピュータソフトウェアの設計・作成・保守に関する指導及び助言,コンピュータソフトウエアの開発,工業上の調査・試験及び分析,自動車の車検のための予備的検査,科学に関する研究・試験及び分析」を指定役務として,同31年2月20日に登録査定,同年3月29日に設定登録されたものである。

第2 申立人標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標は商標法第4条第1項第6号,同項第7号,同項第8号,同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する標章は,「ユニジャパン」の片仮名(以下「申立人標章1」という。)又は別掲のとおりの「UNIJAPAN」の欧文字(以下「申立人標章2」という。)を表してなるものである(以下,これらをまとめて「申立人標章」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第6号,同項第7号,同項第8号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1項によって取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第6号について
(1)申立人標章について
ア 申立人標章の公益性について
申立人は,1957(昭和32)年5月15日に設立された,「財団法人日本映画海外普及協会(ユニジャパン・フイルム)」を前身として,2005(平成17)年4月1日付けで「財団法人日本映像国際振興協会(ユニジャパン)」に改組され,2010(平成22)年7月1日付けで公益財団法人として認可され,「公益財団法人ユニジャパン」と名称を変更したものである(甲1の1・2)。
そして,申立人は,国際映画祭を開催し,次代を担う才能の発掘・育成の助成及び,映画フィルムの保存を図るとともに,海外において日本映像の普及宣伝を行い,もって我が国の映像文化の発展を促し,日本映像の輸出の振興を促進させること,また,国際友好及び文化の増進に寄与することを目的とする。
さらに,申立人は,省庁の委任・委託を受けて,30年以上にわたりアジアで最大級の国際的な映画祭である「東京国際映画祭」を開催しているところ,開催にあたっては毎年多数の来賓を迎えている(甲2の1,甲2の3)。
このように多くの来賓を迎えるのは,東京国際映画祭がただの規模の大きい映画祭ということだけではなく,申立人が公益性の高い団体であることにほかならない。
以上のとおりであるから,申立人標章は,商標法第4条第1項第6号所定の「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」に該当する。
イ 申立人及び申立人標章の著名性について
(ア)申立人の事業について
申立人は,自主事業,経済産業省,文化庁からの委託事業,東京都,国際交流基金,日本貿易振興機構との共同事業として7つの事業((a)東京国際映画祭の開催事業,(b)国際映像見本市の開催事業(経済産業省委託事業),(c)海外の国際映画祭・映画賞への出品支援事業(文化庁委託事業),(d)日本映画・映像コンテンツの海外発信(輸出)支援事業(文化庁委託事業),(e)国際共同製作支援事業(経済産業省委託事業),(f)国際事業を担う人材育成事業,(g)情報発信事業及び調査研究事業)を実施している。
これらの事業は,その多くが省庁の委任・委託を受けて行っているものであるとともに,イベント関連の事業については後援団体・パートナー・スポンサーとして多くの企業が参加している。
その結果,申立人及び申立人標章は企業の間では広く知られることとなり,特に,東京国際映画祭(Tokyo International Film Festival,TIFF)は,国際映画製作者連盟公認の国際映画祭であり,東京国際映画祭を通じて,申立人及び申立人標章は著名性を獲得している。
(イ)東京国際映画祭について
東京国際映画祭は,1985年度(昭和60年度)の第1回から2018年度(平成30年度)の第31回まで30年以上の歴史を誇る国際映画祭である。
申立人が発行する事業計画書・報告書の統計情報(甲3の1?13)によると,東京国際映画祭の規模は,第31回東京国際映画祭(平成30年度)では動員数は236,657人となっており,過去10年の動員数を見ても毎年20万人以上が来場している。そして,申立人標章は,申立人標章が付されたパンフレットや展示物等を介して来場者の目に触れるため,申立人標章は少なくとも年間20万人近くに知られることになる(甲4の1?6)。
また,東京国際映画祭は,後援団体・パートナー・スポンサーとして多くの企業が参加しており(甲5の1?10),当然のことではあるが,これらの企業にとっても申立人及び申立人標章は広く知られた存在といえる。
このように,東京国際映画祭が日本全国に広く知られていることは明白であり,東京国際映画祭を通じて,申立人及び申立人標章は需要者(一般需要者・企業・団体)の間で著名性を獲得しているといえる。
(ウ)新聞・雑誌記事等について
申立人及び申立人標章が需要者に広く知られていることは新聞・雑誌記事等からもうかがえる。申立人及び申立人標章は,古くは1976年(昭和51年)から現在に至るまで数多くの媒体で取り上げられており,申立人及び申立人標章が高い著名性を獲得していることに疑いはない(甲6の1?156)。
(エ)ニュースレター・メールマガジンの配信について
申立人は,申立人標章が使用されたニュースレター・メールマガジンを配信しており,当該ニュースレター・メールマガジンでは,映画祭及びマーケット開催情報,エントリー情報の他に日本映画の出品状況・受賞実績なども掲載して,世界の動向を伝えている(甲3,甲7)。ニュースレター・メールマガジンは,映画祭,TIFFCOM,国際支援の三種類があり,配信期間と配信数・登録者数は,(a)映画祭のニュースレター・メールマガジンの配信期間が2008年(平成20年)頃から現在,平成30年度の配信数がメールマガジン16回配信各1万人,ニュースレター国内32回配信 各平均3500人,海外27回配信 各平均7900人,(b)TIFFCOMのニュースレターの配信期間が2006年頃から現在,平成30年度の配信数・登録者数が国内・海外に各21回配信 登録者数26000人,(c)国際支援のニュースレターの配信期間が遅くとも2010年から現在,平成30年度の配信数・登録者数が国内・海外に各15回配信登録者数3700人である。
このように申立人は,10年以上前からニュースレター・メールマガジンの配信を続けるとともに,情報の一部は申立人のウェブサイトにも転載し,より広く情報提供を行っている。
(オ)以上のとおり,申立人標章は,(a)実際に使用されている標章であり,(b)1957年(昭和32)から現在まで使用は継続されており,(c)東京国際映画祭を初めとする各種事業において広く宣伝されているだけでなく,(d)新聞・雑誌記事等でも何度も取り上げられている。
これらの実情を鑑みれば,申立人標章が,「著名なもの」であることは明白である。
ウ 上記ア及びイによれば,申立人標章は,商標法第4条第1項第6号所定の「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」を表示する標章であって,「著名なもの」に該当する。
(2)本件商標について
本件商標は,アルファベットの「UNI JAPAN」の語からなる商標であって,第42類の役務を指定役務とするものである。
(3)申立人標章と本件商標の対比
申立人標章と本件商標「UNI JAPAN」とは,同一又は極めて類似する商標であることは明らかである。
(4)上記のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第6号所定の「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」を表示する標章であって,「著名なもの」に該当する申立人標章と極めて類似する商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第6号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号について
申立人標章は,公益財団法人である申立人を表示する著名な商標であり,申立人は,映画関連の事業を通じて,日本の映像文化の発展を促し,日本映像の輸出の振興を促進させること,また,国際友好及び文化の増進に寄与することを目的とする公益性の高い団体である。そして,本件商標権者は,申立人標章が公益財団法人である申立人を表示する著名な商標であることを知りながら,申立人標章が本件の指定役務に商標登録されていないことを奇貨として,申立人に無断で剽窃的に出願し,登録を受けたものである。このような行為による本件商標の登録を認めることは,公正な取引秩序を乱し,社会一般の道徳観念に反するものであって,公の秩序を害するものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第4条第1項第8号について
申立人標章は,申立人である「公益財団法人ユニジャパン」の略称を表示するものであり,上記1のとおり,申立人標章は著名である。
また,申立人は映画関係の事業のみならず,文化・娯楽に関する人材育成事業や調査研究事業等の事業も幅広く行っているため,申立人の略称は映画の枠を超えた著名性を獲得している。
そして,本件商標「UNI JAPAN」は,著名な申立人の略称を含む商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
本件商標が第4条第1項第15号に該当するか否かについては,本件商標が申立人標章との類似性の他に,申立人標章全体の周知著名性及び独創性の程度,用途又は目的における関連性の程度及び取引実情等も踏まえて総合的に判断すべきである。これを本件商標に照らせば,(a)上記1のとおり,申立人標章と本件商標とは,同一又は極めて類似する商標であり,(b)上記1のとおり,申立人標章が著名なものであることは明白であり,(c)申立人標章は,特定の意味を生じない造語であり,需要者にとって強い出所識別機能を発揮するものであり,(d)申立人標章は申立人のハウスマークであり,(e)申立人は映画関係の事業のみならず,文化・娯楽に関する人材育成事業や調査研究事業等の事業も幅広く行っているため,多角的な経営を行っており,(f) 本件商標の指定役務中,第42類「オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS)」と,申立人が運営する日本映画のデータベースの「通信ネットワークにおける検索エンジンの提供」とは類似するものであり,また,本件商標の指定役務中,第42類「科学に関する研究・試験及び分析」等と,申立人が行う調査研究事業とは,類似するものであるか,関連性が強いものであることから,本件商標をその指定役務に使用した場合には,申立人の事業と出所の混同が生じるおそれかおるものであることは明白である。
したがって,本件商標は商標法4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号について
申立人標章は,主に映画関連の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内の需要者の間に広く認識されている商標である。
そして,本件商標は,日本国内で全国的に知られている申立人標章と同一又は極めて類似するものであり,申立人標章は造語よりなるものである。
そうすると,本件商標は,申立人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとされる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審おける取消理由の要旨
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,商標法第4条第1項第6号及び同項第8号該当する。」旨の取消理由を令和2年1月7日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 本件商標権者の意見
本件商標権者は,上記第4の取消理由の通知に対して,指定した期間内に何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
1 申立人標章の周知著名性について
(1)申立人の提出した甲各号証及び同人の主張並びに職権調査によれば,以下の事実が認められる。
ア 申立人は,1957年(昭和32年)に設立された「財団法人日本映画海外普及協会(ユニジャパン・フィルム)」を前身として,2005年(平成17年)4月1日付けで「財団法人日本映像国際振興協会(ユニジャパン)」に改組され,2010年(平成22年)7月1日付けで公益財団法人の認定を受け,「公益財団法人ユニジャパン」に改組されたものである(甲1)。
イ 申立人は,東京国際映画祭の開催事業,国際映像見本市の開催事業,海外の国際映画祭・映画賞への出品支援事業,日本映画・映像コンテンツの海外発信支援事業,国際共同製作支援事業,人材育成事業,情報発信事業及び調査研究事業の事業を実施している(甲1の1)。
これらの事業は,省庁からの委託事業や東京都,国際交流基金,日本貿易振興事業との共同事業として行われているとともに,多くの企業がこれらの事業の後援団体・パートナー・スポンサーとして参加している(甲3,甲5)。
ウ 「東京国際映画祭」の説明として,「現代用語の基礎知識2018」(2018年1月1日,自由国民社発行)には,「世界11大映画祭の一つに数えられ,アジア最大の映画祭として知られる。1985年にスタートし・・・」の記載がある。
エ 東京国際映画祭の最近5年(平成26年度ないし平成30年度)の各回における動員数は,平均約22万人である(甲3の9?13)。
オ 申立人の前身である財団法人日本映像国際振興協会及び公益財団法人ユニジャパン(以下「申立人等」という場合がある。)が作成した平成18年度ないし平成30年度の事業報告書(甲3)によれば,以下の事実が認められる。
(a)平成20年度及び平成21年度の事業報告書には,当該各年度の事業実績である「国際映画祭事業」(東京国際映画祭)の主催として,「財団法人日本映像国際振興協会」の記載の下に,それぞれ「(ユニジャパン/第21回東京国際映画祭実行委員会)」,「(ユニジャパン/第22回東京国際映画祭実行委員会)」の記載があり(甲3の3・4),平成22年度ないし平成30年度の事業報告書には,当該各年度の事業実績である「国際映画祭事業」の主催として,「公益財団法人ユニジャパン」の記載がある(甲3の5?13)
(b)平成18年度ないし平成20年度の事業報告書には,頁の右上に申立人標章2が表示されている(甲3の1?3)。
(c)申立人等は,「ユニジャパン通信」,「ユニジャパン・ニュースレター」,「Unijapan Newslettear」と称する映画祭等の情報記事(メールマガジン)を隔週で発行し,映画制作者,各社セールス担当者に送信しているところ,その送信リストの件数は,平成19年度において281件である(甲3の1?8)。
カ 申立人等が発行した東京国際映画祭公式記録には,東京国際映画祭の役員・スタッフ一覧として「財団法人日本映像国際振興協会(ユニジャパン)」,「公益財団法人ユニジャパン」の記載があり,それらは白抜きの文字を黒塗りの四角で囲んだ態様で表示されている(甲4の1・2・4?6)。
キ 1991年(平成3年)11月から本件商標の登録出願前までの間に発行された新聞各紙において,映画に関する内容の記事には,申立人標章1が,申立人の前身である「日本映画海外普及協会」及び「財団法人日本映像国際振興協会」,並びに申立人である「公益財団法人ユニジャパン」を表すものとして掲載されている(甲6の2?4・6・9・10・12?16・18・20?28・31?35・37・58・75・98・100・110・121・123)。
また,本件商標の登録出願後から登録査定時までの間に発行された新聞各紙においても,映画に関する内容の記事には,申立人標章1が,申立人である「公益財団法人ユニジャパン」を表すものとして掲載されている(甲6の142・145・153)。
ク 2014年(平成26年)4月30日付け「通商弘報」においては,「成長するアジア市場へ日本コンテンツを売り込む-アジア最大の映画・映像見本市が香港 で開催-(香港事務所・コンテンツ産業課)」の見出しの下,ジェトロ(日本貿易振興機構)が申立人とともに,アジア最大級のエンターテイメント見本市「香港フィルマート」において,ジャパンブースを設置し,当該ブースには日本企業22社が参加し,映画等を紹介した旨の報道がされるとともに,ジャパンブースの様子を示す画像が掲載されているところ,当該画像によれば,ジャパンブースの上部には「JETRO」の文字とともに申立人標章2が大きく表示されている(甲6の79)。
ケ 申立人のウェブサイト(甲7,職権調査)には,左上部に,「J」の文字を赤色に着色した申立人標章2と同一の構成からなる標章を表示し,「ユニジャパンは,東京国際映画祭を開催するほか,日本映画・映像コンテンツの海外展開支援を行っています。」と記載されている。
(2)以上によれば,申立人等は,長年にわたり,申立人等を指し示すものとして「ユニジャパン」及び別掲のとおりの「UNIJAPAN」の文字からなる申立人標章1及び申立人標章2を,世界11大映画祭の一つに数えられ,アジア最大の国際映画祭として知られる「東京国際映画祭」の開催事業や映画関連の情報発信事業等に使用していること,1991年(平成3年)11月から本件商標の登録査定時までの間に発行された新聞各紙において,「ユニジャパン」の文字が申立人等を略称するものとして多数取り上げられていること,申立人等は,上記「東京国際映画祭」の主催者であってその映画祭の動員数や参加企業数は多いことが認められ,これらを総合して判断すれば,申立人標章1及び申立人標章2は,いずれも,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人等を略称するものとして,映像文化並びに映像産業の振興関連の分野において,広く知られているというのが相当である。
したがって,申立人標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の略称として著名性を獲得していたものというべきである。
2 商標法第4条第1項第6号該当性について
(1)申立人について
上記1(1)アのとおり,申立人は,2010年(平成22年)7月1日付けで「公益財団法人」の認定を受けた財団法人である(甲1)。
ここで,「公益財団法人」とは,「公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律」(平成18年6月2日法律第49号)に基づいて認定される公益法人であり,その事業は,学術,技芸,慈善その他の公益に関する事業であって,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する23の事業に限定され,かつ,公益認定基準18項目に照らして認められるものであるから,「公益財団法人」は,「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」であるということができる。
そうすると,申立人は,商標法第4条第1項第6号所定の「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」に該当するものというべきである。
(2)申立人標章の著名性について
申立人標章は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の略称を表示する標章として著名性を獲得していたものというべきである。
(3)本件商標と申立人標章との類否について
ア 外観について
(ア)本件商標は,上記第1のとおり,「UNI JAPAN」の欧文字を書してなるものである。
申立人標章1は,「ユニジャパン」の文字からなり,申立人標章2は,別掲のとおり,「UNIJAPAN」の欧文字からなるところ,申立人標章2の構成中の「J」の欧文字は,やや斜め右に傾け,他の文字と色を違え,かつ,他の欧文字より下に突き出した態様である。
(イ)本件商標と申立人標章1の外観について比較するに,両者は,外観においては,文字の種類が欧文字と片仮名とで異なるとしても,我が国において,日常の様々な場面で文字種を変更することはごく一般的であって,同一語の欧文字及び片仮名表記は,併用されることが普通に見られる事情を考慮すると,一種の造語として理解される両者は,外観上,いずれかの外観が他方のそれに比して両者が別異のものと認識せしめるほどの特段の強い印象を与えるものではなく,両者の外観の違いから生じる識別力は微弱であるといえる。
本件商標と申立人標章2の外観について比較するに,両者は,外観においては,欧文字における「UNI」と「JAPAN」の文字の間に1文字程度の空間の有無及び「J」の文字の態様に差異があるとしても,欧文字の文字つづりをすべて共通にするものであるから,両者は,外観上,近似するものである。
イ 称呼について
本件商標は,その構成文字である「UNI JAPAN」の欧文字に相応して「ユニジャパン」の称呼を生じるものである。
申立人標章1は,その構成文字である「ユニジャパン」の文字に,申立人標章2は,その構成文字である別掲のとおりの「UNIJAPAN」の欧文字に相応して,いずれも「ユニジャパン」の称呼を生じるものである。
そうすると,称呼において,本件商標と申立人標章とは,「ユニジャパン」の称呼を同一にするものである。
ウ 観念について
(ア)本件商標を構成する「UNI JAPAN」の欧文字並びに申立人標章を構成する「ユニジャパン」及び「UNIJAPAN」の文字は,いずれも辞書類に載録された既成語とは認められないものの,上記3のとおり,申立人標章を構成する「ユニジャパン」及び「UNIJAPAN」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の略称として著名性を獲得していたものというべきである。
そうすると,申立人標章は,申立人の著名な略称との観念を生じる。
(イ)本件商標は,上記ア及びイのとおり,外観において,申立人標章1とは両者が別異のものと認識せしめるほど強い印象を与えるほどの差異はなく,申立人標章2とは近似するものであり,称呼においては,申立人標章と同一の称呼を生じるものであることからすると,本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標から,申立人の著名な略称との観念を想起するものというのが相当である。
そうすると,本件商標は,申立人の著名な略称との観念を生じる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば,観念において,本件商標と申立人標章とは,同一の観念を生じる。
エ 以上のとおり,本件商標と申立人標章とは,外観において,両者の外観の違いから生じる識別力は微弱であるか,近似するものであり,称呼において同一のものであり,観念においても同一のものであるから,それらの外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合すれば,互いに類似するものというのが相当である。
(4)上記(1)ないし(3)によれば,申立人標章は,商標法第4条第1項第6号所定の「公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なもの」に該当する標章であり,また,本件商標は,当該申立人標章と類似の商標である。
そうすると,本件商標は,公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと類似の商標であるといえる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第6号に該当する。
3 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
(1)申立人標章2は,別掲のとおり「UNIJAPAN」の欧文字からなるところ,これは,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の略称として著名性を獲得していたものというべきであるから,商標法第4条第1項第8号所定の「著名な略称」に該当するものである。
(2)本件商標は,「UNI JAPAN」の欧文字を書してなり,申立人標章2は,上記(1)のとおり「UNIJAPAN」の欧文字からなるところ,両者は,その文字つづりをすべて共通にするものであり,いずれも,その構成文字に相応して,「ユニジャパン」の同一の称呼を生じるものである。
(3)そうすると,本件商標は,申立人の著名な略称である申立人標章2とその文字つづりをすべて共通にし,その構成文字から生じる称呼も同一のものであるから,申立人の著名な略称を想起・連想させるものであるというのが相当である。
(4)してみれば,本件商標は,その構成中に申立人の著名な略称を含むものと客観的に把握されるものであるといえる。
(5)本件商標権者と申立人とは他人であると認められ,本件商標権者は,他人である申立人の承諾を得ているものとは認められない。
(6)以上によれば,本件商標は,その構成中に他人の著名な略称を含む商標であって,かつ,その他人の承諾を得ているものではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第6号及び同項第8号に該当し,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
付言するに,当審は,本件商標は,申立人が主張する商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号には該当しないものと判断する。
よって,結論のとおり決定する。
別掲
別掲 申立人標章2(甲3の1)



異議決定日 2020-03-18 
出願番号 商願2018-69332(T2018-69332) 
審決分類 T 1 651・ 21- Z (W09)
T 1 651・ 23- Z (W09)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 渡邉 あおい
平澤 芳行
登録日 2019-03-29 
登録番号 商標登録第6133377号(T6133377) 
権利者 株式会社UNI JAPAN
商標の称呼 ユニジャパン、ウニジャパン、ユニ、ウニ、ユウエヌアイ 
代理人 来山 菜奈美 
代理人 土橋 編 
代理人 山田 朋彦 
代理人 ▲高▼見 良貴 
代理人 小崎 万里子 
代理人 西浦 ▲嗣▼晴 
代理人 出山 匡 

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