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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y02
管理番号 1362506 
審判番号 取消2014-301003 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-12-15 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4858581号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4858581号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4858581号商標(以下「本件商標」という。)は、「WOOD TOUGH」及び「ウッドタフ」の文字を二段に横書きしてなり、平成16年8月18日に登録出願、第2類「塗料」を指定商品として、同17年4月22日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、同27年1月13日であり、その請求の登録前三年とは、同24年1月13日から同27年1月12日の期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由として、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、請求に係る指定商品について登録商標の使用をしていないものであるから、商標法第50条の規定によりその登録は取り消されるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 審判事件弁駁書(平成27年3月23日付け)
請求人は、被請求人の答弁に対して、要旨次のとおり弁駁した。
(1)被請求人主張の矛盾について
被請求人は、姫路市にある株式会社であり、平成22年5月までは不動産及び建材部門を軸として経営されており、元代表取締役A氏を中心に業務運営がなされている。
被請求人は、請求人に対して平成26年9月14日付けで神戸地方裁判所姫路支部に、本件商標の差し止めの仮処分(以下「本件仮処分」という。)を申し立てていたところ、「A氏は、請求人が本件商標に類似する商標を使用していたことを認識していたものと推認されるところ、3年以上これを咎めたことがないから請求人に対して本件商標の使用を許諾したものと一応認められる。」として、平成27年2月18日付けで上記申立てを却下する決定がなされた。
被請求人はこの決定に対して即時抗告(甲1)を行っている。
つまり、本件審判における「請求人による本件商標の使用が通常使用権者による使用である」との主張と、上記仮処分の申立てにおける「被請求人は請求人に対して本件商標の使用の許諾をしていない。」とは、矛盾しておりこの点を被請求人は明確にすべきである。
(2)権利の濫用について
被請求人は、請求人に対して商標使用差止め仮処分の申立てを行っているのであるから、請求人は本件取消審判を請求するについての法的な利益を有し、権利の濫用には該当しない。
(3)被請求人による使用について
被請求人は、三和建設株式会社(以下「三和建設」という。)のホームページを印刷したもの(乙7)を挙げ「被請求人が本件商標の広告を電磁的方法によって提供している」旨主張しているところ、当該書証には,三和建設のグループ会社として被請求人の欄が設けられ、その業務内容として本件商標の表記とともに浸透性無機質保護剤に関する図を用いた説明が記載されている。しかし、当該記載は、三和建設の会社概要の記載と比較して、唐突で違和感を感じる。
しかも、当該書証では、商品「木材保護塗料(ウッドタフ)」を製造販売し、塗装工事の施工を行っているか明らかになっておらず、本件商標が商品「木材保護塗料(ウッドタフ)」との関係で使用されていることが明確ではない。
つまり、被請求人が本件商標の広告を電磁的方法によって提供している旨主張する以上、これが本件取消審判により、本件商標の取消を回避するためだけの広告ではないこと、例えば、本件の審判請求の日前の原材料購入の注文書、依頼書、顧客からの注文書が示されるべきである。
さらに、当該書証の下欄に「2015/02/20」の日付が表記されているが、本件審判請求の登録前3年以内に使用されていたことを示す日付が存在しておらず、被請求人による本件商標の使用を何ら立証するものではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出している。
(審決注 当合議体は、被請求人提出による答弁書等における、「請求権者」は「請求人」と、「債務者」は「請求人」と、「被請求権者」は「被請求人」のように、それぞれ読み替えた。)
1 答弁書(平成27年2月20日付け)
(1)請求人について
請求人は、被請求人から本件商標の使用の許諾を得ていたとして、本件商標を使用している者であり(乙1)、また、被請求人の本件商標に関する事業を引き継いだと主張している。
(2)被請求人について
被請求人は、三和建設のグループ会社である。そして、三和建設は、平成25年4月23日民事再生手続開始申立て、同年5月20日再生手続開始決定がなされ(乙2)、同26年5月23日再生計画認定決定がなされた(乙3、乙4)。
被請求人は、三和建設の業績の悪化の影響を受け、平成22年5月で本件商標に関わる事業を一時停止した。
その後、三和建設が再生手続開始の申し立てをしたことから、被請求人の手持ち資金等を三和建設の再生資金として拠出せざるを得なかったが(乙3、乙5)、三和建設の再生計画認可決定がなされた後、被請求人も事業再開に向け準備を進め、その一環として、請求人に対し本件仮処分を申立て(乙6)たところ、本件審判請求があった次第である。
しかしながら、被請求人により本件商標は使用されており、また、請求人は、本件仮処分における主張によれば、被請求人の承諾を得て本件商標を使用していたというのであるから、本件商標は、通常使用権者による使用があったといえる。
さらに、請求人は、被請求人の承諾を得て本件商標を使用していたと主張しておきながら、他方で、本件審判請求をしており、その主張に矛盾があるばかりか、かかる主張自体が権利の濫用であるともいえる。
(3)被請求人による本件商標の使用について
三和建設の再生計画案認可決定が平成26年5月23日になされ、以後、被請求人は、事業の再開準備を行い、被請求人ホームページにも本件商標をアップロードした(乙7)。したがって、被請求人は、本件商標の広告を電磁的方法によって提供しており(商標法第2条第3項第8号)、本件商標を使用しているといえる。
また、被請求人は、請求人に対して平成26年4月14日に本件商標の使用差し止めを請求する旨を内容証明郵便にて送達し、さらに、同年9月12日に本件仮処分の申立てを行った。
(4)通常使用権者による本件商標の使用について
本件仮処分手続きにおける請求人の主張によれば、請求人は被請求人の承諾を得て本件商標を使用していたとのことであり、平成25年1月15日株式会社フタバ(以下「フタバ」という。)に「ウッドタフ」5缶の代金を請求している(乙8)。これについて、本件仮処分手続きにおいて請求人は否定していない。
また、請求人は、平成25年8月30日「バウムタフ」を商標登録するまでは本件商標を使用していたとの主張もしており、同年1月ないし8月頃にかけて、本件商標は、通常使用権者によって使用されていたことは明らかである。
したがって、請求人の主張を前提とすれば、通常使用権者によって、商品に標章を付したものを譲渡し(商標法第2条第3項第2号)、又は、商品に関する取引書類に標章を付して頒布した(同項第8号)といえるため、商標法第50条第1項の要件を充足せず、本件審判請求はその請求に理由がない。
(5) 権利の濫用について
上記のとおり、請求人は、本件仮処分申立てにおいて、被請求人から本件商標の使用について承諾を得ていたと主張していたばかりか、被請求人から本件商標にかかわる事業を引き継いだと主張していた。
このように主張していた請求人が、本件審判請求においては、商標権者、通常使用権者、専用使用権者のいずれの者も本件商標を継続して3年以上使用していないなどと矛盾した主張をすることは許されるべきではない。
したがって、請求人のこれらの主張は権利の濫用として、その請求は排斥されるべきである。
2 上申書(平成27年2月26日付け)
(1)請求人による商標使用に関する補充
本件仮処分において、請求人による商標の使用は、被請求人による承諾に基づくものであるとの内容の決定がなされた(乙9)。したがって、この決定を前提とすれば、本件商標は平成25年8月頃までは、通常使用権者によって、商品に標章を付したものを譲渡し(商標法第2条第3項第2号)、又は商品の取引書類に標章を付して頒布(同第8号)されたといえるため、本件審判請求はその請求に理由がない。

第4 当合議体が行った審尋
1 審判長は、令和元年11月11日付け審尋において、本件審理のさらなる中止又は続行等について、相当の期間を指定し、請求人及び被請求人に意見を求めたが、両者からは何らの応答もなかった。
2 その後、審判長は、被請求人に対して、令和2年1月24日付け審尋において、被請求人が提出した証拠によっては、本件要証期間に、商標権者が、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していることを被請求人が証明しているものとはいえない旨の合議体の暫定的見解及び請求人が提出した平成27年3月23日付け審判事件弁駁書に対する回答を求めたが、被請求人からは何の応答もなかった。

第5 当審の判断
1 不使用取消審判について
商標法第50条に規定する商標登録の取消しの審判にあっては、同条第2項において、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
2 請求人適格(請求人による権利濫用)について
被請求人は「請求人は、本件仮処分申立てにおいて、被請求人から本件商標の使用について承諾を得ていたと主張していたばかりか、被請求人から本件商標にかかわる事業を引き継いだと主張していた。このように主張していた請求人が、本件審判請求においては、商標権者、通常使用権者、専用使用権者のいずれの者も本件商標を継続して3年以上使用していないなどと矛盾した主張をすることは許されるべきではない。したがって、請求人のこれらの主張は権利の濫用として、その請求は排斥されるべきである。」旨を主張している。
しかしながら、商標法第50条第1項で規定される審判請求は、「継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る登録商標を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定されており、この規定において、請求人適格については、「何人も」とされており、これを制限する規定はない。
また、登録商標の不使用による取消審判の請求が、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当であるところ、被請求人の主張する当該審判の請求が被請求人を害することを目的とするものである理由について、本件審判請求に係る全証拠からみても、権利の濫用とすべき事情を認めることができないから、本件審判請求は、請求人の権利濫用にあたるということはできない。
したがって、本件商標について、商標法第50条第1項の規定により審判請求を行っている請求人は、請求人適格を有するものであって、そのほかにこれを否定すべき理由はない。
3 事実認定
被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第7号証は、三和建設のホームページの写しであり、そこには、同社の会社概要のほかに、グループ会社として被請求人の名称とともに業務内容が掲載され、「浸透性無機質保護剤 WOOD-TOUGH(ウッドタフ)、CONCRETE-TOUGH(コンクリートタフ)の製造施工販売」及び「浸透性木材塗料」の見出しのもと、「表面に塗膜だけを形成する被膜型の木材塗料だけではありません。ウッド・タフを充分浸透させることで塗膜の剥離現象を回避し、外観の悪化を避けられます。」と表示されている。この写しの右下には「2015/02/20」と表示されている。
(2)乙第8号証は、請求人からフタバにあてた、2013年1月15日付け「請求書」であって、品名の欄に「木材保護塗料(ウッドタフ)」、数量及び単位の欄に「5缶」、ほかに単価及び金額が表示されていて、請求書の下部に振込先として、請求人の銀行名及び口座番号等が表示されている。
(3)上記(1)及び(2)からすれば、三和建設のホームページの写し(乙7)において、本件商標と社会通念上同一の商標と認め得る「WOOD-TOUGH」及び「ウッドタフ」の各文字、商標権者(被請求人)の名称である「日本ユートピア株式会社」及び本件商標の指定商品と認め得る「(浸透性木材)塗料」が掲載されているとしても、「2015/02/20」の日付は要証期間後に当該ホームページを印刷した日付であって、上記内容の掲載時期を表すものではないことから、上記内容が要証期間内に掲載されたものであるのか明らかではない。
また、被請求人が、通常使用権者であるとも主張する請求人が2013年(平成25年)1月15日付けでフタバに対し「木材保護塗料(ウッドタフ)」5缶の代金を請求したことはうかがえるとしても、例えば、フタバが請求人に対して発注した「木材保護塗料(ウッドタフ)5缶」についての発注書及びフタバが請求人から受領した「木材保護塗料(ウッドタフ)5缶」についての受領書等、商品又は商品の包装に本件商標を付したものを譲渡又は引き渡した等の行為が客観的に確認できる書類は何ら提出されていない。
加えて、仮に、請求人が本件商標の通常使用権者であったとしても、当該請求書のみでは、要証期間内に本件商標が付された商品が存在した事実、及び実際に譲渡等の取引が行われていた事実を確認することはできない。
4 判断
以上によれば、被請求人が提出した証拠からは、要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品「塗料」について、本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることを証明したものということはできない。
また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
さらに、被請求人は、前記第4の2の審尋に対し、期間内に何ら応答していないうえに、請求人の弁駁に対する答弁もしていない。
5 まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2020-03-09 
結審通知日 2020-03-11 
審決日 2020-03-26 
出願番号 商願2004-75959(T2004-75959) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y02)
最終処分 成立  
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 大森 友子
岩崎 安子
登録日 2005-04-22 
登録番号 商標登録第4858581号(T4858581) 
商標の称呼 ウッドタフ、タフ 
代理人 酒井 康生 

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