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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W09
管理番号 1362430 
審判番号 無効2018-890035 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-11 
確定日 2020-04-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第6008900号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第6008900号の指定商品中,第9類「受信機,音声送信装置,携帯電話機用ケース,ヘッドセット,バッテリーチャージャー,データ処理装置用カプラー,ヘッドホン,スピーカー用筐体,無線機器,マウス(コンピュータ周辺機器),モニター付監視装置,コンピュータ用モニター」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6008900号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成29年4月30日に登録出願,第9類「受信機,音声送信装置,携帯電話機用ケース,ヘッドセット,バッテリーチャージャー,自動車のエンジン回転数測定器,データ処理装置用カプラー,ヘッドホン,計量用機器,スピーカー用筐体,光学レンズ,無線機器,マウス(コンピュータ周辺機器),モニター付監視装置,コンピュータ用モニター」を指定商品として,同年12月12日に登録査定,同30年1月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は,次のとおりである。
1 使用商標
請求人が引用する商標は,別掲2のとおりの構成よりなり,請求人の業務にかかる商品「ヘッドホン,イヤホン,スピーカー」を表示するものとして,本件商標の出願時及び登録時に日本において広く知られた商標(以下「使用商標」という。)であると主張するものである。
2 引用商標
(1)登録第5449900号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成21年7月24日に登録出願,別掲4に記載の第9類の指定商品ほか,第25類,第38類及び第41類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同23年11月11日に設定登録されたものである。
(2)登録第5546444号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,2011年(平成23年)9月11日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し,平成24年2月24日に登録出願,第9類「車載用の電話用器具及び通信機器,携帯電話及びその部品」のほか,第6類,第11類,第12類,第27類及び第28類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として,同24年12月28日に設定登録され,その後,同25年11月13日に第12類「自動車用のブレーキ,自動車用のパーキングブレーキ(サイドブレーキ),自動車用のブレーキディスク,自動車用のブレーキキャリパー,自動車用のブレーキパッド」について,一部放棄がされ,本件の登録の一部抹消がされたものである。
(3)国際登録第1225893号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,2014年(平成26年)1月24日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,同年7月24日に国際商標登録出願,第9類,第14類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,2015年(平成27年)11月27日に設定登録され,その後,指定商品及び指定役務については,2018年(平成30年)5月18日に,基礎出願又は基礎登録の効力の一部終了により第9類「Protective cases for speakers; plug adaptors; chargers for use with headphones and speakers; carrying cases for headphones and portable speakers; computer software, namely, software for updating wireless speakers and headphones.」となったものである。
(4)登録第5409418号商標(以下「引用商標4」という。)は,「STUDIO」の文字を標準文字で表してなり,2009年(平成21年)11月18日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,平成22年5月18日に登録出願,第9類「ヘッドフォン」を指定商品として,同23年4月28日に設定登録されたものである。
(5)登録第5695104号商標(以下「引用商標5」という。)は,「BEATS SAUDIO」の文字を標準文字で表してなり,平成26年3月24日に登録出願,第9類「ヘッドフォン,イヤフォン,ラウドスピーカー,オーディオ用スピーカー,オーディオ用ケーブル,自動車用のオーディオ用スピーカー,自動車用のメディアプレーヤー,自動車用デジタルオーディオプレーヤー,携帯電話機,ラップトップ型コンピュータ,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として,同年8月15日に設定登録されたものである。
(6)登録第5434317号商標(以下「引用商標6」という。)は,「BEATSAUDIO」の文字を標準文字で表してなり,2010年(平成22年)3月16日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,同年9月7日に登録出願,別掲5に記載の第9類の指定商品ほか,第38類及び第41類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同23年8月26日に設定登録されたものである。
(7)国際登録第1236635号商標(以下「引用商標7」という。)は,「BEATSAUDIO」の欧文字を横書きしてなり,2014年(平成26年)4月21日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,同年10月21日に国際商標登録出願,第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,2016年(平成28年)1月15日に設定登録され,その後,指定商品については,2018年(平成30年)8月6日に,基礎出願又は基礎登録の効力の一部終了により第9類「Computers; car speakers.」となったものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第52号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当し,同法第46条第1項第1号により,その登録は無効とされるべきものである。
2 請求人について
請求人は,米国カリフォルニア州に本社を備え2006年(平成18年)に創設されたオーディオブランド企業で,2014年(平成26年)にApple Inc.(以下「アップル社」という。)の関連会社となった。請求人は,その略称である「Beats」の文字及び円図形の中にアルファベット「b」を表したとみられる文字を配した図形商標(以下「引用図形商標」という。)をハウスマークとして,「ヘッドホン」,「イヤフォン」及び「スピーカー」等に使用している(甲10?甲17)。
3 引用図形商標の周知性について
請求人のヘッドホン等の製品は,そのスタイリッシュなデザインと音質の良さから我が国において高い人気を博し,世界的著名企業であるアップル社が請求人を子会社にしたことにより,アップル社の販売力によってBeatsブランドはさらに周知のものとなり,インターネット記事への掲載,テレビ及びインターネットCMによる広告,国内外の著名人による愛用により,請求人の製品は,需要者に広く用いられて,世界的にも有名である。また,引用図形商標は,海外ブランド名簿にも2013年(平成25年)ないし2015年(平成27年)にかけて掲載されている(甲18?甲46)。
請求人は,米国の非上場企業であり,アップル社の関連企業であることから,請求人単独での日本における売り上げは公表していないが,米国メディア予想では2013年(平成25年)度の請求人の収益は全世界で14億ドル(1600億円)の大台に到達すると予測されている(甲47)。
請求人の製品には引用図形商標が常に使用されており,需要者は引用図形商標を常に目にする他,イヤホン・ヘッドホンの類は屋外でも使用されるところ,利用者以外でもそのロゴを目にする機会は多く,引用図形商標は請求人のヘッドホン・イヤホン・スピーカーを表示する商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時にて日本において広く知られた標章である。
4 商標法第4条第1項第11号について
引用図形商標は,上記2のとおりの構成態様であり,これに対し,本件商標は,黒い円図形の中にアルファベット「d」を表したとみられる文字と,その下部に「dudios」の文字を配した構成からなり,「dudios」の文字は小さく細字であり,顕著に表示された中央の[d]とこれを囲む円図形が要部といえる。
両商標を比較すると,本件商標の構成中の「d」の文字の末尾が縦直線に接していないという差異はあるが,「b」あるいは「d」の欧文字を円図形の中央に内包し,上端が円の外周につながっているデザインは同一のものであり,又は「b」あるいは「d」の文字は必ずしもこれらの文字と理解されるとは限らず,全体として見た場合,中央の白抜きの円から飛び出した直線が円外周につながった一筆書きのような一体的な図案となっている。そして,図形中心から見て両者は左右対称であり,本件商標を反転して引用図形商標と重ね合わせると,完全に図形部分が一致する。
すなわち,本件商標及び引用図形商標は,「d」あるいは「b」をモチーフの一部としたシンプルな構成であっても,全体の形状としては特徴的で印象に残る図形商標といえる。特に,小文字の「b」と「d」は間違えやすい外観であり英語知識の浅い者や英語に親しみのない者は間違えて覚えることが少なくなく,鏡越してみると「b」は「d」となり,また「d」は「b」となり,両商標は,外観上相紛らわしい類似商標である。
一般に,登録商標を商品に付した場合に,必ず正面から商品を見るものではなく,後方や斜めから見ることもあり様々の角度から観察されるものと考えられ,酷似するデザインを反転させたにすぎない本件商標と引用図形商標は,相紛らわしく混同の可能性が非常に高い。事実,被請求人は,イヤホンを製造販売しており(甲48),このイヤホンの耳の部分にロゴが配される態様はごく普通であるところ,本件商標が当該部分に配された場合,文字は小さく視認し難くなり,図形部分が需要者の注意を惹起する部分となる。
そうすると,本件商標と引用図形商標の近似性はさらに際立つこととなり,外観上相紛らわしいことは明白である。
さらに,本件商標中の文字部分「dudios」は,請求人の商標の一部として使用されている「STUDIO」あるいは「AUDIO」の語と外観上,近似しており,請求人の著名性に擦り寄った商標であることは明らかである。本件商標の「dudios」の文字と,「studio」の文字を比較すると,構成する欧文字6文字中,5文字が共通し,一見して紛らわしい構成語といえ,請求人の実際の使用態様をみても一見して酷似している。また,本件商標の称呼「デュディオス」と請求人の引用商標4の称呼「ストゥディオ」は,称呼上相紛らわしいものである。
以上のように本件商標は,引用図形商標と混同を生じるおそれの高い類似の商標と解すべきであり,本件商標の指定商品と引用図形商標の指定商品は同一商品「ヘッドホン」を含み,他の商品役務についても同一又は類似である。
したがって,本件商標は,引用図形商標と外観上極めて類似性の高い類似商標であり,引用商標4とも称呼上類似する商標で,同一又は類似する商品を指定するものであり,商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 商標法第4条第1項第7号について
引用図形商標は,2006年(平成18年)以降にオーディオ機器に関し使用されており,引用図形商標は,請求人の製品を示すものとして,広く知られ,本件商標と引用図形商標は極めて類似する。
被請求人は,本件商標をイヤホンに使用し,請求人と同業者であって,本件商標の登録出願時に著名な引用図形商標の存在を知っていたと十分に考えられる。
引用図形商標は,請求人が独自に考案した図形商標であって,被請求人がこれと極めて類似するデザインを偶然採択したものとは認められない。
さらに,本件商標が登録出願されたのは引用図形商標が著名となった後であり,本件商標は,引用図形商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力に便乗し,不当な利益を得る等の目的のもとに,引用図形商標の有する特徴を模倣して出願したものといわざるを得ず,かかる行為によって,引用図形商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力を希釈化させ,かつ汚染するものといえる。
以上のとおり,本件商標は,請求人が築き上げた引用図形商標の著名性にフリーライドすることや,その著名性や名声を希釈,毀損することなど不正の目的をもって出願したものであるから,商取引の秩序を乱し,ひいては社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するというべきである。そして,本件商標をその指定商品に使用することは社会公共の利益,社会の一般的道徳観念に反し,また,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
6 商標法第4条第1項第15号について
引用図形商標は,請求人によって広く使用されてきた結果,請求人を表示するものと理解されるところ,本件商標は,その著名商標の特徴をそっくり取り込み反転させたデザインからなる。また,本件商標の構成は,引用図形商標を反転させたデザインからなることから,これに接する需要者・消費者は,「請求人に関係する何らかの製品・ブランド」を表したものと考え,その出所を混同するおそれが高いといえる。
したがって,本件商標をその指定商品中,積極表示している「ヘッドセット,ヘッドホン,スピーカー用筐体」に使用すれば,需要者はそれらの商品が請求人の業務に係る商品ないし請求人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
実際,請求人の商品ではヘッドホンの耳当ての部分に大きく目立つように引用図形商標を付している。また,他社のヘッドホンの商品画像でも,同様に耳当て部分に商品ロゴやハウスマークの表示が認められ(甲22,甲28),ヘッドホンの商標の付し方として一般的な方法であるといえる。被請求人のイヤホンでも,本体部分に「dudios」の表示があり(甲48),この部分に本件商標が付された場合には,引用図形商標と誤認混同の可能性は極めて高いといわざるを得ない。
したがって,このような商品への表示方法の特性を考慮すると,被請求人商品が請求人商品であるとの関連性を想起する可能性は高く,本件商標は,出所混同が生じるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。
7 商標法第4条第1項第19号について
引用図形商標は,構成上,顕著な特徴を有する図形商標であるところ,本件商標は,同図形を反転させた構成に「dudios」の文字を加えた構成からなる。しかしながら,引用図形商標のように特徴ある図形を,請求人と全く関係ない被請求人が偶然に商標として採用しなければならない必然性ないし必要性は全くない。被請求人は,引用図形商標にかかる図形が請求人の著名商標であることを当然知りながら,商標の要部として同ロゴを反転させ,請求人の人気商品を想起させるような図形として本件商標を出願したものと考えられる。このような行為は,請求人の製品ないし請求人が関係しているかのような誤認・混同を惹起させようとするものである。
上記の事実及び引用図形商標が著名であって,極めて大きな顧客吸引力を有する事実を考慮すれば,本件商標は,引用図形商標のもつ顧客吸引力・名声への只乗りによって不正の利益を得る目的,ないし引用図形商標の有する強い識別力・表示力・顧客吸引力を希釈化することによって請求人に損害を与える目的で出願されたものと考えられ,本件商標は不正の目的をもって使用するものであることが客観的に明白であるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判請求に対して,何ら答弁していない。

第5 当審の判断
本件商標の無効事由は,上記第3のとおりであるところ,事案に鑑み,まず,商標法第4条第1項第15号の該当性について検討する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人の主張する引用商標について
請求人は,請求人の業務に係る「ヘッドホン,イヤホン,スピーカ」等(以下「請求人使用商品」という。)について,引用図形商標を使用しているところ,請求人が実際の商品カタログ(パンフレット),インターネット記事等に使用している請求人使用商品を示す標章の具体的な態様は,使用商標によって構成されている商標と同一の標章が,常に表示されているから,使用商標の周知著名性について検討,判断する。
(2)使用商標の周知著名性について
ア 請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(ア)請求人は,米国カリフォルニア州に本社を備え2006年(平成18年)にDr.DreとJimmy lovineによって創設されたオーディオブランド企業で,2008年(平成20年)に最初の製品「Beats Studio」をリリースし,2014年(平成26年)にアップル社に買収され関連会社となった(甲8,甲9)。
また,請求人の略称である「Beats」の文字及び使用商標は,ハウスマークとして,請求人使用商品に使用されている(甲10?甲17)。
(イ)「ALL DIGITAL MUSIC」のウェブサイトにおいて,「米メディアが予測,『Beats by Dr.Dre』2013年度の収益は14億ドルの大台に到達」の見出しの下,「2013.8.4」には,「多くのミュージシャンやセレブから支持を集める,若者に人気のヘッドフォンブランドBeats by Dr.Dre。米メディア『Fast Company』が,高級ヘッドフォンブランド『Beats by Dr.Dre』を展開するBeats Electronicsの2013年度の収益は14億ドル(約1384億円)に達するとレポートしています。Fast Companyが入手した情報によれば,収益は最大で15億ドル(約1483億円)に達する可能性もあります。Beatsはこれまで1500万?2000万個のヘッドフォンやスピーカーを販売しているとのことです。ご参考までに:14億ドルはマイクロソフトのOffice年間予測売上(ランレート)をわずかに下回る数値です。」と記載され,掲載されているヘッドホンの耳当て部には使用商標が表示されている(甲47)。
(ウ)「NIKKEI STYLE MONO TRENDY」のウェブサイトにおいて,「高級ヘッドホンでシェア6割 若者支持する米ベンチャー」の見出しの下,「2014/3/18」には,「国内で売られているブランドが約200という未曽有のヘッドホンブームに乗り,ヘッドホンそのものの販売数を伸ばしているのが,米国生まれの『Beats(ビーツ)』(BeatsElectronics)だ。」,「ヒップホップのアーティスト,ドクター・ドレーと,レコード会社会長が米国で2006年に設立。高音質を目指して2008年に売り出した最初のヘッドホンから大ヒットを連発。トレードマーク『b』のロゴが今やアップルのリンゴマークのようなライフスタイルブランドになっている。現在,米高級ヘッドホン市場でシェア6割を占める」と記載され,表示されている写真のヘッドホンの耳当て部には使用商標が表示されている(甲26)。
(エ)「デジマートマガジン」のウェブサイトにおいて,「2017/01/11」には,「2016年最も売れたイヤホン・ヘッドホンは!?e☆イヤホン販売ランキング2016」の見出しの下,「2016暫定年間ランキング金額版 集計期間:2016年1月1日?2016年12月15日」の項において,「第10位Beats by Dr.Dre Beats Studio Wireless 【価格:¥39,730】/Beatsの大ヒットヘッドホンがランクイン!」」の記載があり,ヘッドホンの耳当て部には使用商標が表示されている写真が掲載されている(甲25)。
(オ)「Smaclub.jp」のウェブサイトにおいて,「9Apr2016」には,「Beatsのヘッドフォンが人気!2万円超えするビーツのヘッドホンを20代男性が選ぶ理由とは?」の見出しの下,「【b】というのはBeatsの頭文字をとったロゴ。ネットのSNSでもBeatsのヘッドフォンをつけた人を見つけるのは簡単・・・というくらい人気です。・・・20代男性がこぞって購入するヘッドフォン・ビーツには音だけじゃない人気の秘密があるんです。」の記載があり,ヘッドフォン・ビーツを愛用している有名人に,「ジャスティン・ビーバー」,「レディガガ」,「ネイマール」及び「エミネム」等の名前が掲載されている(甲24)。
(カ)「NIKKEI TRENDY」のウェブサイトにおいて,「数万円するbeatsのヘッドホンはなぜ売れるのか?日本の10代が支持する真の理由は・・・」の見出しの下,「2015年12月21日」には,「・・・本拠地の米国では確固たる人気ブランドの地位を築いている。2014年にアップルに買収された・・・。イヤホンとヘッドホンの専門店『e☆イヤホン』のヘッドホンカテゴリーでは非常に売れ筋上位に主力モデルがランクインしている・・・」の記載がある。
そして,ヘッドホンの売場の写真の下に「2013年9月に撮影したビックロ ビックカメラ新宿東口店のオーディオ売り場。beats専用コーナーが作られていた」の記載があり,その写真のヘッドホンの耳当て部には使用商標が表示されている写真が掲載されている(甲20)。
(キ)「AV Watch」のウェブサイトにおいて,「デザインだけじゃない。Beatsってどんなヘッドフォン?」の見出しの下,「2015/8/17」には,「大きな『b』のロゴを冠したヘッドフォンやイヤフォンを,街の中や電車内で見かけることは,珍しくなくなってきた。米Beats by Dr.Dre(ビーツ)は,既に日本のヘッドフォンの中でも確固とした地位を築いたといって間違いないだろう。・・・そして’14年7月にAppleがBeatsを30億ドルで買収したことが大きな話題となった。その後,ソフトバンクとも提携し,Apple Storeや量販店などに加え,ソフトバンクショップでも販売されている。」の記載がある(甲19)。
(ク)「東洋経済ONLINE」のウェブサイトにおいて,「なぜアップルはビーツを32億ドルで買うのか」の見出しの下,「2014年5月13日」には,「ヘッドフォンのトップ企業」の項において「・・・同社は現在,ブランド別ヘッドフォンの販売シェアでは世界ナンバーワンと言われている。今や世界中で『偽物』が発生するほどの勢いだ。」と記載され,掲載されている写真のヘッドホンの耳当て部には使用商標が表示されている(甲21)。
イ 上記アからすると,以下を認めることができる。
(ア)請求人は,米国カリフォルニア州に2006年(平成18年)創設されたオーディオブランド企業であり,2008年(平成20年)に最初の製品「Beats Studio」を発売し,2014年(平成26年)にアップル社に買収され,同社の子会社となった後も,請求人使用商品に使用商標を表示して販売していることが認められる。
(イ)請求人は,2013年度(平成25年度)の収益が14億ドル(約1384億円)に達し,最大で15億ドル(約1483億円)の可能性もあるとメディアが予測していること,これまで1500万から2000万個のヘッドホンやスピーカーを販売していること,及びブランド別ヘッドフォンの販売シェアでは世界ナンバーワンといわれていることが認められる。
(ウ)我が国においては,遅くとも2013年(平成25年)9月頃から販売されていたことが認められ,2014年(平成26年)7月に,請求人がアップル社に買収されたことが大きな話題となり,その後,請求人使用商品が,Apple Storeや量販店などに加え,携帯電話大手のソフトバンクショップでも販売されていることが認められる。
(エ)2016年(平成28年)には,我が国において最も売れたイヤホン・ヘッドホンランキングの金額販売数ランキングで10位になっていること,及び「NIKKEI TRENDY」,「東洋経済ONLINE」及び「NIKKEI STYLE MONO TRENDY」などの経済に関するウェブサイトにおいても請求人使用商品が我が国において人気となっていることが掲載されていることが認められる。
(オ)以上のとおり,(a)請求人は米国で平成18年創設されたオーディオブランド企業で,平成26年にアップル社に買収され,平成25年度の収益が14億ドル(約1384億円)に達し,ブランド別ヘッドフォンの販売シェアでは世界ナンバーワンといわれていること,(b)我が国においては,遅くとも平成25年9月頃から販売され,平成26年7月に,請求人がアップル社に買収された以降,請求人使用商品が,Apple Storeや量販店などに加え,携帯電話大手のソフトバンクショップでも販売されていること,(c)平成28年には,我が国におけるイヤホン・ヘッドホンランキングの金額販売数ランキングで10位になっていること,(d)経済に関するウェブサイトにおいても請求人使用商品が我が国の若者を中心とした需要者において人気となっていることが掲載されていることからすると,請求人使用商品の我が国における販売数やシェアが相当程度高いことも容易に推認することができるから,使用商標は,請求人使用商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において我が国の若者を中心とした需要者の間に広く認識されているもので,その著名性は,現在においても継続しているものというのが相当である。
ウ 本件商標と使用商標との類似性
(ア)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,黒色の円図形内に白抜きで幅のある帯状の図形を右斜め上を始点として左方向に円を描くように一周して,始点とは接触しないで,そのまま垂直に黒色の円図形外に抜ける図形(以下「本件図形部分」という。)であり,黒色の円図形内の下部に円弧状に白抜きで「dudios」の文字(以下「本件文字部分」という。)を配した構成態様からなるものである。
そして,本件図形部分と本件文字部分は,特別な関連性を有するものではないから,それぞれ独立して自他商品の識別標識として機能を果たす本件商標の要部と認識されるところ,本件図形部分は我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,本件図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じない一種の幾何図形を表したものと判断するのが相当である。
また,本件文字部分は,「dudios」の欧文字を書したものであるところ,該文字は,既成の語として一般の辞書類に掲載がなく特定の意味を有する成語として親しまれているものでもないから,一種の造語と認められるものであって,その構成文字に相応して,「デュディオス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものと認められる。
(イ)使用商標
使用商標は,別掲2のとおり,黒色の円図形内に白抜きで幅のある帯状の図形を左斜め上を始点として右方向に円を描くように一周して,始点と接触してそのまま垂直に黒色の円図形外に抜ける図形を配した構成態様からなるものである。
(ウ)本件商標と使用商標の比較
本件商標の要部の一つである本件図形部分と使用商標とを比較すると,両商標は,その構成上印象に残ると思われる黒色の円図形を配した点,白抜きで表された図形が表示され,その図形の端が円図形外に抜けている点,本件図形部分と使用商標における構成要素が共通していることから,図形全体の印象が似通っており,互いに近似した印象を与えるものである。
そうすると,本件商標は,使用商標との類似性が比較的高いものといわなければならない。
エ 使用商標の独創性
使用商標は,上記ウ(イ)のとおりであり,その図形は,特徴的な図形であるということができるから,その独創性が比較的高いものであるといえる。
オ 本件商標の指定商品と請求人使用商品との関連性,需要者の共通性
(ア)商品の関連性の程度
本件商標の指定商品中「受信機,音声送信装置,携帯電話機用ケース,ヘッドセット,バッテリーチャージャー,データ処理装置用カプラー,ヘッドホン,スピーカー用筐体,無線機器,マウス(コンピュータ周辺機器),モニター付監視装置,コンピュータ用モニター」には,専門的な分野において使用される機器が含まれるものの,これらの商品中「受信機,音声送信装置,ヘッドセット,バッテリーチャージャー,無線機器,モニター付監視装置」には「ラジオ受信機やテレビジョン受信機,インターフォン,携帯電話機用ヘッドセット,携帯電話機用充電器,トランシーバー,モニター付のドアホン」などの,一般消費者向けの商品が含まれ,また「携帯電話機用ケース,データ処理装置用カプラー,ヘッドホン,スピーカー用筐体,マウス(コンピュータ周辺機器),コンピュータ用モニター」には一般消費者向けの商品もある。
これに対し,請求人使用商品は,「ヘッドホン,イヤホン,スピーカー」であり,日常生活において一般消費者が使用するものである。
そして,本件商標の指定商品に含まれる,上記の一般消費者向けの商品及び請求人使用商品である「ヘッドホン,イヤホン,スピーカー」は,共に家電量販店等の店舗やオンラインショップにおいて一般消費者に販売され,日常生活で,一般消費者によって使用されるものである。
したがって,本件商標に含まれる商品には,請求人の使用商品と性質,用途又は目的において一定の関連性を有している商品が含まれており,その需要者が一般消費者であり共通する場合があるといわざるを得ない。
(イ)取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品に含まれる一般消費者向けの商品の需要者は、一般消費者である。また,請求人の使用商品「ヘッドホン,インホン,スピーカー」の需要者は一般消費者である。
してみれば,本件商標の指定商品の取引者及び需要者の中には,請求人使用商品の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。そして,商品の品質,用途又は目的からすれば,これら共通する取引者及び需要者は,商品の性能や品質のみを重視するということはできず,商品に付された商標に表れる業務上の信用をも考慮して取引を行うというべきである。
(ウ)上記以外の商品
しかしながら,本件商標の指定商品中「自動車のエンジン回転数測定器,計量用機器,光学レンズ」については,測定機械器具や光学機械器具等に含まれるものであり,請求人の使用商品と性質,用途又は目的において異なるものである。
カ 出所の混同のおそれについて
以上のとおり,使用商標は,我が国において,請求人使用商品を表示するものとして,需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認められ,その独創性は比較的高く,請求人使用商品と本件商標の指定商品中の上記(ア)の商品とは一般消費者が共通していること及び性質,用途又は目的において一定の関連性を有していることに加えて,本件商標は,使用商標を左右逆にした構成からなるものを表したものと認識されるから,本件商標と使用商標の類似性は比較的高いものといえる。
そうすると,本件商標権者が,本件商標をその指定商品中の上記(ア)の商品に使用した場合,これに接する需要者,取引者は,請求人又は同人の業務に係る商品との関係を連想,想起し,当該商品が請求人又は請求人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について誤認,混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本件商標は,上記(ア)の指定商品について,商標法第4条第1項第15号に該当し,該商品以外(上記(イ))の指定商品との関係においては商標法第4条第1項第15号に該当しないというべきである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,外観においては,上記1(2)エ(ア)のとおりであり,称呼においては,「デュディオス」の称呼を生じるものであり,観念においては,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1ないし引用商標3は,別掲3のとおり,白色の円図形内に黒線で縁取りされた白抜きで幅のある帯状の図形を左斜め上を始点として右方向に円を描くように一周して,始点と接触してそのまま垂直に白色の円図形外に抜ける図形からなるものである。また,該図形は,特定の事物を表す図形でないから特定の称呼及び観念を生じるものではない。
イ 引用商標4は,「STUDIO」の文字を標準文字で表してなるところ,該文字(語)は,「スタジオ」と発音され,「美術家などの仕事場,写真屋の撮影室」等の意味を有する我が国において中学でも学習する基本語にして平易な英単語であるから,「スタジオ」の称呼を生じるものである。
したがって,引用商標4は,「スタジオ」の称呼を生じ,「美術家などの仕事場,写真屋の撮影室」等の観念を生じるものである。
ウ 引用商標5は,「BEATS STUDIO」の文字を標準文字で表してなり,引用商標6は,「BEATSAUDIO」の文字を標準文字で表してなり,引用商標7は,「BEATSAUDIO」の欧文字を横書きしてなるところ,その外観は,いずれかの文字が強く看者の印象に残る態様ではなく,同じ書体で同じ大きさによりまとまりよく一体的に表されているものであり,また,その構成全体から生じると認められる「ビーツスタジオ」又は「ビーツオーディオ」の称呼も,無理なく一気に称呼し得るものである。
そして,その構成中の「BEATS」の文字部分が捨象されて「STUDIO」又は「AUDIO」の文字部分のみがその要部であると認めることはできないし,その構成中の「STUDIO」又は「AUDIO」の文字部分のみに着目されて取引に資されるというべき特段の事情はないというべきである。
そうすると,引用商標5ないし引用商標7は,その構成中の「BEATS」,「STUDIO」又は「AUDIO」のいずれかの文字部分が商品の出所表示標識として強く支配的な印象を与えるものではないから,全体の構成文字に相応して「ビーツスタジオ」又は「ビーツオーディオ」の一連の称呼のみを生じ特定の観念を生じない全体として一体の造語とみるのが相当である。
(3)本件商標と引用商標1ないし引用商標7との類否
ア 本件商標と引用商標1ないし引用商標3との類否
本件図形部分と引用商標1ないし引用商標3を比較するに,外観においては,本件商標は,上記1(2)エ(ア)のとおり,黒色の円図形内に白抜きで幅のある帯状の図形を右斜め上を始点として左方向に円を描くように一周して,始点とは接触しないで,そのまま垂直に黒色の円図形外に抜ける図形であり,黒色の円図形内の下部に円弧状に白抜きで「dudios」の文字を配した構成態様からなるものであり,引用商標1ないし引用商標3は,上記(2)アのとおり,白色の円図形内に黒線で縁取りされた白抜きで幅のある帯状の図形を左斜め上を始点として右方向に円を描くように一周して,始点と接触してそのまま垂直に白色の円図形外に抜ける図形からなるものであって,その色と図形の差異から外観上,十分区別できるものである。
称呼及び観念については,上記1(2)エ(ア)のとおり,本件文字部分は造語であるから,その構成文字より「デュディオス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものであり,引用商標1ないし引用商標3は,特定の事物を表す図形でないから特定の称呼及び観念を生じるものではない。
そうすると,本件商標と引用商標1ないし引用商標3は,称呼及び観念については,比較することができず,外観において相違するから,互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるというべきである。
イ 本件商標と引用商標4ないし引用商標7との類否
本件文字部分は,上記1(2)エ(ア)のとおり,「dudios」の文字からなり,引用商標4ないし引用商標7は,それぞれ「STUDIO」,「BEATS STUDIO」又は「BEATSAUDIO」の文字からなるところ,その全体の外観において,明らかな差異を有するものであるから,外観上,明確に区別できるものである。
次に,本件文字部分より生じる「デュディオス」の称呼と引用商標4ないし引用商標7より生じる「スタジオ」,「ビーツスタジオ」又は「ビーツオーディオ」の称呼とは,全体の語調,語感が著しく相違し,明瞭に聴別し得るものである。
さらに,本件文字部分は,特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標4は,「美術家などの仕事場,写真屋の撮影室」等の観念を生じ,引用商標5ないし引用商標7は,特定の観念を生じないものであるから,観念においては,本件文字部分と引用商標4は,相紛れるおそれのないものであり,本件文字部分と引用商標5ないし引用商標7は,比較することができない。
以上のとおり,本件商標と引用商標4とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点についても,互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって,本件商標と引用商標5ないし引用商標7とは,その観念において比較できないとしても,外観及び称呼の点について,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ そのほか,本件商標と引用商標1ないし引用商標7とが類似するというべき事情も見いだせない。
エ 小活
以上のとおり,本件商標と引用商標1ないし引用商標7とは,非類似の商標であるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
使用商標は,請求人使用商品に使用し,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,請求人使用商品を表示するものとして,広く認識されていたものであり,本件商標と使用商標とは,相紛れるおそれのある類似の商標であるとしても,請求人が提出した証拠からは,本件商標権者が使用商標に蓄積された名声や信用等の顧客吸引力にフリーライドするなどのそれらを毀損させるものというべき事実は見いだし難いばかりでなく,他に,本件商標が不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他不正の目的をもって本件商標を使用すると認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条1第項第7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東高裁平成14年(行ケ)第616号,平成15年5月8日判決)。
本件において,請求人は,本件商標権者が請求人の名声にフリーライドする意図があったことは明白であるのだから,本件商標の登録は,著しく社会的相当性を欠くものとして,公序良俗に反する旨主張する。
しかしながら,上記1(2)イのとおり,使用商標は,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるとしても,本件商標は,使用商標の信用,名声に便乗するものといえず,かつ,使用商標の顧客吸引力を希釈化させ,その信用,名声を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものというべき証左は見いだせない。
また,本件商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり,さらに,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど,公序良俗に反するものというべき証左も見いだせない。
そうすると,請求人の主張するところをすべて考慮しても,本件商標の登録出願から商標権取得に至る行為を不当,不徳義と評価することはできないし,かつ,本件商標の登録出願が不正の目的でなされたと断定することもできないから,本件商標を登録出願し商標権を取得した行為が著しく社会的妥当性を欠き,その登録を容認することが商標法の目的に反するということはできず,本件全証拠によっても本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する商標であったと評価すべき事情を認めることはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 むすび
以上によれば,本件商標の登録は,その指定商品中の「受信機,音声送信装置,携帯電話機用ケース,ヘッドセット,バッテリーチャージャー,データ処理装置用カプラー,ヘッドホン,スピーカー用筐体,無線機器,マウス(コンピュータ周辺機器),モニター付監視装置コンピュータ用モニター」について,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものというべきであるから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものである。
しかし,その余の指定商品については,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(使用標章)



別掲3(引用商標1?引用商標3)



別掲4(引用商標1の第9類の指定商品)
「写真機械器具,プロジェクションスクリーン,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具用ケーブル,電気通信機械器具用コネクター,電線及びケーブル,携帯電話機及びその付属品,携帯電話用ヘッドセット装置,携帯情報端末装置,スマートフォン,テレプリンター,携帯用マルチメディアプレーヤー,テレビジョン受信機及びその付属品,ラジオ受信機及びその付属品,コンパクトディスクプレーヤー,ジュークボックス,オーディオプレーヤー,ステレオレコードプレーヤー,ステレオCDプレーヤー,ステレオDVDプレーヤー,ステレオMDプレーヤー,青紫色レーザーを用いた大容量光ディスクプレーヤー,ステレオMP3形式ファイル用の音楽再生用プレーヤー,ステレオMP4形式ファイル用の音楽再生用プレーヤー,携帯用CDプレーヤー,車載用CDプレーヤー,デジタルオーディオプレーヤー,携帯用デジタルオーディオプレーヤー,車載用デジタルオーディオプレーヤー,携帯用音楽プレーヤー用の保護ケース,レコードプレーヤー及びその部品,レコードプレーヤー用ピックアップカートリッジ,レコードプレーヤー・イヤホン・イヤーピース・ヘッドホン・ビデオプレーヤー・マイクロホン用振動板,イヤホン,イヤーピース,ヘッドホン,ビデオプレーヤー,デジタルビデオプレーヤー,携帯用デジタルビデオプレーヤー,車載用デジタルビデオプレーヤー,DVDプレーヤー,携帯用DVDプレーヤー,車載用DVDプレーヤー,マルチメディアプレーヤー,携帯用情報端末,車載用情報端末,MP3プレーヤー,MP4プレーヤー,スピーカー及びその部品,車載用スピーカー,ラウドスピーカー,ラウドスピーカー用キャビネット,ラウドスピーカー用ホーン,スピーカー用のスタンド,スピーカー・アンプからなるホームシアター装置,オーディオ機器,プリアンプリファイアー,アンプリファイアー,サウンドアンプリファイアー,オーディオアンプリファイアー,アンプリファイアーとラウドスピーカーとレシーバーとチューナーから構成される音響録音再生装置,サブウーハー,スピーカーに使用する電子回路,音響カプラー,無線式音声情報送受信装置,ステレオレシーバー,ステレオチューナー,ステレオアンプリファイアー,オーディオ機器部品,ビデオ機器,ビデオ機器部品,マイクロホン,録音機械器具,録画機械器具,ホームシアターシステム用のオーディオスピーカー,オーディオミキサー,電子オーディオミキサー,サウンドミキサー,アンプリファイアー一体型のサウンドミキサー,デジタルフォトフレーム,ダウンロード可能な携帯電話機のアラーム用音楽データ,電気通信機械器具用チューナー,音楽又は映像の録音又は録画・送受信・編集のための装置,電気通信機械器具,ラップトップコンピューター,コンピューターハードウェア,デジタル音楽ファイルを作動させるためのコンピューターソフトウェア,作曲用ソフトウェア,コンピューターソフトウェア,コンピューターの付属品,コンピューター用オーディオスピーカー,電子応用機械器具及びその部品,サングラス,眼鏡,メトロノーム,録音済みの磁気カード・磁気シート及び磁気テープ,録音済みのコンパクトディスク,レコード,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,インターネットを利用して受信し、及び保存することができるニュースの画像データ,インターネットを利用して受信し、及び保存することができるニュースの音声データ,インターネットを利用して受信し、及び保存することができるニュースの動画像データ,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる電子出版物,ダウンロード可能なMP3形式及びMP4形式の画像ファイル,ダウンロード可能なMP3形式及びMP4形式の音声ファイル,ダウンロード可能なMP3形式及びMP4形式の動画像ファイル,ダウンロード可能なMP3形式及びMP4形式の音楽ファイル,MP3形式及びMP4形式の音楽ファイル,ダウンロード可能なMP3形式及びMP4形式の電子出版物のデータファイル,MP3形式及びMP4形式の電子出版物のデータファイル,ダウンロード可能なMP3形式及びMP4形式の報道データファイル,MP3形式及びMP4形式の報道データファイル,ダウンロード可能な携帯電話用着信音用の音楽,電子出版物」

別掲5(引用商標6の第9類の指定商品)
「音響及び映像の記録用・再生用・送信用の機械器具,オーディオプレーヤー,ビデオプレーヤー,ビデオディスクプレーヤー,携帯用MP3プレーヤー,携帯用ビデオディスクプレーヤー,DVDプレーヤー,携帯DVDプレーヤー,CDプレーヤー,携帯CDプレーヤー,車載用MP3プレーヤー,車載用ビデオディスクプレーヤー,車載用DVDプレーヤー,車載用CDプレーヤー,デジタルオーディオプレーヤー,デジタルビデオプレーヤー,携帯デジタルオーディオプレーヤー,携帯デジタルビデオプレーヤー,車載用デジタルオーディオプレーヤー,車載用デジタルビデオプレーヤー,MP3プレーヤー,MP4プレーヤー,携帯音楽再生プレーヤー専用ケース,携帯電話,携帯情報端末装置,スマートフォン,携帯電話用のマイクロフォン付ヘッドフォン(ヘッドセット),スピーカー,自動車用のスピーカー,拡声器,拡声器用キャビネット,拡声器用ホーン,拡声器用スタンド(台架類),サラウンド音声信号の再生機能を備えた音声処理装置,音響機械器具,プリアンプ,増幅器(アンプ),音声増幅器,増幅器(アンプ)、拡声器、受信機、及びチューナーから構成されるステレオ装置,低音域専用スピーカー(サブウーファー),音声信号、映像信号又は音声映像信号用の信号の分離・分配・発生及び変換用の回路,オーディオミキサー,サウンドミキサー,プリメイン・アンプ付のサウンドミキサー,音響カプラー,音響情報の無線送信機,音楽用ジュークボックス,楽器用増幅器(アンプ),メトロノーム,テレプリンター,音源標定機器,映写用スクリーン,ステレオ受信機,ステレオ用チューナー,ステレオ増幅器,コンポーネント型ステレオ装置,映像周波機械器具,マイクロホン,音声・映像再生機器用電気ケーブル及びケーブルコネクター,動力ケーブル及びケーブルコネクター,録音・録画機械器具,携帯電話機の附属品,レコードプレーヤー及びその部品,ステレオプレーヤー及びその部品,眼鏡及びサングラス,ヘッドホン,ノートブック型コンピュータ,コンピュータハードウェア,コンピュータソフトウェア,コンピュータの付属品,音声要素を備えたラジオ受信機,テレビジョン受信機及び電子オーディオ機器,ホームシアターシステム用のオーディオスピーカー,コンピュータ用のオーディオスピーカー,レコード,音楽記録済媒体,デジタル音楽ファイルを処理するためのコンピュータソフトウェア,デジタル画像、ビデオクリップ及び音楽を表示するためのデジタルフォトフレーム,インターネット及び無線機器を通じてダウンロード可能な音楽,ダウンロード可能なMP3又はMP4形式の音楽及び映像ファイル,ダウンロード可能な画像・映像・音楽,作曲用コンピュータソフトウェア,ダウンロード可能な携帯電話用着信音,音声又は画像の記録、伝送又は再生用の機器」



審理終結日 2019-10-28 
結審通知日 2019-10-30 
審決日 2019-12-04 
出願番号 商願2017-61361(T2017-61361) 
審決分類 T 1 11・ 272- ZC (W09)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 大森 友子
榎本 政実
登録日 2018-01-05 
登録番号 商標登録第6008900号(T6008900) 
商標の称呼 デュディオス、デイ 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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