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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W26
審判 全部無効 商標の周知 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W26
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W26
管理番号 1361639 
審判番号 無効2018-890095 
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-25 
確定日 2020-03-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5873137号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5873137号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5873137号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年2月29日に登録出願、第26類「エンブレム,装飾用ピン(貴金属製のものを除く)」を指定商品として、同年7月25日に登録査定、同年8月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由に引用する商標は、次の1ないし3の商標であり、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。
1 引用商標1は、別掲2のとおりの構成からなるものであり、平成20年10月2日に登録出願、第14類「指輪,イヤリング,ネックレス,ペンダント,ブレスレット,貴金属製ブローチ,タキシード用ドレスシャツの前立てを留めるための取り外し可能な貴金属製の飾りボタン,ネクタイ止め,その他の身飾品」を含む第9類、第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同21年5月15日に設定登録され、現に有効に存続している登録第5231693号商標のほか、登録第5371886号商標、登録第5397260号商標、登録第5667087号商標、登録第5950260号商標、登録第6029834号商標及び国際登録第1364657号商標とその構成を共通にするものである。
また、引用商標1に係る構成は、登録第5231697号商標及び登録第5368547号商標の構成中にも含まれているものである。
2 引用商標2は、別掲3のとおりの構成からなるものであり、平成20年10月2日に登録出願、第14類「指輪,イヤリング,ネックレス,ペンダント,ブレスレット,貴金属製ブローチ,タキシード用ドレスシャツの前立てを留めるための取り外し可能な貴金属製の飾りボタン,ネクタイ止め,その他の身飾品」を含む第9類、第14類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同21年5月15日に設定登録され、現に有効に存続している登録第5231698号商標のほか、登録第5416073号商標、登録第5923960号商標、登録第5969530号商標及び国際登録第1365394号商標とその構成を共通にするものである。
3 引用商標3は、別掲4のとおりの構成からなる商標である。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第127号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 引用商標の著名性
(1)引用商標1
引用商標1(クロス)は、創業当初から今日までそのデザインを変更することなく、30年間継続して使用され続けており、「クロムハーツ」の代名詞のメインモチーフとして絶大な人気と知名度を誇り、その状態は現在も継続している。
請求人の「クロス」が、著名ブランド「クロムハーツ」のメインモチーフとして絶大な人気と知名度を誇っていることは、例えば、本件商標の出願日よりも前に発行された、発行部数が多く、多くの日本人に読まれている数々の雑誌において、紹介されていることからも明らかである(甲22ないし甲29)。
このように、請求人自身の歴史や、本件商標の出願日より前に日本で発行された発行部数の多い数々の有名な雑誌の記事やインターネット記事からも明らかなように、請求人の「クロス」は、「クロムハーツ」の商品を所有したい人々の憧れの商標(モチーフ)の1つであり、世界的に著名なブランドである請求人の代表的商標として、世界的な著名性を獲得しており、本件商標の出願日、登録査定時には既に日本においても著名性を獲得し、その状態が継続していることは明らかである。
(2)引用商標2
請求人のブランドを象徴する引用商標1「クロス」と、花を組み合わせたモチーフが引用商標2「フローラルクロス」である。
(3)引用商標3
引用商標2「フローラルクロス」から発展し、2001年にデザインが創作されたモチーフが、引用商標3の「ピン フローラル コーナー」という装飾用ピンのモチーフである(甲42)。
引用商標3を用いた装飾用ピンは、2003年の発売開始以降、ファッションに敏感な人々に愛され続けており、「フェンディ」及び「シャネル」のデザイナー カール ラガーフェルド氏等々有名人・著名人にも愛用者が多い(甲46)。
すなわち、引用商標1ないし3は、それらを見れば、請求人に係る商品であると需要者に容易に想起させ得るほど、広く認知されている。
(4)広告宣伝活動
請求人やその総代理店を含む関連会社は、主に雑誌や新聞等を通じた精力的な宣伝広告活動を行ってきた(甲17、甲39及び甲47ないし甲79)。そして、請求人らが日本国内において支出した宣伝広告費用は、本件商標出願前の数年間についてだけでも、2012年に約1億8000万円、2013年に約2億4500万円、2014年に約2億4800万円、2015年は約3億円にも及ぶ。
(5)雑誌等での請求人及び請求人の商品の紹介
引用商標を付した「クロムハーツ」ブランドの商品や、かかる商品を着用したスポーツ選手や俳優、タレント、モデルといった著名人が、雑誌等の刊行物で頻繁に紹介されてきた。全米で発売された雑誌はもちろん、日本国内においても、全国で発売される著名な服飾関係の雑誌を含む多くの雑誌等に掲載されてきている(甲17、甲18、甲22ないし甲25、甲30ないし甲37、甲39ないし甲41、甲43、甲46、甲54、甲59、甲60、甲62ないし甲65、甲67、甲68、甲70、甲74、甲76及び甲80ないし甲99)。
(6)売上高
「クロムハーツ」ブランド商品の売上高は高い水準で維持されており、日本だけでも、本件商標出願前後の2014年3月期末に約94億円、2015年3月期末に約100億円、本件商標の出願日平成28年(2016年)2月29日を含む2016年3月期末には約114億円を売り上げている。
(7)模倣品の出現、摘発、逮捕者
請求人の商品は、高額であるにもかかわらず、そのデザイン性、品質への信頼性等により、高い人気を維持し続け著名性を維持している。
しかし、その高い人気のために模倣品が後を絶たない。例えば、韓国での模倣品摘発の多いブランドとして請求人が挙がっており(甲101)、また、甲21に「有名ゆえに贋作が出回っているみたいで、偽物をつかまされることもあります。」と記載されているように、これまでにも多くの請求人の商品の模倣品・偽造品が日本でも押収されてきた(甲102ないし甲106)。
(8)前記(1)ないし(7)のとおり、引用商標を付した第26類「エンブレム,装飾用ピン(貴金属製のものを除く。)」や第26類「貴金属製バックル」及びそれに類似する第14類「身飾品,装飾用ピン,ネックレス,ウォレットチェーン等」のみならず、「携帯電話及びスマートフォン、タブレット等電子機器のケース、タバコケース」等のケース類、かばん類、袋物、被服、生活用品全般に及ぶ「クロムハーツ」ブランド商品が多数販売されたことに加えて、請求人や関連企業による宣伝広告活動、さらには、引用商標を付した「クロムハーツ」ブランド商品が雑誌等の刊行物や各種媒体で頻繁に紹介されていたことを通じて、本件商標の登録出願時(平成28年(2016年)2月29日)及び登録査定時(平成28年(2016年)7月25日)には、既に引用商標は世界(特に米国)のみならず、日本においても、請求人の業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要者の間に広く認識され、かつ著名なものとなっており、その周知・著名性は今日に至るまで継続している。
2 出所混同のおそれについて
(1)本件商標と引用商標との対比
本件商標は、中心の円の上下左右に、3枚の花被片で構成された百合の花のような辺が配されているという特徴を有し、請求人の引用商標と本件商標の構成が同一で、類似性が極めて高い。上下左右の辺の長さの比の多少の差は、本件商標や引用商標が有する特徴的な基本的構成に埋没してほとんど分からないものとなるから、商標の具体的構成における差異は、現実の取引の場において、商品の出所を識別する上で大きな意味をなさない。
そのため、需要者に請求人の商標であると誤認を生じさせる可能性が高い。
(2)本件商標の指定商品
本件商標の指定商品、第26類「エンブレム,装飾用ピン(貴金属製のものを除く。)」の類似群コードは21A02で、請求人が引用商標を付して長年にわたり継続使用している第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),装飾用ピン,ネックレス,ウォレットチェーン等」(甲18、甲109及び甲110)と同じ類似群コードである。
(3)出所混同のおそれ
中心の円の上下左右に、3枚の花被片で構成された百合の花のような辺が配されることを基調とする商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、本件商標の指定商品の取引者、需要者間で広く認識されていたことは上述のとおりである(甲2ないし甲106)。
また、本件商標は、その構成中に引用商標と同じく「中心の円の上下左右に、3枚の花被片で構成された百合の花のような辺が配される」という特徴を具備しており、請求人及び引用商標を容易に想起連想させるものである。
このように本件商標は、引用商標と酷似しており、図形構成の軌跡を一にすることは明らかである。
したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合は、請求人の商品出所表示として周知著名な引用商標を表示した「身飾品」や「ケース」と誤認混同を生ずるおそれが高いことが明らかである。
3 フリーライド、ダイリューション等の不正目的(被請求人の認識について)
被請求人は、本件商標の出願日と同日に、請求人の商標として周知・著名性を得ている別の商標(「CHプラス(引用商標1「クロス」から派生したものであるため「クロス」とも呼ばれる。)」及び「クロスボール」)と同一又は類似する商標を出願し登録を受けている(商標登録第5873138号、甲114)。
周知・著名性を獲得している請求人の商標と同一又は類似する商標を、被請求人が同日に2件出願したことは偶然とはいい難い。
つまり、被請求人は、請求人による周知・著名性を得ている商標を明確に認知した上で、本件商標や甲114の商標をそれぞれ出願したことは容易に想像できる。
かかる事情に照らせば、引用商標と構成の軌跡を同じにする本件商標は、請求人の努力によって獲得された「クロス」を基調とする引用商標の顧客吸引力にフリーライドするものであり、請求人の商品出所表示として著名な図形商標「クロス」を基調とする引用商標の出所表示機能を稀釈化するものである。
本件商標は、請求人の名声及び引用商標の顧客吸引力にフリーライドし、また、引用商標の商品等出所表示力を希釈化するダイリューション等の不正の目的をもって登録、使用されるものであることが明らかである。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標と引用商標とは類似性が極めて高く、本件商標が指定商品に使用された場合には、請求人又はこれと経済的若しくは組織的な関係を有する者の業務に係る商品と誤信され、その出所について混同を生ずるおそれがあることが明らかである。また、本件商標を指定商品に使用する行為は、請求人の商品出所識別標識として広く認識されている引用商標の顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、そのような使用によって引用商標の出所表示機能が希釈化されることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
被請求人の主たる業務及び過去の出願履歴等から、被請求人が、請求人の商標が日本国内において広く知られている事実を認識し、その上で、請求人の著名な商標の顧客吸引力を利用しようとしていたことは明らかである。このように、本件商標は、被請求人によって剽窃的に出願され、登録を受けたものであることは明らかであり、本件商標の出願の経緯は社会的相当性を欠くものである。
また、本件商標が指定商品に使用された場合、請求人の業務に係る商品を表示するものとして周知著名な引用商標の出所表示機能が稀釈化され、請求人に経済的及び精神的損害を与えることは疑いない。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び国際信義に反するものといわざるを得ず、公の秩序を害するおそれがあるものというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
6 商標法第4条第1項第19号該当性について
被請求人が引用商標を知らないで、周知・著名な引用商標と同一の軌跡を有する構成態様からなる本件商標を、偶然に出願したとは考え難く、引用商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願、使用されているものと推認される。
被請求人は意図的に他人の周知・著名商標に便乗する手法を繰り返していると強く推認され、請求人としては、被請求人に不正の目的があったことは複数の事実の積み重ねによって明らかであると考える。
以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願日である平成28年(2016年)2月29日よりもはるか前から現在に至るまで数十年継続して日本国内又は外国において需要者の間に広く認識されている引用商標と極めて類似する商標であって、請求人の著名な商標の顧客吸引力を利用しようという不正の目的をもって使用するものというべきであることから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
7 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、既に請求人の業務に係る商品に使用される商標として取引者、需要者間において広く知られていた。そして、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品又はこれらに類似する商品について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
8 まとめ
以上より、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号又は同項第19号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項により、その登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の提出に係る証拠及び同人の主張(当事者間に争いの無い事実)によれば、次の事実が認められる。
ア 本件商標の登録出願時及び登録査定時より前に発行された各種の雑誌において、請求人の業務に係る引用商標1を付した「ネックレス」等の「身飾品」を紹介する記事が極めて多数掲載されている(甲22、甲24、甲25、甲32、甲40、甲59、甲60、甲62、甲70、甲82ないし甲85、甲87ないし甲90、甲92、甲93、甲97ないし甲99及び甲116)。同様に、引用商標2に係る記事(甲39、甲46及び甲92)及び引用商標3に係る記事(甲46)が数件掲載されている。
イ 「身飾品」以外の商品についても、本件商標の登録出願時及び登録査定時より前に発行された各種の雑誌において、請求人の業務に係る引用商標1を付した「食器」(甲30及び甲36)、「手帳」(甲30)、「ライター」(甲31及び甲34)、「バッグ」(甲31、甲34、甲80、甲81及び甲99)、「ブックカバー」(甲33)、「ペンケース」(甲35)、「財布」(甲37、甲68、甲76、甲94及び甲95)、「キーケース」(甲68)、「手帳カバー」(甲86)、「パスポートカバー」(甲96)、「マネークリップ」(甲96)、「ブーツ」(甲98)及び「洋服」(甲99)を紹介する記事が多数掲載されている。同様に、引用商標2に係る「ホチキス」(甲41)が1件掲載されている。
ウ 本件商標の登録出願時及び登録査定時より前に発行された雑誌において、請求人の業務に係る引用商標1を付した「身飾品」及び「洋服」についての広告(甲49、甲50及び甲52)並びに引用商標2を付した「身飾品」についての広告(甲47、甲48、甲54、甲55、甲59及び甲61)が掲載されている。
エ 請求人が日本国内において支出した宣伝広告費は、平成24年(2012年)に約1億8000万円、平成25年(2013年)に約2億4500万円、平成26年(2014年)に約2億4800万円及び平成27年(2015年)に約3億円である(請求人の主張)。
オ 引用商標に関連した商品の日本国内における売上高は、平成26年(2014年)3月期末に約94億円、平成27年(2015年)3月期末に約100億円及び平成28年(2016年)3月期末に約114億円である(請求人の主張)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時前において、請求人の業務に係る引用商標1を付した「身飾品」を始めとする各種の商品を紹介する記事及び同商品の広告が各種の雑誌において極めて多数掲載されており、同商品の宣伝広告費及び売上高が相当程度に上ることが認められる。
そうすると、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時の前には、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、少なくとも「身飾品」の分野における取引者、需要者の間において、広く認識されていた商標というのが相当である。
したがって、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「身飾品」を表示するものとして需要者の間において広く認識されていた商標である。
一方、引用商標2及び3については、これらを付した商品を紹介する記事及び同商品の広告についての各種の雑誌への掲載数が必ずしも多いとはいえないため、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標1との比較について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、中央やや右上に黒塗りの円を配し、該円から外側に向かって徐々に幅広となる黒塗りの3本の棒状図形を該円の上下左右にそれぞれ配し、該3本の棒状図形のうち中央の図形はまっすぐに伸び、左右の図形はそれぞれ左右に開くようにカーブしており、該棒状図形は、上及び右のものは短く、左及び下のものは長くなっている構成の図形からなるものである。
そして、該図形は、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているとは認められないものであるから、本件商標からは、称呼及び観念を生じないものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、中央やや上に円を配し、該円から外側に向かって徐々に幅広となる4本の棒状図形を該円の上下左右にそれぞれ配し、該4本の棒状図形のうち中央の2本の図形はまっすぐに伸び、左右の図形はそれぞれ左右に開くようにカーブしており、該棒状図形は、上及び左右のものは短く、下のものは長くなっている構成の図形からなるものである。
そして、該図形は、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているとは認められないものであるから、引用商標1からは、称呼及び観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標1との比較について
本件商標と引用商標1とを比較すると、本件商標が黒塗りであるのに対し引用商標1はそうでないこと、中央付近の円から上下左右のそれぞれの方向に外側に向かって伸びる棒状図形が本件商標は3本ずつであるのに対し引用商標1は4本ずつであること、中央付近の円から左に伸びる棒状図形が本件商標は長いのに対し引用商標1は短いことといった点において相違する。
一方で、本件商標と引用商標1とは、中央付近に円を配していること、該円から外側に向かって徐々に幅広となる棒状図形を該円の上下左右にそれぞれ配していること、該棒状図形のうち中央の図形はまっすぐに伸び、左右の図形はそれぞれ左右に開くようにカーブしていること、中央付近の円から上及び右に伸びる棒状図形は短く、下に伸びる棒状図形は長いことといった点において共通する。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、その外観において、一定程度の共通性を有するものであるから、一定程度近似した印象を与えるものである。
また、本件商標と引用商標1とは、いずれも称呼及び観念を生じないものであるから、称呼及び観念においては比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標1との外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、たとえ称呼及び観念において比較できないとしても、外観において一定程度近似した印象を与える両商標は、一定程度の類似性を有するというべきである。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標1は、前記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「身飾品」を表示するものとして需要者の間において広く認識されていた商標である。
また、前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1とは、外観においては一定程度近似した印象を与えるものであり、称呼及び観念においては比較することはできないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1との外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、引用商標1が請求人の業務に係る「身飾品」を表示するものとして需要者の間において広く認識されていたという取引の実情を踏まえ全体的に考察すれば、たとえ、称呼及び観念において比較できないとしても、本件商標は、需要者の間に広く認識されていた引用商標1との一定程度の近似した印象により、引用商標1との間に、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。
してみれば、本件商標は、引用商標1に類似する商標である。
さらに、本件商標の指定商品である「エンブレム,装飾用ピン(貴金属製のものを除く)」と引用商標の使用に係る商品である「身飾品」とは、いずれも身に飾る装飾品であることから、生産部門、販売部門、品質、用途及び需要者を共通にする類似する商品である。
以上からすると、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「身飾品」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標1と類似する商標であって、「身飾品」に類似する商品に使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1とは、一定程度の類似性を有するものである。
また、前記1のとおり、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「身飾品」を表示するものとして需要者の間において広く認識されていた商標であるから、引用商標1の周知著名性の程度は高いといえる。加えて、引用商標1は、特徴的な図形からなるものであるから、その独創性の程度は高いといえる。
さらに、本件商標の指定商品である「エンブレム,装飾用ピン(貴金属製のものを除く)」と引用商標1の使用に係る商品である「身飾品」とは、いずれも身に飾る装飾品であることから、両商品の関連性の程度は高く、その需要者も共通にする。
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは一定程度の類似性を有し、引用商標1の周知著名性及び独創性の程度は高く、本件商標の指定商品と引用商標1の使用に係る商品との関連性の程度は高く、その需要者を共通にすることからすると、本件商標をその指定商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、引用商標1を連想、想起し、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しないとしても、同項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
前記3のとおり、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「身飾品」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標1と類似する商標である。
しかしながら、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものとは認められない。
請求人は、被請求人が引用商標1を知らずに本件商標を偶然に出願したとは考え難く、引用商標1の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願、使用されているものと推認される旨主張する。
しかしながら、本件商標が不正の目的をもって使用をするものであることの具体的な証拠の提出はなく、職権による調査によってもそのような事情は見いだせない。
また、請求人は、被請求人は意図的に他人の周知・著名商標に便乗する手法を繰り返しているといえる旨主張する。
しかしながら、仮に請求人が主張するような事情があるとしても、本件商標においては、不正の目的をもって使用をするものであるという事情は見いだせない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人は、本件商標は、被請求人によって剽窃的に出願され、登録を受けたものであり、本件商標の出願の経緯は社会的相当性を欠く旨、また、本件商標が指定商品に使用をされた場合、引用商標の出所表示機能が稀釈化され、請求人に経済的及び精神的損害を与える旨主張する。
しかしながら、そのような事実を明らかにする具体的な証拠の提出はなく、職権による調査によってもそのような事情は見いだせない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当しないとしても、同項第10号に該当するものであり、仮に本件商標が同号に該当しないとしても、同項第15号に該当するものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1


別掲3 引用商標2


別掲4 引用商標3






審理終結日 2020-01-22 
結審通知日 2020-01-27 
審決日 2020-02-10 
出願番号 商願2016-21725(T2016-21725) 
審決分類 T 1 11・ 251- Z (W26)
T 1 11・ 271- Z (W26)
T 1 11・ 255- Z (W26)
最終処分 成立 
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 木村 一弘
山田 啓之
登録日 2016-08-12 
登録番号 商標登録第5873137号(T5873137) 
代理人 泉谷 透 
代理人 名古屋国際特許業務法人 
代理人 名古屋国際特許業務法人 
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