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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W29
審判 全部申立て  登録を維持 W29
審判 全部申立て  登録を維持 W29
審判 全部申立て  登録を維持 W29
管理番号 1360720 
異議申立番号 異議2019-900203 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-26 
確定日 2020-03-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6141076号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6141076号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6141076号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成31年1月13日に登録出願,第29類「澄ましバター」を指定商品として,同年4月12日に登録査定,同月26日に設定登録されたものである。

2 引用商標等
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は次のアないしケのとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
ア 登録第5115614号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第5類「動物の人工受精用精液・DNA・胚・卵子,乳児用食品,乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク」,第29類「牛乳,全乳製のクリーム,その他のクリーム,全乳製の粉乳,脱脂粉乳,その他の粉乳,乳清,乳清を加味した乳製品,バター,チーズ,乳飲料,その他の乳製品」及び第44類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成19年2月7日(優先権主張:ニュー・ジーランド 2006年(平成18年)9月7日)
設定登録日 平成20年2月29日
イ 登録第5112243号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品及び指定役務 第5類「動物の人工受精用精液・DNA・胚・卵子,乳児用食品,乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク」及び第44類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成19年2月7日(優先権主張:ニュー・ジーランド 2006年(平成18年)8月30日)
設定登録日 平成20年2月22日
ウ 登録第4867135号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲4のとおり
指定商品 第29類「牛乳,全乳製のクリーム,その他のクリーム,全乳製の粉乳,脱脂粉乳,その他の粉乳,乳清,乳清を加味した乳製品,バター,チーズ,乳飲料,その他の乳製品」
登録出願日 平成16年5月21日
設定登録日 平成17年5月27日
エ 登録第6044549号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲5のとおり
指定商品 第5類「乳児用食品,乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,栄養補助食品,プロテインを主原料とする栄養補助食品」及び第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」
登録出願日 平成29年9月5日
設定登録日 平成30年5月18日
オ 登録第6044550号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 別掲6のとおり
指定商品 第5類「乳児用食品,乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,栄養補助食品,プロテインを主原料とする栄養補助食品」及び第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」
登録出願日 平成29年9月5日
設定登録日 平成30年5月18日
カ 登録第6102183号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 別掲7のとおり
指定商品 第5類「乳児用食品,乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」及び第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」
登録出願日 平成29年9月5日
設定登録日 平成30年11月30日
キ 登録第6044548号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様 a2 MILK(標準文字)
指定商品 第5類「乳児用食品,乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,栄養補助食品,プロテインを主原料とする栄養補助食品」及び第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」
登録出願日 平成29年9月5日
設定登録日 平成30年5月18日
ク 登録第6048401号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様 a2 Store(標準文字)
指定商品及び指定役務 第5類「乳児用食品,乳児用粉ミルク,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,栄養補助食品,プロテインを主原料とする栄養補助食品」,第29類「粉乳,牛乳,バター,チーズ,クリーム,ヨーグルト,乳飲料」,第35類「乳児用食品・乳児用粉ミルク・食餌療法用食品・食餌療法用飲料・栄養補助食品・プロテインを主原料とする栄養補助食品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,粉乳・牛乳・バター・チーズ・クリーム・ヨーグルト・乳飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンラインによる乳児用食品・乳児用粉ミルク・食餌療法用食品・食餌療法用飲料・栄養補助食品・プロテインを主原料とする栄養補助食品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンラインによる粉乳・牛乳・バター・チーズ・クリーム・ヨーグルト・乳飲料の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第9類,第30類及び第35類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成29年11月9日(優先権主張:ニュージーランド 2017年(平成29年)9月26日)
設定登録日 平成30年6月1日
ケ 登録第5743365号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の態様 THE a2 MILK COMPANY(標準文字)
指定商品 第5類「乳児用食品,乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク,食餌療法用食品及び飲料」及び第29類「牛乳,クリーム(乳製品),全乳製の粉乳・脱脂粉乳・その他の粉乳(乳幼児用のものを除く。),乳清,乳清を加味した乳製品,バター,チーズ,乳飲料,その他の乳製品」
登録出願日 平成26年4月1日(優先権主張:サモア独立国 2014年(平成26年)2月24日)
設定登録日 平成27年2月20日
(2)申立人が,本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は,別掲8のとおりであり(以下「使用商標」という。),申立人が「乳製品」ついて使用しオーストラリア連邦において広く認識されているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第68号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標との類似性について
(ア)称呼について
本件商標と引用商標は,同一の称呼「エイツー」を含み,実際の取引において,その称呼の共通性から誤認・混同を生ずるおそれがあり,互いに類似する商標である。
実際の取引過程,例えば,同じ場所(スーパーマーケット)で,両商標の付されたミルクが販売されている場合,需要者は引用商標が付されたミルクについて「エイツー」の称呼を用いることは明らかで,その称呼に対して,販売者(店員)は,本件商標の短縮称呼であるとの混同を生じる可能性が高いと思われる。この状況は,逆の設定でも生じうるといえる。すなわち,需要者が本件商標のミルクを購入しようとした場合,「エイツービローナギー」は冗長すぎる称呼であり,発音もしにくいことから「エイツー」と称呼する可能性が高いと考える。
(イ)観念について
牛乳の種類としては,ベー夕カゼインA1を多く含む牛乳と,ベータカゼインA2を多く含む牛乳が存在する(甲23)。
すなわち,「A2」は牛乳のタンパク質成分の型を表しているものであるが,この情報は,栄養学等の科学的専門分野に精通している乳製品の研究者にとっては通常の知識の範囲かと考えるが,一般の消費者,取引者がこの情報を知っている状況にはないといえる。
したがって,本件商標の「A2」及び引用商標の「a2」の文字は,需要者,取引者が,乳製品との関連において看取したとしても,その科学的な意味までも理解することはできず,要部同士の共通性として看取するものといえる。
その他の構成文字である「MATRI-GAUDHAN」から特定の観念が想起されることはなく,また,「Bilona」はインドの地名であり,「Ghee」は澄ましバターを意味することから,「Bilona Ghee」から「ビローナ地域の澄ましバター」程の意味合いが生じる。「Do you know A2?」の直訳は「A2を知っていますか。」であるが,「A2」の意味が明確ではないため,特定の観念は生じないと考える。この表現はむしろ一般需要者,取引者に対して「A2」の意味を知って欲しい,あるいは知らせようとする表現とも受け取られ,現状において,需要者,取引者において「A2」の科学的な意味合いが知られていないことの証であると考えられる。むしろ申立人の国際的な使用努力と使用状況により,「a2」についての識別力が安定化しているものといえる。
一方,引用商標の要部は「a2」であり,上述のとおり「a2」から特定の観念は生じないため,商標全体としても特定の観念は生じない。
したがって,本件商標と引用商標とは,観念において比較することはできない。
(ウ)外観について
本件商標と引用商標は,混同を生じるほど類似しているとはいえないと考えるが,称呼の共通性を凌駕する程,外観において相違するものではない。
(エ)本件商標と引用商標との類似性のまとめ
本件商標と引用商標とは,構成において異なるところはあるものの,時と場所を異にする取引場面においては,称呼の共通性から商品の出所を混同するおそれがあり,また観念や外観によって,その称呼の共通性を覆すほどの特徴はないものである。
したがって,本件商標と引用商標とは全体として類似するものである。
イ 指定商品の類否
本件商標の指定商品である「澄ましバター」は,引用商標の指定商品中例えば第5類「乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク」,第29類「牛乳」,及び指定役務中例えば第35類「乳児用食品・乳児用粉ミルク・食餌療法用食品・食餌療法用飲料・栄養補助食品・プロテインを主原料とする栄養補助食品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」などと類似している。
ウ 小括
以上述べたように,本件商標と引用商標は「エイツー」の称呼を共通にする類似商標であり,また,本件商標の指定商品は引用商標の指定商品及び指定役務と類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア オーストラリア連邦における使用商標の周知性
申立人は,オーストラリア連邦において,「a2」の文字を含んだ数種の商標を登録及び使用し,需要者の間に広く認識されている。中でも,使用商標は,最も多くの商品に使用され,宣伝広告においても主要商標として広範囲かつ大量に使用されている。
(ア)申立人の歴史
申立人の前身である「A2 Corporation Limited」は,2000年にニュージーランド国で設立され,2014年4月に,会社名が現在の名称に変更された。申立人は,2004年にニュージーランド証券取引所(NZX)に,2015年にオーストラリア証券取引所(ASX)に上場した。それ以来,売上高の増大と共に株価も上昇してきた(甲24)。
現在では,オーストラリア連邦を最重要マーケットとし,ニュージーランド,アメリカ合衆国,イギリス,中国,日本,アセアン諸国等において,世界的規模で活発に事業展開している。
申立人は,研究開発の場において,A1プロテインを含まないA2プロテインのみの乳製品を消費者に提供することをコーポレートミッションとし,その方針下に牛乳を主力商品とする多種の乳製品を販売している(甲25,甲26)。
なお,上述したように,科学的な用語としての「A1プロテイン」や「A2プロテイン」は一般の消費者においては知識のない語であり,オーストラリア連邦においても「a2」は識別力を発揮しているといえる。
また,申立人の事業については我が国のインターネット上のビジネス記事やブログでも度々取り上げられている(甲28,甲29)。
(イ)グループ企業の総売上高及びオーストラリア連邦における売上高
申立人のグループ企業全体及びオーストラリア連邦における売上高は,2011年度(2010年7月1日?2011年6月30日。以下同様。)の29.5億円及び29.5億円から,2019年度の913.0億円及び589.7億円と,約9年間でグループ企業全体では約31倍,オーストラリアにおいては約20倍となった(甲27。1NZ$=70円で換算。以下同じ。)。
(ウ)オーストラリア連邦におけるマーケットシェア
各乳製品のオーストラリア連邦におけるマーケットシェアは,ミルクが2012年5月ないし2019年5月で各年8.0%ないし11.2%,乳児用調製粉乳が2013年3月ないし2017年3月で各年0.5%ないし26.0%であった。
(エ)販売店及び商品提供場所
使用商標など「a2」の文字を含む商標(以下「使用商標等」という。)の付された申立人の乳製品は,オーストラリア連邦だけでも,2大スーパーマーケットを含む2,500以上のストアで販売されており(甲30),その販売店の数は現在も増え続けている。また,直接の顧客である卸先も多数有している(甲31)。
さらに,申立人の乳製品は,シドニー及びメルボルンを中心に,2009年以来250以上のカフェで使用されている(甲32)。
(オ)商品パッケージ及び商品陳列の様子
使用商標の付された申立人の乳製品は,ストアの中でも主要通路側に配置され,消費者の目に付きやすく,かつ商品を手に取り易い場所に陳列されている(甲33)。使用商標等を付した商品パッケージを2003年から使用し続けた結果(甲34),オーストラリア連邦における消費者の間で「a2」ブランドの乳製品は認知された。また,標章には常に「TM」シンボルを付し,その標章が申立人の商標であることを消費者に認識してもらうように努めた。
(カ)宣伝広告
申立人は,特に2010年頃から大規模な宣伝広告及びキャンペーン活動を行ってきた。グループ企業全体の宣伝広告費用は,2013年度ないし2019年度で各年3.2億円ないし94.7億円である。
特に,2004年からテレビやラジオにおいて多くの宣伝活動及びキャンペーンを行う(甲35?甲49)など,オーストラリア連邦において宣伝広告に力を注いだ結果,消費者の間で使用商標等を付した商品の認知度は飛躍的に高まった。
また,申立人は,多くの沿道掲示板広告(甲50)及びショッピングセンターでの掲示板広告(甲51)を行った。
さらに,2010年2月から,バナー広告及びサイドバー広告を利用してオンライン広告を行っており(甲52),検索連動型広告及びバナー/サイドバー広告の到達度(広告閲覧数)は,ミルクが2010年2月ないし2016年6月で784万及び1億400万,乳児用調製粉乳が2013年9月ないし2016年6月で45.8万及び957万と高い到達度を記録した。
申立人は,2015年ストア内でアイスクリームの試食会を行い(甲53),また,ストア内では販売促進用品を使用し商品を目立たせるよう工夫し(甲54),2016年より2018年にかけて,賞金当選キャンペーンを行った(甲55)。
また,申立人は,2005年から現在まで自己のウェブサイトで使用商標等を使用し続けており(甲56),同ウェブサイトへのアクセス数は2015年1月ないし12月が39.2万アクセス,2016年1月ないし12月が47.0万アクセスであった。
上記,ウェブサイトの他,グループ全体では投資家向けの情報サイトや米国,英国,中国のサイトも開設している(甲57?甲60)。
申立人は,Facebook,Twitterなどのソーシャルメディアでも広告ページを開設している(甲61?甲65)。
申立人の経営戦略と製品に関して,オーストラリア連邦において,有名な新聞,テレビ,ラジオで数多く取り上げられてきた(甲66,甲67)。
(キ)オーストラリア連邦及びその他の国での商標登録
申立人は,オーストラリア連邦において,10年以上も前から自社製品のブランドマークである「a2」の文字を含む商標をいくつも登録し(甲14,甲15,甲17,甲18,甲21),使用し続けており,また,ニュージーランド,アメリカ合衆国,中国,日本等を含む世界27か国において多くの「a2」の文字を含む商標を登録している。
(ク)ドメインネームの登録
申立人は,商標登録のみならず,「a2」の文字を含んだドメインネームを多数登録している(甲68)。
イ 本件商標と使用商標の類似性について
(ア)称呼について
本件商標は,上記(1)ア(ア)で述べたとおり,需要者及び取引者は「エイツー」の称呼で取引を行う可能性が高いといえる。
使用商標は,明らかに「a2」の文字が識別でき,この部分から「エイツー」の称呼が生じる。
このように,本件商標と使用商標は,同一の称呼を含み,実取引上,誤認・混同を生ずるおそれがあり,称呼の共通性から類似する商標である。
(イ)観念について
上記(1)ア(イ)で述べたとおり,「A2」を乳製品との関連で看取したとしても,それは英文字と数字の組み合わせであって,その科学的な意味までも理解することはできない。
したがって,「A2」の表示であっても,「a2」の表示であっても,一般消費者や販売者においては,特別な観念は想起できないと考える。
よって,本件商標と使用商標とは,観念において比較することはできない。
(ウ)外観について
本件商標と使用商標は,混同を生じるほど類似しているとはいえないと考えるが,称呼の共通性を凌駕する程,外観において相違するものではない。
(エ)本件商標と使用商標との類似性のまとめ
本件商標と使用商標とは,構成において異なるところはあるものの,取引過程で販売場所と販売時を同じくした場合,称呼の共通性から商品の出所を混同するおそれがあり,また観念や外観によって,その称呼の共通性を覆すほどの特徴はないものである。
したがって,称呼の類似性は,外観の相違性よりも強いものであり,本件商標と使用商標とは全体として類似するものである。
不正の目的について
上述のとおり,使用商標が,本件商標の出願日前よりオーストラリア連邦の需要者の間に広く認識されていたことは明らかであり,このような周知な使用商標と共通の称呼を有する類似の商標を出願し,登録することは,使用商標に蓄積された信用,名声及び顧客吸引力にただ乗りするものであり,使用商標の出所表示機能を希釈化させるおそれがあるものと考える。
このような状況から,本件商標は,不正の目的をもって出願されたことが推認される。
エ 小括
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 申立人は,本件商標は中央にオレンジ色で大きく表された「A2 Bilona Ghee」の文字部分から「エーツービローナギー」の称呼を生じるほか,当該称呼が冗長であり需要者等は「エーツー」の称呼で取引を行う可能性が高い,「Bilona」はインドの地名を指し「Ghee」は指定商品「澄ましバター」を意味する語であっていずれも識別力がないか又は弱い,及び本件商標の「エーツー」の称呼の部分は自他商品識別力を有する部分であるなどとして,本件商標と引用商標は「エーツー」の称呼を共通にする類似の商標である旨主張しているので,まず,この点について検討する。
(ア)本件商標は,別掲1のとおりの構成からなり,その構成態様から中央にオレンジ色で大きく表された「A2 Bilona Ghee」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが自然である。
そして,本件商標の構成中,「A2 Bilona Ghee」の文字部分の「Ghee」の文字は,「牛乳や水牛の乳から作った一種の液状のバター」の意味を有し,本件商標の指定商品「澄ましバター」の品質を表したものと認識させるものであって,自他商品識別標識としての機能を有しないか極めて弱いものであるから,「A2 Bilona」の文字部分が,更に独立して自他商品識別標識として機能を果たし得るものといえる。
(イ)しかしながら,本件商標の構成中,「A2 Bilona Ghee」の文字部分の「Bilona」の文字は,インドの地名であるとしても,我が国において一般に知られている地名とはいえず,また,取引者,需要者をして本件商標の指定商品の産地,販売地を表したものと認識させるというべき事情,及び自他商品識別力を有しないと認めるに足りる事情は見いだせない。
そうすると,本件商標の構成中,「Bilona」の文字は,自他商品識別力を有するものといわざるを得ず,また他に当該「A2 Bilona Ghee」の文字部分の「A2」の文字部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべき事情も見いだせない。
(ウ)してみれば,本件商標は,その構成中「A2 Bilona Ghee」の文字に相応して「エーツービローナギー」の称呼,及び「A2 Bilona」の文字に相応して「エーツービローナ」の称呼を生じるといえるものの,「エーツー」の称呼を生じるということはできない。
また,本件商標からは,特定の観念は生じないというのが相当である。
(エ)引用商標1ないし引用商標6は,別掲2ないし別掲7のとおりの構成からなり,図形と文字との結合商標であるところ,これらよりは「エーツー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
引用商標7は,「a2 Milk」を標準文字で表してなるところ,「Milk」の文字が指定商品との関係において品質を表示するものと認識されることから,これよりは,「エーツーミルク」及び「エーツー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
引用商標8は,「a2 Store」を標準文字で表してなるところ,これよりは,「エーツーストア」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
引用商標9は,「THE a2 MILK COMPANY」を標準文字で表してなるところ,これよりは,「ザエーツーミルクカンパニー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
なお,引用商標8及び引用商標9から,「エーツー」の称呼を生じるというべき事情は見いだせない。
(オ)上記(ア)及び(エ)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観において明らかな差異を有し,互いに紛れるおそれはないものである。
また,称呼についても,上記(ウ)及び(エ)のとおり,本件商標から生じる「エーツービローナギー」又は「エーツービローナ」の称呼と引用商標から生じる「エーツー」,「エーツーミルク」,「エーツーストア」及び「ザエーツーミルクカンパニー」の称呼とは,音構成及び構成音数において明らかな差異を有することから,称呼においても互いに紛れるおそれはないものである。
なお,観念については,上記(ウ)及び(エ)のとおり,本件商標及び引用商標からは特定の観念は生じないものであるから,観念において比較することはできない。
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,観念において比較できないものであるとしても,外観及び称呼において互いに紛れるおそれのないことが明らかなものであるから,両商標が需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,非類似の商標というのが相当である。
したがって,本件商標は,引用商標と非類似のものというべきものであるから,その指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 使用商標のオーストラリア連邦における周知性について
(ア)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,申立人はニュージーランドのオークランドに所在し,同国,オーストラリア連邦,中国などにおいて牛乳など乳製品の販売を行っていること,申立人のグループ企業の総売上高は2017年度5.5億NZ$(384.6億円),2018年度9.2億NZ$(645.6億円。),2019年度13.0億NZ$(913.0億円)であり,同じく宣伝広告費は2018年度7,365万NZ$(51.6億円),2019年度1億3,530万NZ$(94.7億円)であることが認められる(甲27,甲29)。
そして,申立人の商品(乳製品)は,2016年頃にオーストラリア連邦の乳製品市場で10%近いシェアであったこと,オーストラリア連邦の主要な食料品チェーンなどで販売されていること(甲26,甲30),オーストラリア連邦においても,申立人の商品には使用商標など「a2」の文字を含む商標(使用商標等)が付され,また,同商品の広告などに使用商標等が用いられていること(甲33?甲37ほか)がうかがえる。
しかしながら,オーストラリア連邦における申立人の商品の売上額,及び同じく使用商標を使用した商品の売上額を示す証左は見いだせない。
(イ)上記(ア)のとおり,申立人はオーストラリア連邦において乳製品の販売等を行っており,グループ企業の総売上高が2019年度において913億円であることに加え,申立人の商品は,2016年頃にオーストラリア連邦の乳製品市場で10%近いシェアであったこと及びオーストラリア連邦の主要な食料品チェーンなどで販売されていることがうかがえることを考慮すれば,申立人の商品は,オーストラリア連邦の需要者の間である程度知られているものということができる。
しかしながら,オーストラリア連邦における申立人の商品の売上額及び使用商標を使用した商品の売上額を示す証左は見いだせないから,申立人の商品は,オーストラリア連邦の需要者の間に広く知られてものと認めることはできない。
なお,仮に申立人の商品が2016年頃にオーストラリア連邦の乳製品市場で10%近いシェアであったことが事実だとしても,その時点のみのものであるし,何より,かかるシェアが申立人の商品の周知性を基礎付けるほど高い市場シェアであると認めるに足りる証左は見いだせない。
したがって,使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品「乳製品」を表示するものとしてオーストラリア連邦における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
なお,使用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又はオーストラリア連邦以外の外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
イ 本件商標と使用商標との類否について
本件商標は,上記(1)ア(ア)及び(イ)のとおり,その構成中「A2 Bilona Ghee」及び「A2 Bilona」の文字部分が,独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものといえるものの,「A2」の文字部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの,又は,それ以外の「Bilona Ghee」の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めるに足りる事情は見いだせない。
そして,本件商標の構成中「A2 Bilona Ghee」の文字部分及び「A2 Bilona」の文字部分と,別掲8のとおりの使用商標とは,両者の外観,称呼,観念のいずれの点においても,及びそれらを総合してみても類似しないものであること明らかであり,他に本件商標と使用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標と使用商標は非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
不正の目的について
申立人提出の全証拠及び職権で調査するも,本件商標が,使用商標の名声などにただ乗りする,使用商標の出所表示機能を希釈化させるなど不正の目的をもって使用をするものとの事情は見いだせない。
エ 小括
上記アのとおり,使用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとしてオーストラリア連邦の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記イのとおり,本件商標と使用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異のものというべきであり,更に上記ウのとおり,本件商標は不正の目的をもって使用をするものと認めることはできないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標(色彩は原本参照。)


別掲2 引用商標1(色彩は原本参照。)


別掲3 引用商標2


別掲4 引用商標3


別掲5 本件商標4


別掲6 引用商標5


別掲7 引用商標6


別掲8 使用商標


異議決定日 2020-03-02 
出願番号 商願2019-8107(T2019-8107) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W29)
T 1 651・ 222- Y (W29)
T 1 651・ 263- Y (W29)
T 1 651・ 261- Y (W29)
最終処分 維持 
前審関与審査官 吉野 晃弘三井 敏匡 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 大森 友子
平澤 芳行
登録日 2019-04-26 
登録番号 商標登録第6141076号(T6141076) 
権利者 サンジェイ クマル
商標の称呼 マトリガウドハンエイツービロナギードゥーユーノーエイツー、マトリガウドハンエイニビロナギードゥーユーノーエイニ、マトリガウドハン、マトリ、ガウドハン、エイツービロナギー、エイニビロナギー、ビロナギー、ビロナ、ドゥーユーノーエイツー、ドゥーユーノーエイニ、ドゥーユーノー、エム 
代理人 江藤 聡明 
代理人 岩崎 吉男 
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