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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W41
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W41
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W41
管理番号 1360603 
審判番号 無効2019-890044 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-08-02 
確定日 2020-02-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5901018号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5901018号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5901018号商標(以下「本件商標」という。)は、「ボンドガール」の片仮名を横書きしてなり、平成27年11月4日に登録出願、第41類「セミナーの企画・運営又は開催」を指定役務として、同28年10月5日に登録査定、同年12月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、「ボンドガール」の片仮名及び「BOND GIRL」の欧文字よりなるもの(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、請求人が使用・管理する、映画に登場する女性キャラクターの名称・標章として、世界中で著名であると主張するものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第69号証を提出した。
1 無効理由の要点
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
2 具体的理由
(1)請求人について
請求人は、全世界における映画作品「007シリーズ」(以下「007シリーズ」という。)に関する商標権及び商品化権についての正当な権利者であり、米国のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)グループの一員として同グループに属する様々な企業と「007シリーズ」についての著作権を共同所有している。
(2)引用商標の著名性について
ア 「007シリーズ」
1962年から、スパイ小説家イアン・フレミングの作品の中で生み出されたイギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンドを主人公とする映画作品は、この55年余りの間に24作品が制作されている。これらの007シリーズは世界中で公開され人気を博し、それら全ての作品が極めて高い興行成績を残しており、稀にみる成功を収めた映画シリーズのひとつであるということができる(甲3?甲5)。
さらに、007シリーズ第25作の制作が決まり、平成31年(2019年)4月25日には、ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグ、ボンドガール役のレア・セドゥ等主要キャストが集まり制作会見が行われ、待望の最新作が遂に始動した。最新作は令和2年(2020年)に公開予定であり、今後007シリーズ、ジェームズ・ボンド、ボンドガールに対する関心はますます高まるものと考えられる。
ボンドガール(BOND GIRL)は、007シリーズに登場するボンドの相手役となる女性キャラクター(以下、単に「女性キャラクター」という。)、あるいはその女性キャラクターを演じる女優たちを呼称するために創作された造語であり、女性キャラクターたちはボンドの敵となり得るし、また、ボンドと行動を共にすることもある。
イ ボンドガールの紹介記事
007シリーズは、人気の映画シリーズであることから、新作が公開されるたびに様々なイベントが開催され、多くの雑誌で007特集が組まれる。
ボンドガールは、その容姿、キャラクターなどの圧倒的な魅力から、注目を浴びることが非常に多いため、多くの雑誌でボンドガール特集が組まれる。
なお、ボンドガールに関連する記事は非常に多いため、2003年(平成15年)「007 ダイ・アナザー・デイ」以降の記事の一部を紹介する。
(ア)007 ダイ・アナザー・デイ(2003年)
a フラウ 平成15年1月14日号(甲8)
表紙には「今こそ、すべての女性は、ボンドガールを目指すべし!」といったタイトルがある。
同誌には、「歴代ボンドガール大図鑑 ボンドを愛した女たち」というタイトルで、60年代、70年代,80年代、90年代を彩った19名のボンドガールが紹介されている。
また、同誌には、「ボンドガールの歴史を統括した史上最強のボンドガール、ハル・ベリーという女神」というタイトルで、ヒロインのハル・ベリーが紹介されている。
b SCREEN 2003年(平成15年)4月号(甲9)
「007Special」という特集が組まれ、「『ダイ・アナザー・デイ』のボンドガール来日」として、ハリー・ベリーとロザムンド・パイクが紹介されている。
また、特集の中では、「強いボンドガールを演じられて気分は“女性版007”よ!」「ハリー・ベリー来日」というタイトルで、ハリー・ベリーのインタビューが掲載されており、ハリー・ベリーについては「“ボンドを超えるボンドガール”という形容こそふさわしい彼女に早速インタビュー!」とある。
さらに、同誌には、「セクシーさを競う/歴代ボンドガールズ」というタイトルで、「ジャマイカのクラブ・アイランドの海岸で、ウルスラ・アンドレス扮するハニー・ライダーがビキニ姿で海中から現れた時、“ボンドガール”という神話は幕を開けた。1962年のことだ。以後40年にも渡って数多くの美女たちがこの称号で呼ばれ、スクリーンの中でそのセクシーさを競ってきた。」「もちろん女優たちにとってはボンドガールは憧れの座だった。“ボンドガールは女優として大成しない”などと陰口をたたかれた事もあったが、今なおこの称号は輝きを失わない。そして時代は21世紀。ボンドガールも新たな時代に移りつつある。(中略)常に時代の空気を反映しながら、007シリーズに鮮やかな彩を加えてきたボンドガ一ルたち。彼女たちもまた、さらなる進化を続けているのだ。」とある。
(イ)007 カジノ・ロワイヤル(2006年)
a キネマ旬報 2006年(平成18年)12月上旬特別号(甲10)
エヴァ・グリーンのインタビューが掲載されている。
また、同誌で、映画評論家A氏は、「Aのボンドガール論<決定版>」「“007と寝る”と見せかけて“時代と寝る”女たち」で、各作品のボンドガールについて触れ、「・・・、時代は変わる。ボンドも変わる。ボンドガールも当然変わる。その時代の女性像の合わせ鏡として、たとえディフォルメした形でも反映してきたのだ。下世話な表現をすれば、ボンドガールは、“007と寝て”いる、と見せかけて、ちゃんと“時代と寝て”いたのである。」と述べている。
b 日経エンタテインメント 2006年(平成18年)12月号(甲11)
ボンドガールのエヴァ・グリーンが紹介されている。
「カジノ・ロワイヤル」において「ボンドは原作に近い生身の人間として描かれ、時代とともに『お色気路線』から『戦う強い女』へと変化してきたボンドガールも、初めて等身大の存在になった。」とある。
c 2006年(平成18年)12月1日に発行された映画パンフレット(甲12)
ボンドガール、ヴェスパー・リンドを演じた、エヴァ・グリーンのインタビューが掲載されている。
(ウ)007 慰めの報酬(2008年)
a SCREEN 2009年(平成21年)1月号(甲13)
「007 慰めの報酬 マルチ大特集」の中で「非情の世界に生きる主人公たち」として、オルガ・キュリレンコ扮する「カミーユ」が紹介されている。
同誌には、オルガ・キュリレンコのインタビュー、ジャパンプレミアでファンに手を振るオルガ(ボンドガール)とダニエル・クレイグ(ボンド)の写真が掲載されている。
b キネマ旬報 2009年(平成21年)1月下旬号(甲14)
「今までとは少し違うボンド・ガール」というタイトルで、オルガ・キュリレンコのインタビューが掲載されている。
c SCREEN 2009年(平成21年)3月号の付録である「007/慰めの報酬&ジェームズ・ボンド大百科」(甲15)
「強靭な意志を持った新時代のボンドガール」としてオルガ・キュリレンコが紹介されている。
また、同付録の中の「映画は“女優”で見る!ボンドガール・ベスト10」では、「007といえばやっぱりボンドガール。僕なんぞはこれが楽しみでこのシリーズをずっと見ているようなもんだ。ボンドガールは実は時代の合わせ鏡なのである。初期のボンドガールは彩り、お飾り、ときには足手まとい。(中略)しかし、時代とともにボンドガールは007と同等またはそれ以上の職能女性として描かれることが多くなった。」と述べている。
d Pen 2009年(平成21年)1月1日・15日新年合併号(甲16)の特集付録 「007 ジェームズ・ボンドのすべて。」
「相棒か敵か戯れか?ボンドガールたちの系譜。」というタイトルで、「鮮烈な存在感で007映画をより刺激的にしてくれるボンドガール。果たしてボンドと作品にとって、女たちは何をもたらしてくれるのだろうか?」というサブタイトルで、代表的なボンドガールが紹介され、時代の変遷とともに“ガール”たちのキャラクターが多種多様になっていることをあげられ、いくつかの系譜に分けてボンドガールが紹介されている。
e ぴあ 2009年(平成21年)2月5日号(甲17)
オルガを演じるカミーユについて「同じ“復讐”という言葉でボンドとは結ばれ行動を共に。ボンドガールだが、そういうセクシャルな関わりはナシ!」と紹介されている。
(エ)007 スカイフォール(2012年)
a 週刊文春 2012年(平成24年)11月1日号(甲18)
「美女と車と/アクションの50年/私たちが愛した/007」という特集が組まれ、「魅惑のボンドガール/BOND GIRL Collection」として、ボンドガールたちが紹介されている。
b SCREEN 2012年(平成24年)11月号(甲19)
「007 伝説のスパイ ジェームズ・ボンドが駆け抜けた半世紀」というタイトルで、歴代のジェームズ・ボンドが紹介されている。
「1990年代?」の欄には、「上司が女性になり、ボンドガールも大物が演じるように」とあり、「ゴールデンアイ」でジェームズ・ボンドの上司Mが女性(ジュディー・デンチ)になったこと、18作目「トゥモロー・ネバー・ダイ」では、ボンドガールのミシェール・ヨーがボンド以上に過激なアクションを披露して、決して添え物ではない点が新鮮だったこと、19作目「ワールド・イズ・ノット・イナフ」では、人気女優ソフィー・マルソーが登場し、大物女優でもボンドガールになる価値を感じ出したこと、「2000年代?」の欄には、「ダイ・アナザー・デイ」では、ボンドガールがシリーズ初のオスカー女優ハリー・ベリーであったことが紹介されている。
c NewsWeek(ニューズウィーク日本版) 2012年(平成24年)11月14日号(甲20)
「50/ジェームズ・ボンド50年の軌跡」という特集が組まれ、「美女と殺しと爆破の半世紀」というタイトルで、007シリーズの歴史が年表風に紹介されている。
d 週刊エコノミスト 2012年(平成24年)11月27日号(甲21)
「50周年/007の魅力」という特集が組まれた。その中には「時代、スポンサーとともに変わる女性、クルマ、小道具」というコラムがあり、007の魅力を語るとき、忘れてはならないもののひとつとして、魅惑的なボンドガールが挙げられている。
また、「当初のボンドガールは映画の“華”にすぎなかったが、やがてボンドのパートナー、ライバル、敵などへと役の重みが増していった。」ことなどが述べられている。
e SCREEN 2013年(平成25年)1月号(甲22)
「シリーズ誕生50周年記念作/007/スカイフォール」と大きく書かれた文字とともにボンドとふたりのボンドガールの写真が掲載されている。
また、同誌には、ボンドガールの欄があり、「男くさい『007』シリーズに華を添える存在として、なくてはならないボンドガール」とある。
f 2013年(平成25年)1月10日に発行された「MAGAZINE HOUSE MOOK/007 COMPLETE GUIDE」(甲23)
「ボンドガールは永遠に!」という特集が組まれている。
映画評論家のK氏は、007シリーズに欠かせないのがボンドガール! とはいうものの、添え物的なニュアンスで語られることも多いボンドガールについて、「真の007ファンは『ボンドガール』の称号を崇拝する。」と述べ、いくつかの作品の女性キャラクターを紹介し、「最後にひとつだけいいたい。スターダムの登竜門と言われながら、実はその後出世した女優は少ないことをよく揶揄されるが、一度でもボンドガールの歴史に名を連ねただけで、彼女たちは映画ファンから愛を獲得している。もう『永遠の命』を得ているのだ!」と締めくくっている。
g GQ JAPAN 2012年(平成24年)12月号(甲24)
「ボンドガールは2度美味しい」というタイトルで、「今作は2人の美女がボンドを窮地に陥れる」とある。
同誌には、GQ UKが行った、「007/スカイフォール」のボンドガール、ベレニス・マーロウのインタビューが掲載されている。
h MEN’S CLUB 2013年(平成25年)2月号(甲25)
「ジェームズ・ボンドに学ぶ」「“熟男(うれだん)”007の流儀」というタイトルで、ボンドガールを演じたベレニス・マーロウを緊急取材したという記事が掲載されている。
(オ)007 スペクター(2015年)
a キネマ旬報 2015年(平成27年)12月上旬号(甲26)
S氏とM氏の対談では、ボンドガールについて、当初のお人好しで、プレイメイト的なボンドガールから、強くて、賢くて、若さに頼らないボンドガールになったこと、この20年の間にボンドガールはがらりと変わり、フェミニズム寄りになった、というようなことが語られている。
b Pen 2015年(平成27年)12月15日号(甲27)
「元ボンド・ガールが語る、物語を彩る女たち。」というタイトルで、「新作を含めて通算24作のフィルモグラフィーを誇る007シリーズを語る上で避けて通れないのがボンドガールの存在だ。」とある。
「リビング・デイライツ」でボンドガールを演じたマリアム・ダボは、ボンドガールについて、「女性の社会進出など各時代の社会的気運を背景に、その役柄設定も進化を続けている」と語っている。
また、「セックスシンボルから、女性のロールモデルへ。」というタイトルで「歴代のプロデューサーたちは、刻々と変化する時代のトレンドに敏感で、それを各時代の作品に取り入れてきた。ボンドガールのキャスティングはその最たる例。1960年代に代表されるセックスシンボル的存在から、ボンドと肩を並べるプロフェッショナルな女性へと存在感を増していったの」とある。
c キネマ旬報 2015年(平成27年)12月下旬号(甲28)
「007/スペクター」で、007史上初の50歳の熟女ボンドガールを演じたモニカ・ベルッチのインタビューが掲載されている。
彼女は「ボンド・ガールって呼ばれたくないわ、ボンド・ウーマンかボンド・レディにして」と述べている。
d GQ JAPAN 2015年(平成27年)12月号(甲29)
「ボンド・ガールからボンド・ウーマンへ」というタイトルで、「ボンドの世界に欠かせないのがボンド・ガールの存在だ。ボンドを愛し、翻弄し、命をも狙ってきた彼女たちはいつもその時代の女性像を象徴している。」とある。また、ボンドの長い歴史におけるボンド・ガールの移り変わりを、S氏が「ボンドの世界を彩るボンドガールたち」として考察し、ボンドガールたちを年表風に紹介している。
また、同誌には、BOND GIRL#1として、レア・セドゥのインタビュー、BOND GIRL#2として、モニカ・ベルッチのインタビューが掲載されている。
e SCREEN 2016年(平成28年)1月号(甲30)
ボンドガール、レア・セドゥー及びモニカ・ベルッチのインタビューが掲載されている。
f ハーパーズバザー 2016年(平成28年)1・2月合併号(甲31)
「007 スペクター」公開記念として、「CODE NUMBER 007」「“ボンドガール”美しき永遠のアイコン」「いつの時代も見る者をそのインテリジェンスとセンシャリティで魅了するボンドガール。美しさと強さを併せ持つスタイルは永遠の憧れ。」というタイトルで、ボンドガールをイメージしたファッションスナップが掲載されている。
また、同誌は、「より美しく、知的に、ボンドガールの変遷」「世界一クールなモテ男、ジェームズ・ボンドを魅了する女“ボンドガール”。その華麗な変遷は、スクリーンにおける女優の歴史でもある。」というタイトルで、各時代の代表的なボンドガールを紹介し、時代と共にボンドガールに求められる資質が変わってきたことなどを述べている。
ウ 各種イベントの開催
(ア)2008年(平成20年)10月29日、“聖地”オデオン・レスター・スクエアで開催された「慰めの報酬」のロイヤルプレミアには、ボンドガール役のオルガ・キュリレンコがボンドと共に登場した。
同試写会について、「女王陛下のために開催する、ロンドンの祝祭」という記事が、Pen 2009年11月15日号(甲16)に掲載された。同誌にはボンドガール役のオルガ・キュリレンコが極寒のロンドンで見事なドレス姿を見せてくれたとある。
(イ)2008年(平成20年)11月23日、「007 慰めの報酬」でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコが、東京・オメガブティック青山で「オメガ シーマスタープラネットオーシャン007限定モデル」の発表を行った(甲32)。
(ウ)「007 慰めの報酬」公開イベントとして、2009年(平成21年)1月12日から2月15日まで、「TRIAL TO 007」が開催された。イベントの一環として、銀座ソニービルの外壁にはボンド(ダニエル・クレイグ)とボンドガール(オルガ・キュリレンコ)の大きな垂れ幕が掲げられた(甲33、甲34)。
(エ)2012年(平成24年)10月23日の「007 スカイフォール」のロイヤルプレミア(ロンドン)、10月25日のパリプレミア、10月26日のローマプレミアに、ボンドガール役のベレニス・マーロウがボンドと共に登場した。
プレミア試写会については、MOVIE 2013年(平成25年)1月号(甲35)、SCREEN 2013年(平成25年)1月号(甲22)及び同2月号(甲36)で紹介されている。
(オ)「007 スカイフォール」の公開に合わせて、2012年(平成24年)11月19日から12月7日まで、有楽町の阪急メンズ東京で、「ウインターダンディズム?007 WEEK?」が開催された。11月19日には、ボンドガール、ベレニス・マーロウがゲストとして登場した。ベレニス・マーロウの来日については、オンラインの情報サイト(Fashionsnap.com)(甲37)、メールマガジン(Web Magazine OPENER)(甲38)、「NEWS LOUNGE」というサイトで紹介されている(甲39)。
(カ)「007 スペクター」の公開を記念して、2015年(平成27年)11月16日、六本木ヒルズで「TOKYO BOND GIRL COLLECTION」が開催された。同イベントには、ボンドとボンドガールに扮した有田哲平と道端ジェシカが登壇した(甲40)。
(キ)2015年(平成27年)11月、「現在、銀座線や日比谷線をはじめとする東京メトロでは、ハーパーズ×007のコラボポスターが全車両ジャック中です。」という記事がハーパーズバザーのサイトに掲載された。車内をジャックしたポスターには、ボンドとボンドガールの写真と共に「“ボンドガール”美しき永遠のアイコン」、「今月号の『ハーパーズバザー』はボンドガールが主役」というキャッチコピーがある(甲41)。
エ DVD、テレビ放送
流通メディアの発達に伴い、映画・映像作品については、映画館で上映されるだけでなく、DVDやテレビ等の様々なメディアを通して二次利用されるのが通例になっているが、007シリーズもその例外ではなく、映画館で上映後、DVDの制作(甲42)や、テレビ放送(2010年(平成22年)3月からWOWOWで全22作品を一挙放送(甲43)、2015年(平成27年)1月から2016年(平成28年)6月まで、BSジャパンの金曜名画座で22作品を放送(甲44))などの、作品の二次利用が行われている。
これら映画以外の媒体を通じて、007シリーズ及びその華たる「ボンドガール」が一般家庭にも広くかつ深く浸透していったことはいうまでもない。
オ ボンドガールについてのライセンス許諾
ボンドガールは有名な映画シリーズの人気キャラクターであることから、その名称・標章及び肖像の使用についてのライセンスが多くの会社に許諾されている。
例えば、請求人は、以下のブランドにボンドガールについてのライセンスを許諾している。
(ア)O・P・I
ネイル製品トップメーカーであるO・P・I(アメリカ合衆国カリフォルニア州)は、映画「007 スカイフォール」(2012年)のタイアップキャンペーンとして、映画界で印象に残る美しい女性たち、ボンドガールをイメージした「ボンドガールズ バイ オーピーアイ」という商品を発売した。
商品の箱には「BOND GIRLS」の文字及びボンドガールの肖像が使用されている(甲45?甲47)。
(イ)AVON(エイボン)
エイボン化粧品(アメリカ合衆国ニューヨーク州)は、007シリーズと提携し、「BOND GIRL 007」という名前の香水及びシャワージェルを発売し、商品のイメージキャラクターとして、「007/慰めの報酬」でボンドガールを演じる英国人女優ジェマ・アータートンを起用した(甲48?甲50)。
なお、映画.comニュースによれば、今回の提携についてエイボン社側は「ボンドガールは007シリーズの象徴の一つ。力強く、女性らしく、魅力的なそのエッセンスを我が社の商品に注入できるなんて、喜ばしいこと」とコメントし、007の制作サイドも、宣伝効果が得られる上、上品なブランドのイメージも植えつけることが出来るため、提携を喜んでいるようだ、とのことである。
また、エイボンは、「007 慰めの報酬」の公開に合わせ、オーデパルファム スプレイを購入した顧客に対し、抽選で50名に「007/慰めの報酬」のDVDをプレゼントするというキャンペーンを行った(甲51)。
(ウ)Mattel (マテル)
バービー人形で有名なマテル(アメリカ合衆国カリフォルニア州)は、請求人よりライセンスを許諾され、2010年(平成22年)に「ドクター・ノオ」、「ゴールドフィンガー」、「死ぬのは奴らだ」、「オクトパシー」「ダイ・アナザー・デイ」などのボンドガールのバービー人形を発売した(甲52)。
ボンドガールのバービー人形はオンラインストア楽天で購入可能である(甲53)。
(エ)Cartamundi(カルタムンディ)
カードメーカーのカルタムンディ(ベルギー)は、ボンドガールのトランプを発売している。
トランプのパッケージには「BOND GIRLS」の文字が表示され、カードにはボンドガールたちの肖像が使用されている(甲54)。
歴代55人のボンドガールを集めた50周年記念スペシャルトランプはトランプ・カジノ専門店「モンテカルロ」のオンラインストアで購入可能である(甲55)。
(オ)Rittenhouse(リッテンハウス)
トレーディングカードのメーカーであるリッテンハウス(アメリカ合衆国ペンシルバニア州)は、ボンドガールたちのトレーディングカードを発行している。
トレーディングカードには「BOND GIRLS」の文字が表示され、ボンドガールたちの肖像が使用されている(甲56)。
ボンドガールのトレーディングカードは、海外ショッピングサイト「セカイモン」で購入が可能である(甲57)。
(カ)Te Neues(テヌース)
写真集などアート系の本を出版するテヌース(ドイツ)は、ボンドガールのカレンダーを発行している。カレンダーの表紙には「BOND GIRLS」の文字が表示され、カレンダーにはボンドガールたちの肖像が使用されている(甲58)。
ボンドガールのカレンダーはamazonで購入可能である(甲59)。
(キ)Revlon(レブロン)
レブロンが、その専属モデル、ハル・ベリーが演じる魅惑のボンドガール「ジンクス」のクール&セクシーなイメージをふんだんに取り入れた「007レブロン カラーコレクション」を限定品として、2003年(平成15年)3月7日に発売予定であることが「フラウ(平成15年1月14日号)」(甲8)で紹介されている。
カ プロダクト・プレイスメント
(ア)007シリーズとプロダクト・プレイスメント
近年の映画制作においては映画に商品を提供してその付加価値を高める、いわゆる「プロダクト・プレイスメント」といわれる広告手法が採用されることが多い。映画作品の中で企業の商品が映し出されれば企業側にとっては良い宣伝となる。
さらに、映画作品のタイトルや登場人物、関連する標章等とともに商品の宣伝・販売を行えば、それらの顧客吸引力を利用して高い宣伝効果・経済効果を得ることも期待できる。一方、映画制作者側にとっても映画制作費用を調達することができるというメリットがある。
007シリーズは、その広告効果の高さから、多くのスポンサーにとって、商品を提供したい「夢の作品」ともいわれている(「GQ JAPAN(2015年(平成27年)12月号)」(甲29))。
「GQ JAPAN(2015年(平成27年)12月号)」(甲29)には、「プロダクト・プレイスメントにみる/ボンドの巨大スポンサービジネス」というタイトルで、「ジェームズ・ボンドに“選ばれたい”と思うのはなにも女性だけではない。007シリーズは、今一番企業が商品を提供したい映画なのである。世界を駆け巡る男は、ビジネススケールも大きい。」とある。
また、日刊スポーツのオンライン記事(2015年(平成27年)11月10日)にも、「今度のボンドはどの商品使う?『007』広告効果」という記事が掲載されている(甲60)。一流のスパイが使用する物は世界最高級の証といわれるだけに、007シリーズには厳選された企業が毎回選ばれているとのことである。
007シリーズは作品が公開されるたびに登場する商品が話題になり、大規模なタイアップキャンペーンなども行われるだけに、その広告効果もかなり大きいようである。
(イ)ボンドガールとプロダクト・プレイスメント
007シリーズでは、ボンドガールに対してもタイアップは行われている(例えば、「007/スカイフォール」でボンドガールを演じたベレニス・マーロウは劇中でオメガの「デ ヴィル プレステージ」を着用した(甲25))。
また、「007/慰めの報酬」でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコや、ベレニス・マーロウは、来日イベントで、オメガの時計を身につけ登場し、作品と共に作品の公式ウオッチであるOMEGAのPRもした(甲39)。
ジュエリーメーカーのスワロフスキーも、007シリーズとタイアップを行っており、ボンドガールを演ずる女優にスワロフスキーのジュエリーを提供してきた。同社は、スカイフォール公開時、007シリーズ50周年を記念したコレクションを、世界1,000店のショップで販売した(甲61、甲62)。
「O.P.I.」、「エイボン」、「レブロン」も007シリーズとタイアップしていたこと、限定商品を販売したことは前述したとおりである。
なお、映画「007シリーズ」は、54年間に24作品が公開されている。その間新作が公開されるたびに様々な企業とのタイアップキャンペーンが長期間にわたり実施され、幅広い範囲の商品化が行われてきた。「ボンドガール」とのタイアップは単なる単発の映画のタイアップと比較し、各段に大きな宣伝効果・経済効果がある。
キ 商標登録の状況
請求人は、莫大な費用と時間を投じてボンドガールに関連するマークを保護するため「BOND GIRL」を含む商標「BOND GIRL 007」を39か国で、「BOND GIRL」と女性のシルエットの結合商標を欧州で、「BOND GIRL」及び「ボンドガール」を二段に併記した商標を日本で、それぞれ登録を受け、「BOND GIRL(ボンドガール)」に化体された業務上の信用の維持に努めている(甲63、甲64)。
ク まとめ
以上のとおり、「ボンドガール(BOND GIRL)」は1962年(昭和37年)の映画公開時より55年以上の長きにわたり007シリーズに不可欠の女性キャラクターとしてスクリーンに登場し、ボンドと共に活躍してきた。ボンドガールについては雑誌等のメディアで多数取り上げられ、また、新作映画公開時の各種イベントへの登場、ボンドガール関連イベントの開催などにより、「ボンドガール」及び「BOND GIRL」の名称・標章は、遅くとも本件商標の出願時(平成27年11月4日)には、これらの名称・標章に接する者に、007シリーズ及びその登場人物である女性キャラクターを直ちに想起させる程に著名なものとなっていた。
(3)商標法第4条第1項第15号の該当性
本件商標は、007シリーズの女性キャラクターとして著名である「ボンドガール」あるいは「BOND GIRL」を想起させるものである。
請求人は、化粧品、玩具、遊戯用カードなどを含む様々な商品及びサービスについて、「BOND GIRL」及びボンドガールの肖像の使用についてライセンスを許諾している。
また、請求人は、映画制作において、化粧品、アクセサリー、時計等についてタイアップを行っており、タイアップしたブランドはボンドガールをイメージした限定商品などを販売している。
本件商標がその指定役務に使用されれば、これに接する取引者・需要者は、当該役務が請求人の業務に係る役務、又は請求人と経済的・組織的に何らかの関係がある者(ライセンシー、映画制作のスポンサーなど)の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同する蓋然性が極めて高い。
「ボンドガール」あるいは「BOND GIRL」の名称・標章は、現在のみならず、本件商標が出願された時点においても広く知られていたことはいうまでもない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号の該当性
本件商標は、我が国をはじめ世界中で007シリーズの女性キャラクターとして著名である「ボンドガール」あるいは「BOND GIRL」と同一あるいは近似する。
本件商標は、「ボンドガール」よりなるものであり、被請求人が引用商標の存在を知らずに本件商標を採択したものとは考え難い。
被請求人はウェブサイトを開設しており、そのサブタイトルには「ボンドガール美保 ?人と人を繋ぐ架け橋に?」とある。
本件商標が公告された2017年前半の同人のウェブサイトのトップページには、映画007シリーズのガンバレル・シークエンスを想起させる、黒とグレーの渦巻きの模様の中に銃を撃つ仕草をした女性の写真が掲載されていた(甲66)。
現在、同写真はウェブサイトから削除されているが、被請求人のブログにはボンドガールを強く意識したものがみられる。例えば、2011年(平成23年)8月28日のブログには「☆もうそろそろいいんじゃない?」というタイトルで、ボンドガールに扮した女性の写真があり、「もうそろそろオファーが来てもいいと勝手に思い込んでいる ボンドガールでした・・」「007の次回作に出る??・・・とか」といった、つぶやきがあり(甲67)、本件商標が登録された直後の2016年(平成28年)12月11日のブログには【本物?になった】というタイトルで、本件商標の登録証と共に映画007シリーズのガンバレル・シークエンスを想起させる写真(以前ウェブサイトのトップページにあったもの)がある(甲68)。また、被請求人のFaceBookにも上記写真の一部が使用されている(甲69)。これらの写真は、本件商標が007シリーズの女性キャラクターである「ボンドガール」を強く意識した上で採択されたことの証左である。007シリーズが、その広告効果の高さから、多くのスポンサーにとって商品を提供したい「夢の作品」と言われていることなどからすれば、被請求人は、引用商標に化体した名声、信用、顧客吸引力にただ乗りして不正の利益を得る目的、すなわち、不正の目的をもって本件商標を出願したといわざるを得ない。
「ボンドガール」あるいは「BOND GIRL」の名称・標章は、現在のみならず、本件商標が出願された時点においても広く知られていたことは先に述べたとおりである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号の該当性
本件商標は、我が国をはじめ世界中で007シリーズの女性キャラクターを示すものとして著名である「ボンドガール」あるいは「BOND GIRL」を容易に認識させるものであり、被請求人が本件商標を偶然に採択したものとは考え難い。
また、「ボンドガール」及び「BOND GIRL」の名称・標章は007シリーズの女性キャラクターとして著名であるだけでなく、強い顧客吸引力を獲得した非常に商業的価値の高いものである。被請求人はかかる事実を認識していたにもかかわらず、無断で「ボンドガール」の語を商標権によって永久に独占する目的で本件商標の登録を得たと推認される。このような著名な名称・標章と何らの関係を有しない者が、これを自己の商標として、採択・使用することは、その名称・標章に化体した名声や信用に故なく便乗するものといわざるを得ない。
かかる商標を登録することは、指定役務について被請求人にその独占的使用を認めることとなり、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義にも反するものといわざるを得ず、本件商標は公序良俗を害するおそれがある商標に該当すると判断すべきものである。
「ボンドガール」は007シリーズにおいて主人公であるジェームズ・ボンドと共に活躍する女性キャラクターである。
請求人が007シリーズに関連する商標の正当な権利者であることからすれば、「ボンドガール」についても、請求人以外の者の商標として登録することは国際信義上穏当ではない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)請求人について
請求人は、小説家イアン・フレミングの作品の中で生み出されたイギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンドを主人公とする映画作品「007シリーズ」に関する商標権及び商品化権についての正当な権利者であり、米国のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)グループの一員として同グループに属する様々な企業と「007シリーズ」についての著作権を共同所有している。
また、請求人は、「BOND GIRL」を含む商標「BOND GIRL 007」を39か国で、「BOND GIRL」と女性のシルエットの結合商標を欧州で、「BOND GIRL」及び「ボンドガール」を二段に併記した商標を日本で、それぞれ登録を受けている(甲63、甲64)。
(2)引用商標について
ア 映画「007シリーズ」
スパイ小説家イアン・フレミングの作品の中で生み出されたイギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンドを主人公とする映画作品は、1962年から現在まで24作品が制作され、高い興行成績を残しており、第25作目の最新作は、令和2年(2020年)に公開予定である(甲3?甲6)。
ボンドガール(BOND GIRL)は、007シリーズに登場するボンドの相手役となる女性キャラクター、あるいはその女性キャラクターを演じる女優たちを呼称するために創作された造語であり、女性キャラクターたちはボンドの敵となり得るし、また、ボンドと行動を共にすることもある。
イ 「ボンドガール(BOND GIRL)」に関する記事(平成15年以降)
ボンドガールについては、「フラウ 平成15年1月14日号」、「SCREEN 2003年(平成15年)4月号」、「キネマ旬報 2006年(平成18年)12月上旬特別号」、「日経エンタテインメント 2006年(平成18年)12月号」、「2006年(平成18年)12月1日に発行された映画パンフレット」、「SCREEN 2009年(平成21年)1月号」、「キネマ旬報 2009年(平成21年)1月下旬号」、「SCREEN 2009年(平成21年)3月号」の付録である「007/慰めの報酬&ジェームズ・ボンド大百科」、「Pen 2009年(平成21年)1月1日・15日新年合併号」、「ぴあ 2009年(平成21年)2月5日号」、「週刊文春 2012年(平成24年)11月1日号」、「SCREEN 2012年(平成24年)11月号」、「NewsWeek(ニューズウィーク日本版) 2012年(平成24年)11月14日号」、「週刊エコノミスト 2012年(平成24年)11月27日号」、「SCREEN 2013年(平成25年)1月号」、2013年(平成25年)1月10日に発行された「MAGAZINE HOUSE MOOK/007 COMPLETE GUIDE」、「GQ JAPAN 2012年(平成24年)12月号」、「MEN’S CLUB 2013年(平成25年)2月号」、「キネマ旬報 2015年(平成27年)12月上旬号」、「Pen 2015年(平成27年)12月15日号」、「キネマ旬報 2015年(平成27年)12月下旬号」、「GQ JAPAN 2015年(平成27年)12月号」、「SCREEN 2016年(平成28年)1月号」、「ハーパーズバザー 2016年(平成28年)1・2月合併号」等の専門誌や雑誌に、ボンドガールを演じた女優のインタビューや写真とともに、ボンドガール及びその変遷や存在感などについての紹介記事が掲載されている(甲8?甲31)。
ウ 「ボンドガール(BOND GIRL)」に関するイベント
2008年(平成20年)10月29日に“聖地”オデオン・レスター・スクエアで「慰めの報酬」のロイヤルプレミアが開催、2008年(平成20年)11月23日に「007 慰めの報酬」でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコが、東京・オメガブティック青山で「オメガ シーマスタープラネットオーシャン007限定モデル」を発表、「007 慰めの報酬」公開イベントとして、2009年(平成21年)1月12日から2月15日まで、「TRIAL TO 007」が開催、2012年(平成24年)10月23日に「007 スカイフォール」のロイヤルプレミア(ロンドン)、10月25日にパリプレミア、10月26日にローマプレミアが開催、2012年(平成24年)11月19日から12月7日まで、有楽町の阪急メンズ東京で、「ウインターダンディズム?007 WEEK?」が開催、2015年(平成27年)11月16日に六本木ヒルズで「TOKYO BOND GIRL COLLECTION」が開催され、各イベントには、ボンドガールを演じた女優らが登場するなどした(甲16、甲32?甲40)。
エ 映画「007シリーズ」の二次利用
「007シリーズ」は、映画館で上映後、DVDの制作や、テレビ放送(平成22年3月からWOWOWで全22作品を一挙放送、平成27年1月から同28年6月まで、BSジャパンの金曜名画座で22作品を放送)などの、作品の二次利用が行われている(甲42?甲44)。
オ 「ボンドガール(BOND GIRL)」に関するライセンス許諾
請求人は、ネイル製品トップメーカーであるO・P・I(アメリカ合衆国カリフォルニア州)、エイボン化粧品(AVON)(アメリカ合衆国ニューヨーク州)、バービー人形で有名なマテル(Mattel)(アメリカ合衆国カリフォルニア州)、カードメーカーのカルタムンディ(Cartamundi)(ベルギー)、トレーディングカードのメーカーであるリッテンハウス(Rittenhouse)(アメリカ合衆国ペンシルバニア州)、写真集などアート系の本を出版するテヌース(Te Neues)(ドイツ)及びRevlon(レブロン)等に、ボンドガールに係るライセンスを許諾しており、各メーカーは、ボンドガールをイメージした商品の販売、ボンドガールの肖像や「BOND GIRL」の文字の使用、イメージキャラクターとしてのボンドガールを演じた女優の起用等、許諾されたライセンスを活用している(甲48?甲59)。
カ 「ボンドガール(BOND GIRL)」に関するプロダクト・プレイスメント
映画「007シリーズ」は、54年間に24作品が公開され、その間新作が公開されるたびに様々な企業とのタイアップキャンペーンが長期間にわたり実施され、幅広い範囲の商品化が行われてきた。
ボンドガールに対してもタイアップは行われており、例えば、「007/スカイフォール」でボンドガールを演じたベレニス・マーロウは劇中でオメガの「デ ヴィル プレステージ」を着用した(甲25)。
また、「007/慰めの報酬」でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコや、ベレニス・マーロウは、来日イベントで、オメガの時計を身につけ登場し、作品と共に作品の公式ウオッチであるOMEGAのPRもした(甲39)。
ジュエリーメーカーのスワロフスキーも、007シリーズとタイアップを行っており、ボンドガールを演ずる女優にスワロフスキーのジュエリーを提供してきた。同社は、スカイフォール公開時、007シリーズ50周年を記念したコレクションを、世界1,000店のショップで販売した(甲61、甲62)。
「O.P.I.」、「エイボン」、「レブロン」も007シリーズとタイアップし、限定商品を販売した。
(3)引用商標の著名性について
上記認定事実からすれば、映画「007シリーズ」は、1962年以降、24作品が制作され、我が国を含め世界各国において公開され、いずれも高い興行成績を残していることから、世界中に広く知られた映画作品であるということができる。
そして、作品中の主人公ジェームズ・ボンドの相手役となる女性キャラクターは、「ボンドガール(BOND GIRL)」として、各種雑誌に紹介され、各作品の公開時期に合わせた宣伝を兼ねたイベントにおいても注目されていることが認められる。
また、請求人は、ネイル製品、化粧品をはじめ、人形、カード、カレンダー等を取り扱うメーカーに、引用商標に係るライセンスを許諾しており、各メーカーは、「ボンドガール(BOND GIRL)」の顧客吸引力を商品の販売促進に活用していることがうかがわれる。
そうすると、引用商標は、映画「007シリーズ」に登場する女性キャラクターの名称として、世界的な知名度を有するに至っているものであり、「007シリーズ」は、永年にわたり、途切れることなく制作されていることからすれば、その知名度は、現在も継続しているといえる。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性
上記1のとおり、引用商標は、映画「007シリーズ」に登場する女性キャラクターの名称として、広く認識されていたことを認めることができる。
また、前記認定のとおり、請求人は、ネイル製品、化粧品をはじめ、人形、カード、カレンダー等を取り扱うメーカーに、引用商標に係るライセンスを許諾していたことからすれば、「ボンドガール(BOND GIRL)」の語が一定の顧客吸引力を有していたことも認めることができる。
さらに、「ボンドガール(BOND GIRL)」は、1962年公開の作品「007 ドクター・ノオ(原題:Dr.No)」以降、一貫して「007シリーズ」に登場する女性キャラクターとして描写されており、「ボンドガール(BOND GIRL)」の語からは、他の観念を想起するものとは認められない。
そして、請求人は、我が国を含む世界各国において引用商標に係る商標を登録し、メーカーに対してはライセンス契約によりその使用を許諾するなど、その商業的な価値の維持管理にも努めてきたものとみることができる。
このような状況の中で、請求人と関わりのない第三者が、最先の商標出願を行った結果、特定の指定役務との関係で当該商標を独占的に使用できるようになり、請求人による使用を排除できる結果となることは、商標登録の更新が容易に認められており、その権利を半永久的に継続することも可能であることなども考慮すると、公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い。
被請求人は、引用商標の世界的な知名度、顧客吸引力及び商業的価値の維持に何ら関わってきたものではないから、本件商標の指定役務との関係においてではあっても「ボンドガール」の語の使用の独占を許すことは相当ではなく、本件商標の登録は、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害するものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号及び同第19号の該当性
(1)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、007シリーズの女性キャラクターとして著名な引用商標と同一又は類似するものであるとしても、引用商標は、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして使用する商標ではなく、請求人が本件商標の指定役務を自己の業務として提供している事情もない。
してみれば、被請求人が本件商標をその指定役務について使用をしても、需要者をして、その役務が他人(請求人)又は同人と経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同するおそれはないものとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、007シリーズの女性キャラクターとして著名な引用商標と同一又は類似するものであるとしても、引用商標は、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして使用する商標ではない。
してみれば、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標ということはできないから、本号が適用される要件を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当しないものの、同第7号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とするべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-12-18 
結審通知日 2019-12-20 
審決日 2020-01-09 
出願番号 商願2015-112995(T2015-112995) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W41)
T 1 11・ 271- Z (W41)
T 1 11・ 222- Z (W41)
最終処分 成立 
前審関与審査官 大森 友子 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 山田 正樹
鈴木 雅也
登録日 2016-12-02 
登録番号 商標登録第5901018号(T5901018) 
商標の称呼 ボンドガール、ボンド、ガール 
代理人 熊谷 美和子 
代理人 山崎 行造 
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