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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
管理番号 1360602 
審判番号 無効2018-890051 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-07-04 
確定日 2020-02-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第5596856号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5596856号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5596856号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成25年1月31日に登録出願、同年6月13日に登録査定、第35類「酒類(「ビール・洋酒・果実酒・酎ハイ」を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品(「サプリメント」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同年7月5日に設定登録されたものである。
その後、本件商標については、平成30年7月4日に商標権の取消し審判の請求があった結果、本件商標の商標登録を取り消す旨の審決が同年10月12日にされ、当該審決の確定登録が同年12月14日にされたものである。
そして、本件商標の登録に対する本件審判の請求は、平成30年7月4日にされている。

2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する登録商標は、以下の11件(これらをまとめていうときは、「引用商標」という。)であり、引用商標1及び引用商標5?7及び引用商標9(いずれも商標権存続期間満了)を除き、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1) 商標登録第2083248号(以下「引用商標1」という。)
商標:別掲2のとおり
登録出願日:昭和55年10月29日
優先権主張:1980年4月29日 フランス共和国
設定登録日:昭和63年10月26日
存続期間満了日:平成30年10月26日
指定商品:第30類「フランス製の茶,フランス製のコーヒー,フランス製のココア,フランス製の氷」及び第32類「フランス製の清涼飲料,フランス製の果実飲料」
(2) 商標登録第2466347号(以下「引用商標2」という。)
商標:「RITZ」
登録出願日:昭和60年12月4日
設定登録日:平成4年10月30日
指定商品:第5類「乳糖,乳児用粉乳」、第29類「食用油脂,乳製品」及び第30類「調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」
(3) 商標登録第3272792号(以下「引用商標3」という。)
商標:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年1月25日
設定登録日:平成9年3月12日
指定商品:第33類「フランス産の日本酒,フランス産の洋酒,フランス産の果実酒,フランス産の中国酒,フランス産の薬味酒」
(4) 商標登録第3303925号(以下「引用商標4」という。)
商標:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年7月6日
設定登録日:平成9年5月9日
指定商品:第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,みそ,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,はちみつ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,氷」
(5) 商標登録第4101119号(以下「引用商標5」という。)
商標:別掲3のとおり
登録出願日:平成8年5月9日
設定登録日:平成10年1月9日
存続期間満了日:平成30年1月9日
指定商品:第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,豆,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」
(6) 商標登録第4101120号(以下「引用商標6」という。)
商標:別掲3のとおり
登録出願日:平成8年5月9日
設定登録日:平成10年1月9日
存続期間満了日:平成30年1月9日
指定商品:第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,みそ,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,おでん,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」
(7) 商標登録第4101121号(以下「引用商標7」という。)
商標:別掲3のとおり
登録出願日:平成8年5月9日
設定登録日:平成10年1月9日
存続期間満了日:平成30年1月9日
指定商品:第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料,ビール製造用ホップエキス」
(8) 商標登録第5333237号(以下「引用商標8」という。)
商標:「RITZ ESCOFFIER」(標準文字)
登録出願日:平成21年10月20日
設定登録日:平成22年6月25日
指定商品:第30類「チョコレート,コーヒー,代用コーヒー,ココア,茶,アーモンドペースト,食塩,こしょう,はちみつ,マスタード,砂糖,チャツネ,シロップ(調味料),サラダ用の酢及び調味料,ソース(調味料),食酢,サラダ用のドレッシング,グレービーソース,その他の調味料,香辛料,食用乾燥ハーブ,おろしわさび,ねりわさび,わさび粉,米飯,粥,キノア粉(キノアを製粉したもの),セモリナ粉のクスクス,その他の穀物の加工品」
(9) 国際登録第962563号(以下「引用商標9」という。)
商標:「RITZ DIAMOND」
国際登録日:2008年3月31日
優先権主張:2007年10月15日 France
設定登録日:平成21年3月13日
存続期間満了日:2018年3月31日
指定商品:第33類「Alcoholic beverages (except beers), including cognac, liqueurs and spirits, wine, whisky.」
(10) 国際登録第986439号(以下「引用商標10」という。)
商標:「RITZ ESCOFFIER」
国際登録日:2008年10月3日
優先権主張:2008年8月29日 France
設定登録日:平成22年7月30日
指定商品:第29類「Jams; jellies; marmalades and tinned fruits; fruit topping; fruits in preserved form; fruits preserved in alcohol; crystallized fruits; dried fruits, these products being sold in delicatessen shops, delicatessen departments of department stores, by mail order, via television and via a global computer network; soups; preparations for making soups; pickles; gherkins; salad oils; dried mushrooms; dried morels; olives in preserved form; caviar; dates; foie gras; sweet chestnut creams; fish salmon; anchovies; tinned snails; preserved lentils; meat dumplings, fish meat dumplings; truffles in preserved form; vegetables preserved in vinegar.」及び第30類「Coffee; artificial coffee; tea; salt; pepper; spices; mustard; almond paste; chutneys; Garden herbs of Provence, preserved [seasonings]; cocoa; prepared horseradish [condiments]; sauces; vinegar; dressings for salads; kasha; couscous grains; meat gravies; pasta; rice; quinoa.」
(11) 商標登録第1537880号(以下「引用商標11」という。)
商標:別掲4のとおり
登録出願日:昭和52年1月18日
設定登録日:昭和57年9月30日
指定商品:第33類「シャンパーニュ地方産の発泡性ぶどう酒」

3 請求人の主張の要旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第77号証(枝番号を含む。なお、特に断らない限り、証拠番号には枝番号を含み、表記にあたっては、「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。
(1) 利害関係
請求人は、平成30年6月28日付けで、商標「RITZ」(標準文字)を、第33類の商品「アルコール飲料(ビールを除く。),発泡性ぶどう酒,「シャンパーニュ」という原産地名称によって保護されているぶどう酒,スピリッツ(蒸留酒),ブランデー」について登録出願した(甲2、商願2018-084632)が審査において、本件商標の存在を根拠とする商標法第4条第1項第11号の拒絶理由が発せられることは自明である。
また、請求人は、フランスのパリ・ヴァンドーム広場に所在する「HOTEL RITZ」を経営する英国法人「THE RITZ HOTEL LIMITED(ザ リッツ ホテル リミテッド)」と、英国のロンドン・ピカデリー広場に立つホテル「THE RITZ LONDON」を経営する英国法人「THE RITZ HOTEL(LONDON)LIMITED(ザ リッツ ホテル(ロンドン)リミテッド)」とが共同で設立した合弁会社であり、上記出願商標を、日本において、その指定商品につき、使用する意思がある。
そして、請求人の上記親会社(以下、これらをまとめて「ホテル・リッツ」ということがある。)は、世界で最も有名なホテルの一つ(二つ)であり、「RITZ」を構成要素とする登録商標を日本国内において、多数所有している(甲2?甲23)。
したがって、請求人が、本件審判において、法律上の利害関係人であることは明らかである。
(2) 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、引用商標と類似するものであって、それらの商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務について使用するものである。
引用商標1、同3及び同4は、「RITZ」、「PARIS」、「HOTEL」等の文字及び図形からなるものであるが、「PARIS」の文字が、請求人の親会社経営のホテルの所在地を、「HOTEL」の文字が、商品の販売場所を示しているにすぎず、その余の「RITZ」の著名性及び顕著性を考えれば、当該「RITZ」が、商標の支配的な識別部分として認識される。
引用商標5ないし同7は、「ホテル・リッツ」の創業者「CESAR RITZ」を表示するものであり、また、引用商標8ないし同10は「RITZ」の文字を顕著に語頭に冠しているから、これらの商標は、同構成中「RITZ/リッツ」の部分が、商標の支配的な識別部分として認識される。
したがって、本件商標「Lit’s」と当該「RITZ」とは、称呼上相紛らわしく類似するものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3) 商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人及び関連会社の使用に係る「RITZ」及び「リッツ」商標の周知・著名性について
(ア) 請求人の親会社が経営する「ホテル・リッツ」は、フランスのパリ・ヴァンドーム広場に所在する「HOTEL RITZ」(リッツ・パリ)と、英国のロンドン・ピカデリー広場に立つホテル「THE RITZ LONDON」(リッツ・ロンドン)であり、世界で最も有名なホテルの一つ(二つ)に数えられている。例えば、リッツ・パリは、セザール・リッツによって、1898年に開業したホテルである(甲25の1?3)。
「リッツ・パリ」は、「フランス料理の神様」と評される「オーギュスト・エスコフィエ(Auguste Escoffier)」が総料理長を務めていたことでも有名であり(甲25の1及び2)、ホテルサービスのみならず、そこで提供される料理についても世界最高峰との評価を受けている。
セザール・リッツは、1899年に英国ロンドンに「カールトン・ホテル(CARLTON HOTEL)」を開業させ、1905年に米国で「ザ・リッツ・カールトン・マネジメント・カンパニー」を設立し、1927年に現在も営業を続けるホテル「ザ・リッツ・カールトン・ボストン」を開業した(甲26及び甲27)。
「ザ・リッツ・カールトン」の経営権は、数次にわたり移転され、現在「マリオット・インターナショナル・インク」に引き継がれているが、商標「RITZ」「リッツ」の使用権限については、リッツ・パリが1988年に当時の経営者である「ダブリュ・ビー・ジョンソン・プロパティーズ・インコーポレーテッド」に使用する権利を許諾し、その後の経営者にも承継されている。
現在、「ザ・リッツ・カールトン」は、世界の主要都市や人気リゾート地に約81箇所も存在しており(甲28)、「ホテル・リッツ」のサービス精神に倣い、各地で世界最高水準のもてなしをゲストに提供し続けている。
1997年以降、「ザ・リッツ・カールトン・グループ」はその事業を日本に進出させており、大阪に「ザ・リッツ・カールトン大阪」を開業させ、2007年に「ザ・リッツ・カールトン東京」、2012年に「ザ・リッツ・カールトン沖縄」、2014年に「ザ・リッツ・カールトン京都」が開業した。
したがって、「ホテル・リッツ」は、同ホテルの流れを名実共に汲む「ザ・リッツ・カールトン・グループ」の日本進出によっても、我が国においてさらなる評価を得て、「リッツ」ブランドの名声と知名度はさらに高まる結果となっており、遅くとも本件商標の出願日(平成25年1月31日)よりはるか以前から現在にかけて、「リッツ」ブランドの存在が我が国において著名であったことは明らかである。
(イ) 「RITZ」及び「リッツ」商標は、請求人、及び請求人の親会社から許諾を得た者の業務について使用されている著名商標であり、この事実は、既に、特許庁及び裁判所において顕著である(甲29?甲55)。
(ウ) インターネットの特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」内の「日本国周知・著名商標検索」においても、「RITZ」の文字を含む商標は、「リッツ」の称呼で、著名商標の一つとして挙げられている(甲56)。そして「RITZ」は、一般の英和辞書にも載録され(甲57及び甲58)、フランス大使館も証明している(甲59)。
イ 商標の類否
(ア) 「リッツ」の独創性について
「リッツ」の語は、その創業者「セザール・リッツ」のラストネームであるが、日本人がよく知る欧米のありふれた氏とはいい難いものであり、その独創性は極めて高い。
(イ) 本件商標から生じる観念
「リッツ」の語は、ホテルを利用する需要者の間で広く浸透しているものであり、ホテルを利用する需要者というのは、特別専門的な取引者や特殊な需要者ではなく、あくまでも普通一般の消費者であって、小売等役務の提供を受けている消費者と当然共通する関係である。
したがって、著名商標「リッツ」は、飲食料品の小売等役務の需要者の間でも充分に認知されているということができ、本件商標に接した需要者は、本件商標が「ホテル・リッツ」を起源とするものであると容易に理解するというべきであり、本件商標からは「ホテル・リッツ」の観念が生じる。
ウ 他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
請求人の親会社の業務に係る役務(ホテル事業)を利用する需要者は、前述したように、特別専門的な取引者や特殊な需要者ではなく、あくまでも普通一般の消費者であって、小売等役務の提供を受けている消費者と当然共通する関係にある。
また、国内外を問わず、多くのホテルが、オリジナルの商品や各地元の土産品などをホテル内の店舗又はオンラインストアを通じて販売(小売)しているという実情があり、とりわけ、各ホテルが販売に力を入れている商品は、ホテルの食事で提供している食材・調味料や、同ホテルで調理した総菜・菓子などの飲食料品であり(甲60?甲73)、ホテルを利用したことがある者であれば、このような一般的な取引実情を当然熟知しているものといえる。
そして、本件商標に係る指定役務である、各種飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供は、ホテルによる小売等役務を包含するものであるから、請求人の親会社及び使用権者が実際に提供している役務と、その性質・用途・目的を始め、需要者層・流通経路・広告方法などについて高い共通性があることは明白である。
不正競争の目的で商標登録を受けたことについて
請求人の親会社は、「RITZ(リッツ)」ブランドの根幹たるホテル事業を粛々と積み重ねて、「RITZ(リッツ)」ブランドがもつ「華麗」「風格」というブランドイメージを作り、商標登録を通じてそれを100年間にわたって守り続けている。にもかかわらず、本件商標がその指定役務について使用され、それを見聞きした需要者が、請求人らと「Lit’s」(リッツ)との間に何らかの関係性を連想すれば、「RITZ(リッツ)」ブランドが100年間守り続けてきたブランドイメージは、被請求人の業務によって崩されてしまうおそれがある。
したがって、被請求人は、不正競争の目的で本件商標登録を受けたというべきである。
オ 小括
以上のとおり、本件商標は、これに接したその指定役務に係る需要者又は取引者が、請求人、請求人の親会社又は使用権者の業務と、本件商標に係る業務との間に、経済的又は組織的な何らかの関係を連想し、役務の出所につき誤認混同を生じることは明らかであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4) 商標法第47条に規定する除斥期間について
本件商標の設定登録日は、平成25年7月5日である。商標法第47条は、商標登録が第4条第1項第11号若しくは同項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)は、無効審判は「商標権の設定登録の日から5年を経過した後は、請求することができない」と定めている。
請求人は、最高裁平成17年7月11日付け判決(裁時1391号2頁、判時19027号125頁、判夕1189号185頁)に則り、本件審判請求書に無効理由として該当する条文を明記した。かつ、将来、補正を命じられた場合には、その定められた期間内に具体的な理由を記載した書面と、その主張を裏付ける証拠を提出する用意がある。したがって、本件審判請求は、除斥期間を徒過した不適法なものとなることはない。
なお、請求人は、「設定登録の日から5年を経過」する時が、明らかでなかったことから、平成30年7月4日付けで、郵送にて本件審判請求書を提出する。前記最高裁判決の判示に従えば、本件商標のような商標は、「本来は商標登録を受けられなかったものであるから、その有効性を早期に確定させて商標権者を保護すべき強い要請があるわけではない」。また、除斥期間内に商標登録の無効の審判が請求され、審判請求書に当該商標登録が該当する無効理由の記載がありさえすれば、「既存の継続的な状態は覆されたとみることができる」というべきである。
(5) 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号について
被請求人は、本件商標とほぼ同時期に、以下の二つの商標を登録し、いずれも無効審判で無効とされている(無効2013-4250及び同2013-4251)。
そして、被請求人は、2013年に子会社の子会社として「株式会社リッツコーポレーション」を設立し、三光ストアというスーパーマーケット事業を継承した。
したがって、本件商標及び上記二つの商標が、請求人の親会社が所有する「RITZ(リッツ)」商標と無関係に採択されたとは考えられず、その顧客吸引力へただ乗りし、当該顧客吸引力を不当に利用しようとするものであることは、前記の諸事情からみて客観的に明白である。
本件商標が「小売」関連分野について実際に使用されれば、請求人の周知商標「RITZ(リッツ)」が有する出所識別機能(指標力)が稀釈化されることは必至である。
また、「RITZ(リッツ)」商標には、これまで100年にもわたり培ってきた「イメージ(印象)のよさ」が備わっている。したがって、本件商標が「小売」関連事業に使用されると、その内容の善し悪しを問わず、「RITZ(リッツ)」商標の持つ「イメージ」は損なわれ、これが、「RITZ(リッツ)」商標の標識としての機能の弱化につながる。仮に、本件商標が「小売」とは名ばかりの悪質な商法について使用されることになれば、「RITZ(リッツ)」商標に化体した上記イメージや業務上の信用(グッドウィル)は著しく汚染される一方で、被請求人は、そのことにより不正の利益を得ることになる。
以上のとおり、本件商標は、「ホテルサービス」を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標「RITZ(リッツ)」と類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものというべきであるから、商標法第4条第1項第7号又は同項第19号にも該当する。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求に対して、何ら答弁していない。

5 当審の判断
(1) 本件審判の請求の利益及び除斥期間経過の有無について
ア 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについて被請求人はこれについて争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
イ 請求人の主張する本件商標の登録の無効理由は、上記3のとおりであるところ、請求人は、本件無効審判の請求の理由中、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当することを理由とする請求について、商標法第47条第1項に規定する除斥期間内である旨主張するので、事案に鑑み、まず除斥期間経過の有無について検討する。
商標法第47条第1項は、商標登録が第4条第1項第11号及び同項第15号(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)の規定に違反してされたとの理由により、同法第46条第1項に基づき、当該商標登録の無効審判を請求するときは、当該商標登録に係る商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、その請求をすることができない旨規定している。
また、同法第77条第1項で準用する特許法第3条(期間の計算)は、「この法律又はこの法律に基づく命令の規定による期間の計算は、次の規定による。 一 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。 二 期間を定めるのに月又は年をもってしたときは、暦に従う。月又は年の始まりから期間を計算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。」と規定している。
これを本件について見ると、本件商標は、上記1のとおり平成25年7月5日に設定登録されたものであり、請求人が本件無効審判を請求した同30年7月4日は、商標権の設定の登録の日から5年(起算日(同25年7月6日)に応当する日(同30年7月6日)の前日(同月5日)に満了)を経過する前であることが明らかであるから、同法第4条第1項第11号及び同項第15号を理由とする本件無効審判請求は、除斥期間経過前にされたことになり、適法である。
以下、本案に入って審理する。
(2) 「RITZ」商標の周知性について
ア 請求人の提出に係る甲各号証及び同人の主張並びに職権調査によれば、以下のとおりである。
(ア) 請求人は、イギリス法人であり、同人の親会社が経営する「ホテル・リッツ」は、フランスのパリ・ヴァンドーム広場に所在する「HOTEL RITZ」(リッツ・パリ)と、英国のロンドン・ピカデリー広場に立つホテル「THE RITZ LONDON」(リッツ・ロンドン)である。
リッツ・パリは、セザール・リッツによって、1898年に開業したホテルであって、「フランス料理の神様」と評される「オーギュスト・エスコフィエ(Auguste Escoffier)」が総料理長を務めていたことでも知られている。
「ホテル企業の基本」(2006年11月20日発行)には、「世界のホテル」の見出しの下、パリの「ホテルリッツ」が紹介され、セザール・リッツについて紹介され(甲25の1)、「フランスのホテル ベストセレクション」(2001年8月30日発行)には、「リッツ・パリ」が「ココ・シャネルが晩年を過ごした館 ホテル王リッツが創業したパリの輝く星」のタイトルとともに、総支配人がセザール・リッツ、総料理長がオーギュスト・エスコフィエであり、ヘミングウェイなどの作家が定宿とし、ココ・シャネルは好んでホテルの一室に住み、ここで没したと紹介されている(甲25の2)。さらに「パラス パリの極上ホテル、『豊かさ』のかたちとエスプリ」(2008年9月2日発行)には、「リッツ・パリ」が「有名な宝石店が立ち並ぶヴァンドーム広場の北東角に、リッツ・パリの優雅なファサードがある。大きく名が書かれていることもなく、知る人ぞ知るといった隠れ家的な雰囲気すら感じさせる。・・・」と紹介されている(甲25の3)。
(イ) 「ブランドづくりの教科書」(2009年1月30日発行)には、「最高のサービスをブランド化したリッツ・カールトン」の見出しの下、「十九世紀の終わり、・・・セザール・リッツが・・・パリにホテル・リッツを開業・・・その後、イギリスのカールトンホテルの開業にも携わった」との記載がある(甲26)。
「アップルワールド」のウェブサイトには、「リッツカールトン」の見出しの下、「1905年、ザリッツカールトン・マネジメント・カンパニーをアメリカに設立します」との記載がある(甲27)。
「THE RITZ CARLTON」の公式ウェブサイト(平成25年12月30日付け)データシートには、「ザ・リッツカールトンの歩み」の見出しの下、「・・・現在、世界中に80のホテルを所有し、今後はヨーロッパやアフリカ、アジア、中東、米国大陸でさらなる拡大を予定しています。」との記載がある(甲 28)。
(ウ) 「Ritz」の文字は、「国際的な高級ホテルチェーンのホテル。」(「リーダーズ英和中辞典」株式会社研究社発行)(甲57)、「リッツ(ホテル)国際的な高級ホテルチェーン」(「新グローバル英和辞典」株式会社三省堂発行)(甲58)と記載がある。また、当審における職権調査によれば、「Ritz」の文字は、「《the?》リッツ(ホテル):Londonの中心部にある一流ホテル」(「小学館ランダムハウス英和大辞典第2版<特装版>」株式会社小学館発行)との記載がある。
(エ) 1996年3月26日付け、在日フランス大使館経済商務公使ユベル テスタ氏による「サービスマーク“Ritz”の著名性に関する証明」と題する書面には、毎年数多くの訪仏する日本人旅行者が存在し、日本にホテルリッツの評判は及んでいる旨、日本の旅行代理店等が、カタログパンフレット等でホテルリッツについて言及している旨、さらに日本特許庁に手交した“list of well?knowan marks”において第42類及び第33類に示されている旨などの記載がある(甲59)
(オ) 特許庁及び裁判所において、「RITZ」「リッツ」が、我が国で請求人の業務に係る役務を表示するものとして周知であると判断されている事例が多数存在する(甲29?甲55)。
イ 上記アによれば、「RITZ」、「Ritz」又は「リッツ」の文字は、本件商標の登録出願日(平成25年1月31日)前から、登録査定日(同年6月13日)はもとより、現在においても継続して、請求人の業務に係るホテル事業を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。
してみれば、請求人が使用する引用商標のうち、少なくとも「RITZ」の文字からなる引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国において請求人の業務に係るホテル事業を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められ、その周知性は、現在においても継続しているものということができる。
(3) 商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり「Lit’s」の文字(「アポストロフィ」を含む。以下同じ。)を表してなるものであり、その構成文字に相応して「リッツ」の称呼を生じるものである。また、「Lit」は、「点灯」、「点火している、火の灯っている」等を意味する英語ではあるものの、該語及び「Lit’s」が我が国において親しまれた語とはいえないから、本件商標は特定の観念を生ずることのない一種の造語として認識されるとみるのが自然である。
しかしながら、本件商標の指定役務である酒類、茶・コーヒー及びココア等を取扱商品とする小売等役務と請求人の業務に係るホテル事業とは、需要者を同じくする場合がないとはいえないこと、「リッツ」の称呼を生じると認められる引用商標2が請求人の業務に係るホテル事業を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであることからすると、つづりにおいて相違するとしても、本件商標の「リッツ」の称呼から「ホテルリッツ」を想起させる余地があることは否定できない。
イ 引用商標について
(ア) 引用商標1、同3及び同4は、図形と「HOTEL RITZ」及び「PARIS」の文字との結合商標であるところ、図形部分からは、特定の称呼及び観念が生ずるものということができず、また、「PARIS」の文字部分は、指定商品の産地又は販売地と解される都市「パリ」を表すことから、かかる文字部分から、自他商品の識別標識としての称呼及び観念が生ずるということができない。
そうすると、引用商標1、同3及び同4は、その構成中、ホテル名を表すものとして理解され、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「HOTEL RITZ」の文字部分から、「ホテルリッツ」の称呼を生じ、請求人の業務に係る役務(ホテル事業)の出所を表示する標章としての「ホテルリッツ」の観念を生ずるものである。
(イ) 引用商標2は、「RITZ」の文字を横書きしてなるものであり、該文字からは、「リッツ」の称呼を生じ、請求人の業務に係る役務(ホテル事業)の出所を表示する標章としての「ホテルリッツ」の観念を生ずるものである。
(ウ) 引用商標5?同7は、「CESAR RITZ」(2文字目の「E」には、アクセント記号が付されている。以下同じ。)の欧文字と「セザール リッツ」の片仮名とを上下二段に横書きしてなるところ、その構成文字からは、「セザールリッツ」の称呼を生じ、「CESAR RITZ」の欧文字は、申立人の創始者の名前を表すものであるが、我が国においては同人が一般に広く知られているということはできないから、特定の観念が生じないものである。
(エ) 引用商標8及び同10は、「RITZ ESCOFFIER」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字からは、「リッツエスコフィエ」の称呼を生じ、また、構成中にリッツホテルの料理長であったエスコフィエの名前「ESCOFFIER」の文字を含むものであるとしても、我が国においては同人が一般に広く知られているということができないから、引用商標8及び同10は特定の観念が生じないものである。
(オ) 引用商標9は、「RITZ DIAMOND」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字からは、「リッツダイヤモンド」の称呼を生じるが、該文字は我が国においては特定の意味合いを有する語として親しまれているということができないから、特定の観念が生じないものである。
(カ) 引用商標11 は、別掲4のとおり複数の図形並びに複数の「RITZ」と「Champagne」及び「BRUT」と「CUVEE ROYAL」の欧文字を結合してなるところ、その構成中、黒塗りの長方形状の内部に表された「RITZ」の文字部分は、図形の内部に記載されているものの、構成の中心のひときわ目立つ場所に、他の文字部分に比して大きな文字で、白抜きの読み取りやすい書体で明瞭に記載されているから、外観上、図形部分及び他の文字部分と明確に区別して認識できる。そして、「RITZ」の文字は、欧文字4文字からなる平易なものであって、称呼しやすく、請求人の業務に係るホテル事業を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることを考え合わせると、「RITZ」の文字部分は、引用商標11を見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を強く引くものであると認めるのが相当である。また、「RITZ」の文字部分は、指定役務との関係で、当該役務の質等を表すものともいえないことからすると、引用商標11の構成中「RITZ」の文字は、独立して出所識別機能を有する要部であるというべきである。
そうすると、引用商標11は、その構成中、ホテル名を表すものとして理解され、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「RITZ」の文字部分から、「リッツ」の称呼を生じ、請求人の業務に係る役務(ホテル事業)の出所を表示する標章としての「ホテルリッツ」の観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに、外観においては、本件商標と引用商標は、その構成態様において、いずれも顕著な差異を有するものであるから、十分区別することができ、外観上、相紛れるおそれはないものである。
次に、称呼においては、本件商標から生ずる「リッツ」と、引用商標から生ずる「ホテルリッツ」、「セザールリッツ」、「リッツエスコフィエ」及び「リッツダイヤモンド」とは、その構成音において明らかな差異を有するものであるから、十分に聴別することができるものである。
しかし、本件商標から生ずる「リッツ」と引用商標2及び同11から生ずる「リッツ」とは、共に「リッツ」の称呼を共通にするものであるから、両者は、称呼において共通する。
さらに、本件商標は、上記アのとおり「ホテルリッツ」の観念を生ずる余地があるといえ、引用商標1?同4及び同11は、「ホテルリッツ」の観念を生じるものである。
以上によれば、本件商標と引用商標1、同3?同10とは、観念が共通する余地があるとしても、外観において明らかに相違し、それぞれから生じる称呼も明確に相違するものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
他方、本件商標と引用商標2及び同11とは、外観において相違するが、「リッツ」の称呼及び「ホテルリッツ」の観念を共通にするものであり、称呼及び観念において互いに紛れるおそれがあるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
しかしながら、本件商標の指定役務と引用商標2及び同11の指定商品とは、これらの役務又は商品に同一又は類似の商標を使用するときでも、同一の営業主の提供又は製造、販売に係る役務又は商品と誤認されるおそれは認められない。
したがって、本件商標と引用商標1及び同3?同10は、その指定役務又は指定商品の類否を判断するまでもなく、商標において類似するものでなく、また、本件商標と引用商標2及び同11は、商標が類似するものであるとしても、その指定役務と指定商品は類似するものではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4) 商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 当該商標と他人の表示との類似性の程度
上記(3)ウのとおり、本件商標と引用商標2は、つづりが相違するが、「リッツ」の称呼を共通にし「ホテルリッツ」の観念を共通にする場合があることから、両商標の類似性の程度は相応に高いといえる。
イ 他人の表示の周知性及び独創性の程度
上記(2)イのとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願日前から、登録査定日はもとより、現在においても継続して、請求人の業務に係るホテル事業を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。
また、「RITZ」の文字は、我が国で成語として親しまれている事情はなく、むしろ「国際的な高級ホテルチェーン」として一般的な英語の辞書に記載されている(上記(2)ア(ウ))等からすれば、その独創性の程度は高いといえる。
ウ 当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
ホテルにおいては、飲食料品を始めとする各種の土産物が販売されている実情があることからすると、本件商標の指定役務である酒類、茶・コーヒー及びココア等を取扱商品とする小売等役務と請求人の業務に係るホテル事業とは、一定程度の関連性があるといえる。
エ 商品等の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定役務である酒類、茶・コーヒー及びココア等を取扱商品とする小売等役務と請求人の業務に係るホテル事業とは、いずれも一般の消費者を需要者とするものであるから、両者の需要者の共通性は高いといえる。
オ 小括
上記ア?エに照らし、本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が本件商標をその指定役務について使用した場合、これに接する需要者が引用商標2を想起、連想し、当該役務を請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあったというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5) 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(2)イのとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務の出所を表示する標章として、我が国おいて広く知られていたものと認められる。
また、上記(3)ウのとおり、本件商標と引用商標2とは、類似の商標である。
しかしながら、請求人提出の証拠からは、本件商標権者が引用商標2に蓄積された名声や信用等の顧客吸引力にフリーライドするといった事実、又はそれらを毀損させるといった事実は見いだし難いばかりでなく、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他不正の目的をもって使用をするものであることを示す証拠はない。
したがって、本件商標は、請求人のホテル事業を表すものとして需要者の間に広く認識されている引用商標2と類似するものの、不正の目的をもって使用をするものと認めることはできないから、商標法第4条第1項第19号に該当するということはできない。
(6) 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、別掲1のとおり、「Lit’s」の文字を横書きしてなるものであり、たとえ、引用商標2が請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標は、引用商標2の信用、名声に便乗する、又は引用商標2の顧客吸引力を希釈化させ、その信用、名声を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものというべき証左は見いだせない。
また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、これをその指定役務に使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものではなく、さらに、その使用が他の法律によって禁止されているもの、外国の権威や尊厳を損なうおそれがあって特定の国若しくはその国民を侮辱し、国際信義に反するものでもない。
さらに、請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、商標登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、その出願経緯などに公序良俗に反するおそれがあることを具体的に示す証拠の提出もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7) むすび
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、同項の規定に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



別掲1(本件商標)




別掲2(引用商標1、3、4)



別掲3(引用商標5、6、7)



別掲4(引用商標11)


審理終結日 2019-12-13 
結審通知日 2019-12-17 
審決日 2020-01-10 
出願番号 商願2013-5839(T2013-5839) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W35)
T 1 11・ 262- Z (W35)
T 1 11・ 222- Z (W35)
T 1 11・ 22- Z (W35)
最終処分 成立 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 山田 啓之
小出 浩子
登録日 2013-07-05 
登録番号 商標登録第5596856号(T5596856) 
商標の称呼 リッツ、リットエス、リット、エルアイテイ 
代理人 窪田 英一郎 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 
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