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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W43
審判 全部無効 観念類似 無効としない W43
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W43
審判 全部無効 外観類似 無効としない W43
管理番号 1360578 
審判番号 無効2018-890066 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-08-27 
確定日 2020-02-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第6031577号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6031577号商標(以下「本件商標」という。)は、「ホテル ビューロー四天王寺」の文字を横書きした構成からなり、平成30年1月23日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、同年3月16日に登録査定、同月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する登録第5955312号商標(以下「引用商標」という。)は、「BUREAU」の文字を標準文字で表してなり、平成28年11月18日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」並びに第36類及び第37類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同29年6月16日に設定登録されたものであって、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標はその登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標の要部
本件商標は「ホテルビューロー四天王寺」の文字よりなるところ、全体から生ずる呼称「ホテルビューローシテンノージ」は13音とこれを一連に呼称するには冗長にすぎる。ここで、本件商標の構成中「ホテル」は、指定役務との関係において役務の質又は若しくは提供の場所を表し、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものである。
さらに、本件商標の「ホテル」と「ビューロー四天王寺」との間には、他の文字間隔よりも広い間隔が設けられていることからすれば、まずは本件商標から「ホテル」部分が捨象され、取引に供されるとするのが相当である。
次に、他の構成要素である「四天王寺」は、大阪府大阪市天王寺区の町名であることが容易に認識されることから(甲5)、指定役務との関係において、役務の提供の場所を表すにすぎず、「ホテル」と同様に自他役務識別標識としての機能を果たし得ない。
そして、残余の構成要素である「ビューロー」は、日本語としてそれ自体存在している言葉ではなく、「1.《主に英国で用いられる》(開閉式の木製ふたや引き出し付きの大型の)書き物机。2.《主に米国で用いられる》(鏡付きの)寝室用たんす。3.《主に米国で用いられる》(官省の)局。4.事務[編集]局」の意味を有する英単語「bureau(BUREAU)」を、その発音に従い片仮名表記したものと認められる。
当該語は、「大学以上の水準、最難関大対策レベル、英検準1級レベル、TOEIC L&Rスコア730点以上」と、通常の日本人の英語力では理解することが困難なレベルの英単語であり(甲6)、日本において、一般的な言葉ではない。
また、指定役務との関係においても、その内容や質等を何ら表すものではなく、極めて印象の強い、自他識別性機能、出所表示機能を有する語であると言える。上記を総合的に考慮するならば、本件商標の構成要素中、看者の注意を引くのは「ビューロー」部分であることは明らかであり、当該部分をもって取引に供される可能性が極めて高いと言わざるを得ない。すなわち、本件商標の要部は、文字部分の「ビューロー」である。
(イ)本件商標と引用商標の類似
本件商標の要部からは、その文字に相応した「ビューロー」の呼称が生じている。一方、引用商標からもこれを構成する文字による英単語の発音に応じて「ビューロー」の称呼が生じている。したがって、本件商標と引用商標は明らかに称呼上類似するものである。
また、本件商標の要部である「ビューロー」はその表記に基づいて、これが何らかの外国語であると観念され、英語力のある需要者であれば、英単語「bureau」ないし「BUREAU」を想定するとともに、前述の英単語のいずれかの意味を観念する。
また、英語力の不足する需要者にとっては、特定の観念を伴わない外来語の呼称となる。
これに対し、引用商標「BUREAU」について、英語力のある需要者であれば、やはり英語の「BUREAU」という単語のいずれかの意味を観念する。英語力の不足する需要者にとっては、やはり特定の観念を伴わない外来語の呼称にすぎない。
すなわち、本件商標の要部「ビューロー」と引用商標「BUREAU」は、その外観こそ異なるものの、呼称が類似するとともに、英語力のある需要者には観念も類似し、英語力のない需要者には、観念を生じていないという意味において同一である。
また、本件商標の「ホテル」は、単に役務の質又は内容等を表し、「四天王寺」は、役務の提供場所を表すにすぎず、自他役務識別標識としての機能を果たし得ない。
したがって本件商標と引用商標は、類似の商標である。
(ウ)指定役務の同一又は類似と取引の実情
本件商標と引用商標の指定役務は、第43類「宿泊施設の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」であり、同一である。
また、請求人は、サービスアパートメントと呼ばれる1か月から契約可能な、キッチン、家具、家電、食器といった生活用品が備えられた滞在型宿泊施設を運営しているが、そこでは、ホテルと同様のフロントサービスやハウスクリーニングサービスも利用できるといった特色を有している(甲7)。 サービスアパートメントは、海外では一般的な長期宿泊用施設として知られており、国内でも中期ビジネス出張目的の来日外国人を中心に、都心部での需要が高く、稼働率は9割を超えている(甲8)。日本国内においては、現在、現行旅館業法との関係で、サービスアパートメントの需要者への提供は、法的には建物の賃貸に分類され、宿泊施設の提供とはされていないが、需要者から見た実質的差異は、その宿泊・滞在期間の長短の差にすぎない。 よって、本件商標の指定役務である第43類「宿泊施設の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」は、引用商標の指定役務中、第36類の「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸借」に類似している。
さらに、指定役務「宿泊施設の提供」においては、宿泊施設名称として使用される商標の前後に、宿泊施設の提供の場所を付記して使用することが多く、とりわけ、同一の商標を使用して複数の宿泊施設を提供する場合に顕著である。そのような取引の実情を踏まえれば、本件商標に接した需要者は、引用商標の商標権者の提供に係る「BUREAU」の四天王寺に位置する施設であると誤認混同を生ずるおそれが極めて高いといわざるを得ない。
イ 小括
したがって、本件商標と引用商標は、「ビューロー」の呼称が同一であり、具体的な取引の実情を踏まえれば、その出所の識別に当たり、宿泊・滞在施設の需要者にとって、誤認混同を生じるおそれがあり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
被請求人は「ホテルビューロー四天王寺」及び「BUREAU四天王寺」の名称で平成29年3月からホテルの運営を開始したが、引用商標である「BUREAU」との出所の混同を懸念した請求人は、同年8月21日に上記ホテルの運営受託者である株式会社宅都プロパティに対して、上記商標の使用が引用商標の商標権の侵害に該当する旨の内容証明を送付した(甲28)。その後、上記ホテルの建物の所有者であり、本件商標の商標権者である被請求人は、同30年2月20日付けで、商標変更の準備をしているので、2?3か月の猶予を願い出ると回答をした(甲29)。
それにもかかわらず、この回答以前の同年1月23日には本件商標が出願され、引き続き早期審査に関する事情説明書が提出され、同年3月19日に登録査定がなされ、この登録査定後の同月22日に、本件商標の存在及び、本件商標の継続使用が引用商標の商標権者に唐突に通知された。
本件商標は、被請求人が、引用商標及び請求人がサービスアパートメントという宿泊・滞在施設の役務を提供していることを知り、かつ、請求人と被請求人の役務が類似しており、需要者が本件商標と引用商標を混同するおそれがあることを十分に認識しながら、請求人の商標権侵害の主張を回避するために、意図的に引用商標と同一称呼を含む本件商標を出願し、使用を継続するものである。
被請求人は、ホテルビューロー四天王寺を平成29年3月にオープンし、そのウェブサイトの広告の文言に「暮らすように、泊まる。」という標語も載せているが(甲12)、この「暮らすように泊まる」という標語は、請求人がその宿泊・滞在施設に遅くとも2009年頃(甲30、甲31、ビーコンテ有明の運営開始年:甲9の3頁及び4頁)より使用している標語である。被請求人の広告は、引用商標と称呼上同一の商標と請求人の広告の標語と同一の標語をその一部に含むだけでなく、実際に提供されるサービスの内容自体もサービスアパートメントと類似のものであることから、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起させ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたものと考えることができる。
そして、本件商標をその指定役務に使用する場合には、引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、引用商標に化体した請求人の信用、名声及び顧客吸引力、ひいては引用商標の商標権者である請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがある。
そうすると、本件商標は、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって、引用商標と称呼上同一の商標を本件商標に巧妙に組み込み出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標の類否について
(ア)被請求人は、商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否判断において、結合商標については、「1)その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、2)それ以外の部分から出所識別標識としての呼称、観念が認められる場合を除き、許されない」という最高裁判決を引用し、本件商標は例外1)、2)に該当しないと主張する。しかし、本件商標は例外1)、2)に該当する事案ではなく、本件商標の要部である「ビューロー」と「BUREAU」の類否が判断されるべきである。
(イ)例外1)について
被請求人が提出した商標登録は、本件商標の指定役務と同一又は類似の役務について「BUREAU」、「ビューロー」の語を含むが、その商標中に、その語以外に要部が存すると解釈できる事案(「日立」トラベルビューロー、「Tokyobay Toursim」Bureau、「SNGAPORE EXHIBITION & CONVENTION」BUREAU)であり、単に「BUREAU」、「ビューロー」の語を含む結合商標が他に存在するか否かは、取引者、需要者に対し「ホテル ビューロー四天王寺」のどの部分が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるかとは、全く別次元の問題である。また、商標が登録された事実を示すだけにとどまり、これが使用されていることを示すものでもない。
「コンベンションビューロー」や旅行会社JTBの例は、かかる名称が存在していたからといって「ホテル ビューロー四天王寺」の「ビューロー」を、宿泊施設の提供という役務との関係で、出所識別標識として強く支配的な印象を与える語とは考えないという根拠にはならない。
「ビューロー」、「BUREAU」が「宿泊施設の提供」等について一般的に使用される語であり、ありふれた語であるとの被請求人の主張にはそもそも根拠がなく、「ホテル ビューロー四天王寺」の結合商標について、「ビューロー」が宿泊施設の提供等の関係で、需要者、取引者に対し、出所識別標識として強く支配的な印象を与える「要部」であるとの請求人主張に対する反論にはなっていない。最高裁判決の規範からみても、「ホテル ビューロー四天王寺」の「ビューロー」は、「1)その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」に該当する。
(ウ)例外2)について
本件指定役務中、「宿泊施設の提供」については、地名と結合した名称が採用される例が多いことは認める。しかしながら、地名が自他役務の識別標識としての機能を有する要素となり得るか否かは、地名に結合される他の要素の「強さ」による。この点で、被請求人が例示するいずれの名称も地名以外の要素が「宿泊施設の提供」との関係において、記述的又は慣用的に使用されているものであり、場所的性質や品質をあらわす普通名称との組合せと解することができる。被請求人が提出した登録例は、いずれも「ビューロー」という要部の語を持つ本件商標とは事案が異なり、これらの登録例があるからといって、本件が最高裁判決の例外2)に該当するわけではない。
イ 出所の混同について
(ア)宿泊施設の提供を受ける取引者、需要者にとって、その出所として認識して重視するのは役務の内容であって、法的な契約形式ではない。宿泊施設に関連する現実の取引市場においては、「サービスアパートメント」を「宿泊施設」と定義(甲33)したり、「ホテル」と「サービスアパートメント」を共に「宿泊施設」として取り扱ったりする例もある。定期建物賃貸借契約による宿泊施設提供という役務とホテル宿泊契約(約款)による宿泊施設提供の役務とが同じ業者により行われることは、可能性としては十分にありえることであり、請求人も定期建物賃貸借契約によるサービスアパートメントと宿泊約款によるホテルのサービスを共に提供しているからこそ、請求人は、今後、ホテルについて「Bureau」の引用商標によるサービス提供の可能性も考えて、引用商標を登録したのである。宿泊施設に関連する現実の取引市場において、需要者、取引者は、施設の相違により、宿泊時に契約形式が異なることは認識しても、だからといって、その出所に混同が生じないという被請求人の主張は誤りである。
(イ)被請求人は、請求人が運営する施設の所在地が東京であり、そのウェブサイトのタイトルが「サービスアパートメントを東京・横浜でお探しの方ヘ スペースデザイン」とあることをもって、需要者の誰もが、請求人が大阪でホテルを運営するとは想像しない旨主張する。しかし、経営主体が同一の宿泊施設の営業地域が全国各都市に及ぶことはあり得ることであり、現在の営業地が東京主体であることをもって、近い将来大阪での営業の可能性が否定されるものではないし、需要者が、東京と大阪の類似商標による同種役務の提供者が必ず異なると認識するものでもない。よって、かかる被請求人の主張も誤りである。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
ア 被請求人のフリーライドの意図
請求人の主張は、長期滞在型のキッチン、家具、フロントサービス等つきの宿泊施設を提供することや「暮らすように、泊まる」という表現で宣伝をしたことをフリーライドと主張したのではなく、かかる請求人と同一の長期滞在型の宿泊施設の提供を、請求人の宿泊施設と同じ標語で宣伝し、これを請求人の引用商標と類似の本件商標のもとで行うことに、フリーライドの意図があると考えざるを得ないと主張したものである。実際、「ビュロー」「BUREAU」と地名を組み合わせた宿泊施設は、日本国内には存在しないようである。被請求人が偶然に長期滞在型宿泊施設の名称として「ビューロー四天王寺」を考え付いたとは到底考えることができない。
イ 出願経緯に社会的相当性を欠くこと
被請求人は、2016年10月に本件ホテルの営業が許可された後の同年11月18日に引用商標が出願(甲2の1)されたことを問題視するかのような主張をするが、請求人は、この時期に引用商標による宿泊施設の役務の提供等を具体的に検討し始めたため、この時期に引用商標を出願したのであって、出願時期が本件ホテルの営業許可の直後であるのは、単なる偶然である。第三者のホテルの営業許可取得など請求人が知る由もない。
請求人が、被請求人による「ホテルビューロー四天王寺」の存在を知ったのは、その営業が開始された後の2017年夏頃である。これを受けて、請求人は、被請求人に対し、名称使用中止を求める通知書を送付した(甲28)。これに対し、被請求人は、2018年2月20日、「名称の変更を検討するに至りました。つきましては、新名称を決めるに当たり、当方間で協議を重ねる必要があるとともに、新名称が他者の商標権に抵触しないかの確認を行っていく必要があるため、名称の変更につきましては、2?3か月程度の猶予を頂きたくお願い申し上げます。」と明記した回答を送付したため(甲29)、請求人は仮処分等の法的措置をとることを控え、被請求人からの新名称連絡を待っていた。この回答書には、本件商標を出願し、その結果によって名称変更の可否を決めようとしていたという被請求人の意思を見ることは全くできない。被請求人は、請求人に虚偽を述べて法的措置を中止させ、その間に本件商標登録出願を行っただけである。なお、被請求人は引用商標の出願日(2016年11月18日)より前に本件商標を使用していたと主張しているが、被請求人は、宿泊施設の提供等の役務について本件商標を先使用していたことはない。ビューロー四天王寺という名称の建物が引用商標の出願日より前に着工され、登録された事実はわずかに認められるが(乙104、乙105)、出願日以前になされた保健所からの旅館業の通知書では、名称は「(仮称)四天王寺ホテル」であり(乙107)、被請求人が株式会社宅都プロパティと定期借家契約を締結して、「ビューロー四天王寺ホテル」「HOTEL BUREAU SHITENNOJI」の名称でのホテル運営を委託したのは、2017年1月19日である(乙108)。したがって、被請求人の本件商標の出願経緯は、社会的相当性を欠くものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第133号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
ア 類似判断
商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否判断に当たり、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される商標について、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、1)その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、2)それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されない(最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民228号561頁、乙1)。
本件商標は、上記例外1)及び2)のいずれにも該当せず、したがって、請求人が主張するように、本件商標の構成全体から「ビューロー」の文字構成を要部として抽出することはできない。
イ 例外1)の非該当性について
(ア)「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等を指定役務とする登録商標「日立トラベルビューロー」(乙2)、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等を指定役務とする登録商標「東京湾観光協会/Tokyobay Tourism Bureau」(乙3)、「宿泊施設の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の取次ぎ」等を指定役務とする国際登録商標「SINGAPORE EXHIBITION&CONVENTION BUREAU」(乙4)といった登録商標が存在する。これらのことから,「BUREAU」、「ビューロー」の語が宿泊施設の提供等に使用されるという事実が認められる。
(イ)日本には、宿泊施設の提供等と密接に関連する「コンベンションビューロー」が多数存在し、「コンベンションビューロー」は、単に「BUREAU」、「ビューロー」と称されることが多い。インターネット検索エンジン「google」で「コンベンションビューロー 宿泊」と検索してみると、日本全国各地のコンベンションビューローが検索されるとともに、各サイトの説明文だけでも、随所に、「会議」、「宿泊施設」、「ホテル」、「旅館」、「宿泊」、「宿」、「飲食店」の語が見受けられる(乙7)。これらのことから、日本には、宿泊施設の提供等と密接に関連する「コンベンションビューロー」が多数存在し、「コンベンションビューロー」は単に「BUREAU」、「ビューロー」と称されることが多いという事実が認められる。
(ウ)大手旅行会社JTBの「B」は、「BUREAU」、「ビューロー」の頭文字を表し、そして、「BUREAU」、「ビューロー」の語が長きにわたって宿泊施設の提供等に使用されてきた(乙12?乙14)。このことから、「BUREAU」、「ビューロー」の語が長きにわたって宿泊施設の提供等に使用されてきたという事実が認められる。
(エ)引用商標「BUREAU」の知名度は高くない。「google」で「東京 宿泊」と検索しても、請求人又は請求人が運営するサービスアパートメント(甲9、甲10)に関するウェブサイトは、少なくとも3頁目までには表示されない(乙20)。「東京 滞在」と検索しても(乙21)、「東京泊まる」と検索しても(乙22)、同様である。また、「サービスアパートメント」と検索してさえも、請求人又は請求人が運営するサービスアパートメントに関するウェブサイトは、少なくとも3頁目までには表示されない(乙23)。これらのことから、請求人が運営するサービスアパートメントに係る引用商標の知名度は高くない。
(オ)以上のとおり、「BUREAU」、「ビューロー」の語は、本件指定役務との関係で、一般的に使用される語であり、ありふれた語である。よって、本件商標の構成のうち、「ビューロー」の文字構成は、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない。
ウ 例外2)の非該当性について
(ア)ホテル名に係る商標においては、地名が十分な出所表示機能を有する。ホテルは、宿泊施設であるところ、宿泊場所とは切っても切れない関係にある。そのため、需要者の便宜に資するため、ホテル事業者がホテル名として、当該ホテルが所在する地名(所在地名)を組み合わせたものとすることは一般的なことである(乙27?乙103)。すなわち、地名を組み合わせた一連一体の構成全体をもってホテル名は出所表示機能を備えるものといえる。
(イ)ある語と地名の組合せからなるホテル名は、当該ある語と当該地名が一連一体となって自他役務の識別標識としての機能を果たす。ある語と地名の組合せからなるホテル名に係る商標と、当該ある語のみの商標とが併存登録されている事例や、ある語は同じで地名が異なるホテル名に係る商標が併存登録される事例は、枚挙にいとまがないほど存在する(甲27?甲103)。
(ウ)以上のとおり、本件指定役務との関係において、地名は、自他役務の識別標識としての機能を果たす重要な構成要素である。よって、本件商標の構成のうち「四天王寺」の文字構成から出所識別標識としての称呼、観念が生じないとは認められない。
エ 本件商標について
本件商標においては、「ビューロー四天王寺」の文字は、一体不可分のものとして全体で自他役務の識別標識としての機能を果たすことは明らかであり、上記最高裁判決の判示に則し、本件商標の構成全体から「ビューロー」の文字構成のみを要部として抽出することはできない。加えて、本件商標において、「ビューロー四天王寺」の文字構成は、同書、同大に外観上まとまりよく一体に表されており、それから生じる「ビューローシテンノージ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。そうすると、本件商標からは、「ビューローシテンノージ」の称呼ないし「ホテルビューローシテンノージ」の称呼のみが生じる。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 称呼について
上記のとおり、本件商標からは、「ビューローシテンノージ」の称呼ないし「ホテルビューローシテンノージ」の称呼のみが生じる。本件商標からは、単に「ビューロー」の称呼は生じない。これに対し、引用商標からは、単に「ビューロー」の称呼が生じるのみである。よって、本件商標と引用商標とは、称呼において相違する。
イ 外観について
本件商標は、「ホテルビューロー四天王寺」の文字を横書きに書したものである。これに対し、引用商標は、「BUREAU」の欧文字を横書きに書したものである。よって、本件商標と引用商標とは、外観において相違する。
ウ 観念について
本件商標からは、「ビューローシテンノージ」という名称のホテルとの観念が生じる。これに対し「BUREAU」は、一般の需要者はその意味を認識し得ないから、引用商標からは特定の観念が生じない。よって本件商標と引用商標とは、観念においても相違する。
エ このように、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれにおいても相違するものであり、本件商標は引用商標と類似しない。
(3)出所の混同について
ア 「ホテル ビューロー四天王寺」(以下「本件ホテル」という。)について
本件ホテルは、2014年10月に着工され、2016年2月に竣工された(乙104)。そして、本件ホテルは、同年3月3日に登記されるとともに(乙105)、同年5月17日に旅館業法に基づく旅館業施設の建築計画が申請され(乙106)、その申請は、同年10月4日に承認され、旅館業法に基づくホテルとしての営業が許可された(乙107)。当初、本件ホテルは、被請求人によって運営されていたが、2017年1月19日に、被請求人と株式会社宅都プロパティとの間で、本件ホテルについての定期借家契約が締結され、以後、本件ホテルの運営は、株式会社宅都プロパティに委託された(乙108)。なお、本件ホテルのウェブサイトを運営するために、2016年7月7日に当ウェブサイトのドメイン(http://bureauosaka.com/:甲12)が取得され(乙109)、ほどなくして本件ホテルのウェブサイトが開設された(乙110は、本件ホテルのウェブサイトの2017年6月11日付けウェブアーカイブである。)。
イ ホテルとサービスアパートメントとの違いについて
ホテルは、旅館業法(乙111)に規定され、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる」ものをいう(同法第2条第2項)。ホテル業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受けなければならない(同法第3条)。そして、ホテルの運営者は、原則、宿泊を拒んではならない(同法第5条)。他方、サービスアパートメントは、法律的にはそのような語は規定されていないが、借地借家法の定期建物賃貸借に準拠する(乙112)。サービスアパートメントには旅館業法の上記第5条は適用されず、また、借地借家法第38条の「期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、・・・契約の更新がないこととする旨を定めることができる。」との規定に基づき、サービスアパートメントでは、1か月以上の滞在が条件となり、かつ、サービスアパートメントの運営者は、事前に入居審査を行い、入居可であれば、当該者と定期建物賃貸借契約を締結する、という流れになる。実際、請求人が運営するサービスアパートメント「ビュロー」もそのような流れを採っている(乙113)。
このように、ホテル、サービスアパートメントを利用しようとする者、すなわち、需要者にとって、(ア)ホテルは、1日から宿泊可能なのに対し、サービスアパートメントは、1か月以上の滞在が条件となる点、(イ)ホテルは、原則、宿泊が断られることはないのに対し、サービスアパートメントは、事前に入居審査を受けなければならず、かつ審査に通らないと利用ができない点、3)利用に際し、ホテルは、契約書を交わすことは必要ないのに対し、サービスアパートメントは、定期建物賃貸借契約を結ばなければならない点、において、ホテルとサービスアパートメントは大きく異なる(乙114)。ホテルとサービスアパートメントは、同じ宿泊施設ではあるが、対象者、申し込み方法、契約方法、契約の履行、契約期間のすべてにおいて全く異なるものである。
ウ 請求人の営業地について
請求人が運営するサービスアパートメント「ビュロー」の所在地は東京である(甲9、甲10)。また、請求人のウェブサイトのタイトルは、「サービスアパートメントを東京・横浜でお探しの方へ スペースデザイン」とある(乙123)。需要者は、請求人が、サービスアパートメントのブランドである「ビュロー」という名前を使って、大阪で、しかもホテルを運営するとは誰もが想像しない。
エ したがって、そもそも本件商標と引用商標とは非類似である上、引用商標が「ビューロー」とは類似しない「ビュロー」の称呼でもって東京エリアにおいてのみ請求人が運営するサービスアパートメントに使用される商標である以上、需要者は、本件ホテルが請求人が運営するものであるといった誤認混同をすることはあり得ない。よって、本件商標と引用商標が本件指定役務に使用されても、役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれは全くない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)本件商標の使用(本件ホテルの名称の使用)はフリーライドではないことについて
ア 請求人は、本件ホテルが提供するサービスの内容はサービスアパートメントと類似する旨主張する。その理由は、本件ホテルは、30平方メートル以上の広さの部屋を有し、「暮らすように、泊まるコンドミニアム型ホテル」「長期滞在も可能な日本国内には数少ないコンドミニアム型ホテルです。キッチンや水周りの設備がついているので、まるで自宅のようにくつろいで頂けます。ホテルの利便性とプライベートルーム感覚が融合した新しいタイプの宿泊施設です。」と謳っており、これはまさに請求人の「サービスアパートメント」が提供してきた役務と同じであるからということである。しかし、専有面積が広く、キッチンなどの設備を備え、長期滞在が可能なホテルは、コンドミニアムホテルやアパートメントホテルと呼ばれ、立地がリゾート地であるか都市部であるかを問わず広く知られたホテル形態であり(乙125?乙131)、本件ホテルはこれに倣ったにすぎない。
イ また、請求人は、本件ホテルのウェブサイトで使用する「暮らすように、泊まる。」との標語は、請求人が遅くとも2009年頃より使用している「暮らすように泊まる。」との標語と同じである旨主張する。しかし、「暮らすように泊まる。」という表現は、宿泊施設の提供、特に長期滞在が可能な宿泊施設の提供において一般的に使われる表現であり(乙132、乙133)、標語といえるようなものではないし、仮に標語であるとしても、請求人固有のものではないことは明らかである。また、請求人のウェブサイトは、「google」で「暮らすように泊まる」と検索しても、3頁目までには表示されないことから(乙132)、「暮らすように泊まる。」との表現が請求人のビジネスを表すものとして認知されているとも認められない。
ウ 被請求人は、請求人から警告を受けるまでは、引用商標及び請求人が運営するサービスアパートメントのことは知らなかった。引用商標及び請求人が運営するサービスアパートメントの知名度は高くないのであるから当然である。また、引用商標及び請求人が運営するサービスアパートメントの知名度は高くないのであるから、一般論として、フリーライドするメリットはない。したがって、請求人にフリーライドの意図がないことは明らかである。
(2)本件商標を出願した経緯について
本件ホテルは、2014年10月に着工され、2016年2月に竣工され、同年3月に登記されるとともに、同年5月に旅館業法に基づく旅館業施設の建築計画が申請され、同年10月に本件ホテルの営業が許可された。その後、同年11月18日に引用商標が出願されている(甲2の1)。請求人は、1999年11月に商標登録された登録商標「ビュロー/bureau」を有しているにも関わらず(乙124)、1年も経てからこの時期に引用商標を出願したのは、偶然かどうかは定かでない。しかし、請求人から警告を受け、被請求人としては、請求人の権利を尊重する趣旨で、本件ホテルの名称変更を検討したのは事実である。他方、被請求人が本件商標を出願する権利を有しているのもまた事実である。それがフリーライドを目的としたものではなく、かつ被請求人が引用商標の出願日よりも前から本件商標を使用しているのであればなおさらである。出願して拒絶になるようであれば、名称変更すべきことは認識していた。しかし、拒絶理由が通知されることなく登録となった。登録になったのであるから、被請求人としては、名称変更の検討をやめて、請求人に本件ホテルの名称の継続使用をお願いしたまでのことである。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「ホテル ビューロー四天王寺」の文字を横書きした構成からなるところ、語頭に表された「ホテル」の文字は、「西洋風の宿泊施設」を意味する語(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)として我が国で親しまれているものであり、本件商標の指定役務中「宿泊施設の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係において、役務の質、提供の場所を表したものと認識させるものであって、自他役務識別標識としての機能を有しないか又は極めて弱いものである。
してみれば、本件商標においては、同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔で表されており、外観上、まとまりよく一体的に看取、把握される「ビューロー四天王寺」の文字部分を要部として抽出し、引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきであり、本件商標は、その構成文字全体に相応した「ホテルビューローシテンノージ」の称呼のほかに、「ビューロー四天王寺」の文字に相応して「ビューローシテンノージ」の称呼をも生ずるものである。
また、「ホテル ビューロー四天王寺」及び「ビューロー四天王寺」の文字は、全体として辞書等に掲載がない造語であり、具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、これより特定の観念は生じない。
したがって、本件商標は、その文字部分の構成文字に相応して、「ホテルビューローシテンノージ」及び「ビューローシテンノージ」の称呼を生じ、また、全体として特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「BUREAU」の欧文字からなるところ、「BUREAU」の欧文字は、「1.《主に英国で用いられる》(開閉式の木製ふたや引き出し付きの大型の)書き物机。2.《主に米国で用いられる》(鏡付きの)寝室用たんす。3.《主に米国で用いられる》(官省の)局。4.事務[編集]局」を意味する英語であるものの、これは、我が国において親しまれたものとはいえないから、特定の観念を認識させない一種の造語として認識されるものである。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ビューロー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、本件商標と引用商標とは、構成文字の全体及び態様において相違し、両者は、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「ホテルビューローシテンノージ」及び「ビューローシテンノージ」の称呼と引用商標から生じる「ビューロー」の称呼とは、その構成音、音数などが明らかに相違するものであるから、両者は、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
そして、観念においては、両者は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、両商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において、明確に区別できるものであるから、これらを総合して判断すれば、両商標は、非類似の商標とみるのが相当である。
(4)申立人の主張について
申立人は、本件商標の構成中、「四天王寺」は、大阪府大阪市天王寺区の町名である「四天王寺」であることが容易に認識されることから(甲5)、指定役務との関係において、役務の提供の場所を表すにすぎず、本件商標の構成要素中、看者の注意を引くのは「ビューロー」部分であり、当該部分をもって取引に供される可能性が極めて高い旨主張している。
しかしながら、「四天王寺」の文字が大阪府大阪市天王寺区の町名であったとしても、その構成文字が同書、同大でまとまりよく一体的に表されていることから、「ビューロー」の文字のみが強く支配的な印象を与えるものとはいえないし、また、ホテル名に係る商標においては、地名を組み合わせた商標が採択される事例が相当数あり(乙27?乙103)、地名を含む名称が一連一体となって自他役務の識別標識としての機能を果たす場合もないとはいえないことからすれば、本件商標から「ビューロー」の文字部分のみを抽出し、これを他の商標と比較して商標自体の類否を判断することは許されないというべきである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(5)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標と引用商標の指定役務が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができないとしているところ、同号は、商標自体の性質に着目したものとなっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については、同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(平成14年(行ケ)第616号、平成19年(行ケ)第10391号等)。
(2)上記の観点から本件商標について検討するに、本件商標は、その構成態様に照らし、きょう激、卑わい若しくは差別的な文字又は図形からなるものでないことは明らかである。
また、本件商標と引用商標とは、上記1(3)のとおり、互いに非類似の別異の商標であり、請求人の主張、提出された証拠の内容を検討しても、引用商標が請求人により特定の役務について長年使用され周知性を獲得していたということはできないから、本件商標をその指定役務に使用する場合は、引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、引用商標に化体した請求人の信用、名声及び顧客吸引力、ひいては引用商標の商標権者である請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがあると認めることはできない。
(3)請求人は、請求人が平成29年8月21日に行った「ホテルビューロー四天王寺」及び「BUREAU四天王寺」商標の使用が引用商標の商標権の侵害に該当する旨の警告(甲28)に対して、被請求人が同30年2月20日付けで、「名称変更を検討するにいたった」等と回答をしたにもかかわらず(甲29)、この回答以前の同年1月23日には本件商標が出願されたこと、及び、被請求人がウェブサイトで使用する「暮らすように、泊まる。」との語句が、請求人が2009年頃より使用している「暮らすように泊まる。」と同じであり、実際に提供されるサービスの内容自体もサービスアパートメントと類似のものであることから、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたものである旨主張している。
しかしながら、被請求人は、請求人からの警告以前の平成28年頃より「ビューロー四天王寺」等の名称の下、既にホテル建設を計画していたものであり(乙104?乙108)、必ずしも引用商標を剽窃して商標登録出願したと断定することはできないし、請求人に名称変更を検討する旨回答したものの、特許庁の審査における類否の判断を待った上で名称変更しなかったことについては、被請求人の意図は理解できるものであって、本件商標について、警告を受けた後に出願したことをもって著しく社会的相当性を欠くものと評価することはできない。
また、請求人が広告宣伝に使用する語句「暮らすように、泊まる。」と近似する語句「暮らすように泊まる。」を被請求人がその広告宣伝に使用し、被請求人の業態が請求人の「サービスアパートメント」と同様のものであるとしても、当該語句が、請求人特有のものとして認識されていた等の事情は見いだせないから、被請求人による使用が直ちに不正であるとみることはできない。
してみれば、本件商標の出願の経緯が、著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると評価することはできない。
その他、本件出願の経緯に社会的妥当性を欠くような事実は発見できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第7号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-12-03 
結審通知日 2019-12-06 
審決日 2019-12-26 
出願番号 商願2018-8940(T2018-8940) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (W43)
T 1 11・ 261- Y (W43)
T 1 11・ 262- Y (W43)
T 1 11・ 263- Y (W43)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 旦 克昌 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 小俣 克巳
鈴木 雅也
登録日 2018-03-30 
登録番号 商標登録第6031577号(T6031577) 
商標の称呼 ホテルビューローシテンノージ、ホテルビューロー、ビューローシテンノージ、ビューロー 
代理人 原岡 結 
代理人 きさらぎ国際特許業務法人 
代理人 特許業務法人まこと国際特許事務所 
代理人 吉野 正己 
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