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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W253541
審判 全部申立て  登録を維持 W253541
管理番号 1358871 
異議申立番号 異議2018-900382 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-21 
確定日 2020-01-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第6085087号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6085087号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6085087号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年10月10日に登録出願,第25類「帽子,履物,被服」,第35類「他人やスポンサーのための音楽フェスティバル・コンサート・ナイトクラブイベント・エンターテイメントイベント・DJイベントの推進を目的とした広告・販売促進及びマーケティングのための企画及びその実行の代理,マーケティング,広告並びに販売促進・提供促進のための企画及びその実行の代理,インターネットのウェブサイトを通じてアート、アーティスト、アートイベントに関するオンラインイベントカレンダー、オリジナルの記事、インタビュー・情報を提供することによる販売促進用の視覚芸術イベントや舞台芸術イベントの運営,パーティーに関するスペシャルイベントの振興,スペシャルイベントの振興,スポンサー探し,グローバルコンピュータネットワークを通じた他人の商品やサービスに関する価格情報の提供,卸売価格及び売買価格に関する統計の編集及び情報の提供,広告業,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,広告・マーケティング及び販売促進のための企画及びその実行の代理,商業用・販売促進用及び広告用のイベント・展示会・見本市及びショーの運営」及び第41類「娯楽の提供,実演による音楽コンサート・音楽祭の企画,パーティーイベントの企画・手配及び運営,音楽コンサート・フェスティバル・ツアー及び他の音楽並びに文化的パフォーマンス・イベント及び活動の企画・運営又は開催,娯楽目的の展示会の企画・手配及び運営,パーティーの企画,音楽に関する情報の提供,娯楽、音楽、生演奏及び娯楽イベントに関する情報の提供,娯楽・スポーツ及び文化的なイベントの切符又は座席の予約,オンラインによる音楽に関する映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),オンラインによる音楽の提供(ダウンロードできないものに限る。),インターネットを介してアクセス可能な音楽・音声・映像の提供(ダウンロードできないものに限る),オーディオ及び映像の記録,音響及びビデオ映像の記録物の制作」を指定商品及び指定役務として,同30年8月30日に登録査定,同年9月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は,以下の1ないし21のとおりの登録商標(いずれも,現に有効に存続している。以下,これらをまとめていうときは,単に「引用商標」という。)及び,以下の22の申立人の使用に係る商標の例(以下,例示された各商標をまとめていうときは,「引用標章」という。)である。
1 登録第2671514号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,昭和61年2月7日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成6年6月29日に設定登録,その後,同17年8月17日に第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
2 登録第2693722号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,昭和61年2月7日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成6年8月31日に設定登録,その後,同17年9月14日に第9類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
3 登録第2704525号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,昭和61年2月7日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成7年2月28日に設定登録,その後,同17年6月29日に第18類,第25類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
4 登録第2693723号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,昭和61年2月7日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成6年8月31日に設定登録,その後,同17年9月14日に第9類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
5 登録第2693724号商標(以下「引用商標5」という。)は,別掲4のとおりの構成よりなり,昭和61年2月7日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成6年8月31日に設定登録,その後,同17年9月14日に第9類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
6 登録第2671515号商標(以下「引用商標6」という。)は,別掲4のとおりの構成よりなり,昭和61年2月7日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成6年6月29日に設定登録,その後,同17年8月17日に第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
7 登録第2609079号商標(以下「引用商標7」という。)は,別掲5のとおりの構成よりなり,昭和49年12月26日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成5年12月24日に設定登録,その後,同16年3月3日に第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
8 登録第1587778号商標(以下「引用商標8」という。)は,別掲5のとおりの構成よりなり,昭和49年12月26日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同58年5月26日に設定登録,その後,平成16年9月22日に第9類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
9 登録第1423465号商標(以下「引用商標9」という。)は,別掲5のとおりの構成よりなり,昭和49年12月26日に登録出願,第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同55年6月27日に設定登録,その後,平成22年4月28日に第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
10 登録第2708505号商標(以下「引用商標10」という。)は,別掲6のとおりの構成よりなり,平成2年11月8日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同7年7月31日に設定登録,その後,同18年1月4日に第9類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
11 登録第2593080号商標(以下「引用商標11」という。)は,別掲6のとおりの構成よりなり,平成2年11月8日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同5年10月29日に設定登録,その後,同16年5月26日に第25類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
12 登録第4025668号商標(以下「引用商標12」という。)は,別掲6のとおりの構成よりなり,平成2年11月8日に登録出願,第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同9年7月11日に設定登録,その後,同20年5月28日に第24類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
13 登録第4180654号商標(以下「引用商標13」という。)は,別掲6のとおりの構成よりなり,平成2年11月8日に登録出願,第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同10年8月21日に設定登録,その後,同20年11月5日に第14類,第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
14 登録第4376378号商標(以下「引用商標14」という。)は,別掲7のとおりの構成よりなり,平成10年6月26日に登録出願,第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同12年4月14日に設定登録されたものである。
15 登録第4378318号商標(以下「引用商標15」という。)は,別掲7のとおりの構成よりなり,平成10年6月26日に登録出願,第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同12年4月21日に設定登録されたものである。
16 登録第4376377号商標(以下「引用商標16」という。)は,別掲7のとおりの構成よりなり,平成10年6月26日に登録出願,第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同12年4月14日に設定登録されたものである。
17 登録第5645150号商標(以下「引用商標17」という。)は,別掲8のとおりの構成よりなり,平成24年8月10日に登録出願,第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同26年1月24日に設定登録されたものである。
18 登録第2528490号商標(以下「引用商標18」という。)は,別掲9のとおりの構成よりなり,平成2年12月14日に登録出願,第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同5年4月28日に設定登録,その後,同16年12月15日に第14類及び第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。
19 登録第4522862号商標(以下「引用商標19」という。)は,別掲10のとおりの構成よりなり,平成12年4月6日に立体商標として登録出願,第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,商標法第3条第2項の適用を受けて,同13年11月16日に設定登録されたものである。
20 登録第4522863号商標(以下「引用商標20」という。)は,別掲11のとおりの構成よりなり,平成12年4月6日に立体商標として登録出願,第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,商標法第3条第2項の適用を受けて,同13年11月16日に設定登録されたものである。
21 登録第4522864号商標(以下「引用商標21」という。)は,別掲12のとおりの構成よりなり,平成12年4月6日に立体商標として登録出願,第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,商標法第3条第2項の適用を受けて,同13年11月16日に設定登録されたものである。
22 引用標章は,申立人の使用に係る商標(申立人主張の「3本線商標」)の例(甲7,46,47,54,59,63,127,137,138,152,153,176?188からの抜粋)であって,別掲13に示す構成よりなるものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第188号証(枝番号を含む。なお,特に断らない限り,証拠番号には枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人の3本線商標の周知性
申立人の引用する3本のストライプを基本的構造とする商標(以下「3本線商標」という。)は,申立人の製造販売に係るスポーツシューズ,スポーツウェア等の取扱い商品について1949年から現在に至るまで継続的に使用されており,本件商標の登録出願時及び査定時には,申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして,本件商標の指定商品及び指定役務(以下「本件指定商品等」という。)の取引者及び需要者の間で全世界的に広く認識されていたものであって,その著名性の程度は極めて高い(甲2?188)。
(2)本件商標と申立人の3本線商標との類似性
申立人の使用に係る3本線商標は,その登録に係る3本線商標(引用商標1?21)の構成に限定されるものではなく,引用商標22として例示するとおり,3本線を構成するストライプに関して,輪郭線の形状,ストライプとその間隔の幅の広狭,ストライプの長短の差などにおいて数多くの異なるデザインバリエーションが存在する(甲3?88,100,101,127?165,176?188)。
本件商標は,仮想垂直線に対して直角に交差する同幅で長さが等しい細長の長方形(「ストライプ」)3本を等間隔で並べたものである。
本件商標は,引用商標及び申立人の使用に係る3本線商標の多くの類型と図形印象が類似することに加え,申立人の現実の使用に係る3本線商標に採択されているストライプの構成の様々なデザインのバリエーションと一致する特徴(ストライプの輪郭線が直線状,ストライプが間隔の幅よりも狭い,ストライプの長短の差が無い)を備えており,「3本線」として容易に看取されるものであり,「3本線」の観念を生じる。
したがって,申立人の3本線商標と類似性の程度が極めて高い。
(3)本件指定商品等と申立人の業務に係る商品及び役務との関連性
本件指定商品等は,申立人が3本線商標を継続使用しているスポーツシューズ,スポーツウェア,運動具,スポーツイベントの企画・運営又は開催などの主要な取扱商品・役務と同一又は類似のもの,あるいはこれらと密接な関連を有する。
本件指定商品等に含まれる履物の取引界では,一般に,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用されており,商標の構成の細部までを視認することが必ずしも容易ではない(甲99)。また,商品の地色等と商標部分を様々な異なる色の組み合わせで配色することも一般的に行われており,色彩によっては,商標の構成の細部が明確に看取されない場合がある(甲98)。さらに商標を被服,靴等のワンポイントマークとして付す使用態様も多く採用されている(甲98)。
このような取引実情を斟酌すれば,本件商標が使用された場合,同幅の「3本のストライプ」を均等間隔で互いに平行に並べた構成の商標,すなわち,「3本線」として看者を印象づけ,「3本線」として記憶されるものであるから,申立人の3本線商標と相紛らわしい。また,ワンポイントマークとして使用された場合,商標部分の細部の構成を正確に視認することは必ずしも容易ではなく,ワンポイントマークとして使用されている申立人の3本線商標と判別することが困難である。
(4)出所の混同を生ずるおそれ
本件指定商品等の最終需要者は一般消費者を多く含むものであり,その注意力の程度はさほど高いものとはいえない。
本件商標が本件指定商品等に使用された場合,これに接した取引者,需要者は,申立人の商品出所識別標識として広く認識されている3本線商標を想起連想し,申立人の使用に係る3本線商標(3本のストライプを基調とする商標)の一類型として本件商標を認識し,当該商品等が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的関連を有する者の業務に係る商品等であると誤信することにより,その出所について誤認混同を生ずるおそれがあることが明らかである。
また,本件商標は,申立人の商品出所識別標識として極めて著名な3本線商標を直観させることにより,その信用力,名声及び顧客吸引力にフリーライドせんとするものといわざるを得ず,その登録及び使用により,申立人の3本線商標の出所表示機能が希釈化されることが明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,申立人の商品及び役務の出所表示として世界的に著名な3本線商標の信用力,顧客吸引力にフリーライドする不正な目的で採択使用されたものと推認せざるを得ない。
また,本件商標が本件指定商品等に使用された場合,申立人の長年の企業努力及び宣伝活動によって,その業務に係る商品・役務を表示するものとして周知著名に至っている3本線商標の出所表示機能が稀釈化され,申立人に経済的及び精神的損害を与えることは疑いない。
したがって,本件商標は,公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の目的,社会一般道徳及び国際信義に反するものであるから,公の秩序を害するおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)3本線商標の周知著名性及び独創性の程度について
以下,当審の判断においていう「3本線商標」は,引用商標を構成する図形を限度とし,引用標章(申立人が主張する3本線商標の例示)の全てを含むものではない。
ア 証拠及び申立人の主張並びに職権調査によれば,以下の事実が認められる。
(ア)申立人は,1920年にスポーツシューズを開発し,1949年から自己の取扱いに係るスポーツシューズの左右側面に3本線商標を採択使用して以来(甲2の6),今日に至るまで該商標を使用している。
(イ)3本線商標を使用したスポーツシューズは,1952年のオリンピックヘルシンキ大会で西ドイツ選手によって着用されて以来,その後のオリンピック,世界選手権,欧州選手権等の国際試合における参加選手によって着用され,オリンピックにおいては,例えば,1952年ヘルシンキ大会後,1960年のローマ大会では参加選手中約75%がアディダス製品を,1964年の東京大会から1976年のモントリオール大会までは,参加選手の80%以上により着用されている(甲7)。
(ウ)3本線商標は,スポーツシューズのみならず,スポーツウェア等の他のスポーツ用品にも使用されており,例えば,該商標を使用したサッカーユニホームは,世界各国の代表チームやプロリーグチームを初め,日本代表チームにも採択使用されている(甲41?43,87の2,88)。そして,申立人は,世界的なバスケットボール選手やテニスプレーヤー等と専属契約を締結し,自己のスポーツ用品を供与し広告に起用している(甲39,40)。
(エ)我が国においては,申立人の業務に係るポロシャツ,ティーシャツ,スウェットスーツ,帽子,運動靴,運動用特殊衣服(靴),かばん類,布製身回品等の商品について,1971年(昭和46年)頃から1998年(平成10年)頃までは申立人の日本における使用権者であったデサント株式会社を通じて,1999年(平成11年)以降は,申立人の日本法人であるアディダスジャパン株式会社によって販売され,これらの商品及びその広告に3本線商標が使用されている(甲3?40,44?88,100,101,127?144,146?149,151?154,156?165,176?188)。
(オ)申立人の使用に係る商標には,3本線を構成する平行四辺形・台形様図形等(以下,この項(1)において,単に「ストライプ」という。)に関して,そのストライプの輪郭の形状(波形,楔形,直線,曲線),ストライプとその間隔の幅の広狭,ストライプの長短の差(長短の差が無いもの,長短の差があるもの)などにおいて数多くの異なるデザインバリエーションが存在する(甲3?88,100,101,127?144,146?149,151?154,156?165,176?188)。
イ 前記アの認定事実によれば,申立人は,1920年にスポーツシューズを開発し,また,3本線商標を,1949年からスポーツシューズに使用し,その後,3本線商標が付された申立人の取扱いに係る商品は,各種競技の多くの選手に広範に使用され,3本線商標はスポーツシューズ,スポーツウェア等のスポーツ関連用品について使用する商標として,申立人により我が国を含む世界各国において長年にわたり継続して使用されていることが認められる。
そして,「スポーツシューズ,スポーツウェア」は,専らスポーツを行う際に用いられるものに限られるものではなく,ファッションの一環として着用されることもあることを踏まえれば,その需要者は,スポーツ関連分野に限定されず,ファッション関連分野にも及ぶものということができる。
そうすると,3本線商標は,申立人の業務に係る「スポーツシューズ,スポーツウェア,運動具」等の商品(以下「申立人商品」という。)を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,既に,我が国のスポーツ,ファッション関連分野の需要者の間に広く認識され,周知著名性を獲得している商標といえるものである。
ただし,引用標章(申立人が主張する3本線商標の例示)ないし3本線商標のバリエーションについては,その主張に係る商標の構成及び態様が必ずしも特定されていない上,各商標の使用状況に関する事実(使用数量,使用期間,使用地域等)も明らかでないため,3本線商標の周知著名性をもって一律に,それらの周知著名性までも認めることはできない。
ウ 3本線商標の独創性の程度
3本線商標は,縦長の台形様図形若しくは平行四辺形様図形を3つ並べた構成又は単なる3本の線(帯状図形)のみで構成されるものであることからすると,その独創性の程度は必ずしも高いとはいえない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,同幅で長さが等しい黒塗りの横細長の長方形様図形3本を,仮想垂直線に対し,直角に交差し,上下の間隔を当該長方形様図形の縦幅よりも広い間隔(約4.5倍程度の間隔)をもって平行に配した構成で表されたものである。
イ 引用商標及び引用標章について
(ア)引用商標1及び2の構成は,別掲2のとおり,「adidas」の文字と図形とからなるところ,上記各引用商標を構成する図形は,左に行くに従い順次短くなる3つの黒塗りの縦長台形様図形を,仮想底辺で下部がそろい,頭部が一直線になるように,左に傾斜させて配したものである。
(イ)引用商標3及び4は,別掲3のとおり,図形のみからなり,引用商標5及び6は,別掲4のとおり,「adidas」の文字と図形とからなるところ,上記各引用商標を構成する図形は,仮想垂直線に対し,左方向にやや傾けた,左右の斜線を鋸の歯形状にした同じ長さからなる3本の黒塗り縦長の平行四辺形様図形を極めて狭い間隔をもって仮想底辺にそろうようにしたものである。
(ウ)引用商標7ないし9は,別掲5のとおり,仮想垂直線に対し,左方向に僅かに傾けた,左右の斜線を鋸の歯形の輪郭で描いた縦長の平行四辺形様図形を,該図形の幅とほぼ同じ程度の間隔をもって仮想底辺に沿うように3本並べ,そのうちの左端に位置するものから右方向に向かって順次長くしていき,右端に位置するものを左端よりもわずかに長くした構成からなるものである。
(エ)引用商標10ないし13は,別掲6のとおり,「adidas」及び「EQUIPMENT」の文字と図形とからなり,引用商標14ないし16は,別掲7のとおり,図形のみからなり,引用商標17は,別掲8のとおり,「adidas」及び「Professional」の文字と図形とからなるところ,上記各引用商標を構成する図形は,左方向にやや傾けた黒塗りの3つの台形様図形を,右端のものを最も長くし,左に行くに従い順次短くなるようにし,仮想底辺で下部がそろうようにしたものである。
(オ)引用商標18は,別掲9のとおり,仮想垂直線に対し,右方向に約45度傾けた細長の台形様図形を,極めて狭い間隔をもって3つ並べ,そのうちの左上端に位置するものを最も長くし,右方向に向かって順次短くしていき,右下端に位置するものを最も短くした図形よりなるものである。また,3つの台形様図形の上底部と下底部の内側には,それぞれ輪郭に沿って線が引かれているものである。
(カ)引用商標19は,別掲10のとおり,上着を表した立体的形状からなり,引用商標20は,別掲11のとおり,ズボンを表した立体的形状からなるところ,上記各引用商標の上着の襟から両袖の側面又はズボンの両側面に描かれた図形は,黒塗りの長さが均等な細長の帯状の図形を当該帯状の図形の幅とほぼ同じ幅の間隔をもって3本並べた構成からなるものである。
(キ)引用商標21は,別掲12のとおり,靴を表した立体的形状からなるところ,上記引用商標の靴の両側面に描かれた図形は,つま先に向かって傾けた3つの黒塗りの台形様図形を靴底で下部がそろうように配した構成からなるものである。
(ク)引用標章は,3本線商標のほか,例えば,3本の線状図形が大きく湾曲した図形(甲138),細い3本の線がかなり広い間隔をもって配置されたもの(甲179),商品のストライプ模様と看取されるもの(甲177,178等)など,3本線商標とは大きく異なる態様からなる図形を含むものである。
ウ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標1ないし18及び21の構成中の各図形部分を対比すると,両者は,四つの辺から構成する図形(四角形)を3本並べた構成の図形からなるという点において共通性があるといえる。
しかしながら,本件商標は,平行する3本の同幅で長さが等しい黒塗りの横長の長方形様図形から構成されているのに対して,上記各引用商標の図形部分は,いずれも3本の縦長の台形様図形又は平行四辺形様図形から構成されている点において最も大きな差異が認められる。
さらに,本件商標と上記各引用商標の図形部分との間には,次のような特徴点や構成上の差異のあることが認められる。
本件商標は,3本の横細長の長方形様図形が等しい長さで左右の端を揃えて水平に描かれており,全体の形状はあたかも縦長の四角形枠内に並列してはめ込まれたような印象を与えるものとして看取されるものである。
他方,引用商標1,2,10ないし17,21を構成する図形は,3本の台形様図形の左側(引用商標21についてはつま先側)が短く表されることにより,全体としてかなり急な傾斜角度を有する図形として,あたかも底辺を水平にする三角形枠内に並列してはめ込まれたような印象を与えるものとして看取されるものである。
また,引用商標3ないし6の3本の平行四辺形様図形は,均等な長さのものが上下の端を揃えて斜めに並列しており,全体の形状はあたかも平行四辺形枠内に並列してはめ込まれたような印象を与えるものとして看取されるものである。
さらに,引用商標7ないし9の3本の平行四辺形様図形は,ほぼ均等な長さではあるものの,斜めに傾けるようにして左側がやや短く表されることにより,全体の形状はいびつな平行四辺形枠内に並列してはめ込まれたような印象を与えるものとして看取されるものである。
そして,引用商標18は,3本の二重輪郭からなる台形様図形からなるものではあるが,各台形様図形が比較的狭い間隔で配置されていることから,むしろ,全体として,縞模様を有する一つの台形様図形であるかのごとき印象を与えるものである。
以上からすると,本件商標と引用商標1ないし18及び21とは,これを構成する3本の図形が横長の長方形様図形であるか縦長の台形様図形又は平行四辺形様図形であるかという相違点に加え,3本の図形から構成される図形全体から受ける印象において,全体が縦長枠内に収まっているようなものであるか三角形枠内又は平行四辺形様枠内に収まっているようなものであるかという点に違いがあることから,両者の構成,態様が大きく異なるものということができる。
その他,本件商標と引用商標19及び20の構成中の帯状図形部分とを対比すると,それらを構成する図形の形状が相違し,黒色であること以外に共通点を見いだすことはできない。
加えて,引用商標は,前記(1)イのとおり,3本線商標として周知著名なものであるから,需要者はその本数に着目するものであるといえるが,たとえ本件商標と引用商標とが,共に3本の図形(線)から構成されるものであるとしても,3本の図形(線)の形状,3本の間隔及び配置方向等,その構成態様の著しい相違から両者の違いを見極めることができ,かつ,簡潔な構成からなる両商標におけるその相違は大きいものといえる。
そうすると,本件商標と引用商標を構成する図形とは,その構成態様において明らかな差異を有しているものというべきであり,図形全体から受ける視覚的印象を異にするものであるから,これらを時と所を異にして離隔的に観察するも,外観において相紛れるおそれはないものといわなければならない。
また,本件商標と引用商標との称呼及び観念についてみても,申立人の主張によれば,当該引用商標は3本のストライプを基本的構造とする商標であるとのことであるから,仮に「サンボンセン」あるいは「スリーストライプス」の称呼及び「3本線」の観念を生ずることがあったとしても,本件商標からは,直ちに特定の称呼及び観念を生ずることはないものというべきであるから,両者の称呼及び観念については類似するものではない。
なお,本件商標と引用商標1,2,5,6,10ないし13及び17を構成する文字部分を含めた上記各引用商標全体とを比較したとしても,両者の類似性の程度がより高まるものではない。
したがって,本件商標と引用商標の外観,称呼及び観念を総合して考察すれば,本件商標と引用商標との類似性の程度は低いものというべきである。
なお,本件商標と引用標章(引用商標と同一視できる構成からなるものは除く。以下同じ。)との比較については,引用商標との類似性に比して,その程度がより低いもの(甲138,179)や,商品のストライプ模様と看取されるにすぎず,商標として比較することが適切でないもの(甲177,178等)があるほか,そもそも引用標章は,需要者の間に広く認識されている3本線商標とは大きく異なる態様からなるものであって,その周知性が認められないものであるから,そのような引用標章と本件商標との類似性について直接的に対比することは妥当でなく,商品の出所について混同を生じさせるおそれの総合判断において,関連する事実として参酌するものとする。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務と申立人商品との関連性並びに商品及び役務の取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品「帽子,履物,被服」は,申立人商品と重複する商品であって,前記(1)イで述べたように,本件商標の上記指定商品と申立人商品とは,いずれもファッション関連商品といえるから,それら商品の関連性は極めて高く,その取引者,需要者,製造販売者も共通する。
しかし,本件商標の指定役務については,申立人商品とは,それら商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるとか,それらの用途や商品の販売と役務の提供場所,需要者が一致するといった事情は見いだせないことから,これらの商品及び役務の関連性が高いということはできず,取引者及び需要者の共通性も高いとはいえない。
(4)出所の混同を生ずるおそれについて
前記(1)イのとおり,3本線商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品を表すものとして,我が国のスポーツ,ファッション関連分野の需要者の間に広く認識されていたものであり,また,前記(3)のとおり,本件商標の指定商品及び指定役務中に,申立人商品と関連性が高く,かつ,その需要者等を共通にする商品がある。
他方,本件商標と引用商標とは,前記(2)のとおり,外観のみならず,観念及び称呼においても類似するものではなく,類似性の程度は低いものというべきであるし,また,前記(1)ウのとおり,3本線商標は,独創性の程度が高いとはいえないものである。
そして,例えば,スポーツシューズの側面に,様々な線状の図形を商標として付すことは一般に行われており,スポーツシューズを購入する際,需要者が側面のデザインに注意を払うことは普通のことといえる状況にあっては,横細長の長方形様図形3つを,各図形の太さよりもかなり広い間隔をもって配した構成からなる本件商標と,3つの縦長の台形様図形若しくは平行四辺形様図形又は長い帯状の図形3本を,各図形の太さと同等又はそれより狭い間隔をもって配した構成からなる引用商標とでは,それらの全体の構成態様から,需要者に対し明らかに異なる印象を与えるものということができる。
以上からすると,本件商標に接する需要者が,引用商標を想起又は連想することはないというのが相当である。また,これに反する取引の実情を認めるに足りる証拠もない。
そうすると,本件商標は,これをその指定商品及び指定役務について使用しても,その取引者,需要者をして,該商品及び役務が申立人又は申立人と一定の緊密な営業上の関係若しくは申立人と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品及び役務であると誤信されるおそれがあるとはいえないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,前記1のとおり,3本線商標と商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないから,本件商標が,引用商標の持つ顧客吸引力にただ乗り(いわゆるフリーライド)することや,信用,名声,顧客吸引力等を毀損させるなどの不正の目的をもって使用をするものであると認めることもできないものである。
そして,申立人が提出した証拠からは,本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが,社会の一般道徳観念に反するものともいえず,その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 申立人の主張について
申立人は,同人の使用する3本のストライプを基本構造とする商標が本件指定商品等に係る取引者及び需要者に広く認識されていた著名性の高い商標であり,3本線を構成するストライプには様々なバリエーションが存在するとして,本件商標と申立人の主張に係る3本線商標との類似性の程度が高く,本件商標を3本のストライプを基本構造とする商標の一類型と認識する旨主張する。
しかしながら,前記1(1)イのとおり,引用標章ないし3本線商標のバリエーションについては,周知著名性を認めることができないから,申立人の使用する3本のストライプを基本構造とする商標全てが著名性を有することを前提とする上記主張は,採用することができない。なお,前記1(2)ウのとおり,本件商標と引用標章との類似性については,引用商標との類似性に比して,その程度がより低いものや,商品のストライプ模様と看取されるにすぎず,商標として比較することが適切でないものであるから,3本線商標に様々なバリエーションが存することを参酌したとしても,本件商標とそれらの商標としての特徴が共通するとはいえないことから,本件商標を3本線商標のバリエーションの一類型と誤信するなどともいうことはできず,商品の出所の混同を生じさせるおそれがあるとはいえない。
また,申立人は,取引の実情(靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用されること,商品の地色等と商標とを様々な色で配色されること又は商標をワンポイントマークで付すことにより,商標の細部を視認等することが容易でなくなる)を斟酌すれば,本件商標が使用された場合,「3本線」として記憶され,申立人の3本線商標と相紛らわしいものとなる旨主張している。
しかしながら,前述のとおり,引用商標と本件商標とは,それらの全体の構成態様から,需要者に対し明らかに異なる印象を与えるものであり,仮に商標の細部を視認することが困難な場合を想定しても,その商標(図形)の輪郭全体から与える印象が異なるものであるから,申立人の主張する上記取引の実情を参酌しても,横長の長方形であるのか,それとも,縦長の台形や平行四辺形又は帯状であるのかに関わらず,3つの四辺形という点のみをもって相紛らわしいものとなることはないというべきである。
したがって,申立人の主張は,採用することはできない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではなく,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1及び2)


別掲3(引用商標3及び4)


別掲4(引用商標5及び6)


別掲5(引用商標7ないし9)


別掲6(引用商標10ないし13)


別掲7(引用商標14ないし16)


別掲8(引用商標17)


別掲9(引用商標18)


別掲10(引用商標19)




別掲11(引用商標20)




別掲12(引用商標21)




別掲13(引用標章)(色彩は原本参照。)


異議決定日 2019-12-27 
出願番号 商願2017-133816(T2017-133816) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W253541)
T 1 651・ 271- Y (W253541)
最終処分 維持 
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 山田 啓之
板谷 玲子
登録日 2018-09-28 
登録番号 商標登録第6085087号(T6085087) 
権利者 ウルトラ エンタープライジーズ インコーポレイテッド
代理人 名古屋国際特許業務法人 
代理人 柳田 征史 
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