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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W30
審判 全部無効 外観類似 無効としない W30
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W30
管理番号 1358836 
審判番号 無効2018-890083 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-10-27 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5675232号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5675232号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成26年1月27日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同年5月21日に登録査定、同年6月6日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する登録第1381050号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和49年11月29日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同54年6月29日に設定登録、その後、平成2年3月20日、同11年7月27日及び同21年6月30日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の利益について
請求人は、引用商標の権利者の一人であり、本件商標はこの引用商標に類似するにもかかわらず、登録され現在に至るから、請求人は、本件商標の登録について無効審判を請求する法律上の利害関係を有している。
2 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されているものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
3 具体的な理由
(1)商標の外観の類似性
本件商標は、陰千鳥(甲3)と呼ばれる家紋であって、この家紋の陰千鳥の目の部分を白抜きにしたものである。
一方、引用商標は家紋の陰千鳥に類似する標章であって、陰千鳥に存在する足側の三日月状の線画が省略されたものである。
したがって、本件商標と引用商標との相違点は、目の部分が白抜きであるか黒塗りであるかの違いと、三日月状の線画が存在するかしないかだけの違いであり、本件商標と引用商標とは類似するものである。
(2)商標の観念の同一性
本件商標も引用商標も千鳥紋と呼ばれる家紋の陰千鳥に類似するものなので、本件商標及び引用商標に接した需要者は「千鳥」を観念する。そして、「千鳥」は、株式会社岩波書店発行の広辞苑第7版によれば、「多くの鳥。チドリ目チドリ科の鳥の総称。くちばしは短くその先端にふくらみがあり、趾は3本で後趾を欠く。河原などに群棲し、歩行力も飛翔力も強い。イカルチドリ・コチドリ・ムナグロなどいずれも美しい。世界に約70種、日本には12種が分布。古来、詩歌では冬鳥とされる。」との記載がある。
したがって、本件商標及び引用商標は、共に「千鳥」を観念し、観念において同一である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
1 本件商標の構成
本件商標は、全体を同じ太さの細線で表しており、その形状は、円形の外周3か所を鮫の背びれ様に突出させ、そのほぼ同じ大きさに形成した突出部の内、中央の突出部の内側に小円形を表して鳥の頭部形状とし、それに対向する半円形に膨らむ腹部には、外形線の内側に三日月形状を表し、外形線外側のやや離れた位置に、先が二股に分かれ弧状に湾曲する扁平な略台形状の脚を2か所に表して、全体として飛んでいる小鳥を表す図形としている。
2 引用商標の構成
引用商標は、全体を部位によって太さが異なる毛筆手書き風の太線で表しており、その形状は、円形の外周3か所を鮫の背びれ様に突出させて、3か所の突出中央の他の突出より小さい突出部の内側に黒丸を配して鳥の頭部と思しき形状とし、その突起に対向する扁平な弧状に膨らませた腹部と思しき形状部分の外形線に接して、外側に向けて幾何図形の三角形あるいは台形状を突出させて脚部と思しき形状を表したものであり、全体として飛んでいる鳥と思しき形状を簡略な模様化の進んだ形状で表した図形としている。
3 本件商標と引用商標の類否
(1)外観の類似性について
ア 本件商標と引用商標とは、円形の外周に鮫の背びれ様の突出を設けた全体の概略構成が共通する一方、主として、(a)本件商標は、全体を同じ太さの細線で表しているのに対して、引用商標は、毛筆手書き風の部位によって太さが異なる太線で表している点(b)本件商標の全体形状は、鮫の背びれ様の3か所の突出をほぼ同じ大きさに表していることから、全体として翼が小さいひよこの様な視覚的印象であるのに対して、引用商標は、3箇所の突出の内、頭部と思しき突出が小さいことから、翼が大きい成鳥の様な視覚的印象の全体形状になっている点(c)本件商標の腹部は、大きく略半円形に膨らませた外形線の内側に加えた三日月形状によって、腹部のふっくらとした形状が強調されているのに対して、引用商標の腹部は、円弧状の扁平なふくらみであるとともに、本件商標のように膨らみを強調する三日月形状を設けない平面的な表現になっている点(d)脚部について、本件商標は、具体的な脚に近づけて先端を二股に分かれて表し、脚の全体を弧状に湾曲させて動感のある形状としているのに対して、引用商標は、単に幾何図形の三角形あるいは台形状を表しているにすぎない点で明らかに相違している。
イ 本件商標と引用商標との相違
上記ア(a)の相違は、両商標全体の視覚的印象を顕著に異なるものとしており、上記ア(b)の相違は、看者に両商標を明らかに異なるものと認識させて、時と所を別にしても相紛れるおそれがないものとする要素になっており、上記ア(c)の相違によって、全体の視覚的印象は明らかに異なるものになっており、この腹部における三日月形状の有無の相違は、上記ア(a)として挙げた描線の明らかな相違と共に、両商標を相紛れないものとする決定的な要素になっている。
請求人は、本件商標も引用商標も「千鳥紋と呼ばれる家紋の陰千鳥に類似するもの」としているが、請求人提出の甲第3号証中に、引用商標のように腹部に三日月形状を有しない例は1件もなく、引用商標には千鳥紋とはいい難い特徴が認められる。
また、上記ア(d)の相違は、両商標全体の基調を別異にしている。
ウ 以上のように、本件商標と引用商標それぞれの特徴を形成している表現態様の明らかな相違は、これらが相まって、両商標の外観全体における印象を顕著に相違するものとしており、看者に与える印象は異質のものであって、時と所を別にしてみても互いに外観上相紛れるおそれのない、非類似の商標である。
(2)観念の類似性について
請求人は、「本件商標も引用商標も千鳥紋と呼ばれる家紋の陰千鳥に類似するものなので、本件商標及び引用商標に接した需要者は『千鳥』を観念する。」と主張する。
しかしながら、ごく簡略に模様化された引用商標の図形は、「飛んでいる鳥」と認識されることがあるとしても、「陰千鳥」の検索結果として提出された甲第3号証に掲載の各図形とは、腹部と思しき形状部分における三日月形状の有無という明確な相違もあって異なるものであり、「千鳥」の称呼及び観念を生じるものということはできない。
この引用商標と本件商標とは、毛筆手書き風の太線で描いているか、同じ太さの細線で描いているかの差異も相まって全体の印象は大きく異なっており、一般的な「飛んでいる鳥」という程度の観念で共通するとしても、それ以上に同じ称呼及び観念を生じるものではなく、時と所を異にして両商標を比較した場合においても、それぞれの全体から受ける印象の違いによって、相紛れることなく区別し得るものである。
「飛んでいる鳥」というような概括的な観念の共通性をもって類似する商標と判断し、図形商標の類似範囲をいたずらに広く解釈すべきでないことは、審決例(乙1?乙3)からも明らかである。
4 取引の実情等
本件商標は、被請求人が自社製品「千鳥饅頭」の個包装紙を新調した際に(乙5)、被請求人の前々社長であるA氏が共有権利者になっている引用商標はあるものの、これとは図形が異なるので、現に使用する図形について商標登録を得るために平成26年1月27日に商標登録出願したものである。以降、本件商標は被請求人の商品や包装箱、包装紙に付したり(乙6)、宣伝ちらしに掲載する(乙7)などして使用しており、本件商標権者の商品であることを示すものとして一定の信用が形成されている。
引用商標は昭和54年6月29日の商標登録以降39年余経過しているが、被請求人が知る限りその間に使用の実態は認められず、この引用商標が付された商品が本件商標を付した商品との関係で出所の混同を起しているという状況は認められない。かつ、引用商標は、書換手続きがなされていないので、存続期間の満了日(令和元年6月29日)をもって権利が消滅するものであるから、正当な権利を有する引用商標が今後使用され、本件商標を付した商品と出所について誤認混同を生じる事態を招くおそれはほとんどないという他ない。
請求人が、引用商標を将来使用する可能性によって現時点で利害関係人として認められるとしても、実質的には、引用商標については、登録から現在まで39年余の長い期間使用の事実が認められず、今後使用される可能性が低いばかりでなく、今後使用されたとしても書換登録をしていない引用商標が商標権を維持し得る期間は極めて短いもの(約半年間)であるから、本件商標との関係で、現に使用している本件商標を無効にしてまで守られなければならない、法律上の利益や地位は認められない。
5 まとめ
本件商標は、外観において引用商標と類似する商標とはいい難く、また、称呼や観念において、本件商標が引用商標に類似する商標であるとみるべき理由は見いだせない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるとする請求人の主張並びにその理由は、明らかに失当であり、引用商標の存在によって、本件商標の登録を無効とすることには合理的な理由がない。

第5 当審の判断
1 利害関係について
本件審判請求につき、被請求人は、請求人が引用商標を将来使用する可能性によって現時点で利害関係人として認められるとしても、実質的には、書換登録をしていない引用商標が商標権を維持し得る期間は極めて短いものであるから、本件商標との関係で、現に使用している本件商標を無効にしてまで守られなければならない、法律上の利益や地位は認められない旨主張する。
しかしながら、請求人は引用商標の権利者の一人であり、本件商標はこの引用商標に類似する旨主張するものであって、本件商標の存在は請求人に何らかの法的影響を与えると認められるものであるから、請求人は、本件商標の登録を無効にすることについて法律上の利害関係を有するというべきである。
よって、以下、本案に入って審理し、判断する。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上方向に向かって飛翔している鳥を簡略化して描いた図形であるところ、全体を細線で表し、目の部分は小円、胴体部分の下部には三日月形状を描き、足の部分には先端をU字状に切り欠いた弧状に湾曲した略四角形を胴体部分とやや離して2か所描いてなるものであり、これよりは、特定の称呼及び観念は生じない。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、下方向に向かって飛翔している鳥を簡略化して描いた図形であるところ、全体を太線で表し、目の部分は黒丸、足の部分には略台形を胴体部分と接着して2か所描いてなるものであり、これよりは、特定の称呼及び観念は生じない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とは、上記(1)及び(2)のとおり、いずれも飛翔している鳥を簡略化して描いた図形であるとしても、本件商標は、全体を細線で上向きに描いているのに対し、引用商標は、全体を太線で下向きに描いている点で異なり、さらに、本件商標は、目の部分は小円を描くととともに、胴体部分には三日月形状を描いてなり、足の部分には略四角形を胴体部分とやや離して描いているのに対し、引用商標は、目の部分は黒丸を描き、足の部分には略台形を胴体部分と接着して描いている点で異なるものであるから、これらの相違点によって、本件商標と引用商標とは、看者に与える印象が著しく異なり、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、明らかに異なり、相紛れるおそれのない別異のものとして認識し把握されるというべきである。
また、両商標は、上記(1)及び(2)のとおり、いずれも特定の称呼及び観念は生じないものである。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の称呼及び観念が生じず、称呼及び観念において比較することができないものであるとしても、外観においては、相紛れるおそれのない別異のものであることが明らかであるから、これらを総合的に考察すれば、両商標は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似のものである。
(5)小括
以上のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 請求人の主張について
請求人は、本件商標と引用商標との相違点は、目の部分が白抜きであるか黒塗りであるかの違いと、三日月状の線画が存在するかしないかだけの違いであって、外観において類似するものであり、共に千鳥紋と呼ばれる家紋の陰千鳥に類似するから、「千鳥」の観念を同一にする旨主張している。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記認定のとおり、構成態様において互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、また、両商標が共に鳥を簡略化して描いた図形であるとしても、これらから千鳥の観念が生じるとみるべき事情は見いだせないから、両商標が観念を同一にするものとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用することはできない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標)



審理終結日 2019-11-12 
結審通知日 2019-11-15 
審決日 2019-11-26 
出願番号 商願2014-5258(T2014-5258) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (W30)
T 1 11・ 261- Y (W30)
T 1 11・ 263- Y (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 直樹 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 金子 尚人
小松 里美
登録日 2014-06-06 
登録番号 商標登録第5675232号(T5675232) 
代理人 永芳 太郎 
代理人 高橋 浩三 

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