• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W20
管理番号 1358778 
審判番号 取消2017-300719 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-09-22 
確定日 2019-12-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5665719号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5665719号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5665719号商標(以下「本件商標」という。)は,「スリープテック」の片仮名と「SLEEP TECH」の欧文字を上下二段に書してなり,平成25年10月18日に登録出願,第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス,家具」を指定商品として,同26年4月25日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成29年10月11日になされている(以下,本件審判の請求の登録前3年以内を「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)名鉄百貨店本店による本件商標の使用について
ア 被請求人は,「売上データ(乙1)は商品「布団」(以下「本件商品」という。)のものであり,写真(乙6)は本件商標の使用の一態様を示すものである。」旨主張している。
しかしながら,売上データ(乙1)が本件商品のものであることを示す根拠が全くなく,その作成者や作成年月日についても説明がない。
また,写真(乙6)の作成日,作成場所,作成者について,全く開示されていないのであるから,少なくとも要証期間に当該一態様が使用されていたことを証明するものではない。
イ 被請求人は,売上データ(乙1)及び写真(乙6)を踏まえて「売上データにおける左上に記載の品番:ファーストクラスモデル「AFA4554003」の取引データの頁において,売上日2014年(平成26年)3月24日に,被請求人から,株式会社名鉄百貨店(以下「名鉄百貨店」という。)本店内寝具売場に,本件商品(乙6)が搬入され,販売された事実を示すものである。」旨主張している。
しかしながら,本件商品の売上データ(乙1)には,品番「AFA4554003」,得意先名,売上日,区分が羅列されているだけであって,本件商標を使用した態様の商品が得意先に搬入され,販売された事実を示すものでないことは明らかである。
ウ 被請求人は,「写真(乙2)は,名鉄百貨店本店8Fに存在する寝具売場において,上記売上搬入日から現在に到るまで,本件商品を陳列し,展示し,販売している事実を示すものである。」旨主張している。
しかしながら,写真(乙2)は,その撮影場所,撮影日時,撮影者の何れについても,全く示されていない。したがって,写真(乙2)は名鉄百貨店の寝具売場において,本件商品が陳列され,あるいは販売されている事実を示している証拠とはならないものである。
ちなみに,被請求人が主張する名鉄百貨店本店8Fの寝具売場において,本件商標を使用した商品が現在展示,販売されているか否かについて,請求人が確認したところ,2017年(平成29年)12月21日現在,「スリープテック/SLEEPTECH」の文字を付した商品はおろか,「SLEEPTECH」の文字のみを付した商品でさえ販売されていなかった。
したがって,少なくともこの当該時点において,「名鉄百貨店本店8Fに存在する寝具売場において,本件商品を現在に到るまで陳列し,展示し,販売している」という被請求人の上記主張は,事実と異なっており,この点から,被請求人の主張には信ぴょう性がないといえる。
エ 被請求人は「売上データ(乙1)及び写真(乙2)によれば,少なくとも2014年(平成26年)3月24日(売上日)から現在に至るまで,名鉄百貨店本店8Fの寝具売場において,本件商品が搬入され,陳列され,展示され,販売されていることは明らかである。」と主張している。
しかしながら,写真(乙2)によっては,上述したとおり「名鉄百貨店本店8Fに存在する寝具売場において,本件商品を陳列し,展示し,販売している」事実自体が証明されていないのであるから,本件商品の売上データ(乙1)に本件商品の写真を結び付けたところで,上述したように,当該売上データに記載された2014年(平成26年)3月24日はもちろん現在に到るまで,本件商品を名鉄百貨店で陳列し,販売したことを立証できないことは明らかであり,上記被請求人の主張は全く当を得ていない。
オ 被請求人は「要証期間に日本国内において,被請求人(商標権者)は,・・・本件商標を使用していることが明らかに認められる」旨主張しているが,既に述べたように,「スリープテック/SLEEPTECH」の文字を付した商品が要証期間において販売等されていた事実が証明されておらず,少なくとも商標登録の取消しを免れるための登録商標の使用証明が果たされたことにはならない。
したがって,本件商標が要証期間において使用されていた事実を明確に示す証拠が被請求人から提示されない限り,本件商標の取消しを免れることはできない。
(2)国内百貨店及び寝具専門店による本件商標の使用について
ア (ア)被請求人は,「企画書(乙3)は,本件商品が全日本運空輸株式会社(以下「ANA」という。)に採用された航空機内用品と同一の生地,素材を使用した一般消費者向けの商品として販売するために作成したものである。」旨述べている。
しかしながら,当該企画書には作成者,作成年月日,更にはこれが企画書である旨等を示す記載が全くなく,被請求人の主張には信ぴょう性が全くない。
(イ)被請求人は「口紙原本(乙4)は,企画書(乙3)に伴って,一般販売のために作成したものである。」旨述べている。
しかしながら,口紙原本(乙4)には,企画書(乙3)との関係をうかがわせる記載は全く存在しない。
まして,口紙原本(乙4)には,その作成者,作成日が記載されておらず,被請求人の主張にはやはり信ぴょう性がない。
(ウ)被請求人は,「入稿依頼書(乙5)は,企画書(乙3)に伴い,本件商品を一般販売するための販売用パッケージ2種類の作成を株式会社原商会(以下「原商会」という。)へ依頼したものである。」旨述べている。
しかしながら,当該入稿依頼書には,当該企画書との関係をうかがわせる記載は全く存在しない。しかも,入稿依頼書(乙5)は,口紙を2013年(平成25年)11月29日に入稿したことを示しているにすぎず,本件商標を使用したことを示すものでないことは明らかである。
(エ)被請求人は「企画書(乙3)では,・・・被請求人からANAに対して,商品「布団」等について,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用して,納品したことが理解される。」旨述べている。
しかし,当該企画書に記載されているのは,商品コード「AFA4554003」と商品名「ボディラインコンフォーターNano」との関係,及び商品コード「AFA2554004」と商品名「ボディラインコンフォーター」との関係が記載されているにすぎず,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用して,納品することを示すものでないことは明らかである。
(オ)上述したとおり,企画書(乙3)と口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)との間には,双方の関係を示唆する記載,既述は全くないのであって,「口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)が,企画書(乙3)に伴って,一般販売するため2013年(平成25年)11月29日に原商会へ販売用布団ケ-スに挿入する本件商標を記したロ紙を印刷するべく入稿依頼書において依頼したものである」との被請求人の主張は到底理解できない。
(カ)被請求人は,「口紙の中央に,本件商標『スリープテック/SLEEPTECH』が記載され,ロ紙の下には,『ANA国際線ビジネスクラスの就寝用掛ふとんとして採用』の他に,品名・品番(AFA2554004)等が記載してある(乙4)。」と述べている。
しかしながら,口紙原本(乙4)の中央には,「SLEEPTECH」が記載されているだけで,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」が記載されているわけではない。被請求人の主張は,この点において誤りがある。
(キ)被請求人は,「口紙原本(乙4)及び入稿依頼書(乙5)のとおり,少なくとも2013年(平成25年)11月29日から,当該口紙の作成依頼がなされ,その後,原商会から,被請求人へ当該口紙及び印刷物が複数搬入された。」旨述べている。
しかしながら,入稿依頼書(乙5)は,単なる依頼書であって「原商会から,被請求人へ当該口紙及び印刷物が複数搬入された。」ことを証明する事実は全くないのであって,上記被請求人の主張は信ぴょう性がない。
(ク)さらに,被請求人は,「原商会から搬入された口紙及び印刷物が,・・・本件商標『スリープテック/SLEEPTECH』を使用するためのものであることは明らかである。」旨述べているが,全く失当である。
すなわち,当該口紙及び印刷物がどのように使用されたか,その使用態様については口紙原本(乙4)及び入稿依頼書(乙5)のいずれにも全く示されていないのであるから,これらが本件商標を使用したことを示すものでないことは明らかである。
(ケ)被請求人は,「売上データ(乙1)が,少なくとも2014年(平成26年)2月19日から2016年(平成28年)8月25日までの間において,被請求人の販売部課から,国内百貨店及び寝具専門店に,本件商品(乙6)が搬入され,販売された事実を示すものである。」旨述べ,さらに,「・・・売上データ(乙1),企画書(乙3),口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)及び写真(乙6)によれば,少なくとも2013年(平成25年)11月29日から2016年(平成28年)8月25日に至るまで,本件商品を準備し,かつ,国内百貨店及び寝具専門店に搬入され,陳列され,販売されていることは明らかである。」旨主張しているが,被請求人が提出したこれらの証拠には,上記のとおり要証期間に本件商標が使用されている事実を示すものは皆無であって,上記被請求人の主張は全く根拠のないものである。
イ 被請求人は,「被請求人はこの後も,本件商品を当該国内百貨店及び寝具専門店へ搬入し,販売を続けている。」旨述べているので,請求人は現在における本件商標の使用状況を次のとおり確認した。
(ア)2017年(平成29年)12月21日現在における被請求人のウェブサイトにおいても「スリープテック/SLEEPTECH」商標を付した商品や「スリープテック/SLEEPTECH」に係るブランド名の記載が見当たらない(甲1)。
(イ)阪急うめだ本店(大阪府大阪市北区角田町)の寝具売場担当者に確認したところ,同店において被請求人の「SLEEPTECH」の文字を付した商品を販売したことは無い旨の回答を得た。
(ウ)被請求人の直営店と見られる日本橋西川(東京都中央区日本橋)に確認したところ,同店において被請求人の「SLEEPTECH」の文字を付した商品を置いていない旨の回答を得た。
(エ)上記のとおり,少なくとも当該時点において,「本件商品を当該国内百貨店及び寝具専門店へ搬入し,販売を続けている。」という事実は確認できないのであるから,この点においても,上記被請求人の主張に信ぴょう性が無いことは明らかである。
ウ 以上のとおり,「スリープテック/SLEEPTECH」の文字を付した商品が要証期間において販売等されていた事実が証明されておらず,少なくとも商標登録の取消しを免れるための登録商標の使用証明が果たされたことにはならない(乙1,乙3?乙6)。
(3)本件商標の使用態様について
ア 被請求人は,「商品『クッション,座布団』等に対して,本件商標『スリープテック/SLEEPTECH』が使用されている。」旨主張し,その使用態様が「スリープテック」と「SLEEPTECH」とを2段階に表記する形態であることを自認している。
そこで,写真(乙2)上の札には,「スリープテック」と「SLEEPTECH」とが2段にわたって表記された本件商標が表示されている。
イ これに対して,口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)及び写真(乙6)に示された表記は,いずれも,単に「SLEEPTECH」の文字が印刷されたものにすぎない。
この表記の場合,「SLEEPTECH」の「TECH」の部分は,通常「TECHNOLOGY」(テクノロジー)の略称として認識され「テク」と称呼されるものであり,「SLEEPTECH」の文字のみでは「スリープテク」とも称呼され得るものであるが,本件商標は片仮名表記「スリープテック」を併記していることから,「テク」の部分を半強制的に「テック」と称呼させるものである。
すなわち,片仮名表記「スリープテック」と英文字表記「SLEEPTECH」を上下二段表記とした本件商標と,片仮名表記「スリープテック」を設けていない当該口紙原本等に示された表記とを比較すると,外観が全く異なる上に,称呼が同一ではないことも明白である。
したがって,本件商標の場合,「SLEEPTECH」を表記しただけでは本件商標を使用したことにならないことは明らかである。
ウ このように,当該口紙原本等に示された表記は,本件商標と社会通念上同一とは認められず,仮に当該口紙原本等に示された表記が要証期間に使用されていたとしても,これは本件商標の使用には該当しないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 名鉄百貨店本店による本件商標の使用について
被請求人と,名鉄百貨店本店との間には,本件商標「SLEEPTECH」が表示された口紙を伴った商品「布団」(品番「AFA2554004」)について取引契約がなされている。
2014年(平成26年)3月下旬に,名鉄百貨店本店8階寝具売場の被請求人のブースに,本件商標が表示された口紙を伴った商品「布団」が搬入された。その後,当該梱包された商品「布団」をそのまま展示している。
また,2014年(平成26年)下旬から現在に至るまで,被請求人によって,先ず,当該梱包された商品「布団」それ自体と,他の寝具,例えば,マットレス,まくら,クッション,座布団,毛布,敷布,ベッド等の一又は二以上と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して販売している(乙2),または,当該梱包された商品「布団」から布団のみを取り出したもの自体と,上記他の寝具の一又は二以上と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して,度々,販売している(乙2)。
売上データ(乙1)は,本件商品の売上を示したものであり,当該売上データにおいて,要証期間内における使用の事実を示したものを鮮明に記載した売上実績表(乙1の2)である。当該売上データ表示画面は,2016年(平成28年)2月1日において新たな売上データシステムのものであり,乙第1号証の2は,新旧の売上データシステムの基礎となるデータであって,その内容は同一のものである。
当該売上データにおける左上に記載の品番:ファーストクラスモデル「AFA4554003」の取引データの頁において,売上日2014年(平成26年)3月24日に,被請求人から,名鉄百貨店本店内の寝具売場に,本件商品(乙6)が搬入され,販売されている事実を示すものである。
名鉄百貨店本店8Fの寝具売場においては,通年,各種セール(初売りセール,年度初め(新入生)セール,お中元・ボーナスセール,在庫一斉セール,歳末セール等)を行っている。
写真(乙2)は,この各種セールの一態様である「寝具年末フェスティバル」(2015年又は2016年の12月頃)において,本件商標が使用された商品「布団」の展示,並びに,指定商品「クッション,座布団,まくら,マットレス」,商品「敷布,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」,及び「これらのセット」に対して,本件商標の商品表示(定価入り)を使用して,展示され,販売された事実を撮影したものである。名鉄百貨店本店担当である被請求人従業員が撮影した。また,商品の展示,セット商品の組み合わせ,本件商標の商品表示(定価入り)等は,被請求人従業員が,名鉄百貨店本店寝具売場従業員とともに,被請求人の要請及び助言の下に,行ったものであり,写真(乙6)は,本件商標の使用の一態様を示すものである。
以上のことから,売上データ(乙1)及び写真(乙2)によれば,少なくとも2014年(平成26年)3月24日(売上日)から現在(審決日)に至るまで,名鉄百貨店本店8Fの寝具売場において本件商品(乙6)が搬入され,陳列され,販売されていることは明らかである。
2 国内百貨店及び寝具専門店による本件商標の使用について
売上データ(乙1)は,本件商品の売上を示したものである。
企画書(乙3)は,本件商品が,ANAに採用された航空機内用品と同一の生地,素材を使用した,一般消費者向けの商品として販売するために作成したものである。当該企画書は,商品コード「AFA4554003」は「ファーストクラスモデル」として,商品コード「AFA2554004」は「ビジネスクラスモデル」として採用された商品であり,被請求人からANAに対して,商品「クッション,まくら,布団,掛布団,布団側」について,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用して,納品したことを示している。
口紙原本(乙4)は,企画書(乙3)に伴って,一般販売のために作成したものであり,口紙の中央に,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」が記載され,口紙の下には「ANA国際ビジネスクラスの就寝用掛ふとんとして採用」の他に,品名・品番(AFA2554004)等が記載してある。
入稿依頼書(乙5)は,企画書(乙3)に伴い,本件商品を一般販売するための,販売用パッケージ2種類の作成を原商会へ依頼した際のものである。
少なくとも2013年(平成25年)11月29日から,当該口紙及び2種類(ファーストクラスモデル/ビジネスクラスモデル)印刷するための依頼がなされ,その後,原商会から,本件商標権者へ当該口紙及び印刷物が複数搬入された。
したがって,当該口紙及び印刷物が,商品「クッション,座布団,まくら,マットレス,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,及びこれらのセット」に対して,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用するためのものであることは明らかである。
写真(乙6)は,本件商標の使用の一態様を示すものである。
売上台帳(乙7の1?6)は,被請求人が作成し,保管していたものであり,2014年10月9日付けで株式会社高島屋(以下「高島屋」という。)京都店,2014年12月3日付けで高島屋京都店,2015年1月6日付けで高島屋東京店,2015年8月22日付けで株式会社大丸松坂屋百貨店(以下「大丸松坂屋」という。)大丸札幌店,2015年10月8日付けで大丸松坂屋大丸札幌店,2015年12月24日付けで有限会社ドントン(以下「ドントン」という。),2016年8月25日付けで高島屋洛西店における商品コード「AFA2554004」に係る商品の取引が記載されている。
当該売上台帳に記載された品番の全てが,商品コード「AFA2554004」と一致していることを示しており(乙1,乙4,乙6),かつ,高島屋,大丸松坂屋,及びドントンにおいて,当該商品コードに係る商品が取引されていることを明らかに示している。
支払案内書及び普通仕入明細の一部(乙8の1・2)は,高島屋営業本部(関西)が作成し,被請求人へ送信されたものである。
宣誓書(乙11?乙16,乙21,乙22)は,名鉄百貨店本店リビングマネージャー及び販売責任者,高島屋京都店ストアバイヤー,高島屋日本橋店次長,高島屋洛西店次長及び販売員,大丸松坂屋大丸札幌店マネージャー,ドントン代表取締役社長,被請求人の従業員によるものである。
以上のことから,本件商標が使用された商品「布団」が,2014年(平成26年)3月24日ないし2016年(平成28年)8月25日の各々の時点で商取引されており,具体的には,高島屋,大丸松坂屋百貨店,及びドントンに納品され,かつ,展示,販売,対面商品説明,宣伝,広告されていたことは明らかである(乙1,乙4,乙6,乙7?乙16)。
また,少なくとも2013年(平成25年)11月29日から,当該口紙及び2種類(ファーストクラス用/ビジネスクラス用)印刷するための依頼がなされ,その後,原商会から,被請求人へ当該口紙及び印刷物が複数搬入され,本件商標が使用された商品「布団」を準備し,かつ,国内百貨店及び寝具専門店に搬入され,陳列され,販売されていたことが明らかである(乙1,乙3?乙6,乙17,乙18)。
3 結論
したがって,以上のことから,被請求人は,指定商品「クッション,座布団,まくら,マットレス」に,値札に記載した本件商標を付したこと(商標法第2条第3項第1号),及び本件商標を付した指定商品「クッション,座布団,まくら,マットレス」を譲渡若しくは引渡しのために展示したことは明らかである(商標法第2条第3項第2号)。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件使用商品について
口紙(乙4)及び口紙の入稿依頼書(乙19)によれば,品番を「AFA2554004」とする商品(以下「本件使用商品」という。)は,品名が「合繊肌掛けふとん」であること,サイズが「150cm×210cm」であること,組成が「ふとんがわ:ポリエステル100%/詰めもの:ポリエステル100%」であること,また,当該商品について「ANA国際線ビジネスクラスの就寝用掛けふとんとして採用」との記載があることからすると,商品「合成繊維製の肌に直接かけて使用する夏用の薄い布団」であると認められる。
そして,当該口紙の中央部には,「SLEEPTECH」の文字からなる標章が表示されている。
(2)本件商標権者と名鉄百貨店本店との取引について
ア 商品写真について
商品写真(乙2)は,寝具売場の写真であり,当該写真には,商品「布団」及び「マットレス」並びに「SALE」の文字が表示された値札が写されており,当該値札には「スリープテック」及び「SLEEPTECH セット」の文字が2段に表示されている。
被請求人は,当該商品写真が2015年(平成27年)又は2016年(平成28年)の12月頃に本件商標を使用して,展示され,販売したことを撮影したものである旨主張するものの,当該商品写真の撮影時期,撮影場所,撮影者は,明らかでない。
イ 名鉄百貨店本店との取引について
(ア)本件商標権者が作成した売上実績表(乙1の2)には,2014年(平成26年)3月24日,名鉄百貨店に対し,本件使用商品について,数量を「1」売上げた旨記載されている。
(イ)平成30年6月26日付けの名鉄百貨店のリビングマネージャーによる「宣誓書」(乙11)には,2014年(平成26年)3月24日から現在に至るまで,同店において,本件商標権者から,本件商標が付された商品名「スリープテック」の布団を購入し,ストックするとともに,当該商品を展示し・販売していた旨,また,当該商品,マットレス,敷布団,まくら,布団カバー及びその他の寝具との組合せ(セット)商品として,本件商標を伴って提案,説明していた旨の記載がある。
(ウ)令和元年6月28日付けの被請求人の従業員であって名鉄百貨店販売責任者による「宣誓書」(乙22)には,2014年(平成26年)3月下旬から現在に至るまで,本件使用商品と他の寝具,例えば,マットレス,まくら,クッション,毛布,敷布,ベッド等の一又は二以上(特に,マットレス)と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して販売していた旨の記載がある。
(3)本件商標権者と国内百貨店及び寝具専門店との取引について
ア 本件商標権者が作成した売上実績表(乙1の2)には,2015年(平成27年)1月6日付けで高島屋日本橋店,同年8月22日付けで大丸松坂屋札幌店,同年12月24日付けでドントン,及び2016年(平成28年)8月25日付けで高島屋洛西店に対し,本件使用商品について,数量を「1」(ドントンは「5」)売上げた旨記載されている。
イ 高島屋京都店,高島屋東京店,大丸松坂屋大丸札幌店及びドントン別の平成26年10月9日から同27年12月24日付けの「売上台帳」(乙7の1?6)には,本件使用商品について,数量を「1」(ドントンは「5」)売り上げた旨記載されている。
ウ 平成30年6月22日付けの高島屋京都店のストアバイヤー,同月28日付けの高島屋日本橋店の次長,同月22日付けの高島屋洛西店の次長,同月28日付けの大丸松坂屋大丸札幌店のマネージャー及び同月27日付けのドントンの代表取締役社長による「宣誓書」(乙12?乙16)は,予めタイプ印字されたものに,手書きの役職,担当者が記入され,押印されたものであり,本件商標権者から,本件商標が付された商品を購入し,展示していた旨の記載がある。
なお,上記宣誓書に記載の事件名は,取消2017-300720(登録第5665720号)であり,本件審判事件とは異なる。
エ 令和元年6月28日付けの被請求人の従業員であって高島屋洛西店販売員による「宣誓書」(乙21)には,2014年(平成26年)1月頃より,本件商標権者から本件使用商品が搬入され,そのまま展示,販売し,同月より2016年(平成28年)8月25日頃まで,本件使用商品と他の寝具,例えば,マットレス,まくら,クッション,毛布,敷布,ベッド等の一又は二以上と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して販売していた旨の記載がある。
2 判断
(1)本件使用商品について
上記1(1)のとおり,本件使用商品は,商品「合成繊維製の肌に直接かけて使用する夏用の薄い布団」であるから,本件審判の請求に係る指定商品である「クッション,座布団,まくら,マットレス,家具」のいずれにも該当しない。
したがって,本件使用商品に係る口紙に本件商標と社会通念上同一と認められる「SLEEPTECH」の文字からなる標章が付されているとしても,本件審判の請求に係る指定商品と当該口紙がどのように関連するのか不明であるから,当該商品の包装又は当該商品に関する広告に本件商標が付されたということはできない。
(2)名鉄百貨店本店による本件商標の使用について
ア 商品写真について
上記1(2)アによれば,寝具売場において,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「マットレス」に関する値札(価格表)に本件商標と社会通念上同一と認められる「スリープテック」及び「SLEEPTECH セット」の文字からなる標章が付され展示されていたことが認められる。
しかしながら,被請求人は,当該「マットレス」及び「値札」が写されている写真の撮影場所,撮影時期,撮影者について客観的な証拠を提出していないから,当該値札(価格表)を展示した時期は不明である。
したがって,要証期間内に,本件審判の請求に係る指定商品に関する価格表に本件商標と社会通念上同一の商標を付して展示したということはできない。
イ 宣誓書について
宣誓書(乙11,乙22)は,名鉄百貨店本店の担当者又は被請求人の従業員によるものであるところ,両者は,当該宣誓書において,本件使用商品を2014年(平成26年)3月下旬頃から現在に至るまで,本件使用商品又は本件商標が付された布団を購入又は搬入し,単独又は他の商品と組み合わせて展示・販売又は説明・提案した旨述べている。
しかしながら,名鉄百貨店が2014年(平成26年)3月下旬頃から現在に至るまで,継続して当該商品を本件商標権者から購入又は搬入し,販売していたとすると,本件商標権者及び名鉄百貨店は,当該商品取引に係る取引書類(発注書,請求書,納品書等)を容易に提出することが可能であるにもかかわらず,被請求人は,本件商標権者作成の2014年(平成26年)3月24日(要証期間外である。)に係る売上実績表(乙1の2)を示しているにすぎない。また,当該売上実績表において,本件商標権者から名鉄百貨店へ販売された本件使用商品の数量は1個であるから,仮にこの1個の商品を2014年(平成26年)3月下旬頃から2018年(平成30年)6月又は2019年(令和元年)6月までの間(要証期間が含まれている。)販売のために展示されていたと考えるのも不自然である。
さらに,宣誓書(乙22)は,被請求人の従業員によるものであるから,客観性に乏しい。
したがって,当該宣誓書は信ぴょう性に欠けるといわざるを得ない。
ウ 以上により,被請求人が提出した乙各号証(乙1の2,乙2,乙11,乙22)によっては,本件商標権者が,要証期間内に本件商標を使用していたということはできない。
(3)国内百貨店及び寝具専門店による本件商標の使用について
ア 宣誓書(乙12?乙16)について
宣誓書(乙12?16)は,国内百貨店及び寝具専門店の担当者によるものであるところ,当該担当者は,当該宣誓書において,本件商標が付された商品を購入し,展示していた旨述べている。
しかしながら,本件商標が付された商品がいかなる商品であるのか述べていないから,本件商標権者から購入し,展示した商品は不明である。仮に当該商品が,売上実績表(乙1の2)及び売上台帳(乙7の1?6)に記載されている本件使用商品であるならば,上記(1)のとおり,当該商品は本件審判の請求に係る指定商品に該当しない。
加えて,宣誓書(乙12?乙16)は,予めタイプ印字されたものに,手書きの役職,担当者が記入され,押印されたものであり,いかなる具体的事実に基づき宣誓しているか不明であって,本件審判事件とは異なる事件についての宣誓であることから,当該宣誓書は信ぴょう性に欠けるといわざるを得ない。
イ 宣誓書(乙21)について
宣誓書(乙21)は,被請求人の従業員であって高島屋洛西店販売員によるものであるところ,当該販売員は,当該宣誓書において,2014年(平成26年)1月頃より2016年(平成28年)8月25日頃まで,本件使用商品と他の寝具,例えばマットレス等と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して販売していた旨述べている。
しかしながら,高島屋洛西店が2014年(平成26年)1月頃より2016年(平成28年)8月25日頃まで継続して本件使用商品を本件商標権者から搬入し,販売していたとすると,本件商標権者及び高島屋洛西店は,当該商品取引に係る取引書類(発注書,請求書,納品書等)を容易に提出することが可能であるにもかかわらず,被請求人は,本件商標権者作成に係る売上実績表(乙1の2)を示しているにすぎず,かつ,本件使用商品と他の寝具と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して販売していたとする証拠(例えば寝具売場の写真)は何ら提出されていない。また,宣誓書(乙21)は,被請求人の従業員によるものであるから,客観性に乏しい。
そうすると,当該宣誓書は,信ぴょう性に欠けるといわざるを得ない。
ウ 以上により,被請求人が提出した乙各号証(乙1の2,乙7,乙12?乙16,乙21)によっては,本件商標権者が,要証期間内に本件商標を使用していたということはできない。
(4)小括
以上(1)ないし(3)のとおり,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に,本件商標権者が,本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標の使用をしたことを認めるに足る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-10-16 
結審通知日 2019-10-21 
審決日 2019-11-12 
出願番号 商願2013-81277(T2013-81277) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W20)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡辺 悦子椎名 実 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 山田 啓之
平澤 芳行
登録日 2014-04-25 
登録番号 商標登録第5665719号(T5665719) 
商標の称呼 スリープテック、テック 
代理人 大野 克躬 
代理人 TH弁護士法人 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ