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審決分類 審判 査定不服 称呼類似 登録しない W35
審判 査定不服 商品(役務)の類否 登録しない W35
審判 査定不服 観念類似 登録しない W35
審判 査定不服 外観類似 登録しない W35
管理番号 1358757 
審判番号 不服2019-7777 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-11 
確定日 2019-12-19 
事件の表示 商願2017-151247拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲のとおりの構成よりなり,第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成29年11月2日に登録出願されたものである。
その後,原審における平成30年9月11日受付の手続補正書により,その指定役務は,第35類「菓子及びパンの小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正された。

2 引用商標
原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものとして,本願の拒絶の理由に引用した登録第5597097号商標(以下「引用商標」という。)は,「にしきや」の文字を標準文字で表したものであり,平成25年1月10日登録出願,第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「飲食物の提供」を指定役務として,同年7月5日に設定登録されたものである。

3 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は,別掲のとおり,「錦屋」の漢字を筆書き風の書体で表してなるところ,その構成中「錦」の文字部分は「金銀糸や種々の絵緯を用いて,華麗な文様を織り出した紋織物の総称。」を,「屋」の文字部分は「家号や雅号,書斎に用いる語。」の意味を有する語であるが,両語を結合して特定の意味を有する成語となるものではない。
そのため,本願商標は,構成文字に相応して「ニシキヤ」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
(2)引用商標について
引用商標は,「にしきや」の平仮名を標準文字(明朝体)で表してなるところ,「錦屋」などを含む「ニシキヤ」と称呼される造語を平仮名表記したとの印象を与えるとしても,構成文字全体として特定の意味を有する成語となるものではない。
そのため,引用商標は,構成文字に相応して「ニシキヤ」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
(3)本願商標と引用商標の比較
本願商標と引用商標を比較すると,外観については,文字種(漢字と平仮名)及び書体(筆書き風書体と明朝体)に差異があるとしても,商標の使用においては,商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で漢字を平仮名,片仮名,ローマ字表記にしたり,あるいは,その逆にしたりという文字種の変換や書体の変更はごく普通に行われていることであるから,文字種及び書体の違いは,両商標の類否を判断する上でさしたる相違ではなく,むしろ,両商標は,互いに特定の語(造語)を,同一の称呼が生じる範囲内で,文字種及び書体を変えた範ちゅうにとどまるとみるのが自然であるから,時と所を異にして両商標に接する需要者及び取引者を基準とする離隔的観察においては,文字種や書体の差異まで正確に記憶することは難しいことを鑑みると,記憶に残る印象(語)としては似通ったものとなる。
そして,称呼については「ニシキヤ」の称呼を共通にするため,相紛らわしい。
また,観念については,互いに特定の観念は生じないため比較できないとしても,上記のとおり,共通する特定の語(造語)を想起させるもので,互いに異なる印象を与えるものではない。
以上を踏まえると,本願商標は,引用商標とは,称呼が共通し,そして外観上の差異があるとしても大きな相違ではなく,記憶に残る印象(語)としては似通ったもので,観念においても互いに異なる印象は与えないことを総合考慮すれば,時と所を異にして両商標に接する場合は,役務の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるため,相互に類似する商標というべきである。
(4)本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の比較
本願商標の指定役務「菓子及びパンの小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」は,引用商品の指定役務中「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは,同一又は類似する役務と認められる。
(5)請求人の主張について
請求人による以下の主張は,いずれも採択できない。
ア 請求人は,本願商標の指定役務においては,チラシ等の広告物や,パソコン等で店舗を探すことが一般的で,電話などの口頭による商標の伝達が機能していない現在の商取引においては,商標の外観や観念上の類否判断が重要視されるべきで,称呼上の類否判断は重要視されるべきではなく,本願商標と引用商標との比較における外観及び観念の違いは,称呼上の共通性を凌駕するものであり,全体として判断した場合には,非類似の商標というべきである旨を主張する。
しかしながら,上記(3)のとおり,本願商標は,引用商標とは,外観(文字種及び書体)に差異があるとしても,商標の使用においては,文字種の変換や書体の変更はごく普通に行われていることを鑑みると,その差異は大きなものではなく,記憶に残る印象(語)としては似通ったものとなるもので,また,観念においても互いに異なる印象は与えないことを総合考慮すれば,称呼の共通性をしのぐほどの異なる印象を与えるものではなく,役務の出所につき誤認混同を生じるおそれがあり,相互に類似する商標というべきである。
さらに,商標の類否は,対比的観察(両商標を同じ場所で同じ時に対比して類否を観察する方法)ではなく,離隔的観察(両商標を時と所を異にして観察する方法)により行うべきであるところ,離隔的観察においては,文字種や書体の差異まで正確に記憶することは難しいことを鑑みると,そのような外観における差異を殊更重視したり,称呼における共通性を軽視することはできない。
イ 請求人は,原審において提出した証拠(平成30年9月11日受付の意見書及び上申書に添付の資料1ないし資料4)を援用し,本願商標は請求人の役務を表示するものとして,日本全国において長年使用されているが,現実の商取引において,引用商標とは何らの出所混同は生じていないという取引の実情がある旨を主張する。
しかしながら,商標法第4条第1項第11号における商標の類似は,出所の誤認混同のおそれがあるか否かを検討するものであって,現に誤認混同が生じているか否かを問題とするものではないばかりか,請求人の提出する証拠は,請求人による本願商標に係る事業実績や広告実績を示すものであって,本願商標と引用商標との間における誤認混同のおそれに直接影響しない。
また,商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは,その指定商品全般についての一般的,恒常的なそれを指し,単に当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指すものではない(参照:平成28年(行ケ)第10270号,平成29年6月28日知財高裁判決)ところ,請求人の主張する本願商標の使用に係る実情は,個別のサービスの事業実績や広告実績などの特殊的,限定的な実情にすぎないから,商標の類否において考慮できる一般的,恒常的な取引の実情ではない。
ウ 請求人は,審決例を提示して,比較する商標の観念や外観が著しく相違する場合には,総合的に勘案して非類似の商標と判断すべき旨を主張する。
しかしながら,請求人の提示する審決例は,本願商標とは構成が相違する事案を異にするものである上,商標の類似は,商標の構成や各事案の実情に応じて個別に判断すべきものである。また,本願商標は,上記(3)のとおり,称呼の共通性のみではなく,外観及び観念を含めて総合考慮しても,役務の出所につき誤認混同を生じるおそれがあると判断できる。
(6)まとめ
以上のとおり,本願商標は,引用商標と類似する商標であって,同一又は類似の役務について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)



審理終結日 2019-10-21 
結審通知日 2019-10-23 
審決日 2019-11-06 
出願番号 商願2017-151247(T2017-151247) 
審決分類 T 1 8・ 263- Z (W35)
T 1 8・ 262- Z (W35)
T 1 8・ 261- Z (W35)
T 1 8・ 264- Z (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 守屋 友宏町田 圭輔 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 山田 啓之
阿曾 裕樹
商標の称呼 ニシキヤ、ニシキ 
代理人 黒沼 吉行 

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