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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y14
管理番号 1358699 
審判番号 取消2018-300251 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-04-27 
確定日 2019-12-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4782551号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4782551号商標の指定商品中第14類「貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4782551号商標(以下「本件商標」という。)は、「コア」の片仮名を標準文字で表してなり、平成14年(2002年)11月22日に登録出願、第14類「貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」を含む第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同16年7月2日に設定登録されたものである。
そして、本件審判請求の登録は、平成30年(2018年)5月16日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を以下「本件要証期間」という。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び平成30年(2018年)9月27日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年11月5日付け審判事件弁駁書にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(以下、証拠については、「甲1」等のように表示する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中第14類「貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」(以下「本件商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁書に対する弁駁
下記(1)ないし(4)のとおり、被請求人の提出による全証拠よっては、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に本件商品について使用されていた事実は一切証明されていない。
(1)本件使用標章の使用主体
被請求人は、「TSLグループ」なる企業グループ内の兄弟会社であるTSLJ株式会社(以下「TSLJ社」という。)に対して、本件商標の使用許諾をしていた旨主張し、乙3を提出している。しかしながら、乙3は、日本国特許庁に宛て、被請求人がTSLJ社に対して使用許諾を行っていた旨の確認を内容とするものではあるものの、同書証は、本件要証期間外の平成30年(2018年)9月27日(審決注:9月17日の誤記と思われる。)に作成されたものである。そもそも、使用許諾に係る商標が複数である場合、商標ごとに使用許諾の範囲を明確にすることが通常であり、殊に「(as the case may be)(場合によっては)」のような曖昧な表現で特定することは、一般的な感覚として、極めて不自然といわざるを得ない。さらに、該書証では、TSLJ社の名称(正確には「TSLJ Kabusiki Kaisha(TSLJ株式会社)」を記載するのみで、住所が記載されていないことから、「TSLJ Kabusiki Kaisha」がTSLグループに属するTSLJ社と同一であるか不明である。
よって、本件使標章を使用したとされるTSLJ社が、被請求人の使用権者であることは一切証明されていない。
(2)本件使用標章を使用したとされる商品
被請求人は、「ギルト・グループ株式会社」(以下「ギルト社」という。)宛て「STETEMENT OF DELIVERY/INVOICE」(以下、「納品請求書A」という。)(乙4)及びギルト社が運営するオンラインショッピングサイト「GILT」のウェブサイト(以下、単に「GILT」と表示する。)のスクリーンショット(乙5、乙6)を提出し、これらの書証に係る「財布」が、本件商品中の「貴金属製のがま口及び財布」と実質的同一であると主張するが、納品請求書A(乙4)の4頁記載の「ウォレット wallet」(Item220)や乙5のGILTのスクリーンショットの7頁記載の「三つ折り財布」及び乙6のGILTのスクリーンショットの1頁記載の「キーリング付き二つ折り財布」が、貴金属製であるとは一切記載されていない。
よって、被請求人が提出する乙4ないし乙6によっては、本件使用標章が使用された商品が「貴金属製のがま口及び財布」であることは一切証明されていない。
(3)TSLJ社の住所の表記
被請求人の主張によれば、納品請求書A(乙4)はTSLJ社によって作成されたとのことである。同書証では、作成者(TSLJ社)の住所として「5-3-2 1F MINAMIAOYAMA MINATO-KU TOKYO(東京都港区南青山5-3-2 1F)」が記載されている。他方、TSLJ社の登録事項証明書によると、同社は、平成24年(2012年)8月10日設立後、同年9月5日より平成29年(2017年)5月まで南青山五丁目3番25号(南青山5-3-25)に所在し、その後、同年5月31日に南青山四丁目17番33号(南青山4-17-33)に移転(同年7月11日登記)したとのことである(甲5)。すなわち、TSLJ社は、乙4が作成された平成29年(2017年)2月3日の時点はおろか、設立後、納品請求書A(乙4)に記載の住所に所在したかは明らかではない。インボイス等の取引書類において、自社を特定する情報に誤りがあるといったことは通常の感覚としてあり得ない。
よって、乙4についても、取消を免れる目的で、急場凌ぎに作成したのはないかという疑念を拭うことができない。
(4)本件商標と本件使用標章の同一性
ア 本件商標は、片仮名「コア」を標準文字で表してなるものであり、本件商標からは、「コア」の称呼、「ア ものの中心部。中核。核心。 イ 建物の中央部で、共用施設・設備スペース・構造用耐力壁などが集められたところ。」(広辞苑第七版)等の観念が生ずる(甲6)。これに対して、本件使用標章は、「CORE JEWELS」と表され、これからは「コアジュエルス」との称呼が生ずる。また、その構成中「JEWELS」は、「宝石。装身具。貴重な人(もの)」等の意を有する英単語(複数形)であるから(甲7)、上記「コア」の意味合いを合わせ、本件使用標章の構成全体から「中心となる宝石・装身具・貴重なもの」程度の観念を容易に把握することができる。
イ 本件使用標章については、これらから生ずる「コアジュエルス」の称呼が6音からなるものであり、特に冗長であるとはいえず、よどみなく一気一連に称呼することが可能である。また、本件使用標章の構成全体に相応して生ずる「中心となる宝石・装身具・貴重なもの」との観念について、これを単に「中心」等と理解、認識すべき特段の事情も見いだせない。むしろ、「コア(CORE)」を接頭辞とする熟語が数多く存在し、これらの語が単に「コア」と略称されないことを勘案すると、観念上も、本件使用標章中「CORE」の部分が単独で商標として機能するとは考え難い。
ウ そもそも、「貴金属製のがま口及び財布」は、宝石を用いた商品ではなく、貴金属、すなわち「高価な金属、[化」産出量が少なく貴重な金属。空気中で酸化されず、数化学変化(「かつ、化学変化」の誤記と推定)を受けることが少ない。金、銀、白金、イリジウムなどの類」(甲8)を材料とするがま口及び財布である。してみれば、「JEWELS」の語は、「貴金属製のがま口及び財布」との関係でも、十分に識別力を発揮し得る。
エ 被請求人の提出に係る乙7?乙11では、「貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」とは無関係のアクセサリー(宝飾品)について、本件使用標章の使用例が示されている。これらの書証において、本件使用標章は、「CORE JEWELS」と一連一体に表示されており、また「コアジュエルス」という片仮名表記も用いられている。上述のとおり、本件使用標章からは、一つの纏まった称呼、観念が生じ、また、日本語では、「コア」を接頭辞とする熟語が数多く存在し、これらの語が単に「コア」と略称されないという実情に照らせば、宝飾品の業界においても、前記書証における本件使用標章の構成中「CORE」の部分のみが出所識別標識として機能するとは考え難く、被請求人ブランドは、常に「CORE JEWELS」一体として理解、認識されていると考えるのが相当である。
オ 本件使用標章は、6音構成と短い音構成からなるものであり、容易に一連に称呼することが可能であり、その構成全体に相応して一つの纏まった観念が生ずる。また、その外観構成も一連一体に表されているから、その構成中「CORE」の部分のみが商標として機能すると考えるべき特段の事情は見いだせない。
カ 被請求人は、本件使用標章中「CORE」の部分が「貴金属製のがま口及び財布」との関係においても、単独で商標として機能する旨主張するが、本件使用標章は、外観、称呼、観念のいずれにおいても一体不可分のものとして理解、認識されるものであるから、本件使用標章が、宝飾品の分野において一定の周知性を獲得していると仮定したとしても、それは、「CORE JEWELS」全体としての周知性を獲得しているのであって、これから「CORE」を抽出すべきでない。また、上述のとおり、そもそも「JEWELS」は、「貴金属製のがま口及び財布」との関係では、十分に自他商品識別機能を発揮することができる。
キ 被請求人は、答弁書において、度々、TSLJ社が「CORE JEWELS」を商号又はブランドとして使用している旨主張している。かかる主張及び乙4?乙11の内容に鑑みれば、「CORE JEWELS(及びコアジュエルス)」がTSLJ社の主たるブランドとして使用されていることは想像に難しくない。してみれば、アクセサリー(宝飾品)の分野における取引者及び需要者は、たとえ「JEWELS」の語が識別力の弱い語であったとしても、「CORE JEWELS(及びコアジュエルス)」を一連一体のものとして認識し、把握する。アクセサリー(宝飾品)と無関係な「貴金属製のがま口及び財布」に係る取引者、需要者であれば、なおさら、本件使用標章を一連一体のものして認識すると考えるのが相当である。
ク 以上より、本件商標と本件使用標章とは、外観のみならず、称呼及び観念においても全く異なるものであるから、「CORE JEWELS」は、本件商標と社会通念上同一とは認められない。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書及び平成31年(2019年)4月22日付け回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書で乙1ないし乙11を、回答書で乙12ないし乙16を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
被請求人から本件商標に係る通常使用権を許諾されたTSLJ社が、本件商標「コア」を使用した商品「財布」を平成29年(2017年)に販売した事実がある。
商品の販売(譲渡)は、商標法第2条第3項第2号により、標章の使用の態様であるから、本件商標は通常使用権者により商品「財布」について使用されたことが明らかである。
(1)被請求人について
本件審判の被請求人であり、本件商標の商標権者である「コンセプツ マネジメント(エイチ、ケー)リミテッド」は、香港の上場企業である「Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited」の子会社で、上記企業を頂点とした「TSLグループ」の商標管理を行っている(乙1)。
(2)商標の使用者
被請求人は、「Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited」の子会社で、日本で「CORE JEWELS」の商号又はブランド名を用いて宝飾品の小売及び卸売を行っているTSLJ社に、本件商標の使用許諾をしている(乙3)。
(3)使用商品
納品請求書A(乙4)は、TSLJ社が「CORE JEWELS」の商号を用いてギルト社に対して発行した納品書/インボイスの写しであり、納品請求書Aの4枚目に「ウォレット wallet」の項目がある。
また、「CORE JEWELS」ブランドの「財布」が販売されていたことを示す「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)を提出する。 「財布」は、「貴金属製のがま口及び財布」と実質的に同一の商品であり、「貴金属製のがま口及び財布」は、本件審判請求に係る指定商品である。
(4)使用商標
「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)に示される財布には、いずれもブランド名として商標「CORE JEWELS」が用いられている。また、納品請求書A(乙4)には、右上に「CORE JEWELS」の記載がある。TSLJ社は、商号又はブランド名として「CORE JEWELS」を用い、主として宝飾品の販売を行っている。
乙7は、ファッション雑誌「FIGARO」の平成27年(2015年)12号の「CORE JEWELS」の宝飾品を掲載した頁の写しである。乙8は、ファッション雑誌「LEON」の平成27年(2015年)12号の「CORE JEWELS」の宝飾品を掲載した頁の写しである。乙9は、ファッション雑誌「VOGUE JAPAN」のウェブサイトにおいてジュエリーブランド「CORE JEWELS」を紹介した頁の写しであり、乙10及び乙11は、それぞれ、上記ウェブサイトに平成28年(2016年)3月30日又は同年11月16日に掲載された「CORE JEWELS」に関する個別のニュース記事の写しである。乙7?乙11より、「CORE JEWELS」は、宝飾ブランドとして一定の周知性を獲得していることが推察されるところ、「JEWELS」の文字は「宝石、装身具」等を意味する語として一般に認知されており、宝飾品との関係においては自他商品識別力を有さない文字であるため、商標「CORE JEWELS」においては、「CORE」の文字部分のみ自他商品識別機能を発揮する要部であると考えるべきである。
(5)本件商標「コア」と使用商標「CORE JEWELS」が社会通念上同一であること
使用商標「CORE JEWELS」の要部は、「CORE」の文字部分であり、「CORE」と本件商標「コア」は片仮名とアルファベットの表示を相互に変換したものであって同一の称呼及び観念を生ずるものである。
したがって、商標「CORE JEWELS」の使用は、本件商標である「コア」と社会通念上同一の商標の使用である。
(6)使用時期
納品請求書A(乙4)には、「InvoiceDate:2017-02-03」の記載がある。
したがって、平成29年(2017年)2月3日の前後の時期に商標「CORE JEWELS」が使用されていたことが明らかである。
2 回答書による主張の要旨
(1)当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、平成31年(2019年)2月27日付けで、合議体の暫定的見解を示し、被請求人が答弁書で提出した乙1ないし乙11によっては、(ア)被請求人が「Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited」の子会社であり、「TSLJ社」が本件要証期間に本件商標の通常使用権者であったことが明らかでない、(イ)乙4には「CORE JEWELS」の商号を用いる者の名称の記載がない、(ウ)乙4に掲載のギルト社に納品された商品と「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)に掲載された商品とが同じ商品であることに疑義がある。また、商品受領書等の取引書類が提出されていない、(エ)本件商標の指定商品は「貴金属製」と限定されており、「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)に掲載された「ウォレット(財布)」が、貴金属製の商品であることを証明する必要がある、(オ)本件使用標章「CORE JEWELS」と本件商標「コア」は社会通念上同一の商標とはいえないことから、本件要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していることを証明しているものとはいえない旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
(2)回答書による主張の要旨
被請求人は、前記(1)の審尋に対し、回答書において要旨以下のように述べた。
ア 被請求人とTSLJ社との関係
「『Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited』の2017/2018年期の年次報告書の抄録及びその翻訳文」(乙12)により、被請求人である「コンセプツ マネジメント(エイチ、ケー)リミテッド」及びTSLJ社が、共に、「Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited」の子会社であることが確認できる。また、「コンセプツ マネジメント(エイチ、ケー)リミテッド」の主要業務が「商標の保有及び商標における投資」であると明記されていることから、被請求人が「TSLグループ」の商標管理を行っていることが確認できる。さらに、TSLJ社の主要業務が「宝飾品の小売及び卸売」」であることも推認される。これらの事実に鑑みると、たとえ明文の使用許諾証書が存在しないとしても、「TSLグループ」の子会社として同グループの商標管理を行っている被請求人が、同じく同グループの子会社であり、日本で「CORE JEWELS」の商号又はブランド名を用いて宝飾品の小売及び卸売を行っているTSLJ社に対し、その保有する本件商標の使用に対する許諾を与えていたことは明らかである。
さらに、被請求人がTSLJ社に対して本件商標の使用許諾を与えていたことを追認する確認書及びその翻訳文(乙13)において、上記使用許諾が、本件商標の登録の全期間、すなわち2004年7月2日から2024年7月2日にわたり効力を有するものであることが明記されている。
以上より、本件要証期間において、TSLJ社が本件商標に係る通常使用権者であったことは明らかである。
イ 「CORE JEWELS」の商号又はブランド名を用いる者について
TSLJ社が「CORE JEWELS」の商号を用いてギルト社に対して平成29年(2017年)2月3日に発行した納品書の写し(乙14、以下「納品請求書B」という。)の第3頁に、項目番号22として「ウォレット」が記載されている。また、納品請求書Bには、住所として「MINAMIAOYAMA 4-17-33,MINATO-KU,TOKYO」の記載がある。
TSLJ社の第6期決算公告が掲載された平成30年(2018年)8月31日官報(号外192号)の179頁(乙15)に記載されたTSLJ社の住所は、「東京都港区南青山四丁目17番33号」であり、上記納品請求書B記載の住所と一致していることが確認できる。確かに、納品請求書Bには「CORE JEWELS」の商号を用いる者の名称が明記されていないが、納品請求書B中に明記された住所がTSLJ社の住所と一致すること、及び納品請求書Bの第4頁の右下隅に支払い用口座の名義人として「ティ-エスエルジェイ カブシキカイシャ」の記載があることから、納品請求書BがTSLJ社によって発行されたものであることは疑う余地がない。
したがって、納品請求書Bにより、TSLJ社がギルト社に「ウォレット」を納品したことが確認できる。
ウ 本件商標を付した本件商品の取引について
ギルト社発行の注文書の写し(乙16)は、納品請求書Bに対応するものであり、第1頁の「BULK INFOMATION」の欄には、「ブランド名:CORE JEWELS」の記載、「ベンダー名:TSLJ CO.LT」の記載、「入荷日:2016/12/7」の記載、「支払日:1月末締め 3月末支払い」の記載、「返品先:〒107-0062 東京都港区南青山4-17-33-102 CORE JEWELS ご担当者様」の記載があり、第3頁及び第5頁には、「納品先」として「ギルト社」の記載がある。また、第4頁において、注文された商品として「ウォレット wallet」の記載がある。これにより、納品請求書Bに係る取引が実際に行われたことが確認できる。
エ 本件商標と使用商標が社会通念上同一であることについて
ブランドとしての「CORE JEWELS」の主な取扱い商品は、乙7?乙11にも示されるとおり宝飾品であり、構成中の「JEWELS」は、宝飾品との関係において自他商品の識別機能を有さないとみるべきであるから、「CORE」の文字部分こそが要部として顧客吸引力を発揮する部分であるというべきであり、特に口頭の取引等においては「CORE JEWELS」を「CORE」と省略して使用することも普通に行われるものと思料する。よって、宝飾品との関係において、本件商標「コア」と使用標章「CORE JEWELS」は社会通念上同一の商標とみるべきである。そして「CORE JEWELS」標章が本件商品に使用される場合も、宝飾品ブランドとして周知性を獲得している「CORE JEWELS」と同一のブランドと認識される以上、同様に「CORE」と省略して取引に使用されることも珍しくないと考える。
したがって、本件商品との関係においても、本件商標「コア」と使用商標「CORE JEWELS」は、社会通念上同一の商標とみるべきである。

第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、ア 本件要証期間に、イ 日本国内において、ウ 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、エ 本件商品のいずれかについての、オ 本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人の提出した乙1ないし乙16の証拠から以下の事実が認められる。
(1)乙1及び乙12について
乙1及び乙12は、「Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited」の2017/2018年期の年次報告書の抄録及び翻訳文であり、乙12の5頁目の記載から、被請求人は、「Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited」の子会社で、TSLグループの商標管理を行っていることが確認できる。
また、TSLJ社は、被請求人と同様「Tse Sui Luen Jewelly(International)Limited」の子会社であり、乙12の6頁目の記載から、TSLJ社は、日本で、宝飾品の小売及び卸売を主要業務としていることが確認できる。
(2)乙2及び乙15について
乙2は、平成28年(2016年)6月27日官報(号外141号)93頁の写しであり、乙15は、同30年(2018年)8月31日官報(号外192号)179頁の写しである。これらの記載によると、TSLJ社の住所は、平成28年(2016年)6月27日時点では「東京都港区青山五丁目3番25号」であり、同30年(2018年)8月31日時点では「東京都港区南青山四丁目17番33号」であることが確認できる。
(3)乙3及び乙13について
乙3は、2018年9月17日付の被請求人からTSLJ社に対する使用許諾確認書及び翻訳文であり、乙13は、2019年4月19日付の被請求人からTSLJ社に対する使用許諾確認書及び翻訳文である。
これらには、被請求人が、TSLJ社に対し、本件商標「コア」を使用することを許諾した旨が記載されている。
ただし、乙3に記載された署名の日付(2018年9月17日)と乙13に記載された署名の日付(2019年4月15日)は、いずれも本件要証期間外である。
(4)乙4及び乙14について
乙4は、前述で納品請求書Aと表記したもの、乙14は、前述で納品請求書Bと表記したものであり、いずれも、ギルト社宛ての「STATEMENT OF DELIVERY/INVOICE」である。
納品請求書A(乙4)の1頁?5頁の右上に、「CORE JEWELS」、その下に「〒107-0062 5-3-2 1F MINAMIAOYAMA MINATO-KU TOKYO」、「Invoice No:JPAY-DBCA00216」、「Invoice Date:2017-02-03」、「Payment Due Date:2017-04-30」、左上に「STATEMENT OF DELIVERY/INVOICE」、その下に「ギルト・グループ株式会社御中」及び「TotalPrice\195,523」の記載、並びに、5頁の中段左側に「Tax Amount:14,483」の記載及び中段右側に「口座名義:ティーエスエルジェイ カブシキカイシャ」の記載がある
他方、納品請求書B(乙14)の1頁?5頁の右上に、「CORE JEWELS」、その下に「107-0062 MINAMIAOYAMA 4-17-33 MINATO-KU TOKYO」、「Invoice No:JPAY-DBCA00216」、「Invoice Date:2017-02-03」、「Payment Due Date:2017-04-30」、左上に「STATEMENT OF DELIVERY/INVOICE」の記載、その下に「ギルト・グループ株式会社御中」及び「TotalPrice\195,523」の記載、並びに、4頁の右下に「口座名義:ティーエスエルジェイ カブシキカイシャ」の記載がある。
そして、一般に、商取引において、納品請求書の発行日、納品請求書番号、支払い期限、合計金額及びその宛先が同一である場合、2種類の納品請求書が存在することは通常考え難いものであるところ、納品請求書Aと納品請求書Bとは、「Invoice No」(納品請求書番号)が共に「JPAY-DBCA00216」であること、「Invoice Date」(納品請求書発行日)が共に「2017-02-03」であること、「Payment Due Date」(支払い期限)が共に「2017-04-30」であること、あて先が共にギルト社であること、「TotalPrice」(合計金額)が、共に「195,523」であること等から、これらは同日に発行された同一内容の納品請求書と推測できる。
しかしながら、納品請求書Aに記載された「CORE JEWELS」の文字と納品請求書Bに記載された「CORE JEWELS」の文字とは、書体が相違していること、納品請求書Aに記載された「CORE JEWELS」の文字の下の住所表記と納品請求書Bに記載された「CORE JEWELS」の文字の下の住所表記が相違していること、納品請求書A(乙4)には、「Tax Amount:14,483」の記載があるが、納品請求書B(乙14)には、「Tax Amount:14,483」の記載がないこと等から、納品請求書Aと納品請求書Bが同一のものとは認められない。
また、被請求人は、納品請求書A(乙4)と納品請求書B(乙14)が相違することについて正当な理由があることを証明していない。
そうすると、納品請求書A(乙4)と納品請求書B(乙14)は、いずれも、本件商標の使用を証明する証拠として採用することができない。
(5)乙5及び乙6について
乙5及び乙6は、「GILT」のスクリーンショットである。
乙5の7頁左下に、「CORE JEWELS」、「三つ折り財布」及び「¥52,488(税込み)」の記載と「三つ折り財布」の画像が、乙6の1頁右下に「CORE JEWELS」、「キーリング付き二つ折り財布」及び「¥60,214(税込み)」の記載と「キーリング二つ折り財布」の画像が掲載されている。
ただし、乙5及び乙6の情報掲載日は確認できない。
また、「CORE JEWELS」の記載がある各商品に、商品を特定するための品番等の記載はなく、さらに、これらの商品が、貴金属製であることは確認できない。
(6)乙7ないし乙11について
乙7ないし乙11は、「CORE JEWELS」の宝飾品を紹介する雑誌等の記事である。
乙7は、平成27年(2015年)12月20日に発行されたファッション雑誌「FIGARO」の抜粋記事であり、抜粋記事2頁に、2.耳たぶからダイヤモンドの滴が落ちている瞬間を捉えたようなデザイン。ピアス『アトラス』(YG×ダイヤモンド)¥118,800/コアジュエルス(コアジュエルス青山店)の記載がある。
乙8は、ファッション雑誌「LEON」の抜粋記事であり、抜粋記事2頁に、「コアジュエルス」及び「CORE JEWELS」の記載と「ブラックダイヤペンダント」の画像が、抜粋記事3頁に「コアジュエルス」及び「CORE JEWELS」の記載と数字「7」をモチーフにした「ペンダント」の画像が掲載されている。
ただし、この雑誌の発行日は確認できない。
乙9は、平成30年(2018年)5月31日打ち出しの「VOGUE JAPAN」のウェブサイトにおける「コアジュエルス CORE JEWELS」の紹介記事であり、1頁に「コアジュエルス/CORE JEWELS」の記載がある。この記事の3頁に、「VOGUE JAPAN 2018年7月号5月28日発売」の記載はあるものの、この紹介記事のウェブサイト掲載日は確認できない。
乙10は、平成30年(2018年)5月31日打ち出しの「VOGUE JAPAN」のウェブサイトにおける「コアジュエルスから、パンキッシュな新作『メッシ』が発売!」をタイトルとする2016年3月30日掲載の紹介記事であり、2頁に「コアジュエルス(CORE JEWELS)」から、“無限の可能性と挑戦”というメッセージを込めた新作コレクション『メッシ』が登場。」の記載がある。
乙11は、平成30年(2018年)5月31日打ち出しの「VOGUE JAPAN」のウェブサイトにおける「コアジュエルスから、新作『アイコレクション』が発売。特許技術による日ビットカラーに注目!」をタイトルとする平成28年(2016年)11月16日掲載の紹介記事であり、2頁に「コアジュエルス(CORE JEWELS)」は11月19日(土)、新作『アイコレクション』をオンラインショップ先行で販売する。」の記載がある。
なお、乙7ないし乙11において掲載された商品「ピアス、ペンダント、ネックレス」等のアクセサリーは、本件商標の指定商品中第14類「身飾品」に該当するものの、本件商品には含まれない。
(7)乙16について
乙16は、ギルト社発行の注文書の写しである。1頁に「ブランド名(Brand Name):CORE JEWELS」、「ベンダー名(VENDER NAME):TSLJ CO.LT」、「入荷日(ARRAIVAL DATE):2016/12/7」、「支払日(PAYMENT DATE):1月末締め 3月末支払い」、「返品先(RTV ADDRESS):〒107-0062東京都港区南青山4-17-33-102 CORE JEWELS ご担当者様」の記載、3頁に住所の一部が欠落しているが、納品先:ギルトグループ」、4頁の「B:仕様欄」に「Bag」、「Bag」、「ウォレットwallet」、「札入れ:BD」及び「カードケース」の記載がある。
ただし、乙16の注文書の発行日は確認することができない。
3 上記2によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)通常使用権者について
本件商標の商標権者で、被請求人である「コンセプツ マネジメント(エイチ.ケー.)リミテッド」は、TSLグループの商標管理を行っており、TSLJ社に対し、本件商標の使用許諾を行ったことを証明する契約書等は提出されていないが、被請求人が提出した乙1、乙3、乙12及び乙13を総合すれば、同グループの商標管理を行っている被請求人が、同じく同グループの子会社であるTSLJ社に対し、その保有する本件商標の使用に対する許諾を与えていたと見て取れるから、TSLJ社は、本件要証期間に本件商標の通常使用権者であったと推認できる。
(2)使用商標について
被請求人が提出した「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)において、「三つ折り財布、キーリング付き二つ折り財布」の各商品に「CORE JEWELS」のブランド名が使用されている。
さらに、乙7ないし乙11の雑誌等において、「ピアス、ペンダント、ネックレス」等のアクセサリーに「CORE JEWELS」を片仮名表記した「コアジュエルス」が使用されていることも確認できる。
(3)「CORE JEWELS」のブランド名の使用者について
被請求人が提出した全証拠によっても、TSLJ社が、「CORE JEWELS」のブランド名の使用者であることは確認することができない。
(4)使用商品について
「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)を参照すると、乙5の7頁左下に、「CORE JEWELS」、「三つ折り財布」及び「¥52,488(税込み)の記載と「三つ折り財布」の画像が、乙6の1頁右下に「CORE JEWELS」、「キーリング付き二つ折り財布」及び「¥60,214(税込み)」の記載と「キーリング二つ折り財布」が掲載されていることが確認できる。
しかしながら、被請求人は、「財布」は本件商品中の「貴金属製のがま口及び財布」と実質的に同一の商品である旨を主張するのみで、乙5及び乙6に掲載された「三つ折り財布」及び「キーリング付き二つ折り財布」が、「貴金属製の商品」であることを確認できる書面の提出がなく、他に当該商品が本件商品「貴金属製のがま口及び財布」に含まれる商品であることを認めるにたる事情は見いだせない。
また、乙7ないし乙11において、「CORE JEWELS」及び「コアジュエルス」のブランド名が使用されている商品は、「ピアス、ペンダント、ネックレス」等のアクセサリーに該当するものであるから、本件商品中の「貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」に含まれる商品とはいえない。
(5)「CORE JEWELS」を付した使用商品の商取引について
被請求人が提出した「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)を参照すると、「GILT」において、「CORE JEWELS」が付された使用商品「三つ折り財布」及び「キーリング付き二つ折り財布」が実際に販売されたことは推測できる。
しかしながら、「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)に掲載された商品「三つ折り財布、キーリング付き二つ折り財布」には、品番等の記載がないため、ギルト社発行の注文書の写し(乙16)に記載された商品と「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)に掲載された商品が同じものであることが確認できない。
また、「GILT」のウェブサイトにおける「CORE JEWELS」を付した商品の販売数量、売上高に関する書類も提出されていない。
よって、被請求人の提出した全証拠によっても、「CORE JEWELS」を付した使用商品について譲渡等の商取引が、本件要証期間に行われたことが確認できない。
(6)本件商標「コア」と「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」の社会通念上同一性について
「CORE JEWELS」及びその表音片仮名「コアジュエルス」は、同書同大で表され、これより生じる「コアジュエルス」の称呼も決して冗長とはいえず、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」の構成中の「JEWELS」又は「ジュエルス」は、「(装飾用カットし磨いてある)宝石、宝玉」(新英和大辞典 研究社発行 第6版第1刷 2002年3月)(甲5)を意味する英語及びその表音を片仮名表記したものと認められるため、本件商品との関係において、殊更に、この文字部分が、自他商品の識別標識としての機能を果たさないとみるべき事情は見当たらない。
さらに、被請求人の提出による「GILT」のスクリーンショット(乙5、乙6)、ファッション雑誌等(乙7?乙11)及びギルト社発行の注文書(乙16)において、使用商標である「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」から「CORE」や「コア」のみを抽出し、これらのみで自他商品の識別標識として使用していることは確認できない。
そして、被請求人自ら「CORE JEWELS」(コアジュエルス)は宝飾品ブランドとして一定の周知性を獲得している旨述べていることから、「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」を商品「三つ折り財布,キーリング付き二つ折り財布」に使用する場合、「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」は、一連一体のものとしてのみ捉えるのが相当である。
なお、この点について、被請求人は、審尋に対する回答書にて、「『CORE JEWELS』は、宝飾品ブランドとして周知性を獲得しており、『CORE』と省略して取引されることも珍しくない。」旨主張している。
しかしながら、被請求人が提出した全証拠を参照しても、「CORE JEWELS」や「コアジュエルス」を「CORE」又は「コア」のみで使用している事実が確認できないことから、被請求人のかかる主張は採用すべき理由がない。
そうすると、本件商標「コア」と使用商標「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」とは、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」とはいえず、社会通念上同一の商標とは認められない。
(7)小括
以上から、TSLJ社が、本件要証期間に本件商標の通常使用権者であったことは推認できる。
しかしながら、本件商標「コア」と使用商標「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」とは社会通念上同一の商標とはいえない。
また、本件商標の通常使用権者であるTSLJ社が、使用商標「CORE JEWELS」又は「コアジュエルス」の使用者であることが確認できないこと、使用商標「CORE JEWELS」を付した商品「三つ折り財布、キーリング付き二つ折り財布」が、本件商品中の「貴金属製のがま口及び財布」に含まれる商品とは認められないこと、使用商標「CORE JEWELS」を付した商品「三つ折り財布,キーリング付き二つ折り財布」が「GILT」に掲載された日が不明であること、「GILT」のスクリーンショットに掲載された商品に品番等の記載がないため、ギルト社発行の注文書(乙15)に掲載された商品が、「GILT」に掲載された商品と同じものであるとは認められないことから、本件商標の通常使用権者であるTSLJ社が、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を、本件要証期間に、商標法第2条第3項各号に規定する使用行為を行ったとは認められない。
その他、被請求人は、本件要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商品のいずれかについての、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることを証明するための証拠を提出していない。
4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人が提出した全証拠によっては、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を、本件要証期間に、商標法第2条第3項各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中第14類「貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2019-06-28 
結審通知日 2019-07-03 
審決日 2019-08-02 
出願番号 商願2002-99047(T2002-99047) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y14)
最終処分 成立  
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 豊田 純一
木村 一弘
登録日 2004-07-02 
登録番号 商標登録第4782551号(T4782551) 
商標の称呼 コア 
代理人 小田 直 
代理人 會田 悠介 
代理人 高岡 亮一 

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