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審決分類 審判 一部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W34
管理番号 1357881 
審判番号 無効2017-680004 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-21 
確定日 2019-09-27 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第1199859号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 国際登録第1199859号の指定商品及び指定役務中,第34類「全指定商品」についての登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1199859号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,2013年(平成25年)10月28日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づく優先権を主張し,同年11月5日国際登録出願,第34類「Tobacco;smokers’ articles;matches;absorbent paper for tobacco pipes;ashtrays for smokers;books of cigarette papers;chewing tobacco;cigar cases;cigar cutters;cigar holders;cigarette cases;cigarette filters;cigarette holders;cigarette paper;cigarette tips;cigarettes;cigarettes containing tobacco substitutes,not for medical purposes;cigarillos;cigars;electronic cigarettes;firestones;gas containers for cigar lighters;herbs for smoking;humidors;lighters for smokers;match boxes;match holders;matches;mouthpieces for cigarette holders;pipe cleaners for tobacco pipes;pipe racks for tobacco pipes;pocket machines for rolling cigarettes;snuff;snuff boxes;spittoons for tobacco users;tips of yellow amber for cigar and cigarette holders;tobacco;tobacco jars;tobacco pipes;tobacco pouches.」並びに第29類,第30類,第32類,第33類,第35類,第39類,第41類及び第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成27年5月1日に登録査定,同年8月7日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第86号証を提出した。
1 請求人について
請求人(中国語名称は「天成(太平洋)有限公司」)は,中国タバコ国営企業(CNTC)のうち最大の「雲南中烟工業有限責任公司」をトップとする雲南烟草グループに属し,「釣魚台」の名称のタバコ(以下「釣魚台タバコ」という。)の海外販売を担当する者である(甲2?甲4)。
請求人は,釣魚台タバコの中国国外販売関連業務を担当及び管理する立場から,第34類の商品について,諸外国において登録商標を保有している(甲5?甲34)。
我が国においても商標登録出願をしたが(商願2014-093600,甲35),本件商標を引用商標とした商標法第4条第1項第11号の拒絶理由により(甲36),拒絶査定不服審判の審理に係属中である。このため,請求人は,本件商標に関して利害関係を有し,本件審判請求について請求人適格を有する。
2 釣魚台タバコについて
釣魚台タバコは,雲南烟草グループによる高級タバコブランドの一つである(甲2)。
釣魚台タバコのブランドは,遅くとも1989年(平成元年)に生み出され,釣魚台国賓館に由来し命名された(甲37)。
釣魚台国賓館は,中華人民共和国の北京市海淀区甘家口にある宿泊施設で,2000年(平成12年)頃までは国内外の賓客のための迎賓館として使われていたが,現在は一般客も宿泊可能な施設である(甲38)。
もともと,釣魚台タバコは非売品で,釣魚台国賓館に宿泊した国内外の賓客を歓待する時に提供されていたものである。
その当初の製造者は,「昭通市巻煙場」というタバコ工場であり,その初代のパッケージは,金色のものであり(甲41,甲42,以下「金釣」という。),現在も製造販売されている。
2011年(平成23年)頃からは,それまでの「昭通市巻煙場」による生産に代わり,雲南烟草グループ傘下の製造部門である「紅雲紅河煙草(集団)有限責任公司」が,新世代の釣魚台タバコを製造している(甲40,甲43)。その新世代のシリーズには,少なくとも,「景泰藍」(甲41,甲43),黄色のパッケージの通称「黄釣」(正式名称は「釣魚台(黄景泰藍)」,甲44,甲45),青色のパッケージの通称「藍釣」(甲44,甲46)がある。
「金釣」および「景泰藍」は,釣魚台国賓館の中でのみ販売されるが,「黄釣」と「藍釣」は,釣魚台国賓館を離れ,各地免税店で販売されている(甲44)。
3 中国国内での釣魚台タバコの提供について
上述のように,釣魚台タバコは,遅くとも1989年(平成元年)に生み出され,釣魚台国賓館において,宿泊した国内外の賓客を歓待するために賓客に提供されていたところ,2000年(平成12年)頃以降は,は,釣魚台国賓館の売店で購入できるようになった。
現在も,中国国内において,釣魚台タバコは,釣魚台国賓館内でのみ提供され,高級品である。パッケージは,初代からは「金釣」が現在も提供され,「景泰藍」は遅くとも2007年(平成19年)以降提供されている。
釣魚台タバコの中国国内での供給の経路としては,雲南中烟グループの紅雲紅河烟草(集団)有限責任公司が製造し,タバコという商品の特性上,公的に管理するため一旦北京市烟草買売局に提供され,最終的に釣魚台国賓館内に提供されている(甲3)。
釣魚台タバコのパッケージには,当初より,楼閣,橋などを含む風景を有するひし形部分のマークが一貫して表示されてきた。
ひし形部分のマークは,釣魚台国賓館の中心的風景を表現したもので,タバコのほか,釣魚台国賓館で提供される様々な商品に使用されている。
中国国内においては,風景を有するひし形部分のマークを含むタバコのパッケージの商標について,第34類「タバコ」に関し,請求人の属する雲南烟草グループの紅塔烟草(集団)有限責任公司が商標登録を受け,現在は雲南中烟工業有限責任公司が商標登録を有している(甲47?甲49)。
また,ひし形部分のマークについては,各種商品,役務を指定商品及び指定役務として,外交部釣魚台国賓館管理局によって商標登録がなされている(甲50?甲60)。
4 中国国外市場での釣魚台タバコの提供について
中国国外では,雲南烟草グループが,2012年(平成24年)以降「黄釣」を,2016年(平成28年)以降は「藍釣」シリーズを,主に旅行者向けに免税店において提供している(甲61?甲64)。請求人は,その全世界総取次に任命され,釣魚台ブランドを全世界の市場で展開しブランド管理及び市場開拓の役割を担っており,総代理として国外バイヤーに提供している(甲3)。
中国国外向け製品の販売及びこれに関する管理の総代理としての業務上の立場から,上記1のとおり請求人は諸外国において第34類の商品について商標登録を有している。
5 釣魚台タバコブランドの性格
釣魚台タバコは,中国烟草総公司に属する雲南烟草グループ企業で製造されている(甲41,甲43,甲67)。すなわち,釣魚台タバコは,その出所について,雲南炳草グループによる釣魚台ブランドとしての性格を有するものである。
釣魚台タバコは,当初としては釣魚台国賓館に宿泊した国賓,公賓の歓待のためだけに提供されてきたため,その存在は一般市民には神秘のヴェールに包まれてきた。このために釣魚台タバコにはかえって神秘的なイメージが付与されタバコを趣味とする愛煙家の関心を引き付けてきた。釣魚台国賓館に一般客が宿泊できるようになり釣魚台タバコが購入できるようになってからも,タバコを趣味とする愛煙家にとっての垂挺の的であり,神秘的なイメージを有する高級タバコとしてよく知られたものである。
6 釣魚台タバコに関する,記事・ブログ等での言及
釣魚台タバコに関しては,ウェブサイトにおいての,言及が確認される(甲2,甲65?甲75)。
7 被請求人について
被請求人は,2010年(平成22年)2月17日設立の英国の非公開有限責任株式会社であり,業務等の具体的性質は不明である(甲76)。同社の重要な支配者は,英国人B氏である(甲77)。請求人が被請求人及びB氏とタバコ等に関する業務との関連性を調査するも,関連性を示す情報は一つも発見されなかった。
さらには,被請求人の会計報告においては,2010年(平成22年)の設立以降,2013年(平成25年)以外は休眠会社として履歴が記録されている(甲78)。同年においても「全額免除小企業の会計報告」と記録されており,実質的には,報告された資産は2ポンドで(甲84)他の年度と変わらないものである。
したがって,被請求人は,2010年(平成22年)の設立以降,一貫して事業実体のない休眠状態の会社である。
直近の会計である2016年(平成28年)3月1日から2017年(平成27年)2月28日の会計報告(甲79)及びそれ以前においても,会社資産はわずか2ポンドであり,これは日本円でわずか約280円である(甲80?甲86)。
したがって,請求人は事業の実体の無い休眠会社であり,わずか2ポンドという資産で,タバコに関する業務及び他の業務を行うことは不可能である。
8 各無効理由について
(1)商標法第3条第1項柱書違反について
本件商標の指定商品,指定役務は9区分という非常に多岐にわたり,非常に広範なものである。このような広範にわたる業務を行うためには多額の資金が必要である。しかしながら,被請求人は設立以降,一貫して休眠状態であり,資産はわずか2ポンドしかない。被請求人は,事業の実体が無く,指定商品・指定役務に関する業務を行うことは不可能である。
そして,本件商標は,釣魚台国賓館の中心的風景を表した,釣魚台タバコに表示されたひし形部分のマークとほぼ同一である。このような,ほぼ同一の商標を偶然採択したことはあり得ず,本件商標は釣魚台国賓館の中心的風景を表したひし形部分のマークを盗用したものという以外に考えられない。
このように,被請求人は,登録査定時において,事業の実体は無く,その後も,現在においても継続して事業の実体が無いものである。そして,本件商標は,他人が使用する商標とほぼ同一のものであり,自己の業務に使用する商標ではない。したがって,本件商標は,「現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標」ということはできない。
よって,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
(2)商標法第4条第1項第19号違反について
ア ひし形部分のマークの周知性,及び本件商標がひし形部分のマークとほぼ同一であること
本件商標は,中国において,タバコを趣味とする愛煙家に,高級タバコとしてよく知られた釣魚台タバコのひし形部分のマークとほぼ同一のものである。
不正の目的について
本件商標は,「景泰藍」等の釣魚台タバコなどに表示されるひし形部分のマークとほぼ同一であり,このようなほぼ同一の商標を,被請求人が偶然に創作したものとは到底考えられない。釣魚台国賓館の品物や釣魚台タバコについてはインターネット等で容易に閲覧することができ,被請求人は,インターネット等でこのような情報を閲覧し,ひし形部分のマークが商標登録されていないことを調べ,商標登録に及んだと容易に推察できる。このような行為は盗用であって,商標法の予定する公正な協業秩序の維持に悖るものであり,他人が使用する商標に蓄積された顧客吸引力や経済的・財産的利益に乗じて自己の利益を追求する不正な競争行為である。
したがって,本件商標は,「不正の目的」をもって使用するものであるというのが相当である。
ウ 結論
以上のとおり,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして中国における需要者の間に周知な商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を与える目的,その他不正の目的をいう。)をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号違反について
上記したように,被請求人は,ひし形部分のマークが我が国で登録されていないことを奇貨として,剽窃的及び先取り的に,出願,登録を行ったものといえる。
このように,本件商標は,登録に至る出願の経緯において妥当性を欠くものである。また,ひし形部分のマークが周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)むすび
上述のように,本件登録は,商標法第3条第1項柱書,同法第4条第1項第19号及同項第7号の規定に違反してされたものであり,同法第46条第1項第1号の規定により,第34類「全指定商品」について,その登録は無効とされるべきものである。
第3 当審における審尋
合議体は,被請求人に対し,平成30年8月23日付けで,本件審判の請求に係る指定商品について,現在,我が国で実際に事業が行われているか,又は事業計画中であるかについての回答を求める旨の,審尋を通知し,期間を指定して,これに対する意見を求めた。
第4 被請求人の主張
被請求人は,請求人の主張に対する答弁は行っていないところ,上記第3の審尋に対して要旨以下のとおり回答した。
1 事業の準備状況について
被請求人は,香港を拠点として,アジア太平洋地域において,広範な商品・役務についてオンラインを含む小売及びその他の事業を展開する意思を有しており,現在,事業パートナー,サプライヤー等の募集・選定・交渉等をしているところである。ただし,募集・選定・内容,交渉相手及び準備状況等については,現在,ビジネス上の都合により明らかにすることはできない。
2 商標法第3条第1項柱書違反について
商標法第3条第1項柱書と,同第50条第1項及び同条第2項を整合的に解釈するならば,「使用の意思」にかかる同法第3条第1項柱書の運用の趣旨は,あまりに広範な指定商品・役務の指定を抑制することにあり,登録後,少なくとも3年以内に同法第3条第1項柱書を適用して,一部商品について「使用の意思」を欠くとして登録を無効とすることは,不使用取消審判制度とは相容れず,その制度趣旨を没却するものである。
本願商標は2015年(平成27年)8月7日に設定登録されており,本件無効審判は2017年(平成29年)12月21日に請求されている。
すなわち,本件審判請求は,登録後3年を経過していない商標について,その一部商品について,使用又は使用の準備がないとして,商標法第3条第1項柱書により無効を求めるもので,不使用取消審判の趣旨を没却するものである。
3 「使用の意思」の判断の基準時について
被請求人は,審査・査定時において,我が国において事業を開始し,商標の「使用の意思」を有していたものであるが(なお,現在も引き続き「使用の意思」を有しており,事業の開始を準備している。),事業が予定どおりに進行せず変更・遅れを余儀なくされることは,ビジネスの実際において,ごく普通に起こり得ることである。
したがって,現在,第34類「全指定商品」における本件商標の使用に係る具体的な事業計画の進捗状況及び「タバコ事業法第22条に基づく製造タバコの小売販売業の認可」の手続について,変更・遅れ等があったとしても,そのことにより審査・査定時において「使用の意思」を欠いていたといえるものではない。
被請求人は,審査・査定時においては,商標の「使用の意思」を有していたのであり,現在の準備状況との不整合を理由として,一部商品について無効とすることは,ビジネスの現場と乖離する解釈・運用であり,到底認められるものではない。
4 証明責任について
商標法第46条は,自己に有利な法的効果を発生させることを主張している者が証明責任を負うべきものである。
本件においては,登録の一部無効という請求人に有利な法律効果を発生させることを主張している請求人が「被請求人が査定時において使用の意思を欠いていたこと」を認めるに足る具体的事実をもって証明する責任を負うものであるが,請求人からは,何ら「被請求人が査定時において使用の意思を欠いていたこと」を認めるに足る具体的事実は提出されておらず,上記について何らの証明はなされていない。
5 結語
以上から,本件登録は,無効にされるべき理由はない。
第4 当審の判断
1 請求人提出に係る証拠及び請求人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)請求人について
請求人は,中国語名称を「天成(太平洋)有限公司」とする,中国タバコ国営企業の「雲南中烟工業有限責任公司」をトップとする「雲南烟草グループ」に属し,釣魚台タバコの中国国外での販売を担当している(甲3)。
(2)中国国内における釣魚台タバコの認知度について
ア 釣魚台タバコは,遅くとも1989年(平成元年)に生産が開始され,釣魚台国賓館(中国,北京市の宿泊施設)に由来し命名された(甲37)。
イ 釣魚台タバコは,1989年(平成元年)の生産開始当初は,昭通市巻煙場が生産していたところ,当該タバコは,非売品で,釣魚台国賓館に宿泊した国内外の賓客を歓待する時に提供されていたものであるが,2000年(平成12年)頃以降は,一般に販売もされるようになった(甲39)。
ウ 2011年(平成23年)頃からは,請求人のグループ会社の製造部門である「紅雲紅河煙草(集団)有限責任公司」が,釣魚台タバコを生産している(甲3,甲43)。
釣魚台タバコには,生産開始当初からあった「金釣」のほかに「景泰藍」,「黄釣」及び「藍釣」と称されている4種類のタバコがあり,現在は,「金釣」及び「景泰藍」は,釣魚台国賓館の中でのみ販売されるが,「黄釣」及び「藍釣」は,中国国内外の免税店で販売されていることが認められる(甲44,甲61,甲62,甲71?甲73)。
そして,こららの,釣魚台タバコの包装には,背景及び線の色は異なるものの,菱形の枠内に楼閣,橋,樹木などを含む風景を共通にする図形(以下「菱形図形」という。別掲2)が表示されている(甲41?甲43,甲45,甲46)。
エ 「人民网people」(中国語)のウェブサイトにおいて,「中国天价香烟排行榜(16) 2011年07月29日09:10」の見出しの下,「釣魚臺(「臺」の文字は「台」の旧字,以下同じ。)」の文字が付されたタバコの包装と思しき写真が表示されている(甲68)。
オ 「騰訊新聞」(中国語)のウェブサイトにおいて,「2012年07月26日10:04」の記事に「釣魚臺」の文字が付されたタバコの包装と思しき写真及び「16,釣魚台(「釣魚」の文字は簡体字。)・・・」の文字が表示されている(甲69)。
カ 「CHINA NOW」のウェブサイトにおいて「中国高級タバコトップ30 2013/06/11」の見出しの下,「商品名:釣魚台『硬景泰藍』」,「製造元:紅雲紅河集団毘明巻煙」,「販売価格:1200元(約19,000円)/カートン」の記載とともに「釣魚臺」の文字及び菱形図形が付されたタバコの包装と思しき写真が表示されている(甲70)。
キ 以上よりすると,包装に菱形図形が付された釣魚台タバコは,遅くとも1989年(平成元年)に生産が開始され,釣魚台国賓館に宿泊した国内外の賓客を歓待する時に提供され,2000年(平成12年)頃以降は,釣魚台国賓館において,一般に販売もされるようになり,その後,中国国内外の免税店でも販売されている。
また,釣魚台タバコは,中国国内のウェブサイトにも掲載されていることからすると,本件商標の優先権に係る登録出願前には,中国国内において,取引者,需要者の間に一定程度知られていたものと認められる。
(3)菱形図形及び菱形図形を含む図形等の商標登録について
ア 中国国内においては,1996年(平成8年)5月14日及び2007年(平成19年)11月14日に,菱形図形が,外交部釣魚台国賓館管理局を商標権者とし,第34類の商品を指定商品として,商標登録されている(甲55,甲56)。
イ 2004年(平成16年)8月7日に菱形図形,「Diaoyutai」の文字「釣魚臺」等の文字及び図形を含む商標が,雲南中烟工業有限責任公司を商標権者とし,第34類の商品を指定商品として,商標登録されている(甲47?甲49)。
ウ 中国国外においては,本件商標の優先権主張に係る登録出願前に,菱形図形を構成中に含む商標が,請求人を商標権者とし,第34類の商品を指定商品として,ブラジル,ヨーロッパ共同体,ドイツ,イタリア,ニュージーランド,シンガポール,スイス,イギリスにおいて,商標登録されている(甲8,甲13,甲15,甲18,甲20,甲22,甲25,甲28)。
2 商標法第4条第1項第19号該当性
(1)本願商標と菱形図形の類似性について
本願商標は,別掲1のとおり,菱形の枠内に楼閣,橋,樹木などと思しき図形が配されている特徴的な図形商標である。
これに対し,菱形図形は,別掲2のとおり,背景及び線の色は異なるものの,菱形の図形内に楼閣,橋,樹木などと思しき図形が配されているものであり,本願商標と図形の形,楼閣,橋,樹木の形状及びそれらの配置において酷似している。
してみれば,本件商標と菱形図形とは,その構成における特徴を共通とする酷似するものといわざるを得ない。
(2)不正の目的について
本願商標は,上記(1)のとおり,本願商標の優先権主張に係る登録出願前より,中国の取引者,需要者の間に一定程度知られていた釣魚台タバコの包装に付されている菱形図形と酷似するものであるから,これらの特徴が偶然に一致したとは到底認められない。
また,上記1のとおり,釣魚台タバコは,本願商標の優先権主張に係る登録出願前より,請求人の関連企業の製造部門である「紅雲紅河煙草(集団)有限責任公司」によって製造され,上記1(3)のとおり,本願商標の登録出願前より,菱形図形又は菱形図形を含む商標は,請求人又はその関連企業並びに外交部釣魚台国賓館管理局によって,第34類の商品を指定商品として,中国国内外で商標登録されていた。
そして,上記第1のとおり,本件審判の請求に係る指定商品は,第34類「Tobacco」を含むたばこ,喫煙用具及びマッチ等であって,これらは,請求人又はその関連企業の製造及び販売に係る商品「タバコ」と関連性の高い商品であるというのが相当である。
以上よりすると,本件商標権者は,本件商標の優先権に係る登録出願時において,菱形図形又は菱形図形を含む商標が,未だ我が国で商標登録されていないことを奇貨として,商標権の譲渡による不正な利益を得る目的,あるいは請求人に損害を与える目的などの不正の目的をもって菱形図形と酷似する構成よりなる本件商標を登録出願し,登録を受けたものと推認せざるを得ない。
(3)小括
したがって,本件商標は,その登録出願の時ないし査定時において請求人の業務に係る商品を表示するものとして中国の取引者,需要者の間に一定程度知られていた釣魚台タバコの包装に付されている菱形図形と酷似する類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするものといわなければならないから,商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第19号に該当するものであり,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものであるから,その余の無効理由について判断するまでもなく,同法第46条第1項の規定に基づき,本件商標の指定商品及び指定役務中,第34類「全指定商品」についての登録を無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 【別記】





審理終結日 2019-04-25 
結審通知日 2019-05-08 
審決日 2019-05-22 
審決分類 T 1 12・ 222- Z (W34)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 雅也小田 昌子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 大森 友子
榎本 政実
登録日 2013-11-05 
代理人 吉川 俊雄 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 

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