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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2020890074 | 審決 | 商標 |
無効2018890005 | 審決 | 商標 |
不服20207875 | 審決 | 商標 |
無効2020890039 | 審決 | 商標 |
無効2019890040 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない W14 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W14 審判 全部無効 観念類似 無効としない W14 審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効としない W14 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W14 審判 全部無効 外観類似 無効としない W14 |
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管理番号 | 1357856 |
審判番号 | 無効2017-890071 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2017-10-23 |
確定日 | 2019-11-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5849925号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5849925号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおり,「iWatch」の文字を横書きしてなり,2012年(平成24年)12月3日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して平成25年6月3日に登録出願された商願2013-42097に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として,同26年4月25日に登録出願,第14類「測時器及び計時用具,腕時計,置き時計及び掛け時計,時計,時計の部品及び附属品,ストップウォッチ,クロノメーター,時計用ストラップ,時計用バンド,腕時計・時計・測時器及び計時用具用のケース,腕時計・時計・測時器及び計時用具用の部品,デジタル時計,電子時計,宝飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,貴金属製靴飾り」を指定商品として,同28年4月19日に登録査定,同年5月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が,本件商標の登録無効の理由において,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は,以下の2件であり,いずれも登録商標として存続しているものである(以下,これらをまとめていうときは,「引用商標」という。)。 1 国際登録第962366号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2に示すとおりの構成よりなり,2007年(平成19年)11月28日,Switzerlandにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,2008年(平成20年)4月7日に国際商標登録出願,第14類「Jewellery, precious stones; horological and chronometric instruments.」,第35類「Retail services for clocks and watches of all kinds and jewellery; retail services via global networks of computers (Internet) of clocks and watches of all kinds and jewellery.」,及び第37類「Repair and maintenance of horological products and jewellery.」を指定商品及び指定役務として,平成21年10月2日に設定登録されたものである。 2 登録第4400665号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3に示すとおりの構成よりなり,平成11年9月6日に登録出願,第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振り出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口,靴飾り,コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて」を指定商品として,同12年7月14日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第77号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第3条第1項第6号に対する無効理由について 本件商標は,上記第1のとおり,その構成文字中,唯一,大文字で表示される欧文字「W」の存在により,外観上,前半の「i」と後半の「Watch」に分離され,需要者・取引者をして「i」及び「Watch」の組み合わせからなることを容易に看取せしめる。 欧文字1文字は,商品の品番,型番,種別,形式,規格等を表した記号又は符号として,一般的に使用されている実情がある(甲5?甲8)。 上記取引実情に加え,本件商標構成文字中,後半の「Watch」部分は,「時計」を意味する英単語であり(甲4),本件商標に係る指定商品中,「測時器及び計時用具,腕時計,置き時計及び掛け時計,時計,時計の部品及び附属品,ストップウォッチ,クロノメーター,時計用ストラップ,時計用バンド,腕時計・時計・測時器及び計時用具用のケース,腕時計・時計・測時器及び計時用具用の部品,デジタル時計,電子時計」(以下「本件指定商品A」という。)との関係においては,単に商品の品質・内容・用途等を表すにすぎないことを鑑みると,本件指定商品Aに付された本件商標「iWatch」に接する需要者・取引者は,ただ単に,該商品が,「i型の時計」であるとか,「i型の時計用の附属品や部品」であるとしか認識せず,本件商標を,該商品の種別・型番・品番等を示す記号・符号等と理解・把握するので,本件商標が自他商品識別標識として機能するとはいえない。 なお,被請求人は,被請求人に係る製品及びサービスは「iMac」,「iPhone」,「iPod」,「iPad」,「iTunes」及び「iCloud」等,「i」を冠したものが多く,「一文字目が小文字の「i」,二文字目を大文字とするスタイルは被請求人の製品であるだろうと認識する旨主張するが,このような,小文字「i」と大文字から始まる名称よりなる商品名・サービス名は,被請求人に係る製品・サービスに限らず,それ以外の第三者のものに係る製品・サービスを指称する名称として数多くの例が過去より存在するから(乙73),一文字目を小文字の「i」にした名称は,「被請求人のiシリーズ商標」であると認識されるとの主張は失当である。 したがって,本件商標は,本件指定商品Aとの関係においては,商標法第3条第1項第6号に該当する。 2 商標法第4条第1項第16号に対する無効理由について (1)本件商標は,上記1のとおり「i」及び「Watch」の組み合わせからなることを容易に看取せしめ,「i」の文字は,商品の種別・型番・品番等を示す記号・符号等と理解・把握され,後半部分の「Watch」が,「時計」程の観念を伴い,本件商標に接する需要者・取引者に大きな印象をもって認識される。 本件商標の指定商品中,「宝飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,貴金属製靴飾り」(以下「本件指定商品B」という。)については,例えば,他人に渡すプレゼントの候補として,しばしば,「時計」の代替となり得る商品であり,また,実際に,これらの商品は,「時計」を販売する同一店舗において取り扱われている場合が多い。 よって,本件指定商品Bは,本件商標が表す商品の品質である「時計」と関連性があり,かつ,本件商標が表す商品の品質である「時計」とは品質を異にするものであるから,これを本件商標に係る指定商品中,本件指定商品Bについて使用するときには,その商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがある。 したがって,本件商標は,本件指定商品Bとの関係においては,商標法第4条第1項第16号に該当するものである。 (2)日本語では「時計」として包括的・集合的に称されるものが,実際には,英語では更に細分化されており,「腕時計,懐中時計」のような,いわゆる「携帯して使用する時計」が「watch」と呼ばれ,一方で,「掛け時計,置き時計」のような,いわゆる「携帯用ではない時計」が「clock」と呼ばれていることは,我が国においても相当程度知られているところである。 本件商標は,その構成中に「腕時計,懐中時計」等の「携帯して使用する時計」の意味を有する「Watch」の文字を有するものであるから,これを本件商標に係る指定商品中,「測時器及び計時用具(携帯用のものを除く。),置き時計及び掛け時計,時計(携帯用のものを除く。),時計(携帯用のものを除く。)の部品及び附属品,時計・測時器及び計時用具(携帯用のものを除く。)用のケース,時計・測時器及び計時用具(携帯用のものを除く。)用の部品,デジタル時計(携帯用のものを除く。),電子時計(携帯用のものを除く。)」について使用するときには,その商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがある。 したがって,本件商標は,上記商品との関係においては,商標法第4条第1項第16号に該当する。 3 商標法第4条第1項第11号に対する無効理由について (1)本件商標と引用商標1について ア 本件商標 本件商標は,「iWatch」の構成文字に相応して「アイウォッチ」との称呼が生じ,「i型の時計」程の観念を想起せしめる。あるいは,本件商標全体が一つの造語として捉えられ,特定の観念を生じ得ない。 イ 引用商標1 引用商標1は,語頭の「i」の文字のみ筆記体を模したような若干の図案化が施され,その他の構成文字は,同書,同大,同間隔であるから,その構成文字に相応して「アイスウォッチ」との称呼が生じ,特定の観念は生じない。 なお,被請求人は,引用商標1の称呼認定において,その構成中語頭の図案化部分については直ちに称呼が生じるものではないため,引用商標1は「スウォッチ」の称呼が生じる旨主張しているが,引用商標1における語頭の文字は,欧文字の「i」の筆記体であり(甲74),特別な図案化が施されているわけではないので,取引者,需要者が「i」の筆記体以外のものとしてそれを看取・認識することはありえないから,引用商標1は,一連一体の欧文字の文字列としてのみ認識され,「アイスウォッチ」の称呼のみが生じる。 また,被請求人は,引用商標1の観念の認定においても「i」と「swatch」を分離して認定を行っているが,引用商標1は一連一体としてのみ看取・認識される商標であり,また,仮に「swatch」部分が分離されたとしても,英単語「swatch」は,高等学校までの教育で通常教わるレベルの英単語ではなく,我が国における取引者,需要者が,「swatch」から「見本」等の意味を直ちに認識・把握することは到底ありえないから,引用商標1からは特定の観念が想起されず,引用商標1は本件商標とは観念上較べるべくもない商標である。 ウ 本件商標と引用商標1との類否 外観については,本件商標と引用商標1とは,文字構成の中で,「s」の文字の有無のみにおいて相違するところ,該相違点は,外観における識別上,比較的影響の少ない中間に位置するものであり,図案化が施された,引用商標1における語頭の文字「i」も,外観上の類否判断に大きな影響を及ぼす程の図案化がなされているとはいえないから,両商標は,時と処を異にして外観を対比した場合,外観上,相紛れるおそれがある。 称呼については,本件商標から生じる称呼「アイウォッチ」と,引用商標1から生じる称呼「アイスウォッチ」との相違は,促音を含めたそれぞれの構成音数である5音,6音のうち,「ス」の有無による相違のみにすぎない。さらに,相違音の「ス」は,称呼識別上,比較的影響の小さい中間音である上,その音自体が,舌端を硬口蓋前方に寄せて発音する,非常に響きの弱い無声摩擦子音であり,明瞭に聴取され難い音であるから,両商標を一連一体に一気に称呼した場合,上記相違音は明瞭に聴取されず,称呼全体の語感,語調に与える影響は非常に小さいから,両商標は,時と処を異にして称呼を対比した場合,称呼上,相紛れるおそれがあるものである。 観念については,本件商標からは特定の観念が想起されないか,「i型の時計」程の観念が想起される。一方,引用商標1からは特定の観念が想起されない。 したがって,両商標は,特定の観念が生じないことにより,観念上対比すべくもないが,観念上,相紛れるおそれのないとしても,外観及び称呼が著しく近似し,需要者・取引者に与える印象,記憶,連想等が近似することとなり,両商標を同一又は類似の商品に使用した場合,商品の出所に誤認混同を生じるおそれがある。 (2)本件商標と引用商標2について ア 本件商標 本件商標の外観,称呼及び観念については,上記(1)アのとおりである。 イ 引用商標2 引用商標2は,欧文字「iwach」を横書きしてなり,中間に位置する「a」の文字のみ,「@(アットマーク)」状に図案化されている。ここで,「@」記号が「アットマーク(at mark)」,「アットサイン(at sign)」,「アットシンボル(at symbol)」等の別称で呼ばれる(甲14)ことは,広く知られている事実であり,引用商標2に接した需要者・取引者は,「@=at」と認識し,実質的には,引用商標2の構成文字を「iwatch」として認識すると考えられる。 引用商標2において,中間に位置する構成文字「a」は,「@(アットマーク)」状に図案化が施されているものの,通常の欧文字「a」の替わりに,欧文字「a」を,このような「@(アットマーク)」で表示することは,通常に行われていることであり,構成文字「a」が「@(アットマーク)」状に図案化されているからといって,引用商標2の構成文字が,「a」の左右で分断されて看取される,あるいは,「@(アットマーク)」状の「a」からは称呼が生じないといったような事情は考えられない。 さらに,通常は「@=at」と認識されるから,引用商標2に接する需要者・取引者は,自然に引用商標2を実質的に欧文字「iwatch」で構成されているものと認識するか,あるいは,仮に「@=at」と認識されないとしても,少なくとも,欧文字「iwach」で構成されていると認識するものであるから,当該構成文字に相応して,「アイウォッチ」との称呼が生じると考えるのは十分妥当である。また,引用商標2は一種の造語と考えられ,特定の観念は生じない。 なお,被請求人は,引用商標2の称呼認定において,「アイダブリューシーエイチ」,「アイダブリューアットシーエイチ」,「イワチ」の3通りの称呼が生じる可能性がある旨主張するが,引用商標2の構成中,「@」記号は,欧文字「a」を置き換えたもの或いは図案化したものと考えるのが最も自然であることからすると,引用商標2は,欧文字「iwach」で構成されると認識・把握されると考えるのはごく自然である。その場合に,引用商標2は,本件商標の構成文字「iWatch」と中間に位置する文字である「t」一文字の有無のみによって相違しており,この外観上の類似性ともあいまって,「iwach」に接した需要者・取引者は,該構成文字から「アイウォッチ」との称呼を想起すると考えるのが一番自然である。 ウ 本件商標と引用商標2との類否 外観について,本件商標と引用商標2とは,それらの構成文字の観点から見ると,文字構成の中で,「t」の文字の有無のみにおいて相違する。しかしながら,引用商標2に接する需要者・取引者は,「@=at」と通常認識するものであり,そうとすると,引用商標中,「@(アットマーク)」部分を「at」に置き換えると,本件商標及び引用商標2は,実質,同一の文字構成であると考えられる。さらに,仮に「@=at」と認識されないとしても,相違点である「t」が位置するのは,本件商標中,略中間部分であり目立ちにくいため,引用商標2を一見した時に,「t」の欠如に気づかず,構成文字は「iwatch」であると認識するおそれがある。簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては,このような見落としがあり得ることから,「t」の欠如,及び「a」の図案化は,両商標の外観識別において大勢に影響はなく,両商標は外観において非常に近似するものであるといえ,外観上,相紛れるおそれがある。 称呼については,本件商標と引用商標2からは同一の称呼「アイウォッチ」が生じると考えられるので,両商標は称呼を共通にする。 観念については,本件商標からは特定の観念が想起されないか,「i型の時計」程の観念が想起される。一方で,引用商標2からは特定の観念が想起されない。 よって,両商標は,特定の観念が生じないことにより,相紛れるおそれがないとしても,外観,称呼が著しく近似している場合,需要者,取引者に与える印象,記憶,連想等が近似することとなる。 したがって,両商標は,これらを同一又は類似の商品に使用した場合,商品の出所に誤認混同を生じるおそれがある。 (3)本件商標と引用商標とは,例え,観念において相違があるとしても,外観において近似しており,称呼は同一であることを鑑みると,両商標を同一又は類似の商品に使用した場合,商品の出所に誤認混同を生じるおそれのある類似の商標であることは明らかである。 また,当該両商標が商品「腕時計」等の比較的小さな商品に使用される場合は,当該商標が比較的小さな文字で商品に表示されるため,より識別が困難となり,商品の出所に誤認混同を生じるおそれがより一層高くなる。 (4)以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,その指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似である。 したがって,本件商標は,その指定商品中,「測時器及び計時用具,腕時計,置き時計及び掛け時計,時計,時計の部品及び附属品,ストップウォッチ,クロノメーター,時計用ストラップ,時計用バンド,腕時計・時計・測時器及び計時用具用のケース,腕時計・時計・測時器及び計時用具用の部品,デジタル時計,電子時計,宝飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品,宝石箱,記念カップ,記念たて,貴金属製靴飾り」については,商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号に対する無効理由について (1)請求人について 請求人である「スウォッチ アーゲー(スウォッチ エス エー)(スウォッチ リミテッド)」は,「Swatch(スウォッチ)」の名称で,世界的な時計ブランドとして,我が国のみならず,世界中で広く知られているところである。請求人は,1983年(昭和58年)に最初の「swatch」ブランドの時計(以下「請求人商品」という。)を発売して以来,年2回,春夏コレクション及び秋冬コレクションを発表しており,毎年数多くの新作を発表している。従来の時計ブランドにはない,そのデザインの多様性は,流行やファッションに高感度の消費者から高い関心・評価を受けており,請求人商品のコレクターが世界中に存在している。請求人が本拠地とするスイスは,機械式高級時計で有名な国であるが,請求人は,そのような機械式の高級時計ブランドとは一線を画し,一般消費者向けクオーツ時計ブランドとして,我が国のみならず世界中でその地位を確固たるものとしている。 (2)請求人商標「swatch」の周知著名性について ア 辞書への掲載 請求人の略称である「swatch」(以下「請求人商標」という。)は,その業務に係る商品「時計」について,我が国のみならず,世界中の時計愛好家,ファッション愛好家,一般需要者及び取引者の間において,請求人のハウスマークとして広く親しまれており,その周知著名性は,一般辞書の見出し語として掲載される程である(甲15)。 イ Swatch Group(スウォッチ・グループ)について 請求人もそのグループの一部である,「Swatch Group(スウォッチ・グループ)」は,スイス・ビール市を本拠地に,160以上の独立した事業組織と30力国以上に及ぶ現地法人(100%出資)を統括する世界最大の時計製造グループである(甲16,甲17)。「Swatch Group(スウォッチ・グループ)」の名称は,まさに請求人の著名な略称から名称を得たものであり,スウォッチ・グループは,その傘下にあらゆる価格帯の時計ブランドを有している(甲18)。 ウ オリンピックその他のスポーツイベントにおける公式計時 請求人は,1996年(平成8年)アトランタオリンピックの公式計時「オフィシャル・タイムキーパー」に採用され,その後開催された2000年(平成12年)シドニーオリンピック及び2004年(平成16年)アテネオリンピックでも同様に採用されている(甲19)。 請求人は,オリンピック以外にも,ビーチバレー,フリースタイルスキー,スノーボードやサーフィンといった若者に人気の多くのスポーツをサポートしており,それぞれの大会の公式計時を担当している(甲20?甲22)。 エ 請求人商品の販売経路 請求人商品の販売店は,我が国において,直営店のみで全国に約20店舗に及び,更には,請求人のウェブサイト中に設けられた,請求人による公式オンラインストアの他,オンラインショッピングサイト「楽天」や「Amazon」等からも購入可能である。 オ 請求人商標に係る商品の販売数量及び売上高 2004年(平成16年)から2017年(平成29年)6月までの,請求人商品の我が国における販売数量及び売上高(何れも概算)は,2004年(平成16年)ないし2007年(平成19年)は販売数量50万個・売上高25億円,2008年(平成20年)は販売数量40万個・売上高25億円,2009年(平成21年),2012年(平成24年)及び2013(平成25年)年は販売数量25万個・売上高20億円,2010年(平成22年)は販売数量25万個・売上高15億円,2011年(平成23年)及び2016年(平成28年)は販売数量20万個・売上高15億円,2014年(平成26年)及び2015年(平成27年)は販売数量20万個・売上高20億円,並びに,2017年(平成29年)(6月迄)は販売数量10万個・売上高7億5千万円である。 カ 雑誌・書籍における特集・広告 請求人の商品が特集又は広告された雑誌・書籍は,いずれも時計愛好家,ファッション愛好家,一般需要者の間で人気の有名なものであり,非常に多くの消費者が請求人商標に接したことがうかがえる(甲23?甲41)。 また,請求人ブランドは,外国産時計類の正規輸入業を営む輸入代理店の団体である「一般社団法人 日本時計輸入協会」(以下「日本時計輸入協会」という。)が毎年発刊する「時計ブランド年鑑」でも毎年紹介されている(甲42?甲45)。 キ 請求人による,新シリーズの発売開始に伴う公式イベント 請求人は,新「SKIN」シリーズの発売開始に際し,世界的スーパーモデル「ナオミ・キャンベル」を起用し,該シリーズの販売開始に先立ち,2000年(平成12年)7月13日に,公式イベントを開催し,総勢約150名の参加者があった(甲46,甲47)。 ク プレスリリース 請求人は,新製品・新シリーズの販売開始に際し,積極的にプレスリリースを行い,製品の周知活動を行っている(甲48)。 ケ 屋外広告 請求人は,屋外広告も積極的に活用し(甲49),また,海外においても屋外広告を行っている(甲50?甲62)。 コ 日本時計輸入協会ウェブサイトの請求人ブランドの紹介 日本時計輸入協会が運営するウェブサイト中において,請求人の「swatch」ブランドが紹介されている(甲63)。 サ 受賞歴 請求人商標に係る商品である「時計」は,その品質,ファッション性,消費者における人気により,数々の賞を受賞している(甲64)。 シ 業界誌への掲載 請求人ブランドである「swatch」は,ファッション業界誌「ウィメンズ・ウエア・デイリーズ(WWD)」の「WWD100」リストの63位にランクインした。また,当該リストの「The Top 10:Watches/Jewelry(時計/宝飾品部門トップ10)」においては,上記部門において,第5位にランキングされている(甲65)。 ス 米国商標協会の著名商標リストへの掲載 請求人商標「swatch」は,現在のINTA(International Trademark Association(国際商標協会))の前身である,USTA(United States Trademark Association(米国商標協会))が,編集者や作家等の文筆家による商標の適切な使用に資するために,チェック用に作成し,新聞社や出版社に配布した著名商標リストに掲載された(甲66)。 セ 外国における請求人商標の周知著名性の認定 請求人商標「swatch」に関し,海外における異議申立手続きにおいて,請求人商標「swatch」の周知著名性が担当当局において認定され,その結果,相手方商標が出所混同のおそれにより取消となった事例が数多くある(甲67?甲72,甲76)。 ソ 小括 請求人は,請求人商標を付した商品「時計」について,上記様々な媒体を駆使して,一般需要者から取引者層まで幅広い層を対象として宣伝広告活動を行ってきており,このような請求人による弛まぬ営業努力・宣伝広告活動の結果,請求人商標は,請求人の業務に係る商品「時計」を示すものとして,本件商標の登録出願日及び登録査定日に,需要者・取引者の間で,我が国のみならず,世界的にも周知・著名となっている。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 本件商標と請求人商標の類似性について 外観,称呼において近似する本件商標と請求人商標は,全体として,近似する商標である。 なお,請求人商標「swatch」は,我が国において周知・著名であるので,その周知著名性により,該請求人商標の類似の範囲は,周知著名でない通常の商標に比べて広くなることは言うまでもなく,本件商標と請求人商標は,より一層,相紛れるおそれが高くなる。 イ 請求人商標の周知著名性及び独創性について 請求人商品は,世界的に大規模展開されており,我が国においても,大規模かつ広範な販促活動か行われ,その販売数も長年に亘って堅調に推移している。また,請求人商品に係る業界,すなわち,時計業界,ファッション業界において,請求人の製造販売する商品が高い評価を得ている。よって,請求人商標「swatch」が,請求人商品の需要者・取引者の間において広く知られるところとなり,そして,本件商標の登録出願日及び登録査定日に,請求人の業務に係る商品の名称として広く親しまれていたことは明らかである。また,請求人商標「swatch」は,創設者でありスウォッチ・グループの会長である「ニコラス・ハイエック(Nicolas Hayek)」氏により,「新しい時計」を意味する「Second Watch」を短縮して案出された造語である。 ウ 商品間の性質・用途又は目的における関連性について 本件商標の指定商品は,請求人商標に係る商品である「時計」と性質・用途・目的において関連があることは明らかである。 エ 取引者・需要者の共通性について 本件商標に係る指定商品と,請求人商標に係る商品「時計」は,性質・用途・目的において関連しており,当然,それらに係る取引者・需要者も共通するものである。 オ 以上,まとめると,(a)本件商標と請求人商標は類似しており,(b)請求人商標は,独創性の高いものであり,かつ,周知著名であり,(c)請求人商標に係る商品と本件商標に係る指定商品との間に,性質,用途又は目的における関連性があることは明白で,(d)取引者・需要者も共通している。また,本件に係る指定商品中,特に,請求人の業務に係る,廉価なクオーツ時計は,基本的に大量消費財であり,取引者・需要者の注意力も格別高いと認められる事情も見受けられない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第3条第1項第6号の非該当性について 本件商標は構成文字全体より特定の意味を有しない一種の造語とみるもので,請求人の主張は失当である。 (1)被請求人と「iシリーズ商標」について 被請求人は,米国カリフォルニア州に本社を置き,「iMac」,「MacBook」等のパーソナルコンピュータ,スマートフォン「iPhone」,デジタルオーディオプレーヤー「iPod」,タブレット型コンピュータ「iPad」,腕時計型コンピュータ「Apple Watch」等を製造販売し,音楽・映像配信サービス「iTunes」,写真やビデオ等を保存するサービス「iCloud」等を提供する米国の法人である。 被請求人は,「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど,高い知名度を誇り,当該ランキングにおいては,2011年(平成23年)から7年連続で首位の座を維持している(乙1)。 被請求人に係る製品及びサービスは「iMac」,「iPhone」,「iPod」,「iPad」,「iTunes」及び「iCloud」など,「i」を冠したがものが多い。これらの表示は英単語の頭文字を大文字にする決まりに馴染みがあるからこそ,一文字目を小文字,二文字目を大文字とする構成は違和感を持って需要者の注意を惹きつけるものである。被請求人の「iPhone」「iPad」製品が著名であることは顕著な事実であり,その他の名称も周知となっていることから,語頭における小文字の「i」は商品の型番ではなく,被請求人のiシリーズ商標であると認識すると考えるのが自然である。 以上より,一文字目が小文字の「i」,二文字目を大文字とするスタイルは被請求人の製品であるだろうと認識するものであり,「iWatch」の商標に接した需要者及び取引者は,被請求人の製品と認識しても,「I型の時計」「I型の時計用の附属品や部品」であると認識することはない。 (2)請求人提出の証拠について 請求人により,「I」の文字が形式等として使用されている例として挙げられた情報は,いずれも小文字の「i」が使用されている例ではない。そして,提出された資料に掲載されているものは,いずれも本願の指定商品の分野に関する情報ではなく,事案を異にする。 (3)したがって,本件商標は,識別力を有する商標であり,商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。 2 商標法第4条第1項第16号の非該当性について 本件商標は,一種の造語であって,特定の観念を生じさせるものでなく,自他識別標識としての機能を充分に発揮するものであるから,その指定商品に使用しても商品の品質について誤認を生ずるおそれはない。 3 商標法第4条第1項第11号の非該当性について (1)引用商標1について ア 本件商標と引用商標1の認定 本件商標は,同じ書体,同じ太さ,等間隔で表されているが,一文字目を小文字,続く二文字目を大文字とする特徴的な構成をとるものである。請求人が主張するような「i」が取引者にとって型式等を表すものとして一般に使用されている事情は認められず,本件商標が外観上一体のものとして把握されるものであるから,本件商標は,「アイウォッチ」の称呼のみが生じる。また,一種の造語として看取されるものであるから,特定の観念が生じるものではない。 他方,引用商標1は,語頭に擬人化された幾何学図形が配され,「swatch」の文字が続いている。当該図形部分については直ちに称呼が生じるものではないため,引用商標1は「スウォッチ」の称呼が生じる。また,仮に,当該図形部分が「i」の筆記体を図案化したものであると認識される場合があるとしてもそれに続く「swatch」の文字とは,書体,文字の太さが異なるところから,外観上は,「i」と「swatch」とに分離して看取,把握され,結局のところ「スウォッチ」の称呼が生じる。また,仮に,語頭の図形が「i」と認識され,称呼される場合には「アイスウォッチ」の称呼が生じる。 イ 本件商標と引用商標1との類否 本件商標が,書体に大きな特徴はないものの,一文字目を小文字,続く二文字目を大文字で表す特徴的な構成となっているのに対し,引用商標1は,一文字目を図案化した筆記体の「i」,続く「swatch」の文字は一般的な書体で表されているため,両者の態様は明らかに異なり,相紛れるおそれはない。 本件商標は「アイウォッチ」の称呼が生じるのに対し,引用商標1からは「スウォッチ」又は「アイスウォッチ」の称呼が生じる。引用商標1の称呼が「スウォッチ」の場合,本件商標の称呼とは,称呼の識別上,重要な要素をしめる語頭において,「アイ」と「ス」という明確な差異を有するものであり,構成音数の相違及び相違する構成音の差によって,明瞭に聴別できるものである。また,仮に「アイスウォッチ」の称呼が生じる場合,両商標の差異音は「ス」の有無であるところ,この「ス」の音は,弱く発音される音である「イ」の音に続く音であることから,比較的明瞭に発音,聴取されるものとなり,この差異が称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえないから,それぞれを一連に称呼するときは,語感,語調が相違し,互いに聴き誤るおそれはないとみるのが相当である。 本件商標は構成文字全体をもって,特定の意味を看取させることのない一種の造語であるのに対し,引用商標1の外観上分離し得る「swatch」部分は「見本」などの意味を有するものであるから,この観念が生じ得る。そうすると,両者は観念上相紛れるおそれはない。 以上から,両者は外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではなく,非類似の商標である。 (2)引用商標2について ア 本件商標と引用商標2の認定 本件商標の認定については上記のとおりである。 他方,引用商標2は,「iw@ch」の構成中「@」については,「アットマーク」と呼ばれる記号であるため,図形としてみなす場合には「アイダブリューシーエイチ」の称呼が生じ,アットマーク記号と認識される場合には「アイダブリューアットシーエイチ」の称呼が生じる。さらに,アットマーク記号が欧文字「a」と認識される場合には「iwach」の文字として「イワチ」の称呼が生じるものである。また,引用商標2の構成全体は一種の造語ということができ,特定の観念が生じるものではない。 イ 本件商標と引用商標2との類否 本件商標が,書体に大きな特徴はないものの,一文字目を小文字,続く二文字目を大文字で表す特徴的な構成となっているのに対し,引用商標2はその構成中,中央に「@」が配置されている。構成文字も明らかに異なるため両者は外観において類似しない。 請求人は「@」が「at」であると認識されるため,本件商標と実質同一の文字構成であると主張するが,外観の対比において,「@=at」の変換をさせた上で対比するなど意図を図りかねる。請求人の都合のいいように外観を変換するのはこじつけといわざるを得ない。また,5文字と短い構成であるのに「t」の欠落に気付かずに「iwatch」であると認識するおそれがあるというが,構成文字の差異(中央に目立つ「@」があることも含めて),文字数の違い,書体の違いなど明確な差異があることから,両者は外観において明らかに異なる。 本件商標からは「アイウォッチ」の称呼のみが生じるのに対し,引用商標2からは「アイダブリューシーエイチ」,「アイダブリューアットシーエイチ」又は「イワチ」の称呼が生じ得る。しかしながら,上記のとおり,「アイウォッチ」の称呼が生じるというのは適当でないから,両者は,称呼において類似しない。また,両者は,特定の観念を生じるものではない。 したがって,両者は外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではなく,非類似の商標である。 (3)以上により,本件商標は引用商標1及び2とは非類似の商標であり,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 4 商標法第4条第1項第15号の非該当性について (1)本件商標と請求人に係る商標「Swatch」の類似性 本件商標と請求人商標とは,上記のとおり明らかに別異の商標であり,類似するものではない。 (2)請求人商標の周知度 ア 辞書の掲載 請求人商標が,辞書への掲載されていることをもって周知であるとはいい難い。 イ スウォッチ・グループ 請求人を含むスウォッチ・グループについて,複数の時計ブランドを傘下にもつということは理解されるが「Swatch」が周知である説明とはなっていない。 ウ スポーツイベントにおける公式時計 オリンピックの公式時計メーカーとして名前が挙げられているが,夏季オリンピックの3回のみであるし(甲19),それをもって,需要者がどう認識したのか不明である。また,外国におけるイベント記事(甲20?甲22)であり,日本国内での周知性とは関係がない。 エ 請求人商品の販売経路 直営店等からも購入できることが記述されているが,真偽不明であり,また,これが請求人商標の周知性につながる説明もない。 オ 請求人商品の販売数量及び売上高 請求人は販売数量及び売上高を示しているが,何ら客観的な証拠に基づいておらず,真偽不明である。なお,日本時計協会から発表されている日本の時計市場規模(平成28年)によれば,その数量は33.5百万個であるのに対して(乙6),仮に請求人が示した同年の販売数量20万個を真実と推定した場合,その市場占有率は約0.6%である。また,請求人が示した販売数量によると,2014年(平成16年)から現在に至るまでの販売数量は減少しており,50万個から20万個へと60%減少している。 加えて,国内での売上高&シェアランキングは1位:カシオ計算機(シェア34.2%),2位:シチズンHD(シェア33.8%),3位:セイコーHD(シェア28.8%)の,上位三社で国内売上高シェアの90%を超えるものである(乙7)。 カ 雑誌・書籍における特集・広告 雑誌記事の掲載(甲23?甲45)は,いずれも掲載期日が古く,本件商標の設定登録時(平成28年5月13日)において周知性を裏付ける有効な資料となるものではない。 「腕時計に関する消費者意識調査2016」によると,「購入の決め手となるメディア」においては,時計専門誌,ファッション雑誌,一般雑誌においては半数以上が「見ていない,見ない」「ほとんど気にならない」としている(乙8)。加えて,雑誌の売り上げ推移をみると,電子書籍を含めても減少し続けているため,いくら雑誌に掲載されてもそれを受け取る需要者も少ないといえる(乙9)。すなわち,数年に数回,雑誌に掲載されたとしてもそれをもって周知とはいい難い。 キ 新シリーズの発売開始に伴う公式イベント 請求人が紹介するイベント(甲46,甲47)は2000年(平成12年)に行われたものであり,今から18年も前のことである。これ以降のイベントの有無は不明であるが,18年前のイベントに150名の参加者がいたことをもって,本件商標の登録出願日及び登録査定日における請求人の商標の周知性を判断する材料とはなり得ない。 ク プレスリリース プレスリリースを行っている例(甲48)として示されたのは2011年(平成23年)の一件のみである。一例を示すとしても,7年も前のものであり,それが一件しかないというのは「積極的にプレスリリースを行っている」ことにならない。よって,製品の周知活動については,これをもって行われたとはいえない。 ケ 屋外広告 広告が掲示されていた心斎橋駅のホームを利用した単独の乗降数は明らかでなく(乙10),当該証拠が2010年(平成22年)と古く,どれはどの期間展示されていたのか不明である。したがって,これをもって,本件商標の出願時及び登録時に請求人商標が周知であったとはいえない。また,海外での屋外広告も参考として挙げられているが(甲50?甲62),何の参考にすべきか不明である。 コ 日本時計輸入協会と受賞歴 日本時計輸入協会のウェブサイトを確認すると,「スウォッチ グループ ジャパン株式会社」は協会メンバーであり,会員のブランドを紹介することは普通のことである(乙12)。 また,数々の賞を受賞していると主張するが(甲64),例として挙げられたものは一件のみである。加えて,細分化された賞の一つを受賞した事実のみをもって,周知であるとはいえない。 サ 業界紙への掲載 当該雑誌は英語であり,日本国内に頒布されたものではない。また,2008年(平成20年)に発行された雑誌でとても古く,現時点での周知性立証の資料にはなり得ない。 シ 米国商標協会の著名商標リストと外国における請求人商標の周知著名性の認定 当該資料(甲66)は,1989年(平成元年)のものであり,現時点の周知性を示す資料にはなり得ない。 また,海外の異議申し立て手続きにおける周知著名性の認定がされた結果を挙げているが,我が国における周知性との関連性は示されていない。 (3)請求人商標が造語よりなるものであるか,構成上顕著な特徴を有するものであるか 請求人商標「Swatch」は,「見本」などの意味を有する既成語であり,また,書体についても一般的なものであり,外観上の顕著な特徴はみられない。 独創性について,「Swatch」の由来が「新しい時計」を意味する「Second Watch」を短縮したものであるとしても,当該由来が常に併記されていないのであれば,当該語が既成語である以上,需要者は既成語として認識するにすぎない。 (4)請求人商標がハウスマークであるか 請求人は,この点について主張していない。 (5)企業における多角経営の可能性 請求人提出の証拠(甲16)をみると,「スウォッチ グループは,スイス・ビール市を本拠地に,160以上の独立した事業組織と30力国以上におよぶ現地法人(100%出資)を統括する世界最大の時計製造グループです。」と説明されていることから,請求人において多角経営の可能性はない。 (6)「商品間,役務間又は商品と役務間の関連性」及び「商品等の需要者の共通性その他取引の実情」 本件商標に係る指定商品の全てが請求人の業務に係る商品と関連性があるとはいえない。 (7)以上から,本件商標は請求人商標を含んでおらず,商標上も非類似であり,請求人商標は周知・著名ではなく,審査基準に照らしても周知性を認定するに足りる事実に乏しい。したがって,本件商標を指定商品について使用したとしても,請求人若しくはこれと経済的又は組織的な関係がある者,あるいはこれらから公式の許可を受けた者に係る商品又は役務であると誤認するおそれがないことは明白である。 したがって,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 第5 当審の判断 1 請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係を有することについては,当事者間に争いがないので,本案に入って審理する。 2 商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は,上記第1のとおり,「iWatch」の欧文字からなるところ,これよりは「i」と「Watch」の文字からなるものと看取され得るとしても,当該欧文字は,同じ書体,同じ太さ,等間隔で外観上まとまりよく一体のものとして把握されるものであり,その構成文字全体に相応して生じる「アイウォッチ」の称呼も,格別冗長とはいえないものであって,よどみなく一気に称呼し得るものである。 請求人は,欧文字1文字は商品の型式・品番等を表す記号・符号等として各種業界で商取引上一般的・類型的に採択・使用されている実情があり,商品「腕時計」の業界でも同様に冒頭に欧文字1文字を付し商品の型式・品番等を表す記号・符号等として用いている実情があるから(甲5?甲8,甲73),本件商標「iWatch」の「i」は,取引者にとって,商品の型式・品番等を表す記号・符号等と把握され理解されるものである旨主張している。 しかしながら,請求人が提出した証拠において,冒頭に「i」の欧文字1文字を付し商品として「iSWATCH」,「iRobot」,「iChrome」,「iBike」,「iHerb」及び「i-MiEV」(甲73の1・3・5?8)があるとしても,これらはインターネットのウェブサイト上で,商品の紹介の見出し部分に使用され,商品名として看取され得るものである。 なお,職権により商品「腕時計」を取り扱う分野を調査しても,本件商標のように一連一体の欧文字のみからなる語(「i(小文字)+商品名」の使用)をもって,請求人が主張するような意味・内容を表すものとして取引上一般的に使用されている証左は見当たらなかった。 そうすると,本件商標は,その構成中の「i」の文字が商品の型式・品番等を表す記号・符号等と把握され理解されるものでもないから,その構成中「Watch」の語が,「時計あるいは携帯用の時計,腕時計」等の意味を有するとしても,構成文字全体をもって,特定の意味合いを看取させることのない一種の造語よりなるものと看取され,識別力を発揮するものと判断するのが相当である。 してみると,本件商標は,これを指定商品中の「測時器及び計時用具,腕時計,置き時計及び掛け時計,時計,時計の部品及び附属品,ストップウォッチ,クロノメーター,時計用ストラップ,時計用バンド,腕時計・時計・測時器及び計時用具用のケース,腕時計・時計・測時器及び計時用具用の部品,デジタル時計,電子時計」について使用しても,商品の品質等を表示するものとして取引者,需要者の間に認識されているものとはいえず,自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであり,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるとはいえない。 また,これを指定商品中の「宝飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,貴金属製靴飾り」及び「測時器及び計時用具(携帯用のものを除く。),置き時計及び掛け時計,時計(携帯用のものを除く。),時計(携帯用のものを除く。)の部品及び附属品,時計・測時器及び計時用具(携帯用のものを除く。)用のケース,時計・測時器及び計時用具(携帯用のものを除く。)用の部品,デジタル時計(携帯用のものを除く。),電子時計(携帯用のものを除く。)」について使用しても,商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものである。 したがって,本件商標は,商標法第3条第1項6号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。 3 「swatch」の周知性について (1)証拠及び請求人の主張によれば,次の事実が認められる。 ア 請求人は,1983年(昭和58年)に創業されたスイスの時計メーカーであり,「swatch」は請求人を含む「ザ・スウォッチ・グループ」が持つ腕時計のブランドである(甲16,甲17,甲63)。 イ 請求人の属する「ザ・スウォッチ・グループ」は,スイス国に本拠地を置く世界最大の時計グループであり,日本を含む世界30カ国以上に100%出資の現地法人を統括している(甲16,甲17)。 ウ 請求人の業務に係る時計は,1996年(平成8年)(第26回),2000年(平成12年)(第27回)及び2004年(平成16年)(第28回)の夏季オリンピック三大会に公式計時として採用された(甲19)。 請求人は,1987年(昭和62年)から2013年(平成25年)にかけて,雑誌「流行通信」,「BRUTUS」,「INTERNATIONAL WRIST WATCH 日本版(部刷CG)」,「世界の腕時計」,「ELLE」及び「NYLON JAPAN」にややデザイン化した「Swatch」の文字(別掲4,以下「請求人使用商標」という。)とともに請求人の商品「腕時計」の画像を掲載(商品「腕時計」に請求人使用商標を付したものを含む。)した全面広告を掲載した(甲23?甲25,甲27,甲32?甲41)。 エ 「時計ブランド年鑑(2008年(平成20年)?2010年(平成22年))」によれば,「swatch」の文字の見出しの下,商品「腕時計」の画像とともに,「時代のメッセージを発信する,スウォッチという名のメディア」と題して,「スイス時計伝統のクオリティを損なうことなく,革新的な時計を創造すること・・・この命題に応えたスウォッチは瞬く間に世界を席巻し,スイス時計産業の復興に計り知れない貢献を果たしました。」と記載されている(甲42?甲44)。 オ 「時計ブランド年鑑(2017年)」によれば,「swatch」の文字の見出しの下,商品「腕時計」の画像とともに,「時計界の革命児は世界の常識を覆し続ける。革命を起こし続ける個性豊かなファッション・ウォッチ・ブランド」と題して,「スウォッチの創業者である,ニコラス・G・ハイエックは,斬新な発想力と革命的なアイデアを駆使し,スイスメイドの伝統とクオリティを維持しながらも,『プラスティック』という素材を用いて,51パーツで構成された腕時計,『スウォッチ』を開発。手頃な価格で,『ファッション・ウォッチ』という新しい概念で,1983年3月1日衝撃のデビューと同時に瞬く間に世界を席巻し,スイスの時計産業界の窮状を打開し,スイス時計界の復興に貢献しました。」と記載されている(甲45)。 (2)以上よりすれば,請求人は,1983年(昭和58年)に創業されたスイスの時計メーカーであり,日本を含む世界30カ国以上に現地法人を有し,そのブランドの一つとして,「swatch」の文字に係る商標を商品「腕時計」(以下「請求人使用商品」という。)に使用していること,請求人使用商品は,我が国においては,1987年(昭和62年)に雑誌「流行通信」に,請求人使用商品の広告が掲載されていることから,遅くとも同年には,我が国に輸入されていたものと推認できること,そして,請求人は,1987年(昭和62年)から2013年(平成25年)まで,長年において継続して,請求人使用商標とともに請求人使用商品を雑誌に全面広告又は記事として掲載していたこと,「時計ブランド年鑑」において,スイスを代表する腕時計として紹介されていること,我が国においても多くの者が視聴したといえる夏季オリンピック三大会に公式計時として採用されたことを踏まえると,本件商標の登録出願時(平成25年(2013年)6月3日)及び登録査定時において,請求人使用商標は,請求人使用商品「腕時計」を表示するものとして,我が国の需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認めることができる。 4 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は,上記第1のとおり,「iWatch」の文字からなるところ,これよりは欧文字の「i」と「Watch」の文字からなるものと看取され得るとしても,当該文字は,同じ書体,等間隔で外観上まとまりよく一体のものとして把握されるものであり,その構成文字全体に相応して生じる「アイウォッチ」の称呼も,格別冗長とはいえないものであって,よどみなく一気に称呼し得るものである。 そうすると,本件商標は,構成文字全体に相応して,「アイウォッチ」の称呼を生じ,一体不可分の一種の造語を表したものとみるのが自然であるから,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 ア 引用商標1は,上記第2の1のとおり,ややデザイン化された「iswatch」の欧文字を横書きした構成からなるところ,その構成中,後半部は「swatch」の文字を表したものと容易に把握されるから,語頭の文字は,アルファベットの「i」の文字をモチーフにしたものと理解され,それに続く「swatch」の文字とは,書体,文字の太さが異なるところから,外観上は,「i」と「swatch」とに分離して看取,把握され得る場合もあるといえる。 してみると,引用商標1は,その構成中「swatch」の文字部分に相応して「スウォッチ」の称呼を生じるものである。そして,「swatch」の文字は,上記3のとおり,ややデザイン化した請求人使用商標が我が国の需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認めることができ,引用商標1は,請求人使用商標と同一のつづりからなるものであるから,「請求人の業務に係る商品(腕時計)」の観念を生じるものと認められる。 また,引用商標1は,その構成全体を一体のものとしてみた場合には,特定の語義を有する成語とは認められないから,一種の造語として認識されるとみるのが相当であって,当該構成文字に相応して,「アイスウォッチ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標2は,上記第2の2のとおり,ややデザイン化された「iw」と「ch」の欧文字の間に「@」の記号を一連に「iw@ch」と横書きした構成からなるところ,その構成中,中間の記号は,商品の単価を表し,また,電子メールのアドレスに使用され(株式会社岩波書店 広辞苑第六版),一般に「アットマーク」と指称される英字記号「@」の記号をモチーフにしたものと理解され,外観上は,「iw」と「ch」とに分離して看取,把握され得る場合もあるといえるが,構成各文字は,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で外観上まとまりよく一体のものとして把握し得るものであり,かかる構成態様からすれば,「iw」の文字と「@」及び「ch」の文字に分離して認識される構成上の必然性があるとは認めることができず,引用商標2に接する取引者,需要者は,構成文字全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握するものとみるのが自然である。 そうとすると,引用商標2は,その構成文字に相応して「アイダブリュアットマークシーエイチ」の称呼を生ずるものであり,かつ,特定の観念を生じないものとみるのが相当である。 また,引用商標2は,「@」を欧文字の「a」としてみた場合には,特定の語義を有する成語とは認められないから,一種の造語として認識されるとみるのが相当であって,我が国で親しまれた外国語である英語読み又はローマ字読みにならって,当該構成文字に相応して,「アイワッチ」「イワッチ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 ア 外観 本件商標と引用商標の外観について比較すると,本件商標と引用商標1とは,6文字及び7文字という少ない文字構成にあって,語頭の「i」(引用商標1の語頭の文字は「i」の文字をモチーフにしたもの)及び「Watch(watch)」の文字を共通にするものの,「s」の文字の有無において相違するものであるから,我が国における英語教育及び英語の普及度を考慮すれば,通常の知識を有する者は,欧文字における各文字の字形・形象の相違並びに各文字から生ずる相違を充分かつ明確に知覚しているといえるところであって,通常の注意力をもってすれば,かかる両文字間の相違点について,それを看過し,両者を混同するものとはいい難く,その差異は明らかに認識でき互いに見誤るおそれはないものである。 したがって,本件商標と引用商標1とは,時と所を異にした離隔観察はもとより,対比観察においても,両商標の差異が明瞭に看て取れるものであるから,両商標は,外観において,相紛れるおそれはない。 また,本件商標と引用商標2とは,構成文字及び態様の相違により,外観上,相紛れるおそれのないことは明らかである。 イ 称呼 まず,本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と引用商標1から生じる「スウォッチ」の称呼とを比較すると,両称呼は,称呼の識別上,重要な要素をしめる語頭において,「アイ」と「ス」という明確な差異を有するものであり,構成音数の相違及び相違する構成音の差によって,明瞭に聴別できるものである。 次に,本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と引用商標1から生じる「アイスウォッチ」の称呼を比較すると,両称呼は,第3音目における「ス」の音の有無という差異があり,この差異音である「ス」の音は,弱く発音される音である「イ」の音に続く音であることから,比較的明瞭に発音,聴取されるものとなり,引用商標は,「アイ・スウォッチ」と二音節風に称呼され,「アイ」と「スウォッチ」との間に称呼上の段落が生ずるのに対し,本件商標は「アイウォッチ」と一音節風によどみなくなめらかに発音され,特に切れ目なく一気に称呼されるものであるから,この差異が称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえないものであって,それぞれを一連に称呼するときは,語感,語調が相違し,互いに聴き誤るおそれはなく十分に聴別し得るものとみるのが相当である。 また,引用商標2から生ずる,「アイダブリュアットマークシーエイチ」「アイワッチ」「イワッチ」の称呼とは,構成音数に顕著な差異を有するものであるから,全体の語感,語調が相違し,相紛れるおそれはなく,称呼上,容易に区別することができるものである。 ウ 観念 本件商標からは特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標1の「swatch」から「請求人の業務に係る商品(腕時計)」の観念が生じるとしても,両商標は,観念上の共通性はなく,また,相紛れるおそれのある特段の事情は見いだせない。 また,引用商標2も特定の観念を生じるものではないから,本件商標と引用商標とは,観念上,相紛れるおそれはない。 エ 上記アないしウによれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 その他,本件商標と引用商標とが類似するとすべき理由は見出せない。 (4)以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,請求に係る本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)請求人使用商標の周知性 請求人使用商標である「swatch」は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国の取引者,需要者において,請求人使用商品「腕時計」を表示する商標として広く認識されていた。 (2)請求人使用商標の独創性 請求人使用商標である「swatch」は,「布切れ,見本(飾り)の小切れ」を意味する既成の語(現代英和辞典 第1版 株式会社研究社)であり,しかも,請求人使用商品「腕時計」の関係からしても,「s」の1文字と「腕時計」を意味する英語として親しまれている「watch」の語を組み合わせたものと容易に看取されるというのが相当であるから,独創性が高いものとはいえない。 (3)本件商標と請求人商標との類似性 ア 本件商標は,上記4(1)のとおり,一体不可分の一種の造語を表したものとみるのが自然であるから,構成文字全体に相応して,「アイウォッチ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 他方,請求人使用商標は,ややデザイン化してなるものの「swatch」の文字を書したものと容易に看取されるものであるから,その文字構成全体に相応して,「スウォッチ」の称呼を生じ,その周知性を踏まえれば「請求人の業務に係る商品(腕時計)」の観念を生じるものと認められる。 イ 本件商標と請求人使用商標は,いずれも「時計」を意味する親しまれた英語「Watch(watch)」の語頭に欧文字1文字「i」又は「s」を付加したものと看取されるものである。 そして,請求人使用商標が請求人使用商品「腕時計」を表示する商標として,広く認識されることからすると,これに接する取引者,需要者は,請求人使用商標を特に語頭「s」の文字に注意を払って,請求人の業務に係る商品を識別するというのが相当である。 そうすると,両商標は,当該語頭の欧文字1文字部分において,「i」と「s」が異なるものであるから,外観上,相紛れるおそれはない。 しかも,本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と,請求人使用商標から生じる「スウォッチ」は,語頭音において「アイ」と「ス」の差異を有するものであるから,5音という短い音構成において,これらの差異が称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえない。 また,本件商標は上記4(1)のとおり,特定の観念を生じないものであるから,観念において比較できないものである。 ウ 以上よりすると,本件商標と請求人使用商標とは,観念において比較できないものとしても,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではなく,その類似性の程度は極めて低いというべきである。 (4)本件商標の指定商品と請求人商品との関連性 本件商標の指定商品は,請求人の業務に係る商品「腕時計」を含むものであるから,商品の品質,用途及び需要者の範囲も共通する。 また,上記以外の本件商標の指定商品は,「腕時計」以外の時計,宝飾品及び宝玉時計等であって,請求人の業務に係る商品「腕時計」とは,貴金属店及び宝石等を取り扱う店等において共に取り扱われている場合があることから,販売部門や流通経路に関連性があるもので,需要者層も一部重複するものといえる。 (5)出所の混同のおそれについて 請求人使用商標は,上記(1)ないし(4)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者において,請求人の業務に係る商品「腕時計」を表示する商標として広く認識され,本件商標の指定商品が,請求人の業務に係る商品「腕時計」請求人商品と販売部門や流通経路,また需要者層において一定程度関連があるとしても,独創性が高いものとはいえず,本件商標とは,類似性の程度は極めて低いもので,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が,請求人使用商標を連想又は想起することは考え難い。 そうすると,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が請求人の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ではなく,また,当該商品が請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ともいえないから,請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じるおそれがある商標ではない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 6 結論 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項第6号,同法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第16号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1) 別掲3(引用商標2) 別掲4(請求人使用商標) |
審理終結日 | 2019-06-26 |
結審通知日 | 2019-07-01 |
審決日 | 2019-07-17 |
出願番号 | 商願2014-32454(T2014-32454) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(W14)
T 1 11・ 16- Y (W14) T 1 11・ 271- Y (W14) T 1 11・ 261- Y (W14) T 1 11・ 272- Y (W14) T 1 11・ 263- Y (W14) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大塚 順子、椎名 実、神前 博斗 |
特許庁審判長 |
薩摩 純一 |
特許庁審判官 |
早川 文宏 大森 友子 |
登録日 | 2016-05-13 |
登録番号 | 商標登録第5849925号(T5849925) |
商標の称呼 | アイウオッチ、ウオッチ |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 中山 健一 |
代理人 | 門田 尚也 |
代理人 | 西尾 隆弘 |
代理人 | 杉村 憲司 |